ほんの3年前のことだが、当時生まれたばかりの非・自民党政権である民主党による連立政権を朝日新聞を初めとした大手マスメディアが支えようと偏向報道をしていた。公正中立で不偏を売りとするマスコミの矜持を捻じ曲げての行為であったが、マスコミにはマスコミなりの反省があった。
それは短期間で潰れてしまった細川・日本新党連立政権の反省をこめての偏向報道であった。当時、マスコミが心から願っていた非・自民政権であったが、当時のマスコミは反・主流根性が抜けずに、自民政権に対するのと同様な批難報道をしてしまい脆弱な細川政権を潰してしまった。
同じ過ちはするまいと、民主党政権の多少の失政には目をつぶろうと覚悟の偏向報道で政権を支援した。しかし肝心の民主党政権が日本を低迷させてしまい下野を止む無くされた。
衆議院選の結果は止む無いが、せめて民主党が過半を握る参議院の議席数は維持しようと、「ねじれ国会」を美化して応援したが、その甲斐もなく民主党は敗退し、自民が過半を握ってしまった。ハンカチ噛みしめ、地団駄糞踏んでも悔やみきれないのがマスコミ様の本音であろう。
ところで野田首相に代わって登場したのが、かつてマスコミの非難にめげて政権を放り出した安倍晋三である。
朝日や毎日、共同通信といった輩が、夢よもう一度とばかりに葬ってやろうと奮闘したが、さすがに今回の安倍は覚悟が違うらしい。日銀政策の大変更を責め、アベノミックスを叩き、シナやコリアとの外交を攻め立てたが一向に効果がない。
ならば閣僚をと意気込んで、重箱の隅を突き出したところ、麻生がやってくれた。ワイマール憲法を換骨奪胎して戦争に持ち込んだナチスのやり口を学べと発言したと、朝日、共同通信が音頭をとって非難の大合唱である。
私も当初は、また麻生が軽率な発言をしたな程度の認識であったが、その発言を全体から判じれば、別にナチスを擁護しているわけでもなく、ただ改憲の手法としてナチスのようなやり口はあると言っている程度のものだ。
針小棒大というか、言葉尻を捉えての無理矢理の非難報道である。なんとも、みっともない報道をするものだと呆れ果てたが、しかし、麻生も軽率に過ぎる。ナチスを美化している訳でないことは、発言全体をみれば分かる。
しかし、誤解を招きやすい発言であることも明らかだ。だいたい本気でワイマール憲法を骨抜きにしたナチスの手法を真似ようとするなら、それは極秘に行うべきだ。マスコミの注意を惹かぬよう細心の注意を払って平和憲法という欺瞞を骨抜きにしなくてはならない。
気付かれぬ様、既成事実を積み上げて、本来の平和憲法を事実上無効化させる。麻生氏のようにそのことを堂々口にしては、出来ることも出来なくなるではないか。
率直に言って麻生氏の発言は、本気でナチスの手法を真似たいのか、それとも正々堂々議論の下に改憲したいのかさえ曖昧である。言葉尻を捕えられて誹謗されるのも当然である。その意味でも、このような軽率な発言はするべきではない。
ただ、私の本音を言えば、自衛隊創設以来日本政府はアメリカの了承のもとで、平和憲法を事実上骨抜きし続けてきたのが実態であろう。どう考えても自衛隊は軍隊そのものだ。その自衛隊を海外に派遣して、やれ相Cだ、やれPKOだといったところで、それが軍隊を政治目的の手段に供している事実に違いはない。
私には憲法9条に明らかに反しているとしか思えない。
ナチス同様に、日本政府もまた黙々と平和憲法を骨抜きにしてきたのが歴史的事実である。云わば麻生氏の発言は、過去の日本政府の実績を示しているに過ぎないではないか。もっとも、それを意図しての発言にも思えないところが、麻生氏の困ったところでもある。
朝日新聞にせよ、共同通信にせよ、そこまで踏み込んでの非難報道ならそれなりの価値があると思うのだが、困ったことにその覚悟はない。私に言わせれば、目くそ鼻くそを笑うレベルの話である。
まァ、それに納得している国民のレベルに合わせた報道とも云えるのだけどね。
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