市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

タゴ51億円事件発覚から15年・・・最初の記者会見での市長の説明内容と報道記事

2010-06-06 23:49:00 | 安中市土地開発公社事件クロニクル

■タゴ51億円事件は平成7年5月17日から18日にかけて、安中市役所内で密かに発覚しましたが、安中市幹部ら、事件関係者による用意周到なシナリオに基づき、逸早くタゴを5月31日に懲戒免職させた後、市の一般職員にさえ6月1日になって、ようやくタゴ事件について説明したほどです。

 そして、6月2日に小川勝寿市長が安中警察署長に事件の告発の相談に行き、同日午後、シナリオどおりにタゴが穂積始弁護士に連れられて安中警察署に出頭。週末の6月3日(土)に、初めて新聞報道が行われ、6月5日(月)に初めて小川市長が記者会見を開いたのでした。

 その記者会見の模様を報じたのが平成7年6月6日付けの朝刊各紙です。

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5年前に偽口座開設 安中市職員の公文書偽造
公印盗用、借り入れ 安中市長「市側にも管理責任」
 安中市で先月三十一日、元同市都市計画課の土地開発公社担当職員が公文書を偽造したとして懲戒免職処分された事件で、安中署は五日も同職員や同公社、市、関係金融機関から任意で事情を聴いた。一方、同公社理事長の小川勝寿同市長は同日、市役所で記者会見した。小川市長は、同職員が別口座を開設した時期、偽造の手口などについて説明。金融機関からの借り入れに際しては、公印も盗用されていたことなどを明らかにした。同職員が借り入れた額は三十数億円に上るとみられているが、これについては否定も肯定もしなかった。しかし、複数の議員によると、同日午後八時過ぎから聞かれた緊急の市議会全員協議会で、三十数億円との報道について「極めて近い額である」とした。
 関係各部課長と会見に臨んだ小川市長は「五月十八日に(同公社の職員が)たまたま借入残高証明を取ったところ、正規の帳簿にない借入金が見つかった。独自の調査をしたうえで本人に確認したところ三十一日に不正借り入れを認めたため、即日懲戒免職処分した」と話した。また、「市側にも管理責任は当然ある。この事後処理をきちんと行うことで、今後の職務責任を果たしたい」と述べた。
 市長らの説明によると、同職員は平成二年四月十六日、市内の金融機関で、実際には存在しない「安中市土地開発公社特別会計」名義の口座を開設。理事長印など公印を盗用して金銭借入申込書、金銭貸借契約書など必要書類を偽造、正規の借り入れ額に上乗せし、不正借り入れ分を別口座に入金させていた。引き出しに際しては、再び公印を用いて預金払戻請求書を偽造、金を引き出していた。市の調査に対し同職員は「私が自らの金銭消費のために勝手に行いました」と話し、偽造の事実を認めたという。また市側は、不正借り入れ金に関して「公社の金ではない」との見解を示した。
 三十数億円に上る不正借り入れ金については、関係者の間で「東京方面で高価な骨董(こっとう)品を購入していた」「株、不動産購入にあてた」とのうわさが飛ぶ一方で、「額からして、何らかの背景があっても不思議ではない」とする意見もある。市民の間からは「管理責任を追及すべき」との非難が相次いで市役所などに寄せられており、公社の金銭管理のあり方と不正借入金の使途解明が今後の焦点となりそうだ。
「全容解明に全力」県地方課
 土地開発公社は「公有地の拡大の推進に関する法律」(公拡法)の規定で県知事の認可によって設立されるため、県地方課は「(今回の不祥事は)傍観できない」として、安中市と緊密に連結を取り合い全容解明に全力をあげている。
 公拡法の条項で「県は必要な場合、土地開発公社の立ち入り検査を行える」とあるが、同課は「どの程度の被害なのか、どこに原因があるのかを市とともに調査している段階。全体を把握してから対応を検討する」と慎重な姿勢をみせている。

<上毛新聞1995年(平成7年)6月6日(火曜日)>

「管理責任は免れない」安中市元主査の公文書偽造で市長 詳細回答は拒否
 安中市元都市計画部主査(四三)が、担当する市土地開発公社の公文書を偽造したとして懲戒免職された問題で、開発公社の理事長でもある小川勝寿市長は五日記者会見し、「再発防止に向け市民の信用を取り戻したい」と陳謝した。しかし、事件の詳細や関係者の処分は「警察が調査中」とコメントを拒否。またチェック体制のずさんさも明らかになるなど、事件に対する市の姿勢に問題を投げかける会見となった。
 小川市長によると、五月十八日に別の都市計画課職員が金融機関から貸出残高証明を受け取った際、公社名義の口座にある預金残高と照合しないことで元主査の不正が発覚。元主査は、借入申込書などへの金銭の記入が手書きであることを悪用して数字を不正に書き加え、上乗せ分は平成二年四月に勝手に金融機関に開設した公社特別会計口座に入れていた、という。
 市では五月二十九日に主な事実を確認し、本人が不正を認めた三十一日、懲戒免職処分にした。
 また、業務で金融機関に行く場合は必ず二人で行くことが決まりとされているが、元主査は、部下に途中で用を言い付けて別々となり、単独で金融機関に行っていた点や、日ごろから金融機関からの貸出残高証明の交付を受けていなかった点が判明するなど、金銭の扱いに関する市側の管理体制のズサンさも明らかになった。
 小川市長は「わたしの管理責任は免れない。この事件をどう処理するかが与えられた責務」と答えたが、不正借入額や不正回数、関係者の処分について「詳細は警察に捜査を依頼しているので、その結果が出るまで」と回答を拒否した。

