ミステリー界における名探偵ポアロの名声は確固たるものがある。
その魅力は、さえない外見とは裏腹な、鋭い洞察力に支えられた推理力にある。アガサ・クリスティの原作を読んだのは、たしか小学生の頃だと思う。創元推理文庫版で読んだのだが、ポアロの謎解きの面白さは子供の私を十分に楽しませてくれた。
小男でハゲでありながら、その頭に納められた灰色の脳細胞が産み出す見事な洞察から事件を解決に導く名探偵。この外見と中身のギャップがポアロの魅力であった。
そのように私の脳裏に刻まれているので、表題の映画はちょっと辛かった。ャAロの尊大さや、明確な審判を下しにくいこの事件の顛末に苦悩するポアロの演技は決して悪くない。
ただ、私のイメージするポアロではない。
キャストも豪華であり、力作なのは分かるのだが、原作を幾つも読んでいて、ポアロについて固定的なイメージを持つ私には、最後まで違和感を否定することが出来なかった。
それとご存じの方も多かろうと思うが、この作品には1970年代に公開された映画があり、それと比較してしまう難点もある。だいぶ昔に観た映画なので、比較するのは酷だが、この旧作の方がポアロのイメージに合致していたことは確かだ。
でも、旧作を観た事がない人や、原作を読んだことがない人なら十分楽しめると思いますよ。