市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

タゴ51億事件発覚から15年・・・タゴ逮捕を報じた新聞各紙

2010-06-08 23:41:00 | 安中市土地開発公社事件クロニクル
■15年前のきのうの6月7日に、県警捜査二課と安中署がタゴを逮捕しました。それを新聞各紙が大々的に報じました。はじめて、新聞に載ったタゴの写真に市民はびっくりしました。どこかで見た顔だったからです。それもそのはず、タゴは公社での15年という長期間、安中市のあらゆる公共事業の土地買収に関与しており、目立たなかったとはいえ、あちこちに顔をだしていたからです。

 それでは、タゴ逮捕を報じた各紙の記事を見ていきましょう。最初は地元の上毛新聞です。続いて、読売新聞、産経新聞、毎日新聞の順に紹介します。なお、文中の赤字は当会のコメントです。

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★安中の公社不正借り入れ 元職員を逮捕★
★公印繰り37億円 「はんこ行政」もろさ露呈★
 安中市土地開発公社(理事長・小川勝寿市長)で元職員が公文書を偽造して金融機関から巨額の不正借り入れをした事件で、県警捜査二課と安中署は七日、詐欺、公文書偽造、同行使の疑いで同公社を担当していた元同市都市計画課職員の安中市安中一丁目、熊取、多胡邦夫容疑者(四三)=五月三十一日に懲戒免職=を逮捕。同市役所や多胡容疑者の自宅など関連三カ所を家宅捜索し、同容疑音の預金通帳、公社予算関係書類など二百八十点を押収した尚容疑者の犯行は二つの公印を巧みに利用して公文書を偽造、公社事業費に不正に億単位の金額を上乗せし、差額分をだまし取るという手口。事件は公印に頼る「はんこ行政」のもろさも露呈した。同署と同課は今後、金の使途について、同容疑者を追及する。(関連記事18面)
 巨額の不正借り入れで多胡容疑者は、土地開発公社の理事長印を悪用して、“公印”を操って三十七億円もの大金を手にしていことが明らかになった。背景には、市長印への高い信頼が横たわっており、それだけに同容疑者に公印を使うチャンスを与えた市の管理体制が改めて問われることになりそうだ。
 今回の事件で悪用された理事長印は同公社の事務局長(同市都市計画課長が併任)が管理。勤務中は局長の机上に置かれ、勤務時間外はロッカー内の金庫に収められている。一方の市長印の管理は秘書課が担当し、市長の決済を受けた書類について市長印を押印する。
 同公社が事業を起こす際、金銭借り入れのための起案書を作成。公社内で決済を受けたあと、金銭借入依頼書に理事長の公印が押印される。依頼書とともに金銭貸借契約証書も作成。両書類は財政課に回り、市の債務保証限度額を越えていないかチェックされたうえ、秘書課で契約証書に市長公印が押される。
 安中署の調べでは、多胡容疑者は正規の借入金額を記載した契約証書で理事長、市長の決済を受けたあと、別の契約証書に上乗せした金額を記載し、理事長印を勝手に押印。他の書類と混ぜて秘書課に提出し、市長印を押印させた疑いがもたれている。
 市側の説明では依頼書と契約書はともに正規の金額で正規のルートを通って作成され、二つの公印とも正しく利用された場合でも、銀行に提出するまでの間に金額を改ざんされたことがあるという。多胡容疑者の犯行手口は複数あると見られるが、いずれも市側の管理体制の不備と、仕事内容を熟知している上での犯行だった。←問題は、群馬銀行の金銭消費貸借契約証書だけが手書きでの記入だったこと。他の金融機関はすべて金額をチェックライターで打ち込んでいたが、群馬銀行の金銭消費貸借契約証書は手書きだったため、タゴは「金 ○○○○○円也」というふうに、「金」のあとに少し空欄を作っていた。それを公社・市側は不思議に思わず、群銀は、狭い空欄に窮屈に書かれた金額の漢数字に不審を抱かなかった。
