■昨年初めに、東京ガスが安中市北野殿地区に、突然高さ30mの放散塔などを有するバルブステーション施設を建設し始めたため、当会は、現場に掲示されていた建築許可証をもとに、平成21年1月21日に、放散塔などの施設の情報開示を群馬県に求めました。
しかし、同年2月27日付部分開示決定で、ごく一部しか開示されなかったため、当会は、同年4月13日付で群馬県知事に対して異議申立をしました。
そして、それからなんと1年以上経過した平成22年4月22日に群馬県公文書開示審査会から群馬県知事に答申が出たことは、当会のブログで報告済みですが、その後平成22年6月3日付けで県知事から異議申立ての決定通知が届き、それに基づき、同6月11日付けの高土第76-6号で、部分開示通知が届きました。
■まず、6月3日付けの異議申立てに対する決定通知を見てみましょう。
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【異議申立てに対する決定通知書】
建第30784-1号
平成22年6月3日
小川 賢 様
群県知事 大澤正明 (建築住宅課)
異議申立てに対する決定について
貴方から平成21年4月13日付けで提起のあった「異議申立て」について、別添謄本のとおり決定したので送付します。
担当:審査指導係 TEL:027-226-3703
【決 定 書】
異議申立人 住所 安中市野殿980 氏名 小川 賢
異議申立人(以下「申立人」という。)から平成21年4月13日付けで提起のあった公文書部分開示決定についての異議申立てに対して、次のとおり決定する。
<主 文>
群馬県知事が平成21年2月27日付けで申立人に対して行った公文書部分開示決定について、申立人が開示すべきとする部分のうち、別表1の開示すべき情報に係る部分についての非開示決定を取り消す。
<理 由>
第1 異議申立ての趣旨及び理由
1 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、群馬県知事(以下「当庁」という。)が平成21年2月27日付けで群馬県情報公開条例(以下「条例」という。)第18条第1項の規定に基づき行った「平成20年1 1月6日付けで群馬県建築主事佐藤雅彦名にて、東京瓦斯株式会社群馬幹線建設事務所に出した「H20確認―工群馬県000092」の建築基準法の確認手続きにかかる一切の情報」(以下「本件公文書」という。)の公文書部分開示決定(以下「本件処分」という。)における非開示部分のうち、別表2の「申立人が開示を求める文書」に掲げる部分(以下「本件設計図書」という。)について非開示の取り消しを求めるというものである。
2 異議申立ての理由
申立人が主張している異議申立ての理由は、概ね以下のとおりである。
(1)当庁は設計技術の公表によるノウハウ流出を非開示理由に挙げているが、公文書のタイトルを見る限り、一般的な技術であり、ノウハウ流出とは考えられない。
(2)開示請求をしたのは、放散塔の設計図書である。東京ガスによれば、放散塔は首都圏だけでも数百箇所設置されており、これらは大地震発生に備えて、ガス施設の防災計画の一環として、施設の安全対策として、ガス事業法、消防法、建築基準法、道路法等の諸法規並びに建築学会、土木学会の諸基準及び日本瓦斯協会基準に基づいているものであり、当庁の主張するような「設計事務所に属する設計者の工作物設計に関する知識と独自の技術力を駆使した設計成果品の一部」に相当するものではない。
(3)申立人は、放散塔が設置される地元で生活しており、本件により、生命、健康、生活又は財産の安全を脅かされるので、条例第14条第3号ただし書により、本件非開示情報は公にすることが必要である。
(4)放散塔など防災施設の保安管理の責任は東京ガスにあり、そうした対策は別途措置しているはずである。本件情報を開示したくらいで、保安管理に重大な支障があるとは到底思えない。普段、人気のない当該施設の周辺に居住する地元住民は、むしろ不審者の徘徊等に対して、施設の間接的な監視役の立場にあるといえる。
第2 当庁の認定事実及び判断
1 当庁の認定事実
(1)申立人は、平成21年1月21日付けで、「平成20年11月6日付で群馬県建築主事佐藤雅彦名にて、東京瓦斯株式会社群馬幹線建設事務所に出した「H20確認―工群馬県000092」の建築基準法の確認手続にかかる一切の情報」の開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。
(2)当庁は、平成21年2月27日、本件請求に係る公文書を本件公文書であると判断し、条例第14条第2号、第3号イ及び第4号に該当する情報が含まれていることを理由として、本件処分を行い、申立人に通知した。
なお、本件処分における非開示部分及び当該部分を開示しない理由は、別表2のとおりである。
