10代の頃は、頻繁に山に登っていたため、時折不思議な体験をすることがあった。
あれは、高校2年の秋だった。WV部の合宿で裏丹沢に登った時のことだ。登山客で賑やかな南側と異なり、交通の便の悪い丹沢の北側は人気が少ない。道志山塊の麓側は過疎化が進行しており、バスは一日に10本に満たない。
その秋は冬の訪れが早かったようで、北斜面は既に落葉で埋まっていた。傾斜はそれほどでもないが、落ち葉の下の霜柱が溶け出して、足を踏み出す度に滑るのには閉口した。
先頭を任された私は、なるべく歩きやすい道を探しつつ登るよう努めた。ふと気がついたら、登山道を外れて獣道に入り込んでいた。
野生の動物は、人間が築いた登山道も使うが、目的が違うので動物専用の道を歩むことが多い。長年、山登りをしていると、その違いは明白だ。まず、土の固さが違う。やはり人間の使う道は踏み固められ整備されている。また動物はせいぜい50センチから1メートルの高さがあればいいので、獣道は草木の茂みにトンネルを作り上げる。丁度、腰から上が草木にぶつかり、下半身がぶつからない道なら、ほぼ獣道とみて間違いない。
高さ2メートルほどのススキの生茂る獣道は、上半身がススキに邪魔されるも、下は歩きやすく、ついつい入り込んでしまったようだ。読図をすると、すぐ近くの稜線まで突き進めば、再び登山道に当たるはずなので、休憩をとり上級生が偵察に行くこととなった。
私もリーダーに指示された獣道の一つを、軽快に登っていった。ススキの茂みの下に出来た獣道のトンネルは快適で、その大きさからして猪か鹿が利用しているようだ。
ふと気配を感じた。
獣道ではしばしば野生動物と遭遇することがある。鹿ならいいが、猪はやばいと思い足を止め、様子を窺う。妙だった。獣道にしては、やけに踏み固められている。糞も少ないし、なにより獣の匂いがしない。
気配に敵意が混じっている気がした。獣じゃない・・・あいつらは、まず驚いて突進することはあっても敵意はみせない。野犬ならあり得るが、だとしたら警戒の唸り声をあげるはず。
多分、ススキの藪の十数メートル向こうだと感じた。しばらく黙したまま対峙する羽目に陥った。まずいことに、ザックを休憩地点に置いて空身できたため、なにも道具を持ってない。ベルトに差したカラピナを取り出して、メリケンサック代わりに握り締めた。緊張から、じんわり脂汗が染み出てくる。
突然、背後から声がした「先輩、道ありました~。バックしてください」。後輩が近づいてきた。私は大声で返事して、音をたてて後ずさりした。
気配は消えうせていた。
その後は、何事もなく登山は進み、夕方には表丹沢に下山した。帰りの電車のなかで、先輩に藪のなかでの出来事を話した。リーダーとして最後尾を歩いていた先輩は、俺も視線を感じたよと小声で囁いた。もしかしたら、やばい人間かもなと呟いた。
あ!と思った。噂を耳にしたことがある。浅間山で繰り広げられた日本連合赤軍のリンチ事件以降、都会に居場所をなくした過激派が、山中に隠れているとの話をだ。裏丹沢は登山者も少なく、人里からも適度に離れている。隠れ場所には格好だと思う。
何度となく野生動物には遭遇しているが、あのような妙な気配を感じたのは、あの時一度きりだ。その後のことは不明だが、なんとも気持ちの悪い遭遇でした。日本の山で浮「動物といえば、熊、サル、猪、野犬でしょうが、やっぱり人間が一番怖い。環境破壊猛獣でもある人間こそが、一番恐ろしい生き物なのでしょうね。
あれは、高校2年の秋だった。WV部の合宿で裏丹沢に登った時のことだ。登山客で賑やかな南側と異なり、交通の便の悪い丹沢の北側は人気が少ない。道志山塊の麓側は過疎化が進行しており、バスは一日に10本に満たない。
その秋は冬の訪れが早かったようで、北斜面は既に落葉で埋まっていた。傾斜はそれほどでもないが、落ち葉の下の霜柱が溶け出して、足を踏み出す度に滑るのには閉口した。
先頭を任された私は、なるべく歩きやすい道を探しつつ登るよう努めた。ふと気がついたら、登山道を外れて獣道に入り込んでいた。
野生の動物は、人間が築いた登山道も使うが、目的が違うので動物専用の道を歩むことが多い。長年、山登りをしていると、その違いは明白だ。まず、土の固さが違う。やはり人間の使う道は踏み固められ整備されている。また動物はせいぜい50センチから1メートルの高さがあればいいので、獣道は草木の茂みにトンネルを作り上げる。丁度、腰から上が草木にぶつかり、下半身がぶつからない道なら、ほぼ獣道とみて間違いない。
高さ2メートルほどのススキの生茂る獣道は、上半身がススキに邪魔されるも、下は歩きやすく、ついつい入り込んでしまったようだ。読図をすると、すぐ近くの稜線まで突き進めば、再び登山道に当たるはずなので、休憩をとり上級生が偵察に行くこととなった。
