ヌマンタの書斎

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電磁式カタパルト

2018-01-24 12:09:00 | 社会・政治・一般

軍事情報は機密事項が多く、新聞社もTV局も容易に取材できないのは理解できる。

ただ、日本のマスコミ様はあまりに軍事知識がないだけでなく、考えることを放棄しているのではないかと思うことは良くある。

現在、シナが保有する空母は遼寧、一隻であり、率直に云って実験艦の域を出ない実力でしかない。武器を装備すると40トンを超える重量を持つ戦闘機を離艦させることが出来ないダメ空母である。

何故出来ないのかといば、戦闘機を強制的に射出させる蒸気式のカタパルトの実用化に失敗したからである。蒸気式カタパルトはアメリカのみが実用化に成功した特殊技術であり、以来半世紀どの国も実用化に成功していない。

そこでシナは、電磁式カタパルトの開発に乗り出したと新聞などは伝えている。実にシンプルな報道である。

原理は簡単で、要はリニアモーターカーと同じで、電磁力を用いて物体を高速で発射させる技術である。既に世界各国でリニアモーターカーが公開実験され、一部は実用化している。

もっとも実用化しているのは、シナと韓国で、大半の先進国は見送るか、保留している。日本は現在、路線を建設中ではあるが、山間を通り抜けるトンネル工事があまりに多く、その実用化は当分先である。私見だが、コスト面で採算に合うのか、大いに疑問でもある。

ところで、このリニアモーターカーの技術を転用して空母に、電磁式カタパルトを設けて、本格的な空母の実用化を目指しているのがシナである。

ミサイルや爆弾を搭載した戦闘機はかなり重い。それをリニアモーターカーの技術を使って、空母から発射させるわけだが、基本的な技術は既に持っているのだから、実用化も決して夢物語ではない。

既に上海などではリニアモーターカーが走っているのだから、空母に搭載する発艦カタパルトも出来そうな気がするではないか。これが本当ならばビックニュースなのだが、意外なほど騒ぎになっていない。

実を言えば、シナのリニアモーターカーの基本技術は、アメリカからの盗用である。2007年にスパイ騒動が起きて、かなりの騒ぎになったことをご記憶の方もいるだろう。

ただし、シナはその後に研究者を総動員して、かなりの部分を解明して、実用化に至っている。元は盗用されたものといっても、既にものにしていると判じても良いと思う。

もし、本格的な空母が運用されれば東シナ海や南シナ海のみならず、太平洋西部にまでシナの軍事的脅威が拡散することになる。日本はもちろん、アメリカにとっても大変な軍事的脅威である。

アメリカが良く言う「自由な航行権」とは、はっきり言えば軍事的な行動圏のことである。その脅威になるはずなのに、意外なほどアメリカの反応は鈍い。

ここから先はかなり推測に頼らざるを得ないことを、予めお断りしておきます。

電磁カタパルトは、既にアメリカの新型空母に一部搭載されています。しかし、アメリカ以外で実用化に成功している国は、今のところありません。アメリカと共同開発していたイギリスは既に断念しています。フランス、イタリアも研究の域に留まっています。ロシアは実用化を目指しているようですが、未だ具体的な計画は未発表です。

唯一、シナだけが建造予定の二番艦空母への搭載を表明しているだけです。陸上でリニアモーターカーを実用化しているのだから、その実現性は高いと思われますが、実はそうでもないようです。

まず動力源の問題があります。空母遼寧がディーゼルエンジンであることからして、今のシナの技術力では高出力のガスタービンエンジンは未だに作れないようです。これは戦闘機に搭載するエンジンも同様で、ロシアからの輸入に頼っています。空母用のガスタービンエンジンをシナに供給する予定は、ロシアには毛頭ないようです。

安定した電力供給が必要なリニアモーターカーと異なり、爆発的な電力供給を必要とする電磁式カタパルトには高性能なコンデンサなどが必要となりますが、この分野におけるシナの技術力はあまり芳しいものではありません。

また、そもそもその電力を供給する発電機についても、ディーゼルエンジンでは厳しい。かなり高出力に耐えうる火力エンジンが必要となりますが、そのような船舶用エンジンを作る技術力も未知数です。

つまり、現実的に空母に搭載できる電磁式カタパルトを実用化できるのか、その可能性は決して高くないと予測されているのが実情です。だからこそ、アメリカはそれほど問題視していないのではないかと推測できるのです。

2007年の軍事技術流出事件以来、アメリカはシナの産業スパイに目を光らせています。そうなると、次なるターゲットは未だ軍事法制が不十分な日本ではないかと推測できます。

狙いは高出力のガスタービンエンジン技術と、高性能なコンデンサの製造技術あたりでしょう。シナが本当に電磁式カタパルトを実用化すれば、それは日本にとっても重大な軍事的脅威です。

私としては、ヘリ空母の改装よりも、まず優先すべきはスパイ防止法、入国管理法、ハッキング防止対策などソフト面での、より積極的な改正だと思います。

防衛省や一部の国会議員には、その意識はあるようですが、如何せん国民の意識が低い。

その原因は、新聞やTVの軍事知識のなさだと思う次第。もっと真剣に平和を守ることを考えて欲しいものです。

コメント (2)
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