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久しぶりの天気に誘われ、今を盛りと咲く花を見ようと近くの高台に出掛けてみると、高曇りの空にひときわ目を惹く仙丈ケ岳はまだかなりの雪を残していて、それを絶好の背景に、遠くから眺める高遠城址や、笠原の堤の遠景が絢爛たる花にうずもれ霞んでいた。春めいてきた野山にもぽつんぽつんと桜やコブシの花が目に付き、こんな天気ではじっとしていれない野良人の姿が、早くも田畑のあちこちに見えていた。
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ヒトリシズカもイカリソウも、発芽するとその成長は実に早い。時間をかけて眺めていれば、少しづつ茎の伸びていくのが見えはしないかと思うほどだが、さすがにそれはないだろう。
たった二日経過しただけだがアルコールが身体に沁みてきたのか、今朝は五時には目が覚めてしまい、いくら努力してももう再び眠りに帰ることはできなかった。いままでは朝起きると決まってカレンダーを見て、残された断酒の日を確認してみては鈍重な時の経過に苛立っていたものだが、もうそういうこともしなくてよくなった。朝から飲もうと、昼から飲もうと勝手気まま、平気の平左だが、まあそこまでしない。”練習”の成果なのか、はたまたいつでも飲めるという余裕なのか、断酒していたときほど切実に酒を求めなくてもいられるようで、いまはこうしていてもアルコールよりチョコレートに手が出そうなのをこらえている。
ここが難しいところだが、なぜこらえているかと言えば、あんな甘い物を口にしたら最後、今夜の儀式が台無しになってしまうわけで、いくらアルコールに余裕ができたとは言ってもやはり、一日を閉じる感謝の儀式はおろそかにはできない。