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昨日、予定通り牛を下におろした。下牧のための手続きや検査には、頭数が頭数だけにそれほどの時間を要したわけではないが、思いがけずいろいろな人が来てくれて、その対応に忙しい思いをした。牧場の窮乏をどこかで聞きつけ駆けつけてくれた人もいれば、H子さんのように偶々登ってきたら下牧の作業にぶつかったという人もいた。就中、長年会うことかなわなかった友人が、婦人を伴い来てくれたのは嬉しかった。
そんなわけで、4か月と幾日かを一緒に過ごした牛たちとの別れは、あれで十分にできたかは分からない。チビもクロも、57番や60番も、いやいや全頭ができればここで自由に草を食み、横になり、一生を終えたいという声を聞いたつ・も・り・の者として、意を尽くし、懇切に家畜の本分と宿命を説いてやれたかは自信がない。鼻かんを打たれ、ロープに繋がれ、不安気な顔をして、雨にも風にも負けなかった牛たちは、トラックに乗せられておりていった。
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牛のいない第1牧区へいってみると、ゲートの真向いに御嶽山の噴煙らしきが雲間から上り、その右手、大きな空の終わる辺りに灰色の穂高や槍が見えた。さらに遠くの白馬の山並みはいつ冠雪したのか、雪が融けないままだ。紅葉が深い、青い空と拮抗するようにして、眼下の山肌を染め上げ迫ってきていた。少々の寂寥感もあるが、いまほど穏やかな時期はない、そう思って、もう一度重畳たる山並みと秋の空を眺めてみた。
だれでもここへ来れば分かる、本当の入笠の四季が。ゴンドラに乗り、わずかの距離を歩き、山頂を踏むだけでは入笠は分からない。今夜は東京野歩路会が来ている。たき火を囲んで、賑やかな話声がここまで聞こえてくるが、やがてもう少しすれば頭上に満天の星を迎え、彼らはそれぞれの思いや期待を胸に、銀河鉄道の乗客となって、「無窮の遠(おち)」へと旅立つことだろう。
山小屋「農協ハウス」とキャンプ場の営業に関しましては9月5,6日のブログをご覧ください。海山さんとそのお友達、またお出でください。Kママさん、「Ume氏の入笠」まだ続きます。ご期待ください。本当はきょうは、昨日の下牧の写真を載せるつもりでしたが中止して、PHはUme氏にお任せしました。