大相撲は興業である。
相撲は立ち技系の格闘技としては最強の部類に入ると私は考えています。しかしながら、大相撲は観客を喜ばすことで成り立つビジネスです。
昨年来、土俵外での騒動で相撲界が騒ぎになっておりますが、未だにその真相は闇の中。ただ、争点は「八百長相撲」であろうと私は見ています。
先日、理事の座を追われた貴ノ花ですが、この人はガチンコ相撲の信奉者であり、その真面目すぎる性格から、大相撲からの八百長相撲の追放を目指していることは、知る人ぞ知る事実です。
では、貴ノ花の側こそ正義なのか。
そう断言できないから、この騒動は落しどころが難しい。私は真剣勝負を否定する気は毛等もない。過去、何度か観戦した真剣勝負は、本当に手に汗握る名勝負であり、今も忘れることが出来ない。
でも私は知っている。観客を沸かせ、感動させるような真剣勝負は稀であることを。嘘だと思うのなら、大相撲の幕下から序二段あたりの相撲を見続けてみることです。
まだ髷も結えない若手力士たちの勝負は、当然真剣勝負です。この段階だと、まず八百長は生じない。まだ身体の出来上がっていない若手力士たちが必死で相手と戦う様子は、真剣そのものであることは分かります。
でも、格闘技の素人観戦者が楽しめるものではありません。これはボクシングなどでも同様で、後楽園ホールの4回戦ボクサーたちの試合なんて、とても金をとれるレベルの試合ではない。
みんな真剣に戦っています。でも、見どころが少ない。これは観戦者側に、格闘技を見る目が十分でないことも大きな原因ですが、対戦する格闘技者自身も、観客受けするような試合をする余裕がないことも一因です。
格闘技素人というか、普通の観客が面白いと思う試合が出来るのは、ボクシングなら最低でも8回戦以上であり、相撲ならば十両からではないかと思います。このレベルになると、観客を意識した試合をする余裕が出てくるらしく、面白い試合が観れます。
格闘技に限りませんが、街の喧嘩でも観るに値するようなものは滅多にありません。真剣=素晴らしいもの、とは言えないのが現実なのです。
大相撲における八百長は、一言で語られるほど簡単なものではありません。ただ、その温床になるのは、部屋の違う力士たちの交流関係であることも事実です。
今回は、モンゴル人力士たちの私的な交流が、貴ノ花のやり玉に挙がってしまいましたが、本命は角界の主流である出羽一門でしょう。一部の若手親方には、貴乃花に賛同する向きがあるのは事実でしょうけど、大半は現状を甘んじて受け入れているのが実情です。
今回、理事の座を追われた貴ノ花ですが、直に迫った次の理事選挙には当選確実でしょう。でも、多数派とはなれないことも明白です。つまり、この騒動は今しばらく続くと私はみています。
率直に言って、100点満点の解答は見出しにくいです。私も万全の答えを持ち得ません。ただ、土俵の上には、この問題を影響させないで欲しいと思っています。