(3)申立人は、行政不服審査法第6条の規定に基づき、平成21年4月13日付けで、本件処分における非開示部分のうち、本件設計図書について非開示の取り消しを求めるという趣旨で、当庁に対し異議申立てを行った。
(4)当庁は、条例第26条の規定に基づき、群馬県公文書開示審査会(以下「審査会」という。)に対して、平成21年5月7日、本件異議申立て事業(以下「本件事業」という。)の諮問を行った。
(5)当庁は、平成21年6月12日付けで、本件処分の理由説明書を審査会に提出した。
(6)申立人は、平成21牟6月18日付けで、当庁が作成した平成21年6月12日付け理由説明書に対する意見書を提出した。
(7)当庁は、審査会から平成22年4月22日付けで、本件処分については、異議申立人が開示すべきとする部分のうち、別表1に掲げる部分は開示すべきであるが、その他の部分については非開示が妥当である旨の答申を受けた。
(8)審査会の答申によれば、設計会社及び築造主(以下「設計会社等」という。)に対して条例第30条第4項に基づき陳述依頼を求め、当該設計会社等から平成21年11月24日付け回答書が提出された。さらに、平成21年11月30日に開催した第29回群馬県公文書開示審査会第一部会において、同設計会社等の口頭陳述が行われた。
そして審査会は、上記回答書及び口頭陳述における設計会社等の主張は、
①ガス事業関連建設工事分野は、一般の構造物と異なり特殊な技術を含む分野で、その工事の受注については、一定の技術ノウハウを有する複数のエンジニアリング会社による競争入札が通例となっており、いかに高品質かつ低価格の製品を納入するかが勝負となり入礼者間の競争は激化している。
②こうした状況を踏まえ、本件設計図書の開示による正当な利益の侵害について考えると、設計会社等が共同で蓄積した技術ノウハウが公にされることにより、競合する他の事業者が設計図書及び計算書等の技術ノウハヴを入手する可能性がないとはいえず、これらを入手した事業者は、ほとんど労力をかけずに活用することや、手を加えてより優れたものとすることも可能と考えられ、同程度以上の成果を挙げるために払う対価等において、設計会社等が競争上不利益を破る可能性があり、条例第14条第3号イの「正当な利益を害するおそれ」に該当するものと考える。
③また、当該施設はガス安定供給上大変重要な施設であり、万が一でもガス供給が停止しないような設備の設置及び管理を行う必要がある。さらに、都市ガスという可燃性気体を扱うため、当該施設が破壊活動に利用される可能性がある。これらにより、本件設計図書の外部への公開等、第三者による侵入及び破壊活動を容易たらしめるおそれがある行為は最大限排除すべきと考える。
④よって、本件設計図書を公にすることにより、当該築造物への不法な侵入及び破壊活動に利用されるおそれがあるなど、施設保安・管理に支障を生ずるおそれがあり、条例第14条第4号にも該当すると思料する。
であるとした。
2 当庁の判断
(1)本件公文書について
本件公文書は、建築基準法(以下「基準法」という。)第88条第1項において準用する同法第6条第1項に基づき、築造主が本件工作物を築造するに当たり、群馬県建築主事に対しで提出した「確認申請書(工作物)及び添付文書」であり、別表2に掲げる文書によって構成されている。このうち、申立人が開示を求めているのは、本件設計図書の非開示部分である。
(2)本件設計図書の構成について
本件設計図書は、その性質及び内容からみて以下の5つに分類できる。
①一つ目は、「放散塔全体外形図」、「放散塔基礎詳細図・構造特記仕様書」及び「PHC杭用継手金真姿図」(以下「本件公文書1」という。)であり、「放散塔全体外形図」には、本件工作物に係る設計仕様、使用材料の口径・材質、寸法等が記載されており、「放散塔基礎詳細図・構造特記仕様書」及び「PHC杭用継手金具姿図」には、本件工作物基礎の寸法・構造、ボルトの規格・配置数、配筋図・仕様、各部材の寸法等が記載されている。
②二つ目は、「杭伏図・柱状図・敷地断面図」及び「基礎・地盤説明書」(以下「本件公文書2」という。)であり、これらの文書には、本件工作物の地盤に係る土質調査の結果、基礎杭の材質・長さ・仕様、杭支持層の選定、支持地盤、荷重根拠等が記載されている。
③三つ目は、「避雷設備設置概要」、「避雷設備設置概要図」、「避雷突針姿図」、「ダイヒカップリング姿図」、「鉄骨用接続端子姿図」、「導線取付金物姿図」、「ビニル管取付金物姿図」、「端子ボックス姿図」及びヽ「接地銅板姿図」(以下「本件公文書3」という。)であり、これらの文書には、本件工作物に設置される避雷設備の概要、設置方法、材料種別、数量、各部材の詳細寸法等が記載されている。
④四つ目は、「主要構造部材特記仕様書」及び「使用構造材料一覧表」(以下「本件公文書4」という。)であり、これらの文書には、本件工作物に使用される構造材及び材料規格、主要溶接構造等が記載されている。