 いずれにしても、公印が押印されたものは大きな効力を持つ。群馬銀行広報室は「借入依頼書、契約証書に公印が押してあれば信用もあるし、融資もする」と話し、ある弁護士も「銀行は市長の印がある以上融資はするでしょう」と、公印の重さを強調している。
 七日の会見で小川市長は、理事長印を公社の管理から秘書課の管理に移行するなど公印管理の強化を打ち出し、善後策に乗り出したが、今回の事件では「群馬県安中市長之印」と刻まれた角印の“重み”がまざまざと見せつけられた。←理事長印を公社から秘書課に移しても、秘書課の係員がタゴのいうことを聞いて、メクラ判をバンバン押していたのだから、これは対策にならない。なお、この秘書課係長は、当時、市内に身分不相応な豪邸を建てて市民から疑惑の目で見られていたことがある。この係長は事情聴取を受けたが起訴はされなかった
★2億数千万の詐欺容疑★
 多胡容疑者の直接の逮捕容疑は、今年三月、二億数千万円をだまし取った事実。しかし、不正借り入れた額は最終的に三十七億円あまりに上るとみられ、県警捜査二課と安中署は余罪と使途の解明に全力を挙げている。
 調べによると、多胡容疑者は今年三月下旬ごろ、当時勤務していた同市都市計画課で、正規の借り入れ額数百万円を書き入れた資金借入依頼書を作成、さらに、課備え付けの理事長印を盗用して、正規な依頼文書を作成した。その後、金額欄に二億数千万円を上乗せした偽の資金借入依頼書を作成し、再び理事長印を盗用。偽依頼書を金融機関に提出し、不正な融資を申し込んだ。
 同容疑者は現金引き出しに必要な契約証書も偽造。正規な借り入れ金額を書き入れた証書で市長の決済を受けて、犯行の発覚を防いだ上で、課内取り置きの契約証書を使って、金額を上乗せした偽の契約証書を作成。偽証書を他の書類に混ぜて再び市長の決済を受け、金融機関に提出。上乗せ分を架空口座「安中市土地開発公社特別会計口座」に振り込ませ、同月三十一日、二億数千万円を引き出した疑い。←この日の3日前の3月28日に、群銀安中支店の駐車場で、タゴは田口咲子という当時69歳の女性人物に現金1000万円を車の窓越しに渡している。この田口咲子という女性とその配偶者か親族らしい田口保洋という人物に、タゴは、板鼻の古城団地分譲に伴う恐喝出資金として、昭和63年度に150万円を上乗せして支払ったことを契機に、その後、平成元年に1500万円を安中郵便局から振り込み、平成2年9月6日に1645万円を国税納付分として支払い、同10月11日に群銀の田口保洋名義の口座に振り込み、平成3年には公社裏口座である特別会計口座から1千万円、平成4年にも同じく裏口座から5百万円、平成6年5月頃にも同様に1千万円、そして事件発覚直前の平成7年3月28日に現金1千万円を手渡すなど、総額8995万9800円を搾り取られている。タゴを脅して上前を撥ねた猛者がいたわけだが、この田口夫妻?はなぜか起訴された痕跡がない。当会の調査では当時原市に在住していたことがわかっている
 これまでの調べによると、同容疑者は架空口座を開設した平成二年四月ごろから、同様の犯行を重ねていたとみられ、余罪は数十回に上るという。都市計画課勤務当時多胡容疑者の仕事は、公共用地取得、用地交渉、契約事務など。今春の定期人事異動で同市教委社会教育課の異動、係長に昇任していた。