上<産経新聞1995年(平成7年)6月6日(火曜日)>
下<毎日新聞1995年(平成7年)6月6日(火曜日)>

再発防止で安中市長が会見 公社不正 水増し30数億円?
 安中市土地開発公社(理事長、小川勝寿市長)の元主査(四三)=すでに懲戒免職処分=が、金融機関から事業費用を水増しして借り受けていた問題で、小川市長は五日、記者会見し、状況説明を行うともに再発防止を図ることを明らかにした。安中署は同元主査から任意で事情を聴いているが、水増しの総額は三十数億円に上るものとみられている。
 小川市長の説明によると、元主査は在職中の一九九〇年四月、「安中市土地開発公社特別会計」との名目で実在しない特別口座を開設。銀行から事業資金を借り入れる際、金銭借り入れ申込書の金額欄の数字を改ざん、上乗せ分を特別会計の口座に振り込ませていた。さらに、公社の理事長印を盗用して預金払戻し請求書を偽造し金銭を引き出していた。元主査は、同様の手口で不正借り入れを数回繰り返していた。払戻金の使途について、元主査は「自らの金銭消費に使用した」と話しているという。
 同公社では、金融機関から事業資金を借り入れる際には、職員が二人で金融機関に直接出向くようにしているが、同主査は、同行の職員に途中で用事を言い付け、一人で行っていたという。借り入れ金額の確認は、預金通帳の振り込み金を見るだけで、金融機関の残高証明書とつき合わせる方法を取っていなかったため、不正を発見できずにいた。
 小川市長は「今後、公印の管理強化、借り入れ実行時の二重確認などの徹底を図り、再発防止に努めたい」と述べた。
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■この記者会見で小川市長は、不正借入額について「三十数億円くらいか」という記者らの質問に、否定も肯定もしませんでしたが、同日午後8時過ぎの緊急市議会全員協議会で、三十数億円について「極めて近い額である」と認めました。

 このように、議員と市民に対して情報開示を使い分けるなど、小川市長が事件発覚後直ちに東京の虎ノ門から連れてきた田邊、菰田両弁護士の方針に則って、情報管制をしていたことがわかります。

■小川市長は、タゴの不正借入れの発覚後、「独自の調査」をして、「本人に確認したところ5月31日に不正借入を認めたので、即日懲戒免職処分した」と言っていますが、その時の確認書は、既に当会のブログで報告したように、「私が自らの金銭消費のために勝手に行いました」と、実際には小川市長を始め安中市幹部をはじめ、一部の職員にもタゴが横領金で購入した骨董品などの物品の譲渡や、ゴルフ代や飲み屋の勘定の付け回しなど、タゴから便宜を図ってもらったことを棚に上げて、タゴの単独犯行であることを無理やり認めさせて証拠付けようとしたのでした。

 小川市長は、早くも群馬銀行との訴訟を視野に入れて、不正借入金について「公社の金ではない」と強弁していましたが、これも弁護士の指図に則った発言だと思われます。

■また30数億円に上る不正借入金の使途について、上毛新聞の記事は「東京方面で高価な骨董品を購入していた」「株、不動産購入にあてた」との噂や、「額からして、何らかの背景があっても不思議ではない」とする意見も紹介しています。実際には、小川市長自ら日本刀などの骨董品をもらっていたのでした。このほか、タゴから骨董品をもらっていた安中市職員3名が警察の事情聴取を受けています。

■上毛新聞記事では、「全容解明に全力」県地方課という小見出しで、「(事件を)傍観できない」「安中市と緊密に連結を取り合い全容解明に全力をあげている」などという地方課のコメントを載せています。当時、当会も、この記事を鵜呑みにして、公拡法によって群馬県知事が土地開発公社の立入検査を行う権限を持つことをしり、県庁を訪れて、迅速に公社に立入調査をするよう何度も要請しました。

 ところが、結局、記事にあるように、地方課は「どの程度の被害なのか、どこに原因があるのかを市とともに調査している段階。全体を把握してから対応を検討する」として、当会の要請を迷惑そうに聞くだけで、ついに一度も立入検査をせずに現在に至っています。地方課が再発防止としてやったことといえば、公社の業務マニュアルを作成して、県内の公社に配布しただけでした。そのため、その後、当会をはじめとする安中市民は群馬県の「地方課」のことを「痴呆課」と呼んでいました。

■産経新聞と毎日新聞の記事には重大な事実の指摘があります。「業務で金融機関に行く場合は必ず二人で行くことが決まりとされているが、元主査は、部下に途中で用を言い付けて別々となり、単独で金融機関に行っていた」ことと、「日ごろから金融機関からの貸出残高証明の交付を受けていなかった」ことです。

 これは、同僚が上司に報告すれば直ぐに不審だと気づくはずですが、上司の高橋弘安は、タゴを「オレの舎弟」と周囲に公言するくらいタゴと家族ぐるみで緊密だったことと、部下の竹田、竹内の両名も、高橋とタゴの親密な関係を見て何も言わなかったことから、タゴが自由に振舞える環境にあったことが分かります。

 さらには、小川市長がタゴともっとも親しい関係者のひとりであり、好きなゴルフを一緒にしたあと、帰宅途中でタゴと食事をともにしているところを目撃されるなど、タゴも小川市長のことを「オヤジ」と呼んでいたほどでした。

■そうしたタゴを取り巻く関係者の実態について、小川市長は「私の管理責任は免れない。この事件をどう処理するかが与えられた責務」と言いつつ、タゴの不正借入額・回数、関係者の処分について「警察捜査結果が出るまで」と回答を拒否した背景には、頼みの綱の政治的圧力により、警察の捜査をゆがめさせて、タゴの単独犯行で事件の幕引きが確定するのを早くも期待していたことが窺えます。

【ひらく会情報部】

コメント (2)
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