一度勢いの付いたヤマナシの花は、二日ばかりの異常気象にもやはり開花を躊躇わなかった。今にこのヤマナシの木は純白の花で覆われ、それが先駆けとなって、やがてコナシ(ズミ)が牧場の主役となる。放牧地は緑の牧草と、雪を被ったと見紛うような幾つものコナシの白い帯が共演するようになる。
きょうも早出した。牧場を見回って、第1牧区の電牧の電圧8千300ボルトを確認してすぐ、テイ沢へ行った。土曜日であり、沢を訪れる人もいるだろうと仮補修の丸太橋を、それでも自分が納得できるようにだけはしておきたかった。行ってみると、流れの状況はさらに悪化していて、しばし途方に暮れた。思案の末、下から4番目の「夫婦ガ渕」の橋の架け替えに使おうと現地に用意しておいた丸太を、結局使うしかなかった。
昨夜、帰り道でも、中途半端にしてきた丸太橋のことをずっと考えながら下った。架け替えを決断した以上、その保守も引き受けざるを得ないことは分かっていた。しかしこれは、本来それをすべき主体があった。それをせず、支援も拒否し、落葉松の木に登山の注意書を1枚貼って、後は知らぬ存ぜぬを通した。今さらしゃしゃり出てきてつべこべと言われたりすれば腹が立つだけだから、放っておいてもらって結構である。ただ、あれこれと釈然としない思いが、間欠泉のように噴き出ることがある。
いろいろと試行錯誤を重ねた末、もう4本の丸太を使い、4メートルほどの新たな橋を作り流れを跨がせた。念を入れて、流失防止の綱も張った。作業中に通り過ぎていった初老の登山者に感謝され、それが単純に嬉しかった。きょうもまた、若い英国人男女と、彼らを案内してきた富士見出身の女性に割り込み、立て付けの悪い襖のような英語で交流した。
本日から「初夏」にしました。
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