<上毛新聞1995年(平成7年)6月8日(木曜日)一面>

★「派手な生活したかった」多胡容疑者★
★古美術品や高級外車3台 依然、多くのなぞ★
 元安中市役所職員の巨額不正借り入れ事件。七日、詐欺などの疑いで逮捕された多胡邦夫容疑者は「迷惑をかけてしまった。今ある資産をすべて使い、返済に努めたい」と担当弁護士に漏らしている、という。しかし、三十七億円にも上る多額の被害額を生んだ異常な事件は、多くのなぞに包まれている。動機、使い道、被害者はだれか―。逮捕をきっかけに、こうした疑問の解明は進むのか―。←タゴは「今ある財産をすべて使い、返済に努めたい」と担当弁護士に漏らしている、という記事だが、これは事件直後の宣伝文句。巨額の使途不明金はほとんどがタゴ一族およびその取り巻きの懐に消えるこおtになり、事件そのものは結局、タゴの単独犯行で幕引きされてしまった
★動機★
 「派手な生活がしてみたかった」-。市役所入りまもない二十歳ごろ、一般会社に就職した同級生の給料が自分の物と、年俸で百万円位差があったことから「派手な生活」へのあこがれを強めたという同容疑者。平成二年ごろには競馬にもこり、金への執着が強まった。そしてこの年、以前かかわった住宅団地分譲で、公社内に別会計の口座が設けられたのを参考に、架空の別口座を開設、借り入れ金に手をつけるようになった。
 これまでの調べでは、五年前から不正借り入れが始まったが、同容疑者については、以前から土地売買もうわさされていた。三十七億円はあまりにも巨額だが、同容疑者の「派手好み」が犯行の一因になったようだ。
★使い道★
 「とても一人で使い切る額ではない。何か背景があるはず」との声がある一方、多胡容疑者を知る人は、一般公務員では想像もつかない派手な生活ぶりを指摘している。一枚数百万円もの古美術品の皿、クラシックカーも含む三台の高級外国車。このほか、海外リゾートマンション、ゴルフ会員権の取得など、派手な噂(うわさ)がつきまとう。職場の同直には「骨董(こっとう)品売買でもうけた。東南アジアや中国にも買い付けに行った」などと豪語していたという。
 同容疑者の月収は約三十五万円。妻と子ども二人の四人家族での生活からすれば、「到底、外車三台も買える額ではない」と同市職員。昔を知る同級生の一人は「高校ぐらいまでは、目立つ男ではなかった。十五、十六年ほど前から目に見えて持ち物が変わった」と話す。←海外旅行については、ジェットツーリストを通じて、サイパン旅行3回を含むトータルで7~8回の渡航をしており、昭和61年12月22日に94万8千円、昭和62年10月20日に35万円、同年12月18日に230万円、平成元年12月25日に88万6660円を支払っている。年末が多いが、10月下旬にも出かけており、市役所の職員と言うものがヒマなことがわかる。なお、平成4年8月13日は国内旅行で55万2800万円を払っている。当然、一人では使い切れない旅行金額であり、家族をはじめ親しい友人、知人が同行していたと考えられる。その中には元市議らも含まれている。
★高崎署に護送 疲れた様子見られず★
 多胡容疑者はこの日午後二時、安中署から高崎署に護送された。
 五日聞、連日、任意で事情を聴かれていたが、疲れた様子は見られず、捜査員にうながされて、落ちついた足どりで車に乗り込んだ。
★「民事上の実害ない」群銀★
 県警捜査二課と安中署は、巨額の不正借り入れ事件を「詐欺容疑」で簡発した。刑事事件の処理としては、群馬銀行安中支店が“被害者”との判断を下したわけだ。
 しかし、三十七億円ともみられる被害額の大きさから、刑事事件とはまったく構成を異にする民事事件の被害者がストレートに同銀行になるかは、疑問視する見方もある。
 同銀行総合企画部広報室は「融資するに当たって公社は最も信頼している取引先の一つ。刑事上は当行が被害者になっているが、民事上のことはまったく別の問題。安中市の保証がある安中市土地開発公社を信頼しており、(民事上の)実害があったとは考えていない」とコメント。
 小川勝寿・安中市長は「刑事と民事の区別はよく分からないが、弁護士と相談して決めていきたい」と話した。信頼されるべき存在の「市」と「地元銀行」のどちらが被害者かの判断は、最終的には法廷の場に移される妥当、との予測が強まっている。
★不正37億は小学校2校分 異常さ「前例ない」 金額の大きさ★
 七日記者会見した小川勝寿市長(同公社理事長)は不正額について「借入額は四十七億六千万円。このうち公社が把握しているのが十億円。差し引きはおよそ三十七億円だが、これがすべて証拠的に不正のものかどうかは調査している」と語った。しかし三十億円を超える額は一般公務員が詐欺、横領、背任などの事件にかかわって得た金額では、「全国でも例がない」(県警)。←このことから、当会は、タゴ51億円事件を「前代未聞」「空前絶後」と評している。
 仮に三十七億とするとどんなことができるか。県教委管理課によると、玉村町角渕に新設された玉村南小学校は約二万二千平方メートルの用地買収費が四億七千万円。鉄筋コンクリート造り三階建ての校舎建設タイプの学校で、今回の額は小学校二校分の建設費にあたる。
 平成七年度の県内市町村の当初予算(普通会計)をみると、北橘、宮城、粕川、倉渕、子持村などが三十五億円前後。安中市は百六十億五千五百万円。
 三十七億円を安中市民約四万七千人で分配すると一人八万円近くになる。

