雪が降るにはまだ1カ月ほど早いが、昨日までのあの穏やかで、暖かな秋の日差しはもうない。まるで牛の下牧に合わせたかのように季節は一夜にして進み、今日は朝から風が雨戸を打ち鳴らし、灰色の空からは乳白色の霧がすぐそこまで降りてきている。華やかだった紅葉の森は舞台が一転したかのように渋い、暗鬱な色調に変わってしまった。
昨夜はマウンテンバイカーの行方不明者が出たということで、警察に協力して小黒川林道を東谷の先まで下り、引き返してからは釜無山の登山口まで行ってみた。茅野と伊那の両警察が夜遅くまで捜索したが、消息をつかむことはできなかった。今日もう一度見パノラマから2名が、小黒川を自転車で下ってみると言って管理棟を訪ねてきたところで、行方不明者が自力でゴンドラの始発駅に帰ってきたと、下から連絡が入った。何があったかは分からないが、不安な山中で一夜を明かしたことは間違いないだろう。
初夏に、普段は通行止めの釜無林道を周回して小黒川林道へ出て、そこから入笠山麓を通り、富士見に下るという自転車の催しが開かれた。どうもこの行方不明者はそのコースを、逆行しようとしたのではないだろうか。
いつのころからかここら辺りも、林道がそこら中に張り巡らされるようになり、不心得者がオートバイや自転車で侵入するようになった。管理する側は、侵入を許さないのなら、もっとそれなりの方策を練るべきではないだろうか。
驚いたことに、昼飯をマナスル山荘の本館で食べていたら、昨夜の行方不明者が登場。香港在住の英国人という話だったが、彼は悪びれたふうも見せず、何でそんなに大騒ぎをするのか分からないといった態度を見せたのには呆れた。恐らく下で相当絞られただろうが、「昨夜は11時までお前を探したんだぞ」ということは言っておいた。
その後ヒルデエラ(大阿原)へ足を伸ばす都合があって行ってみると、道路沿いの落葉松の、黄金色に色付いたその息を呑まんばかりの光景に驚き、思わず独り言(ご)ちた、「まだ、秋は逃げていない」。巣鴨氏は、鹿嶺高原を目指し「行けるところまで行く」ということで朝方出発したが、さてさて今はどこにいるのやら。
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