⑤五つ目は、「放散塔構造計算書」及び「放散塔基礎構造計算書」(以下「本件公文書5」という。)であり、これらの文書は基準法等に基づき作成された計算書であり、本件工作物の構造及び基礎構造の詳細や構造計算の設定、結果等が記載されている。
(3)本件公文書1について
①条例第14条第3号イの該当性について
当庁が条例第14条第3号イに該当することを理由に非開示としたうち、「放散塔全体外形図」には、本件工作物に係る設計仕様、使用材料の口径・材質、寸法等が詳細に記載されており、「放散塔基礎詳細図・構造特記仕様書」及び「PHC杭用継手金具姿図」には、本件工作物基礎の寸法・構造、設計計算に基づくボルト配置数・規格、配筋図・仕様、杭用継手金具部材の寸法等が詳細に記載されている。
一般に、建築物の設計に関して設計者は、土地の地耐力等を把握し、最も適切な部材、寸法を選択し、必要かつ十分な強度を確保しつつ、建設費を一定の経費内に納めなければならないなど種々の要素を勘案して設計図面等を作成しており、建築物を建築するための設計図面等には、設計者の創意工夫又はノウハウが含まれているものである。この点、特殊な施設である本件工作物に係る設計技術は、設計会社等がこれまで蓄積してきた技術経験やノウハウを踏まえたもの々あることは、設計会社等の(平成21年11月24日付け回答書及び口頭陳述による)主張に基づく審査会の答申からも明らかである(前記第2、1(8)①、②)。
特に、本件公文書1には、放散塔及び基礎の形状、放散塔上部と基礎との接続において、いかに強度を確保しつつ建設費の抑制等、設計会社等がこれまで蓄積してきた技術経験やノウハウを踏まえた設計上の工夫、使用部材の選定等、設計技術上の詳細な情報が記載されていることが認められる。
これらの情報を公にした場合、他の事業者に設計上の技術的ノウハウが知られることとなり、容易に模倣され、延いては設計会社等が競争上の不利益を被ることとなる事態も否定できないと考えられる。
したがって、本件公文書1を公にすることにより、設計会社等の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあると認められるから、本件公文書1に係る情報は条例第14条第3号イに該当する。
②条例第14条第3号ただし書の該当性について
本件工作物の確認申請は、群馬県建築主事の審査を受け、確認済証が交付されているのであるから、建築基準関係規定に適合していると考えられる。一方、申立人の主張からは、本件工作物に関し明らかな危険性が存在するものと認めるに足る特段の事情は窺われない。
したがって、将来発生する可能性の極めて高い人の生命、健康、生活又は財産に対する危険や損害を未然に防止するために、本件公文書1を開示することが必要であると認められないから、本件公文書1に係る情報は条例第14条第3号ただし書に該当しない。
③条例第14条第4号の該当性について
前記①で述べたとおり、本件公文書1には、放散塔及び基礎の形状、放散塔上部と基礎との接続などの点において、設計技術上の詳細な情報が記載されていることが認められる。
これらの情報を公にすることによって何人にも入手できることとなった場合、本件工作物への不法侵入及び破壊活動に利用されるおそれがあるなど、犯罪を誘発し又は犯罪の実行を容易にする可能性があり、施設保安・管理に支障を生じるおそれがあると認められるから、上記情報は条例第エ4条第4号に該当する。
④本件公文書1のすべてを非開示とすることの妥当性について
本件公文書1の欄外には、それぞれ工事名称、図面名称、設計会社、建築士の氏名及び図面作成目等が記載されている。これらの情報に関しては、設計図面等に記載される一般的項目であり、設計会社等の設計上の技術的ノウハウは旱やられない。また、これらの情報が公にされたとしても、本件工作物への不法侵入及び破壊活動に利用されるおそれがあると認めるに足る特段の事情は窺われない。
ところで、設計会社及び建築士等に係る記載部分については、確認申請書に記載されていない個人の氏名及び印影が記載及び表示されていることが認められる。当該個人の氏名,及び印影は、特定の個人を識別することのできる情報と認められ、これらは条例第14条第2号に該当する。
しかしながら、本件公文書1から前記①及び③で示した非開示情報に該当する部分及び上記の個人情報に該当する部分を除くと、既に申立人に開示されている確認申請書等に記載された情報と同様のものしか残らず、これらの情報は客観的に申立人にとって有意な情報であるとは認められない。
⑤まとめ
以上の次第であるから、本件公文書1は非開示とする,
(4)本件公文書2について
①条例第14条第3号イの該当性について
ア 「杭伏図・柱状図・敷地断面図」について