<上毛新聞1995年(平成7年)6月8日(木曜日)社会面>

★市の甘い体質に怒りも 安中土地公社元主査逮捕★
★安中土地公社元主査逮捕★
 安中市土地開発公社の元職員が、金融機関に提出する借り入れ契約書を改ざんして総額約三十七億円をだましとっていた事件で、県警捜査二課と安中署は七日、詐欺、有印公文書偽造、同行使の容疑で逮捕した同公社元主査の多胡邦夫容疑者(四三)(安中市安中)の自宅や、同公社のある市役所など七か所を家宅捜索するとともに、同容疑者の詐欺の手法の解明に本格的に乗り出した。空前の巨額詐欺事件は地域社会に大きな衝撃を与えている同事件を未然に防げなかった市当局の甘い体質に市民からは怒りの声が上がっている。
★詐欺手法解明へ 使途、背後関係も追及 県警★
 同課などの調べによると、多胡容疑者は九〇年四月ごろから、約五年間、同じころに開設した秘密口座に数十回にわたって水増し融資金を入金させていたが、犯行を思い付いたのは、八五年ごろ。同公社が市内の古城団地の土地取得や造成を行った際に、同公社の一般会計口座とは別口に「古城団地会計」の名目で特別会計口座を開設できることを知ったことかきっかけだったという。←古城団地の開発事業は群馬県の企業局が手がけた。このときの企業局の担当者は、タゴの喫茶店に呼ばれて食事を振舞われている。特別会計口座というヒントは県から与えられたと考えられる。
 さらに同容疑者は、融資契約書類の金額を改ざんするため、「書き損じるといけないから」と金融機関から白紙の「金銭消費貸借契約証書」をあらかじめ何枚も入手。入手した契約書に同公社の融資をでっち上げ、他の公文書にまぎれさせて市長印を押印させていたほか、市長印が押された後に借り入れ金額を改ざんするなど、状況に応じ様々な手口を使って市財政当局に不正を見つけられないよう“工夫”していたらしい。
 同課などでは、着服額が巨額なことから同容疑者の協力者がいる可能性もあるとみて、水増し融資金の使途とともに、背後関係も調べる方針。←同容疑者の協力者として、当会がこれまでに確認したのは、タゴの配偶者(警察の調べでも総額1億5千万円が渡っている)、タゴの親族(多胡運輸の役員でもある母親に140万円(タゴの供述では300万円位)、なぜか多胡運輸社長の実弟の名前は使途先には出てこないが、使途不明金が巨額だけに相当額が流れているものと見られる)、タゴの親友の甘楽信金元職員(古物商の免許を持ち、タゴの名代として骨董屋から一手に大量の骨董品を買い付けていた御仁。富岡市内在住。タゴの懲戒免職の日に、甘楽信金の住宅ローン800万円を一括完済してもらい、なぜかその日に甘楽信金を退職したのに不起訴)、高崎市在住の税理士(事件発覚当時、協力者として当会に情報提供があった御仁。タゴの実弟や学習塾経営者の元市議らと親しかった)などなど枚挙に暇がない。もちろん、市長ら幹部、上司、同僚らや市議、県議らも犯罪幇助の関係者だった)
