入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’21年「秋」(24)

2021年10月01日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

                                     
 曇り空ながら風はなく、台風16号の影響はここでは大したことはない。来る途中の山道には時折霧が流れ、池の平や焼合わせ付近では期待通り、色付いたツタウルシの葉で落葉松の林は燃えていた。きょうのように雲が低いと、一部は千切れて霧となって木々の梢に絡み、さらには山の中に流れ込み、ただでさえ静まり返った林や森の静寂を一段と深める。
 この季節ならではの湿った森の匂いと、色彩、そして沈黙とが、絶妙な均衡でまるで熟成したかのように、他の季節にはない独特の山気・趣を生みだしてくれる。
 
 運搬の都合でパドックに残しておいた牛も昨日で全頭が去り、その牛の真似をしたわけではないが、東部支所にも用事があって里へ下り、そのあと家にも帰った。途中、一面黄金色(こがねいろ)に埋まった広大な稲田の色に、例年のことながら今年も改めて目を奪われ、里の秋、村祭り、コブナ、クリ、オコワ、甘酒と奇妙な連想が続いた。
 都会を引き上げて帰郷したその秋、仙丈岳が望める新田に上がってみたら、稲田の印象があまりに違って、見事で美しく見えて驚いた。その今浦島のような身に仙丈岳と一緒になって実りを迎えた稲田は、もうどこへも行くんじゃないぞと言ってくれたような気がしたことを覚えている。
 家について、郵便箱には見慣れた文字の封書が待っていてくれた。そして嫌でも目に入る柿の木は、意外にもまずまずの実を付けていて、これにも喜んだ。昨年は落ちるに任せてしまったが、青柿を渋にした種平小屋夫妻に伝えれば、今度は干し柿にしたいと言うかも知れない。

 霧がさらに深まってきた。時々風の音もする。今まで見えていた囲いの中の放牧地も、背後の林も見えなくなった。こうなると季節感もなくなり、唯一目の前に見えてる1本の黄ばみかけたコナシの葉が、それでもその役を果たしているようだ。今にこの黄色は大沢山などのコナシなら、遠目には葡萄酒色の帯に見えるようになる。
 それにしても、うーん、今の雰囲気も悪くない。
 かんとさん、ご指摘痛み入りました。本日はこの辺で。
              

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする