入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’22年「秋」(14)

2022年08月19日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など
 今朝6時半、日が山の端上に昇る直前の気温10度、霜がしっかりと降りた。きょうこそは秋らしい好天が期待できそうだ。



 また鹿の話になってしまうが、第4牧区へ侵入するその頭数は減ったと思っていた。そしたらとんでもない、いたいた。100頭ほどの群れが、車の音に驚いて次から次と列を作って逃げていった。小入笠の少し手前の防火帯でのことで、昨日は電牧の状態を調べに、途中まで無理してそこを軽トラで上がった。
 幸い、電牧は正常、しかも電圧は7千ボルトを維持していた。あそこが最終点で、それだけの電圧が確認できたことは初めてのこと、ささやかな満足感もあった。
 逃げ損なってだろう、1頭の鹿が突然すぐ下の草地に現れた。しばらくこっちの様子を伺い、おもむろに電牧に近付いたと思ったら、鼻がアルミ線に触れた。途端、鋭い鳴き声を上げ、はじかれたように逃げ去るのを、してやったりという思いで眺めた。

 予測した通りの天気になったので、囲いの牛たちをかなりの数第4牧区へ誘導して帰ってきた。そしたら、小黒川林道のゲートを乗り越え一人の女性の登山者がこっちへ向かって来るところだった。いやな記憶もあり、もう知らない人、特に女の人に声を掛けるのは止めていたが、テイ沢の水量が気になってつい尋ねてみた。すると、特に何の問題もないという返事だった。しかし、高座岩へ登る北原新道のクマササには驚いたと言った。
 そのことは以前から気付いてはいたが、なかなか都合をつけることができないでいた。3時過ぎ、諸々のことが一段落した今が好機だと、草刈り機を持って行ってみた。
 イヤー、参りました。北原のお師匠には申し訳ないが、いつ歩いてもあの山道には恐れ入るばかりで、よくもまあこんなことをしてくれたものだと呆れるだか、感心するだか。しかもあのクマササの繁茂、のさばりには言葉もない。まだ半分終わっただけで、草刈り機の歯を新品に換えなければ先に進めない。今年は牛の下牧が早まったから、その後に何とかもう少し歩きやすくしたいと思っているが、ウーンどうなるか。

 防火帯とは「林野火災の延焼を防ぐために樹木を伐採した帯状の土地」と広辞苑。植林しない、という例もある。それも昨日行けば、両側からコナシや落葉松の枝が徒長していて、あれではいざという時にその役目が果たせるのかと心配になるほどだ。
 山は絶えず変貌を重ねている。どこへ行ってもいろいろと気になること、思うことが多い。加えて、一人の人間が徒手さながらにできることも。

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     ’22年「秋」(13)

2022年08月18日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 昨日、予定した第4牧区の電気牧柵の立ち上げを終えて下に来た。すると、囲いから第4牧区へ通ずるゲートの前に、1頭の和牛がまるでここから出してくれ、と言わんばかりに恨めしそうな姿で立っていた。電気牧柵は一応済んだが、まだ通常牧柵の点検は完全には終わってなかったから、牛を同牧区へ移動するのはそれが終わってからにするつもりでいた。
 ところがその牛の訴えるような仕草に負けて扉を開けてやろうとしたら、他の牛たちも気付いて走ってきた。どれも和牛で、この牛たちの調教はできているし、電気牧柵に触れたらどうなるかも分かっている。たとえ新しい放牧地へ移ってもあの広さなら、早々に脱柵をするとは思えず、牛たちの好きなようにさせることにした。
 
 今朝、真っ先に囲いの中の牛の様子を見にいけば、まだホルスと2,3頭の和牛がそこに残留し、激しい風雨に耐えていた。第4へ出れば、雨や風を凌げる林や場所もあるし、何より充分な草がある。この雨は昼近くにはいったん上がると見ているから、そうしたら残った牛の誘導をすることに決めた。
 それにしても、遠くから見れば雨は次から次と放牧地を襲う多量の枚数の粗いレースのように見え、それらが風に乗り夥しい量の雨を地上にもたらす。雨が降る、などという生易しい言葉とは明らかに違う。
 一昨日立ち上げた電牧は、早くも翌日には1箇所アルミ線が切られ、碍子もなくなっていた。鹿の仕業である。きょうも通常の牧柵に加え、電牧や、電圧は点検確認するが、悪天、鹿の害、狂乱の季節はまだまだ終わりそうもない。

 いつの間にかこの独り言は、天気と言うよりか予報に対する不満、それと鹿への恨みつらみが続き、いまだ終わらない。この独り言を聞いてくれてる人の大半は、鹿の害などとは全く縁なく暮らしている人ばかりっで、そういう人たちにダラダラとこんなことを牛のナントカのように呟くのもどうかと思う。また、この呟きを聞いても、キャンプや周囲の状況などあまり伝わってこないかも知れない。それでも、あまり反省もなく10年以上も続けてきた。
 ともかく今後も、風が吹いた、小鳥の声がする、紅葉が始まった、夜空の星々が美しい、などなどと独り言ちつつ、ますます呟きの本人は浮世から遠ざかっていくだろうし、それが本望である。

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     ’22年「秋」(12)

2022年08月17日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など
 

 まだ雨の音はしていないが、カーテンを開けるまでのことはないだろう。午前5時、あと1時間もすれば間違いなく雨になる。ひねくれてしまった子供のような天気がしつこいほど続き、ついには「秋雨前線」などという言葉まで耳にするようになった。