「杭伏図・柱状図・敷地断面図」には、本件工作物の詳細位置を示した「杭伏図」、本件工作物の地盤に係る土質調査の結果を表したボーリング柱状図に、設計会社が本件工作物の基礎構造園を追加記載した「ボーリング柱状図・断面図」、杭の材質、仕様及び詳細寸法等を示した「杭仕様」並びに「杭頭詳細図」が記載されている。
(ア)「杭伏図」について
「杭伏図」は、本件工作物の建設予定地の敷地形状や隣地境界線からの本件工作物の基礎位置を示したもので、設計会社等の設計上の技術的ノウハウに関する情報とは認められない。また、これらの情報は、申立人に既に開示している「配置図」に記載された情報と同様のものであるから、杭伏図に係る情報は条例第14条第3号イに該当しない。
(イ)「ボーリング柱状図・断面図」について
「ボーリング柱状園・断面図」は、本件工作物建設予定地の地盤に係る土質調査の結果を表したもので、設計会社等の設計上の技術的ノウハウに関する情報とは認められない。しかし、「ボーリング柱状図」中の標準貫入試験N値欄に設計会社が本件工作物の基礎構造図を追加記載しており、この部分については、本件工作物の構造に関係する情報と認められ、これら公にすると、本件工作物の構造設計に関する事項が明らかとなり、他の事業者が構造設計に関係するノウハウを活用することで、設計会社等の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあると認められる。
したがって、「ボーリング柱状図・断面図」のうち、本件工作物の基礎構造に関する情報は条例第14条第3号イに該当するが、それ以外の.情報は条例第14条第3号イに該当しない。
(ウ)I「杭仕様」及び「杭頭詳細図」について
「杭仕様」及び「杭頭詳細図」には、本件工作物の基礎に使用する杭の材質、仕様、本数、詳細寸法等が記載されており、設計会社等がこれまで蓄積してきた技術経験やノウハウを踏まえた使用部材の選定等、設計技術上の詳細な情報が記載されていることが認められる。しかし、杭仕様を示した表の項目部分は一般的項目であり、設計会社等の設計上の技術的ノウハウは認められない。
したがって、「杭仕様」及び「杭頭詳細図」のうち、杭仕様を示した表の項目部分に係る情報は条例第14条第3号イに該当しないが、それ以外の情報は条例第14条第3号イに該当する。
(エ)「杭伏図・柱状図・敷地断面図」の欄外の記載事項について
「杭伏図・柱状図・敷地断面図」の欄外には、工事名称、図面名称、設計会社、建築士の氏名及び図面作成日等が記載されている。これらの情報に関しては、設計図面等に記載される一般的項目であり、設計会社の設計上の技術的ノウハウは認められないから、同欄外の情報は条例第14条第3号イに該当しない。
イ 「基礎・地盤説明書」について
「基礎・地盤説明書」には、基礎の種類、基礎杭の先端位置、荷重根拠等が記載されており、風、地震等に対応するための技術的な工夫や設計会社がこれまで蓄積してきた技術経験やノウノハウを踏まえた使用部材及び規格の選定等、設計技術上の詳細な情報であると認められる。これらを公にすると、他の事業者に設計上の技術的ノウハウが知られることとなり、容易に模倣されるなど設計会社等の競争上の地位が損なわれるおそれがあると認められる。しかし、「基礎・地盤説明書」のうち、表紙、項目、添付資粁の名称及び杭仕様を示した表の項目部分については、一般的なものであり設計会社等の設計上の技術的ノウハウに関する情報とは認められず、
また、添付資料2「ボーリング柱状図」及び添付資料3「地質断面図」についても、前記ア(イ)で述べたとおり、土質調査の結果を表したものにすぎない。
したがって、これらの情報は条例第14条第3号イに該当しないが、それ以外の情報は条例第14条第3号イに該当する。
また、「基礎・地盤説明書」には、本件公文書2の「ボーリング柱状図・断面図」と同様の図も記載されているが、前記ア(イ)で述べたとおり、本件工作物の基礎構造に関する情報は条例第14条第3号イに該当するが、それ以外の情報は条例第14条第3号イに該当しない。
②条例第14条第3号ただし書の該当性について
前記①により条例第14条第3号イに該当するとした情報については、前記(3)②で述べた理由と同様の理由により、同号ただし書に該当しない。
③条例第14条第2号の該当性について
前記①ア(エ)及びイにより条例第14条第3号イに該当しないとした情報には、確認申請書に記載されていない個人の氏名及び印影が記載及び表示されていることが認められる。個人の氏名及び印影は、特定の個人を識別することのできる情報と認められるから、これらは条例第14条第2号に該当する。
④条例第14条第4号の該当性について
前記①において条例第14条第3号イに該当しないとした情報について条例第14条第4号の該当性を検討すると、これらの情報は、本件工作物の基礎位置を示したものや土質調査結果、杭仕様を示した表の項目部分、設計図面等に記載される一般的項目を示したものに過ぎず、これらの情報が公にされたとしても、本件工作物への本法侵入及び破壊活動に利用されるおそれがあると認めるに足りる特段の事情は窺われない。したがって√前記①において条例第14条第3号イに該当しないとした情報は条例第14条第4号にも該当しない。
