朝の5時台はまだ霧が深かったが、6時近くになると、入笠山の背後から光彩を放ち始めた朝日によって、次第に白い覆いはその濃密さを維持することができなくなった。午前6時、気温零度。陽の当たらない草地は夜間に降りた霜で白い。上空に残っていた薄い雲の塊を、鋭い朝日が一瞬の間にかき消した。と思ったら、またすぐに周囲は深い霧に閉ざされていった。霧と太陽の攻防が一進一退を繰り返しているのを眺めていると突然、圧倒的な太陽の光があたりを一掃した。何もない真っ青な空が広がった。
キャンパーの声がする。朝食の支度でも始めたのだろう、笑い声が聞こえてくる。昨日は2組で合計8名、いずれも遅い到着だった。後から来た男女2名が、露天風呂のあることを知ると、是非入りたいと言い出した。偶々下界での約束中止の報が入ったので、それでこの人たちの要望に応え、1時間ばかりをかけて風呂を沸かすことにした。対して先着の青柳から歩いてきた女性5名、男性1名は露天風呂のことを話してもまったく関心はなさそうだった。しかし、後になって、この6名も結局は露天風呂の実力を知ることになる。
風呂が沸く間に、牧場を案内することにした。最初は二人の男女を、そしてその後6名を。全員が思いもしなかった雄大な眺めに驚き、感動した。とりわけ後続の6名は、ちょうど乗鞍に日が沈んだばかりだった。夕暮れのその大展望に、森に潜んでいたクマが恐れをなすような声で、皆が絶叫した。
ところが昨夜はそれだけでだけは終わらず、壮大な星空、賑やかな宴会、そして露天風呂に興味を示した人もそうでなかった人も一人残らず、その快感と温もりが身に沁みて安らかな眠りにつけたと、知り合いのフクロウの声はそう聞えた。
牛の入牧は6月13日と決まった。テイ沢の下から7番目(上から3番目)の丸太橋が先日の大雨で流失したのを、きょう確認した。
FAXでも予約や問い合わせに対応できるようになりました。ご利用ください。 入笠牧場の営業案内は「入笠牧場の山小屋&キャンプ場(1)」
「同(2)」をご覧ください。