入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

      Ume氏の入笠 「秋」 (7)

2014年10月06日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

 テイ沢、下から数え5番目の丸太橋を過ぎたところ                Photo by Ume氏

 風が落ち、雨脚が弱まると、辺りはまた深い霧に包まれてしまった。牛の様子を見に第1牧区へ登っていくと、牛は塩場近くにかなり広範囲に散開しながら、草を食べているところだった。塩を貰えるかと霧の中から57番が近付いてきた。グッショリと濡れた背中には、落葉松の葉がいっぱいに付いている。他の牛にも同じように、落葉松の針のような枯れ葉が付着しているところをみると、どうやら昨夜は落葉松の林の中に難を逃れていたようだ。
 給塩しようかどうか迷ったが、そのうちにぞろぞろと牛の方からやってきたので、笛を吹き、雨に濡れた塩鉢に少し多目に塩を入れてやった。もしかすると、ここでの給塩は最後になるかもしれなかった。牧区を移動させる前は、4,5日給塩を控えることにしている。そうしておけば塩を欲しがる牛を、人の手を借りずに塩を”エサ”にして誘導できるからで、それがうまくいけば、下にある馴化を兼ねた大型囲い罠の中まで連れていって、牧場暮らしの最後の1週間を過ごさせることができる。
 いつの間にかそんな日が近付いてきたというのに、下からは相変わらず何も言ってこない。先日珍しく畜産課長から電話があったが、出てみたら使用している軽トラックの1か月の走行距離の問い合わせだった。今年は例年より10日以上も放牧の期間を延長することになっているが、そのことも、牛のことも、草の状態についても、何も尋ねてはこなかった。
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 こんな台風の日に、鹿でも掛かっていたら厄介なことだと思いつつも、牧場内の3か所ばかりに10台かけてあるくくり罠を見回った。すると、2台がはじかれている。罠は作動したが、獲物は獲れなかったというわけだ。
 鹿はだんだん巧妙になってくるばかりで、大型の囲い罠でも久しく捕獲できていない。囲い罠のゲートの近くにも誘引のために塩を置くが、それすら口を付けた形跡がない。まして、断頭台形式の上から落ちてくるゲートをくぐって、さらに仕掛けのある中に入ろうとするには、いくらその先に好物の塩があると分かっていても、鹿にとっては大変な勇気が要る。
 この罠で捕獲した鹿の頭数は300を超える。捕獲のたびに銃で撃ち殺す。鹿もここを鬼門と知って、当然だろう。と言って、改めて食べつくされた牧草や、傷んだ牧柵を見てみれば、鹿による被害は甚大で、放置しておくわけにはいかない。知恵比べのようなことが続く。

 こんな天気だったから、高遠興産や森林組合の伐採作業員は登ってこなかった。マナスル山荘もやっていないようだったし、富士見の交通規制も金曜日までは中断するようで、山は人の気配のしない一日だった。

 山小屋「農協ハウス」とキャンプ場の営業に関しましては9月5、6日のブログをご覧ください。
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