ヌマンタの書斎

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改めて日米安保再考

2019-07-01 11:37:00 | 社会・政治・一般

ブルームバークが伝えたトランプ大統領の「日米安保破棄」発言は、どうやら曲解されたものであるようだ。

つまり、いわゆるフェイクニュースであろう。ただし、完全なるフェイクではないと思う。トランプ大統領をはじめとして、アメリカ人に多く見られる中途半端な日米関係の理解が根底にあると思う。

改めて日米安保条約について考えてみたい。

アメリカという国は、イギリスとの独立戦争以来、基本的に外敵からの侵略を受けたことがない。メキシコとの戦争や、カナダとの紛争もあったと思うが、当時は連合国家であったせいか、あまり外敵との戦争とは考えていないらしい。

そのアメリカに対して、海を渡って近代兵器をもって攻撃を仕掛けてきた最初の敵が、戦前の大日本帝国である。アジアの後進国だと侮っていただけに、日本軍により真珠湾攻撃は、アメリカ人のプライドをひどく傷つけた。

しかも、アメリカ軍はこの東洋の野蛮国との戦争に、ひどく手間取った。アメリカの太平洋艦隊は、空母3隻以外は、ほぼ壊滅状態。マッカーサー将軍は、フィリピンから「アイ シャル リターン」と捨て台詞と部下を残して逃げ出す有り様である。

おまけに当時の太平洋艦隊の有する兵器は、後進国日本に劣ることが判明してビックリである。だが、ここからの逆襲は凄かった。最新の戦艦、潜水艦を建造してパナマ運河を渡って太平洋艦隊を補強した。

ゼロ戦には通用しなかったカーチスを諦め、ヘルキャット、サンダーボルト、ムスタングといった最新の戦闘機、攻撃機を配備しただけでなく、ナチスドイツにも使わなかった当時の最高水準の技術を投入した爆撃機B29を送り込んだ。

従来の戦法では、日本軍を倒せないと知ったアメリカ軍は、最新の武器で日本の占領地を攻撃、爆撃しまくった。それでも、苦戦に苦戦を重ねた。戦後のアメリカ軍の勝利を知っている世代には、この表現は違和感を感じるだろう。

でも、本当にアメリカ軍は強固で熱狂的な難敵である日本軍に苦労した。10倍以上の物量差をもってしても、勝利は厳しいと痛感していたのは、他ならぬ前線で命を張って闘う兵士たちであった。

だからこそ当時、まだ理論段階であった核兵器を投入することを決断した。その結果、ようやく日本を屈服させたのだから、もう二度と同じ思いはするまいと堅く誓った。

そこから生まれたのがGHQによる統治政策であった。この好戦的な民族を如何に骨抜きにするかが、GHQの最大目的であった。学校教育、社会制度、宗教など考えうる限り、日本民族の弱体化を図った。

GHQが末オて与えた日本国憲法の立法骨子は、日本の弱体化に他ならない。そのために、更に必要となったのが日米安全保障条約である。つまり、日本に武器をもたせず、軍隊を作らせない以上、日本列島の安全はアメリカが担う。それが始まりであった。

ところが冷戦の激化が、状況を大きく変えた。ソ連との最前線となった朝鮮戦争の結果、日本列島はアメリカ軍に必要不可欠な兵站拠点となった。広大な太平洋を渡ってきたアメリカ軍の兵士たちにとって、日本列島は理想的な戦略拠点に他ならなかった。

だからこそ、その防衛を日本にやらせた。それが自衛隊の始まりである。

しかし、アメリカ政府は未だに熱狂的な日本軍の恐ろしさを忘れてはいなかった。この恐るべき敵を復活させてはならない。それゆえに、日本軍を日本の領土内に押しとどめた。すなわちアメリカ軍は日本を守る義務はあるが、日本軍にはアメリカ本土を守る義務はない。

日米安保条約とは、日本列島を戦略拠点として使いたいアメリカが、日本軍にアメリカ軍を守らせつつも、決して強大化させはしないため、一方的な内容とした。だからこそ片務的であり、相互軍事条約の形をとっていない。

この歴史的な流れを理解しているアメリカ国防省は、今もこの基本的な原則を変えるつもりはない。しかし、世界有数の最新鋭の武器を取りそろえた日本軍を、アメリカのために使いたいと希望する政治家、軍官僚は少なからずいる。

トランプ大統領の「日米安保破棄」とは、まったくのフェイクではなく、むしろある種の政治的な工作の匂いさえ漂う。実際、対シナを目的に、アメリカはインド、オーストラリア、そして日本による軍事的な包囲網が築かせている。

妙な言い方だが、日本を信頼しているがゆえに、トランプは日米安保破棄を口にしている可能性は高いと思う。もちろんその先にあるのは、アメリカとの相互防衛条約であろう。

日本は今、まさに戦争への道を歩みつつあると私は考えています。

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