しかし、前記①において条例第14条第3号イに該当するとした情報は、本件工作物の構造に関係する情報や使用部材等に関係する情報であり、これらの情報を公にすることによって何人にも入手できることになった場合、本件工作物への不法侵入及び破壊活動に利用されるおそれがあるなど、犯罪を誘発し又は犯罪の実行を容易にする可能性があり、施設保安・管理に支障を生じるおそれがあると認められるから、当該情報は条例第14条第4号に該当する。
⑤まとめ
以上の次第であるから、本件公文書2のうち、別表1に掲げる部分については開示するものとし、その他の部分については非開示とする。
(5)本件公文書3について
①条例第14条第3号イの該当性について
本件公文書3には、本件工作物に設置される避雷設備の設置概要図や設計計算に基づく設置方法及び落雷経路ミ使用部材の種別、数量、寸法等が詳細に記載されており、設計会社等がこれまで蓄積してきた施工実績等に基づく技術経験やノウハウを踏まえた設置基準及び方法、使用部材の選定等、設計技術上の詳細な情報が記載されていることが認められる。これらを公にすると、他の事業者に設計上の技術的ノウハウが知ちれることとなり、容易に模倣されるなど設計会社等の競争上の地位が損なわれるおそれがあると認められる。しかし、表紙、避雷設備設置概要の項目及び設置基準については、避雷設備に関する一般的項目を示したものに過ぎず、設計会社等の設計上の技術的ノウハウに関する情報とは認められない。
したがって、表紙、避雷設備設置概要の項目及び設置基準に係る情報は条例第14条第3号イに該当しないが、それ以外の情報は条例第14条第3号イに該当する。
②条例第14条第3号ただし書の該当性について
前記①により条例第14条第3号イに該当するとした情報については、前記(3)②で迷べた理由と同様の理由により、同等ただし書に該当しない。
③条例第14条第2号の該当性について
前記①により条例第14条第3号ィに該当しないとした「表紙」には、個人及び印影が記載及び表示されていることが認められる。個人の氏名及び印影は、特定の個人を識別することのできる情報と認められるから、これらは条例第14条第2号に該当する.
④条例第14条第4等の該当性について
前記①において条例第14条第3等イに該当しないとした情報について条例第14条第4号の該当性を検討すると、これらの情報は、本件工作物に設置される避雷設備に関する概要を記載した文書の表紙、項目及び設置基準等、一般的項目を示したものに過ぎず、これらの情報が公にされたとしても、本件工作物への不法侵入及び破壊活動に利用されるおそれがあると認めるに足る特段の事情は窺われない。したがって、前記①において条例第14条第3号ィに該当しないとした情報は条例第14条第4号にも該当しない。
しかし、/前記①において条例第14条第3号ィに該当するとした情報は、本件工作物の避雷設備の設置概要図や設計計算に基づく設置方法及び落雷経路、使用部材の種別、数量、寸法等に関係する情報であり、これらの情報を公にすることによって何人にも入手できることになった場合、本件工作物への不法侵入及び破壊活動に利用されるおそれがあるなど、犯罪を誘発し又は犯罪の実行を容易にする可能性があり、施設保安・管理に支障を生じるおそれがあると認められるから・、当該情報は条例第14条第4号に該当する。
⑤本件公文書3のうち「避雷設備設置概要図」のすべてを非開示とすることの妥当性について
「避雷設備設置概要図」の欄外には、本件公文書1と同様に工事名称、図面名称、設計会社、建築士の氏名及び図面作成目等が記載されており、これらの情報に開しては、設計図面等に記載される一般的項目であり、設計会社等の設計上の技術的ノウハウは認められないが、前記(3)④で述べた理由と同様の理由により、「避雷設備設置概要図」全体を非開示とすることが相当である。
⑥まとめ
以上の次第であるから、本件公文書3のうち、別表1に掲げる部分については開示するものとし、その他の部分については非開示とする。
(6)本件公文書4について
①条例第14条第3号イの該当性について
本件公文書4には、本件工作物に使用される構造材の材料、規格、寸法及び溶接材料等が詳細に記載されており、これらには設計会社等がこれまで蓄積してきた施工実績等に基づく技術経験やノウハウを踏まえた使用部材の選定、主要溶接構造等、設計技術上の詳細な情報が記載されていることが詰められる。
これらを公にすると、他の事業者に設計上の技術的ノウハウが知られることとなり、容易に模倣されるなど設計会社等の競争上の地位が損なわれるおそれがあると認められる。しかし、「主要構造部材特記仕様書」の表紙については、設計会社等の設計上の技術的ノウハウに関する情報とは認められない。