 タゴ容疑者は調べに対し、容疑を全面的に認めており、動機については「二十歳のころ、一般企業に就職した同級生と、年収で約百万円の差があった。派手な生活がしてみたかった」などと供述しているという。←タゴはこのように、事前のシナリオにしたがって、単独犯だと思わせる供述を警察にしていた。
★自宅など7か所捜索★
 県警は七日、安中市役所や多胡容疑者の自宅、同容疑者の妻が経営する喫茶店倉庫など計7か所を家宅捜索。約八時間三十分にわたる捜査で同容疑者名義の預金通帳、領収証、フロッピーディスクなど計約二百八十点を押収した。
★監査、形がい化★
 市の信用につけ込んで巨額の架空融資を申し込んだ多胡容疑者安中市の土地開発公社を舞台にした巨額詐欺事件で、同市のずさんな管理体制も浮き彫りになった。
 同公社では、金融機関から融資を申し込む際、同公社の理事長の決裁印が必要だが、同容疑者は理事長印を自由に利用することができたという。また、同市では、借入残高証明書のチェックが行われておらず、五年間も秘密口座の存在すら判明していないなど監査も形がい化していた。
 また、同市では金融機関からの借り入れの際は、複数の市職員が立ち会うことが義務づけられていたが、同容疑者は一人で金融機関を訪れることが多かったという。金融機関でも、同容疑者は「市長の特命で来ている」と話し、相手を信用させていた。同市では「市長印を押印した後に公文書の偽造が行われたため、事前に防げなかった」と釈明している。←実際には、タゴだけが群馬銀行を訪問していたわけではなく、他の職員や上司の高橋弘安も融資案件で群銀を訪れたことがあるので、群銀のこの説明は根拠に乏しい。
 着服が五年間も続いたことに同市では衝撃を受けており、小川市長も公印管理の甘さを認めて、今後は公印の管理を徹底するなど、事件の再発防止に努めたいとしている。
★「公印管理強化を」小川市長が会見★
 一方、安中市役所では同日、安中市土地開発公社の緊急理事会や市議会全員協議会が開かれるなど、慌ただしい動きをみせ、職員らは県警の家宅捜索を不安そうに見守った。また、市役所で記者会見した小川勝寿市長は「公務員としてあるまじき行為。心から市民の皆さんに深くおわびする」と改めて市民に陳謝した。
 小川市長との一問一答は次の通り。
 ――多胡容疑者の逮捕について
 驚きそのもので、度肝を抜かれている。管理責任と市民に同様を与えた責任はひしひしと感じている。
 ――水増し融資の総額は
 公社として把握している借入残高が約十億千七百万円、金融機関の把握文が約四十七億六千六百万円。差し引き約三十七億四千九百万円が水増しと思われる。
 ――水増し分の利子負担はどうしていたのか
 (多胡容疑者が開設した)秘密口座の中だけで処理されていたのでは。公社は負担しておらず、それしか理解のしようがない。
 ――理事長印が勝手に使われていたようだが
 公印管理に甘さがあった。今後は「公印管理の強化」や「借り入れ実行時の二重チェック」などを行う。←このように、小川市長は東京の虎ノ門から呼び寄せた田邊、菰田両弁護士の書いたシナリオどおりに述べていることがうかがえる。