私もリーダーに指示された獣道の一つを、軽快に登っていった。ススキの茂みの下に出来た獣道のトンネルは快適で、その大きさからして猪か鹿が利用しているようだ。
ふと気配を感じた。
獣道ではしばしば野生動物と遭遇することがある。鹿ならいいが、猪はやばいと思い足を止め、様子を窺う。妙だった。獣道にしては、やけに踏み固められている。糞も少ないし、なにより獣の匂いがしない。
気配に敵意が混じっている気がした。獣じゃない・・・あいつらは、まず驚いて突進することはあっても敵意はみせない。野犬ならあり得るが、だとしたら警戒の唸り声をあげるはず。
多分、ススキの藪の十数メートル向こうだと感じた。しばらく黙したまま対峙する羽目に陥った。まずいことに、ザックを休憩地点に置いて空身できたため、なにも道具を持ってない。ベルトに差したカラピナを取り出して、メリケンサック代わりに握り締めた。緊張から、じんわり脂汗が染み出てくる。
突然、背後から声がした「先輩、道ありました~。バックしてください」。後輩が近づいてきた。私は大声で返事して、音をたてて後ずさりした。
気配は消えうせていた。
その後は、何事もなく登山は進み、夕方には表丹沢に下山した。帰りの電車のなかで、先輩に藪のなかでの出来事を話した。リーダーとして最後尾を歩いていた先輩は、俺も視線を感じたよと小声で囁いた。もしかしたら、やばい人間かもなと呟いた。
あ!と思った。噂を耳にしたことがある。浅間山で繰り広げられた日本連合赤軍のリンチ事件以降、都会に居場所をなくした過激派が、山中に隠れているとの話をだ。裏丹沢は登山者も少なく、人里からも適度に離れている。隠れ場所には格好だと思う。
何度となく野生動物には遭遇しているが、あのような妙な気配を感じたのは、あの時一度きりだ。その後のことは不明だが、なんとも気持ちの悪い遭遇でした。日本の山で浮「動物といえば、熊、サル、猪、野犬でしょうが、やっぱり人間が一番怖い。環境破壊猛獣でもある人間こそが、一番恐ろしい生き物なのでしょうね。
kinkachoは山で遭遇した動物は、ウサギ、シカ、イノシシですね。幸いクマは爪跡だけです。六甲ではイノシシにはごく普通に遭遇します。しかし不思議とお互い不可侵ですね。サルには観光地でご存知の通り襲撃されてます。あと奈良公園のシカは油断すると後ろを取られます。
でも、やっぱり一番要注意は人間か…
あんまし言いたくないけれど、やっぱり人間が一番だと思います。都会でも山でも本性は変わりません。
細部は違いますが、手負いにしてしまった豬を追う時、似た体験をしてます。
獣道はご承知の通り、腰から下にトンネルがあり、身動きしにくい。
慌てて膝立ちになり、トンネルのむこうに鹿玉を装填した散弾銃をむけました。
問題は、相手が人であったら?
確認して撃つのがルールですが、豬は速い。
鹿に負けるとはいえ、さの突進はこの場所では目前にあら現れたらコンマ秒で牙を私に突き刺す。 しかし…奴らはブッシュの中では意外に騒々しい。
ぶちぶち草をちぎって進んでくる。まして手負いで怒ってる奴です。
でも、そいつは気配を殺して待っ。殺そうとして殺せない気配が伝わってくる。
近くで銃声がしました。
猟仲間が追う豬をしとめたのです。
その刹那、気配が後退しました。私も銃口を向けたまま後退しました。そして、ふいに気配が消えました。あれは何だったのだろう?
蓋を開けりば、幽霊の正体は枯れすすき…なのかもしれません。
でも、山に対する畏敬は、こういうことで狽墲黷スと思います。
狩猟解禁日後しばらくは、私たちも藪山には入りませんでした。人か獣かの判断は、極めて難しいのは狩猟未経験の私ら山やでも分かりますから。所詮、山は獣たちの世界で、私ら人間は侵入者なのだと痛感してました。自然の強大さを知って、初めて自然への謙虚さを知ると思います。昨今流行の自然愛好志向は、この自然への畏敬を忘れている感がしてならないです。
マタギの古老から滅びゆく山の怪異談を集めた本て
そこそこ重版さらて売れてるようです。
悪くはないんですが、ヌマンタさんの山の怪異の話の方が面白いんだよなぁ実感です。
追記ですが某所でヌマンタさん由来と思われる小さな社を見ました。おお、これがヌマンタ明神か!
勘違いかも知れませんが、読者としてはワクワクしてしまいました(笑)
まあ怪異譚なんて、案外と勘違いが始まりかもしれませんけどね。
私としては現場を押さえた以上、愛読者として、
「この地にはヌマンタ様と言う神様がおってな…」
というフォークロアを拡げたいと画策しておる所なのですがダメですか?
そもそも社が建立されたのはヌマンタさんのお陰(イタズラ)なのですから、やはりヌマンタの名称は読者としては残したいものですが。