国際政治に甘い期待は禁物だ。
北京政府の妨害で新型コロナ対策のワクチンの入手に苦労していた台湾に対して、日本政府がワクチンを提供したことが話題になっていた。
国際的に孤立している台湾が喜んだのは確かだし、日本と台湾との友好促進に大いに役立ったことも確実だ。
しかし、だからといって全面的に両国の関係が親密になったとは言えない。むしろ日本側に勘違いが増えた気がして、それが心配だ。
台湾は本来、中華民国であり、シナの大地の本来の支配者であったはずだ。しかし中国共産党との内戦に敗れて、台湾島に逃げ込んで島を支配して生き延びた、云わば亡命政権に近い性格を持つ。
しかも厄介なことに、現台湾政府は侵略者でもある。日本統治時代より前から台湾島に住むシナ人たちを権力の座から追い払い、その上に台湾島に古来から住んでいた原住民をも山奥に追いやった強権者でもある。
つまり台湾という国家は、決して一枚岩ではない。複雑な社会構造を内包している。それが目立たないのは、対北京政府の一点においてのみ団結するからに過ぎない。言い換えれば、愛国心に乏しい国民でもある。
実際、私の知る限り多くの台湾人は、国外に避難場所を持っている。もちろん経済的に許される限りにおいてだが、元々商才に長けた国民性故に、アメリカ、カナダ、日本など少なからぬ国に不動産等を持ち、共産シナの侵略に備えている。
たださすがに数十年経つと、それなりに愛国心が芽生えるようで、祖国としての台湾に対する愛着心も若い人たちには育っているように思える。
でも、だからこそ厄介なのだと私は考えている。
現在の台湾の置かれている国際的状況は、決して芳しいものではない。経済発展著しい共産シナとの友好を望む多くの国は、台湾との外交関係を捨てて、共産シナとの関係を重視している。台湾の国際的孤立は深まる一方である。
だからこそ、今回の日本政府による対コロナのワクチン配布は熱烈な歓迎を受けた。またアメリカのバイデン政権も、台湾に対して好意的である。
このような状況を看過するほど共産シナは甘くない。そして台湾はそのことを熟知している。
私が考える最悪の状況の一つは、台湾が日本に対して共産シナの尖兵として牙を剥くことだ。香港に対する一国二制度のように、現行の台湾政府の自治を認める一方で、日本やアメリカに居る台湾人を共産シナの工作員として活用する。
もちろん、これはアメリカが台湾に対する関心を失ったか、あるいは増強する共産シナとの妥協のために台湾を差し出すといった国際関係の変化が絶対要件ではある。
なにが厄介かといえば、台湾人はアメリカや日本の経済界に深く浸透しており、その影響は極めて広いからだ。武器を持たずとも、情報を武器に様々な政治的工作をやられると、脆弱な日本などは相当なダメージを被る。
コリア半島の人たちだと、最初から警戒の対象となっていることが多いが、台湾人はそのような警戒対象とはなっていない。実際、彼らの振る舞いは、西側先進国の経済人として相応なマナーを有している。
だからこそ、台湾企業と日本企業が長年にわたり円滑な関係を築いている。この実績があるがゆえに、台湾を警戒することが難しい。
断わっておくが、別に私は台湾を嫌っているのではない。シンガポールの華僑同様、日本にとって比較的良好な関係を築きやすい国として、むしろ台湾を高く評価している。
だからこそ潜在的敵性国家となった場合は、非常に厄介だと考えざるを得ない。そうならない為にも、経済や文化だけでなく、政治面、軍事面でも台湾と友好的な関係を育む必要性を強く感じているのです。
でも、これは事なかれ平和主義が蔓延している日本には、かなりハードルが高いのが現実です。ですが敵(共産シナ)の敵(台湾)は味方となる可能性があることは是非とも銘記しておくべきでしょう。