したがって、表紙に係る情報は条例第14条第3号イに該当しないが、それ以外の情報は条例第14条第3号イに該当する。
②条例第14条第3号ただし書の該当性について
前記①により条例第14条第3号イに該当するとした情報については、前記(3)②で述べた理由と同様の理由により、同号ただし書に該当しない。
③条例第14条第2号の該当性について
前記①により条例第14条第3号イに該当しないとした「表紙」には、個人の氏名及び印影が記載及び表示されていることが認められる。個人の氏名及び印影は、特定の個人を識別することのできる情報と認められるから、これらは条例第14条第2号に該当する。
④本件公文書4のうち「使用構造材料一覧表」のすべてを非開示とすることの妥当性について
「使用構造材料一覧表」には、前記①で条例第14条第3号イに該当するとした情報を除いた情報には、文書名称、設計会社、建築士の氏名及び一覧表の項目名が記載されており、これらの情報に関しては、設計会社等の設計上の技術的ノウハウは認められないが、前記(3)④で述べた理由と同様の理由により、「使用構造材料一覧表」全体を非開示とすることが相当である。
⑤条例第14条第4号の該当性について
前記①において条例第14条第3号イに該当しないとした「主要構造部材特記仕様書」の表紙に係る情報の条例第14条第4号の該当性について検討すると、これは本件工作物に使用される構造部材に関する内容を記載した文書の表紙に過ぎず、これらの情報が公にされたとしても、本件工作物への不法侵入及び破壊活齢に利用されるおそれがあると認めるに足りる特段の事情は窺われない。
したがって、前記①において条例第14条第3号イに該当しないとした情報は条例第14条第4号にも該当しない。
しかし、前記①において条例第14条第3号イに該当するとした情報は、本件工作物に使用される構造材の材料、規格、寸法及び溶接材料等に関係する情報や使用部材の選定、主要溶接構造等、設計技術に関係する情報であり、これらの情報を公にすることによって何人にも入手できることになった場合、本件工作物への不法侵入及び破壊活動に利用されるおそれがあるなど、犯罪を誘発し又は犯罪の実行を容易にする可能性があり、施設保安・管理に支障を生じるおそれがあると認められるから、当該情報は条例第14条第4号に該当する。
⑥まとめ
以上の次第であるから、本件公文書4のうち、別表1に掲げる部分については開示するものとし、その他の部分については非開示とする。
(7)本件公文書5について
①条例第↓4条第3号イの該当性について
本件公文書5は、本件工作物が自重、地震荷重等に対して安全な構造であることを検証するため、建築基準関係規定等に基づき作成されたものであり、本件工作物の構造及び基礎構造の詳細々構造計算の設定、結果等が記載されている。前記(3)①で述べたとおり、建築物等を建築するための設計図面等には、設計者の創意工夫又はノウハウが含まれているところ、本件公文書5にも、風、地震等に対応するための技術的な工夫や設計会社等がこれまで蓄積してきた技術経験やノウハウを踏まえた使用部材及び規格の選定等、設計技術上の詳細な情報が記載されていることが認められる。これらを公にすると、他の事業者に設計上の技術的ノウハウが知られることとなり、容易に模倣されるなど設計会社等の競争上の地位が損なわれるおそれがあると認められる。しかし、「構造計算書」の表紙、改定履歴、日次のうち基準法で検討項目とされている部分、概要、構造概要の表の項目名及び確認申請書に記載されている内容、環境条件及び適用法規、ミまた「放散塔基礎構造計算書」の表紙、目次のうち基準法で検討項目とされている部分、一般事項の項目名及び確認申請書に記載されている内容については、一般的項目等を示したものに過ぎず、設計会社等の設計上の技術的ノウハウに関する情報とは認められない。また、「放散塔基礎構造計算書」には、地盤条件として本件公文書2のボーリング柱状図が記載されているが、これも前記(4)①ア(イ)で述べたとおり、設計会社等の設計上の技術的ノウハウに関する情報とは認められない。
したがって、これらの情報は条例第14条第3号イに該当しないが、それ以外の情報は条例第14条第3号イに該当する。
②条例第14条第3号ただし書の該当性について
前記①により条例第14条第3号イに該当するとした情報については、前記(3)②で述べた理由と同様の理由により、同号ただし書に該当しない。
③条例第14条第2号の該当性について
前記①により条例第14条第3号イに該当しないとした各表紙及びボーリング柱状図には、個人の氏名及び印影が記載及び表示されていることが認められる。個人の氏名及び印影は、特定の個人を識別することのできる情報と認められるから、これらは条例第14条第2号に該当する。
④条例第14条第4号の該当性について