<読売新聞1995年(平成7年)6月8日(木曜日)>

★着服金で豪勢な生活 高級外車、海外のマンション、骨とう品・・・★
★派手さにあこがれ 多胡容疑者★
 高級スポーツカーに海外のリゾートマンション――。安中市の土地開発公社をめぐる元職員の詐欺事件で県警は七日、逮捕した多胡邦夫容疑者(四三)の安中市内の自宅などを捜索し、外国製の高級乗用車やゴルフ会員権、高額の骨とう品などを大量に発見した。市の借用を悪用して金融機関から三十七億円もの大金をだまし取った同容疑者は、わずか五年間で巨額の“資産”を形成。「派手な生活」にあこがれ、だまし取った金をつき込んでつかの間の豪勢な暮らしを満喫していた。
 多胡容疑者は、だましとった金で栃木県足利市内の骨とう品業者などから、高価な年代ものの皿、花瓶などの骨とう品や、絵画などを大量に購入。←この情報は正確ではない。正しくは、タゴは足利市の一品堂から直接骨董品を購入したのではなく、全部、タゴの親友で、甘楽信金の石原保が買い付けていた。
 妻が経営する安中市内の喫茶店に隣接する倉庫からは、総額で時価十億円にものぼる骨とう品類が発見された。
 また、自宅の増改築や喫茶店経営の借金返済に数値円を投入。サイパン、ハワイではリゾートマンションを購入していた。
 さらに、総額三千三百万円のゴルフ場会員権(三口)、一台千三百万円もするドイツ製スポーツカーなど高級乗用車三台、一着数十万円のブランドもののスーツなどを購入。果ては歯の治療費に八百万円も流用していた。
★多胡容疑者の使途一覧★
・骨とう品(皿、花瓶、美術品など数千点)    約10億円(←実際には4億7000万円程度
・喫茶店経営の借金返済            数億円(←実際には土地代3220万円、店舗4000万円、倉庫関連3000万円、家具類2061万円、店舗キッチン135万円、厨房機器410万円、駐車場舗装工事310万円、看板190万円で総計約1億3500万円
・自宅改築資金                約5000万円(←約1億1000万円と供述
・ゴルフ場会員権(3口)           約3300万円
・外国製高級乗用車(メルセデスベンツ3台)  約3000万円(←全部で外車10台を4116万円。また妻のためにアウディの新車1台を430万円
・海外リゾートマンション(サイパン、ハワイ) 約2000万円
・歯の治療費                 約800万円(←高崎の井汲歯科でインプラント等を約722万円
★多額な返済毎月必要 借り入れ金も増加★
 しかし、借り入れ金額が高額で返済据え置き期間の短いものだったことから、月々の返済金額も多額で、同容疑者は月々の返済額を確保するため、金融機関に次々と架空の借り入れを行うなどして自転車操業的に借り入れ金額を増やしていったらしい。
 県警では、家宅捜索で押収した資料から同容疑者の資産形成の実態を解明するとともに、同容疑者の五年間にわたる巨額詐欺をなぜ発見できなかったのか、市幹部からもくわしく事情を聞くことにしている。