 どんな天気でも、きょうは昨日に続き第4牧区にある電気牧柵の立ち上げを行う。さもなければ、そろそろ囲いの中にいる牛たちが腹が減ったと言って騒ぎ出すだろう。
 14日に里へ下り、電気牧柵の点検修理には必須の電圧計用の新しい電池を入手できた。それでようやく、電圧の上がらない不良個所を見付けることができたわけだが、それに関連付随した整備も合わせるとなると、さて幾日を要したことになるのか。
 前々から、電気牧柵の維持管理の難しさを呟いてきた。安易に、としか思えないが、この牧場は電気牧柵に頼り過ぎたと思う。その上、それまでの管理の仕方もお粗末の限りで、引き継いだ当初は電圧計などもちろんなかったし、それが必要だということさえも思い付かなかった。
 そもそも基本的な知識に欠け、やっていたことは前任者ともども素人の域を出ていなかった。だから、一体どれほどの電圧の電気が流れているのかも分からないまま、断線などの目に付く不良個所を探して修理するしかなく、もちろん高圧用のゴム手袋やペンチなどなく、感電を怖れて自分で用意した。
 電気は目に見えないし、設備は年々劣化していく。そんな状態の中で、7千、8千の高電圧を流そうとするわけだから簡単なことではない。作業中に誤って触れたりすると、電流は抑えられているから感電死するようなことはないにしても、それでもその衝撃は相当のものになる。

 きょうは小入笠の頭までを往復する。作業は楽ではないが様々な記憶の残る場所であるから、急な斜面を登りつつ1本いっぽん支柱を打ち込み、アルミ線を張りながら、それらを思い出すつもりだ。
 あそこの縦線は、小入笠の頭から仏平までの長い距離のクマササの中に放置されていた支柱とアルミ線を撤去し、それらを新たな場所に張り直したものだ。あんなことはもう一度やれと言われてもできないだろうが、懐かしさは今もある。
 小入笠の頭に至る放牧地から眺める景色がまたいい。高度を上げるにつれて視界が拡がり、遠くに諏訪湖の見える辺りが特に気に入っている。山桜の老木やダケカンバの巨木もあるし、コナシの花の咲くころが光りの明度も上がり、毎年楽しみにしている時季である。
 
 不満はある。牧場に関して、あるいは電気牧柵やその他のことでも。しかしそれらをを差し引いても、まだここには充分過ぎるほどのものが残り、あったと思っている。有形無形のそれらに対する感謝の気持ちが、この身体を小入笠の頭まで運んでくれるだろう。

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     ’22年「秋」(11)

2022年08月16日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 今年の盂蘭盆会も昨日で終わった。これから牧は秋の気配が一段と深まっていく。牛たちが草を食む光景を日常的に見てきたが中間検査も済み、そんな様子がいずれはここの風景から消える。主のいない牧場の様子が大きく変わり、そうやって知る時の経過にも、同じように寂しさを感じるだろう。
 それにしても夏らしい日がなかったと言いてもいいくらいで、当たらない気象予報は防災予報になってしまった。

 午前6時、牛を移動させた後の第1牧区の状況を見に行くと、案の定鹿の大群が御所平を占拠していた。数えてざっと100頭、やがてこちらの車が接近するのに気付き、一斉に牧柵を飛び越えていく。あれだけの頭数であれば、中には有刺鉄線に足を引っかけたり、上手く飛び越えられないのもいるだろう。牧柵の被害が絶えないのも当然かも知れない。
 それだけでなく、秋にはあの頭数が交尾の季節を迎える。と思ったら、その結果を想像するだに空恐ろしい気がし、雄鹿の放埓この上のない精力を恨めしく思う。中には、その生涯に何百人という子を産ませたザクセンのアウグスト強権王のようようなのもいたりして、などと考えると余計に腹が立つ、赦せない。
 今年は電気牧柵も一部にしか通電していないし、久しく罠を仕掛けたこともない。奴らにとっては怖れる物がなくなり、充分な栄養をつけて冬を、さらには雌鹿は来たるべき出産を待つだろう。

 今年の盆休みは、他所のキャンプ場はかなり賑わったと聞くが、ここはそうでもなかった。covid-19のことも考えて10組を定員としたから、そのせいもあっただろう。
 それと、単独のキャンパーが目立った。「ソロクライミング」という言葉は以前から耳にしてきたが、今では「ソロキャンプ」などという言葉もあるらしい。
 できるだけ余裕を持てるようにテント場を決めてるが、それでも他人のテントが目に入らないわけではない。「歯に沁みるような」孤独感は味わえなくとも、一応安全が担保された場所での、ほどほどの静けさ、単独感が今は好まれる理由なのかも知れない。
 キャンプのやり方も変わる。便利な用具もますます増えた。テーブル、椅子は当たり前で、草の上に腰をおろす人など見たこともない。狭いテントの中で、はたまた草の上でワイワイガヤガヤやっていた時代を語る者は、きっと昭和の人だろう。

 今、単独で来ていた人が笑顔で挨拶をして帰っていった。初めて訪れた人だったが、また来ると言い残して。

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     ’22年「秋」(10)

2022年08月12日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 盆休みの期間、しばらく独り言を休みます。
 
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