前記①において条例第14条第3号イに該当しないとした情報のうち、条例第14条第4号の該当性について検討すると、これらは構造計算書の表紙や一般的項目、土質調査結果を示したものに過ぎず、これらの情報が公にされたとしても、本件工作物への不法侵入及び破壊活動に利用されるおそれがあると認めるに足りる特段の事情は窺われない。したがって、前記①において条例第14条第3号イに該当しないとした情報は条例第14条第4号にも該当しない。
しかしながら、前記①において条例第14条第3号イに該当するとした情報は、本件工作物の構造及び基礎構造の詳細や構造計算の設定、結果等に関係する情報であり、これらの情報を公にすることによって何人にも入手できることになった場合、本件工作物への不法侵入及び破壊活動に利用されるおそれがあるなど、犯罪を誘発し又は犯罪の実行を容易にする可能性があり、施設保安・管理に支障を生じるおそれがあると認められるから、当該情報は条例第14条第4号に該当する。
⑤まとめ
以上の次第であるから、本件公文書5のうち、別表1に掲げる部分については開示するものとし、その他の部分については非開示とする。
第3 結論
以上のとおり、平成21年2月27日付け高土第76024号による部分開示決定において非開示とした情報の一部について、群馬県公文書開示審査会の答申を尊重し、条例第15条に規定する部分開示すべき情報に該当すると判断した。
よって、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第47条第3項の規定により、主文のとおり決定する。
教示
この決定があったことを知った日の翌日から起算して6月以内に、群馬県を被告として(提訴において群馬県を代表する者は、群馬県知事となります。)、決定の取消しの訴えを提起することができます(決定があったことを知った日の翌日から起算して6月以内であっても、決定の日の翌日から起算して1年を経過すると決定の取消しの訴えを提起することができなくなります。)。
平成22年6月3日
群馬県知事 大澤正明
<別表1>開示すべき文書
対象公文書/開示すべき部分
本件公文書2:杭伏図・柱状図・敷地断面図/各図面名称、杭伏図、「ボーリング柱状図・断面
図」のうち本件工作物の基礎構造に関係する部分を除いた部分、杭仕様の工法及び凡例の項目部分、図面欄外の部分(設計者の印影、確認申請書に記載されていない個人の氏名を除く)
:基礎・地盤説明書/表紙(設計者印影を除く)、1のうち杭工法及び杭の種類の内容部分を除いた部分、2の項目名及び添付資料名称、「ボーリング柱状図・断面図」のうち本件工作物の基礎構造に関係する部分を除いた部分、添付資料2(コア鑑定者及びボーリング責任者の氏名を除く)、添付資料3
本件公文書3:避雷設備設置概要/表紙(設計者等の印影を除く)、避雷設備設置概要の項目及び設置基準
本件公文書4:主要構造部材特記仕様書/表紙(設計者等の印影を除く)
本件公文書5:放散塔構造計算書/表紙(設計者等の印影を除く)、改定履歴、目次(1~4)、1.構造、2.一般事項、2-1構造概要の項目部分、形式内容及び高さ、2-2、2-3(1)
:放散塔基礎構造計算書/表紙(設計者の印影を除く)、目次(1~4)、1.一般事項、1.1工事概要、1.2の2行目まで、1.3の項目名及び(3)(工法内容を除く)、1.4地盤条件(ボーリング柱状図中のコア鑑定者及びボーリング責任者の氏名を除く)
<別表2>「本件対象公文書一覧」、「非開示部分と非開示理由」及び「異議申立人が開示を求める文書」
/対象公文書/非開示部分/非開示理由/申立人が開示を求める文書
1/確認申請書(第一面):-/申請者の建設事務所代表者の印影/条例第14条第3号イ/申請者の印影は、取引上重要なものであり、これを公にすることによって何人にも入手できることとなった場合に、当該法人の権利競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため。/-
2/委任状:-/同上/同上/同上/-
3/建築士免許証の写し:-/本籍地/条例第14条第2号/特定の個人を識別することができるもの又は、個人の権利利益を害するおそれがあるため。/-
4/公図写し:-/住所、氏名、地目、面積、調査・製図者の氏名及び印影/同上/同上/-
5/付近見取り図:-/設計者の印影/同上/同上/-
6/配置図:-/同上/同上/同上/-
7/放散塔全体外形図:本件公文書1/全部/条例第14条第3号イ及び条例第14条第4号/法人である設計者が設計に関する知識・技能を用いて作成した設計図書を公にすることによって何人にも入手できることとなった場合に・、築造物の設計技術のノウハウ等が明らかになり当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため。また、申請者(瓦斯事業者)が築造する施設(公共公益施設)の設計図書を公にすることによって何人にも入手できることとなった場合、当該築造物への不法な侵入・破壊活動等に利用される可能性があり、もって公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあるため。/○