<読売新聞1995年(平成7年)6月8日(木曜日)>

★発覚恐れ“自転車操業” 安中市の元主査逮捕★
★実害は約20億円 「派手な生活」にあこがれて・・・ ワープロを悪用★
 安中市土地開発公社(理事長・小川勝寿市長)の職員による不正借り入れ事件で、県警捜査二課と安中署は七日朝、安中市安中一ノ二三ノ三二、元同市土地開発公社主査、多胡邦夫容疑者(四三)を詐欺と公文書偽造・同行使の疑いで逮捕、自宅などの捜索を行ったが、実際に多胡容疑者の着服額は約二十億円であることがわかった。また、不正借り入れの総額は五年間で三十七億四千八百七十九万二千円と判明したが、発覚を防ぐため借り入れては返済期限までに返す“自転車操業”を繰り返していたことも明らかになった。犯行の手口は、フロッピーを使用すれば、金額を容易に変えることができるワープロを悪用。手にしたカネで海外のリゾートマンションやゴルフ会員権を購入していた。喫茶店も経営していた多胡容疑者は調べに対し、「派手な生活をしたかった」と供述している。
 調べによると、多胡容疑者は昭和五十四年十月から、安中巾役所都市計画課主査兼同市土地開発公社職員として勤務、市内の銀行から用地取得用の資金を借り入れする際に、正規の金額に水増しして、その分を着服することを計画。今年三月下旬ごろ、「資金借入依頼書」と「貸借契約証書」を偽造して、正規の数百万円の融資のほかに、銀行から“水増し分”二億数千万円を、自分で開設した「土地開発公社特別会計」名義の別口座に振り込ませて引き出した疑い。
 多胡容疑者は、ふだん自分が使っている備え付けのワープロで正規の借入依頼書を作成、理事長決済後にフロッピーに保存してあった文書を呼び出して、金額の欄を一回につき一-三億円程度を水増しして記入。自分で「理事長印」を押して、借入依頼書の偽造を数十回繰り返し、銀行に融資の申し込みをしていた。
 さらに銀行から融資金を引き出す際も、銀行との「契約証書」も正規のものを理事長と市長の決裁を受けた後、ストックしてあった別の契約証書に上乗せした金額を記入、自分で理事長印を押し、他の書類の決済時に、「先の証書に間違いがあった」と偽って、管理の厳しい「市長印」を押させて偽造していた。
 市の内部調査によると、別口座に、五年間で総額三十七億四千八百七十九万四千円振り込まれていた。
 銀行の説明によると、多胡容疑者が水増しして借入した融資の貸借契約は一-二年で、多胡容疑者は、返済期日が迫ると、借入しては返す“自転車操業”を繰り返し、返済が滞ったことはなかった、という。多胡容疑者は借入金をプールした別口座から一度に数千万円の現金を引き出したこともある、という。
 動機について多胡容疑者は「二十歳のとき、民間会社に行った同級生と年収を比べたら百万円も低かったので、いつかは派手な生活をしたいと思っていた」と供述。
 現在、実際に返済不能になっている金額は二十億円前後とみられ、この約二十億円について「ベンツ三台に骨とう品、美術品のほか、高級ブランドの洋服や海外のリゾートマンション、ゴルフ会員権まで買った。自宅の改築や、経営する喫茶店の借金にもつぎ込んだ。また株や競馬などに使った」と話している。
 しかし、多胡容疑者の銀行口座には約二億円しか残っておらす、このほかにも使った可能性もあるとみて同署では多胡容疑者を追及する。
 同署ではこの日、多胡容疑者の自宅や市役所などを家宅捜索し、預金通帳など二百八十点を押収した。
★「再発防止に万全期す」 市長が陳謝 公印管理強化など明言★
 多胡容疑者が逮捕されたことについて、開発公社理事長でもある小川市長は七日午後、市役所で会見し、「市民に深くおわびする」と陳謝した。その上で多胡容疑者が不正に借り入れた額を約三十七億円とみていることを明らかにした。
 小川市長との一問一答は次の通り。
 ――事件についてどう思うか。
 「当然ながら市民のみなさんには深くおわびする。今後は網紀粛正に努め、このような事件が起きぬよう万全を期す。多胡容疑者が開設した口座の出入金については、調査に時間がかかるが、現在把握している額は、公社の借り入れ残高が十億一千六百九十万四千円、金融機関で把握している借り入れ残高が四十七億六千五百六十九万六千円で、その差し引きが三十七億四千八百七十九万二千円」
 ――この額は多胡容疑者が開設した口座で、不正に借り入れた残高とみられるものか。
 「そうだ。この数字が正しいかどうかは細かく調査しないとわからない」
 ――公社の会計について市は監査していなかったのか。
 「していたが、別口座なので分からなかった。通帳の預金残高を確認したが、金融機関への借り入れ残高は確認していない」
 ――市長印、(土地開発公社の)理事長印の管理は。
 「市長印は秘書課で管理。理事長印は公社の事務局長が管理していた。盗用できるはずはないのだが」
 ――今後の対応は。
 「基本的には司法の捜査の結果を待つ。同時に弁護士と相談して詐欺罪での告訴を考えている」
 ――市長自身や多胡容疑者の上司など、管理者の処分は。
 「事件の全容解明を待って考える。管理者としての責任はあると感じている」
 ――再発防止策は考えているのか。
 「公印管理の強化、予算決議事項の二重チェック、借り入れ確認書の取り交わし、数字の手書きをやめてチェックライターを使うことなどの具体策を立てた」


