高齢化社会と少子化社会は、確実に世の中を荒廃させるのだと痛感した。
先週のことだが、関東地方、特に東京では4年ぶりの大雪であった。月曜日であったが、どこの会社でも早めの帰宅を促したせいか、夕刻の渋谷駅はホームに入場規制がかかるほどの大混雑であった。いつもの二倍半の時間をかけて帰宅すると、自宅の周辺は積雪20センチの雪景色であった。
まずは夕食をとり少し寛いだ後、外を見ると既に雪は止みかけていた。そこで身支度を整えて、スコップを片手に雪かきを始めた。久しぶりの雪かきだ。
4年前の大雪の時は、長野からの帰途に中央高速通行止めで甲府に足止めされ、帰京した時には自宅周辺は既に雪かきがされていた。仕方ないこととはいえ、少し気が咎めていたので、今回は率先して深夜に雪かきを始めた訳だ。
以前は誰かが雪かきを始めると、近所の方が出てきて手伝ってくれたものだが、さすがにこの時間は誰も出てこなかった。新雪なので雪かきも楽だが、如何せん量が多過ぎる。人一人、ようやく通れる程度の雪かきで済ませて、部屋に戻り一風呂浴びて寝てしまう。
翌日は快晴で、これなら雪も溶けるだろうと思いつつ、この日は一日中車で外回り。幹線道路は既に除雪されているが、肝心の首都高が通行止め。止む無く幹線道路を使い顧客回りである。
夜半、帰宅して驚いた。自宅周辺の雪かきがあまり進んでいない。考えてみれば、私の住む公団住宅は高齢化が進み、以前は率先して雪かきをしていたSさんは既に杖が必要なので無理だ。他数名も最近は顔もみかけない。もしかしたら入院とか、どこかの施設に入っているのかもしれない。
でも数件、若い家族も転居してきているはず。でも、隣の若夫婦は旦那はいつも深夜帰宅で、奥さんは小さなお子さんにかかりきり。後2軒は自治会に入る、入らないで揉めた連中なので期待薄だ。
仕方ないので、着替えもせず、スコップを片手に雪かきを再開することにした。途中、杖をついたSさんが出てきたが、危なっかしいので戻ってもらう。あれじゃ無理だよ。
明日からは気温が下がるはずなので、凍結する前になるべく除雪しておきたいものだ。そう思い、せっせと雪かきに励む。ふと足音が聞こえたので振り返ると、件の自治会拒否のAさんが雪かきした道を歩いてきたよ。
こいつ、私と目が合った途端に、目を逸らしやがった。無言で通り過ぎていく背中を見ながら、情けない野郎だと吐き捨てる。お前が歩いてきた除雪した道の雪をどかしたスコップは、お前が無駄な存在だと言った自治会で買ったものだよ。まァ、気にしても仕方ないで、そのまま雪かきをすすめ、一通り終えると帰宅した。
翌朝、東京では滅多にない氷点下であり、雪はカチカチに凍結していた。まだまだ雪は残っているが、この気温だと溶けるのは当分先だと思う。その日夜、少し早めに帰宅したのだが、よくよく見渡すと、雪かきがされていない道がけっこう多い。
特に5年ほど前に新築された高層団地の周辺がひどい。ここは新築だけに、若い居住者が多いはずなのだが、呆れたことに高齢者が多い私の公団住宅よりも除雪がされていない。
引っ越してきたばかりで、地域とのつながりが薄いのは分かるが、これはヒドイ。歩道と、駐輪場、駐車場の一部が除雪されているだけだ。見ている傍から、転唐キる親子連れがいる始末である。
ここ数日の低温で、残った雪は凍結して簡単には取り除けない。初めのうちに雪かきしておけば、こんな惨状にはならずに済んだはず。これが、高齢化と少子化を迎えた社会の一面なのだろう。
地域社会のつながりが希薄となり、雪かき程度の貢献が出来ない。それが結局は自分たちの首を絞める現実には目を背け、安楽な生活に逃げ込みたいのだろう。
雪が拡がった光景は一見美しいが、その美しさの裏にある、荒廃した日本の未来が見えてくるようで、私は不安で仕方ありませんね。