
文句なしの好天、きょうなら上に行くにはお誂え向きの天候だと思ったが、それがそうもいかなかった。昨日までかかった庭木仕事の片付けを手伝い、思いがけず1万2000歩以上も歩いてしまい、普段ならそのくらい何でもないはずが腿の辺りに疲労が残り、足が無理するのは止めてくれと言う。
やむなく、車で行ける所まで行くことにした。上に行って気が変わる可能性を怖れて、敢えてスノーシューズや山スキーは持たずに出掛けた。
高遠はすでに桜の花がちらほらと咲き始めていた。この陽気で開花は早まるだろうが、それよりかも仙丈岳や背後の中央アルプスの銀嶺が、これ以上ないというほどの輝かしい姿を青空に見せていた。高遠の桜が世間に知られているのはもとより承知だが、この演出に一役も二役も、いやもしかすれば主役を押しのけかねないような光る山々の絶景が、きょうは一段と目を惹いた。
いつもの小豆坂トンネルを通るのを止めて、非持の集落を経由してから荊口、芝平と二つの集落を抜け、その先にあるオオダオ(芝平峠)へ向かった。荊口では、これからブロッコリーの栽培を始めるという「おきらく農園」のS氏と会い、少し言葉を交わした。長い冬を越して、新しい季節を迎えて元気そうだった。
1ヶ月ぶりの芝平の集落はきょうも閑散としていて、まだ色彩の乏しい風景の中に眠っていた。そんな中、山室川だけが雪解けの水を集め、澄んだ清流の水音を響かせ迎えてくれた。
枯木橋を過ぎても、この時季ならあってもおかしくない雪はなく、ここにも冬の眠りから目覚めたばかりの春の新鮮な光が狭い渓の中に降り注ぎ、未舗装の凍結していた路面を融かし、弛んだ山道は時々走行を不安定にさせた。
峠の手前でようやく雪に出くわした。かなり湿気を帯びた重い雪で、エンジンの回転を目いっぱいに上げて、かろうじて通過した。

予想外の雪の量の少なさに、内心、上手くいけば焼き合わせくらいまでは行けるかも知れないと思ったが、やはりそれは甘かった。峠の通行止めの標識の先の雪の量から判断して、無理をしたところで先が知れていた。足掻くのは止めて、引き返すことにした。(4月5日記)
午前5時半、またヤマバトの声が聞こえ始めた。きょうもまずまずの天気のようだ。
本日はこの辺で。