漫画の世界において、絶対的な人気を誇るのがスポーツものである。
野球、サッカー、ボクシング、テニスといったスポーツ漫画が掲載されていない漫画雑誌は稀である。かくも人気が高いスポーツ漫画であるが、スポーツによっては人気のない不遇なものもある。その代表がバスケットボールであった。
先だって週刊少年ジャンプで連載終了し、アニメ化もされた超人気漫画「黒子のバスケ」の人気を思えば、バスケ漫画が人気がなかったなんて信じられないかもしれないが、これは歴史的な事実である。
バスケ漫画は人気が出ない。このジンクスを打ち破ったのは、やはり週刊少年ジャンプで絶大な人気を誇った「SLUM DUNK」であった。私はこの漫画を、日本の漫画史に残る金字塔だと認識している。
だからこそ、「SLUM DUNK」以前、バスケットボールを描いた漫画が、まるで人気がなかったことが信じられない。実は惜しかった漫画もあった。それが今回取り上げた「ダッシュ勝平」であった。
週刊少年サンデーに掲載されていたのは、私が十代前半の頃だが、前半がコメディ漫画であるかのような設定が多く、それゆえに後半にバスケに真剣に取り組んでいたにも関わらず、スポーツ漫画としては正当に評価されなかった。
なにせ、白いパンティが大好きなスケベ少年が主人公で、その白いパンティを履いたバスケ部の女性コーチに惹かれて入部したという救いようのない設定で始まった漫画なので、コメディ漫画として定着したのも無理はない。
実際、私なんかはこの漫画をコメディ漫画として捉えていて、後半真面目にバスケの試合をしていることに不満を感じたくらいだった。致命的に身長が足りない勝平が、様々なアイディアをひねり出して、なんとか勝とうとする場面は笑えるものが多い。
しかし、今読み直してみると、主人公が勝とうとする気持ちに偽りがないことが分かる。ただ、ところどころにギャグネタが入るので、どうしても真面目なスポーツ漫画にはなりきれない。
おそらく、それはサンデーの編集部の意向を酌んだものだろうと思う。作者の六田登はコメディ漫画を描いていたが、おそらく作者の本質はシリアス路線ではないだろうか。それは、その後の作品に顕著に顕れている。
ただ週刊少年サンデーでは、コメディ路線で取り上げられており、その路線から大きく踏み外すことが出来なかったのだろう。実際問題、この漫画はコメディ漫画として人気があり、アニメ化まで果たしている。
それだけの人気がありながらバスケットボールというスポーツ漫画とはなり得なかったのは、コメディ路線が強すぎたからだろう。だが、この漫画以前にバスケットを取り上げた人気漫画がなかったことを思えば、先駆者として、また露払い役としての役割は果たしたのだろう。
正当なバスケ漫画が既に定着した以上、忘れ去られるのも無理はない。でも、こんな漫画もあったことを思い出していただければ幸いです。