<産経新聞1995年(平成7年)6月8日(木曜日)>

★多胡容疑者 手口も使途も大胆 安中市開発公社巨額詐欺★
★骨とう、海外マンション・・・ 「派手な生活したい」★
 安中市土地開発公社(理事稿小川勝寿市長)を舞台にした巨額詐欺事件に七日、強制捜査のメスが入った。県警捜査二課と安中署は、同公社元主査、多胡邦夫容疑者(四三)=安中市安中一=を逮捕するともに、同公社や自宅など三ヵ所を家宅捜索し、関係書類など二百八十点を押収した。不正取得の手口は「消費貸借契約証書]の金額を、正規の数百万円から数字を二けた増やして二億数千万円に偽造するという大胆さ。一九九〇年四月から今年三月末までの間、水増しして借り入れた総額は三千七億円に上り、多くを骨とう品購入につぎこんでいたらしい。県警は共犯の有無、詳しい使途など事件の全容解明に全力を挙げている。
 調べによると、多胡容疑者は今年三月下旬、正規の額(数百万円)を記入した「公有地取得事業資金借入依頼書」で市長の決済を受けた後、二億数千万円分を水増しした「借入依頼書」をもう一通作製、市内の銀行にはこの偽造依頼書を提出した。数日後、契約締結時に銀行側と交わす「金銭消費貸借契約証書」にも水増し金額を書き、他の書類に交ぜるなどの手口で市長印を押させて偽造、自分で開いた「土地開発公社特別会計」名目の架空口座に水増し分を振り込ませた疑い。
 安中署で逮捕状を示された同容疑者は「はい、分かりました」と答え、調べに対して容疑事実を認めているという。動機については「二十歳のころ、一般企業に入った同級生と年収で百万円の差があり、派手な生活がしてみたかった」などと話しているという。
 不正取得した現金は、骨とう・古美術品や複数の高級外車クラシックカーをはじめ海外リゾートマンションやゴルフ会員権、株券などの購入に充てたほか、ギャンブルや、自宅と麦の経営する喫茶店の改築費にも使ったと供述している。
★驚きながらも「やっぱり」★
 「何かおかしいと思っていた。やっぱり悪いことをしていたんですね」--。
 県警の捜査員が同公社などの捜索に着手したこの日午前、多胡容疑者の自宅近くの住民は驚きの表情を見せながらも一様に口をそろえた。
 無職の男性(七二)は「一度家に入ったことがあるが、大きな衣装棚に高そうなシャツがぎっしり並んでいるのを見てびっくりした」と話し、家宅捜索の様子を見守っていた。
 関係者によると、多胡容疑者は、国道18号線沿いにある妻経営の喫茶店で、二年ほど前から不正借入金で購入したとみられる骨とう品や古美術の商売を始めていたという。最近はバブル経済の崩壊でぜいたく品が売れなくなり、近所の飲食店主(四九)は「値が張るものばかりあって、ほとんど客の姿を見なかった。どうしてやっているのか不思議だった」と話した。
 多胡容疑者が水増し分を振り込む架空□座を開いたのは、バブル景気さなかの九〇年。その後、県外の骨とう品店で、三枚で一千万円もする皿をはじめ合計十億円相当の骨とう品を買い入れるなど、次第に常軌を逸した浪費にのめり込んでいったようだ。
★「自分含め処分考える」 小川市長 銀行側の責任も示唆★
 小川勝寿市長はこの日夕、記者会見。「市民に動揺を与えたことに陳謝したい。自分も含めて処分を考えたい」と述べるとともに、「職員の綱紀粛正と管理体制の徹底を図りたい」と語った。
 その一方で、管理責任について「特別口座があることは監査では想像すらできなかった。銀行側にも不正に気付く可能性があったと語り、金融機関にも責任の一端があるとの考えを示した。また県警の調べで、十分なチェックがなされないまま偽造契約証書に市長公印が押されていたことが明らかになったが、市側はずさんな公印押印の可能性を否定。県警と市側の認識に食い違いがあることもうかがわせた。
 市側の調査によると、公社側と銀行側のそれぞれの手持ち資料による借入金残高の差額は、現段階で三十七億四千八百七十九万二千円に上っており、小川市長は多胡容疑者を近く詐欺罪で告発する予定。

<毎日新聞1995年(平成7年)6月8日(木曜日)>

■こうして、タゴは、ある意味では一番安全とも言える塀の向こうに姿をくらましたのでした。そして、後に残されてワリを食わされたのは、結局、タゴ豪遊と取り巻き連中への横領金の流失の尻拭いをさせられる安中市民だったのでした。

【ひらく会情報部】

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