
Photo by Ume氏
いい朝が来た。鳥の声もする。「ツーピー、ツーピー」と、シジュウカラの声にしては、2音の間隔が長い。「ツピー、ツピー」とヒガラらしきの声もする。まだまだ美しい声で歌う声の主を知らずに、それでも爽やかな高原の朝のひとときを、耳を澄ませて聞いている。周辺(あ)たり全体は清々しい透明感のある光と、平和な気が満ちている。

大型連休も明日で終わる。例年のようにここは静かなもので、昨日は4組6人が、小屋とキャンプ場を利用してくれた。夜はマイナス2度Cまで下がったらしく、キャンプに来ていた父親と高1の娘さん親子は、たまらず車に逃げ込んだと聞いた。気難しい天気と付き合うのも一苦労だが、明日あたりからは良くなるようだ。
連休が終われば、牧場の仕事も本格化し忙しくなる。このごろでは、あまり効果のほどは分からないが、第1牧区にある鹿対策用の電気牧柵をまず立ち上げるつもりでいる。歩いて行くしかない場所の見回りや点検も必要になる。ミズナラの芽吹きも始まったし、晩生(おくて)の山桜を眺めたり、最近少し聞き分けることができるようになった鳥の声や、渓を流れる軽快な水の音を聞きながら一人で、気のすむように働く。それが、この仕事の最も良いところで、背広を着て、満員電車に乗った都会の時代を懐かしむことはない。
明日は地類が集まり、年に一度のささやかな祭りが行われる。小さな祠のある畑の一画には、以前は大きなサワラの木があって、それが春日八郎の「別れの一本杉」の歌に歌われたあの「一本杉」だと聞いている。今はその大木もない。諏訪大社系なので、鹿も関係する。鹿の首を持っていったこともあるが、あまり喜ばれず、今は角だけにしている。一昨日処分した鹿の肉を持っていこうかと思っているが、あの口うるさい老婦人たちは、何と言うだろう。クク。
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