8/杭伏図・柱状図・敷地断面図:本件公文書2/全部/同上/同上/○
9/放散塔基礎詳細図・構造特記仕様書:本件公文書1/全部/同上/同上/○
10/PHC杭用継手金具姿図:本件公文書1/全部/同上/同上/○
11/避雷設備設置概要:本件公文書3/全部//同上/同上/○
12/避雷設備設置概要図:本件公文書3/全部/同上/同上/○
13/避雷突針姿図:本件公文書3/全部/同上/同上/○
14/ダイヒカップリング姿図:本件公文書3/全部/同上/同上/○
15/鉄骨用接続端子姿図:本件公文書3/全部/同上/同上/○
16/導線取付金物姿図:本件公文書3/全部/同上/同上/○
17/ビニル管取付金物姿図:本件公文書3/全部/同上/同上/○
18/端子ボックス姿図:本公文書3/全部/同上/同上/○
19/接地銅板姿図:本件公文書3/全部/同上/同上/○
20/基礎・地盤説明書:本件公文書2/全部/同上/同上/○
21/主要構造部材特記仕様書:本件公文書4/全部/同上/同上/○
22/使用構造材料一覧表:本件公文書4/全部/同上/同上/○
23/放散塔構造計算書:本件公文書5/全部/同上/同上/○
24/放散塔基礎構造計算書:本件公文書5/全部/同上/同上/○
25/確認申請書(第二面)/-(全部開示)/-
26/申請敷地の現状写真/-(全部開示)/-
この決定書の謄本は原本と相違ないことを証明する。
平成22年6月3日
群馬県知事 大澤正明
*********
■そして、6月14日(月)午前10時に高崎土木事務所で、部分開示された資料を受領しました。上記に示してありますが、テロリスト呼ばわりされた住民に対して、いかにつまらない情報しか提供しようとしないのか、東京ガスの姿勢と、それを支える群馬県行政の本質がうかがえます。
東京ガスの施設の安全性が確認できないまま、しかも地元と災害防止協定も結ぼうとしない現状では、東京ガスの施設に危害を加えようとする輩が施設周辺をうろついても、周辺住民としては全て東京ガスがそれらの対策を行う責任があると考えており、万一、事故や災害が発生した場合には、東京ガスに全ての責任があると認識するほかはありません。
【ひらく会情報部・東京ガス高圧ガス導管敷設問題研究班】
しかし、同年2月27日付部分開示決定で、ごく一部しか開示されなかったため、当会は、同年4月13日付で群馬県知事に対して異議申立をしました。
そして、それからなんと1年以上経過した平成22年4月22日に群馬県公文書開示審査会から群馬県知事に答申が出たことは、当会のブログで報告済みですが、その後平成22年6月3日付けで県知事から異議申立ての決定通知が届き、それに基づき、同6月11日付けの高土第76-6号で、部分開示通知が届きました。
■まず、6月3日付けの異議申立てに対する決定通知を見てみましょう。
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【異議申立てに対する決定通知書】
建第30784-1号
平成22年6月3日
小川 賢 様
群県知事 大澤正明 (建築住宅課)
異議申立てに対する決定について
貴方から平成21年4月13日付けで提起のあった「異議申立て」について、別添謄本のとおり決定したので送付します。
担当:審査指導係 TEL:027-226-3703
【決 定 書】
異議申立人 住所 安中市野殿980 氏名 小川 賢
異議申立人(以下「申立人」という。)から平成21年4月13日付けで提起のあった公文書部分開示決定についての異議申立てに対して、次のとおり決定する。
<主 文>
群馬県知事が平成21年2月27日付けで申立人に対して行った公文書部分開示決定について、申立人が開示すべきとする部分のうち、別表1の開示すべき情報に係る部分についての非開示決定を取り消す。
<理 由>
第1 異議申立ての趣旨及び理由
1 異議申立ての趣旨
本件異議申立ての趣旨は、群馬県知事(以下「当庁」という。)が平成21年2月27日付けで群馬県情報公開条例(以下「条例」という。)第18条第1項の規定に基づき行った「平成20年1 1月6日付けで群馬県建築主事佐藤雅彦名にて、東京瓦斯株式会社群馬幹線建設事務所に出した「H20確認―工群馬県000092」の建築基準法の確認手続きにかかる一切の情報」(以下「本件公文書」という。)の公文書部分開示決定(以下「本件処分」という。)における非開示部分のうち、別表2の「申立人が開示を求める文書」に掲げる部分(以下「本件設計図書」という。)について非開示の取り消しを求めるというものである。
2 異議申立ての理由
申立人が主張している異議申立ての理由は、概ね以下のとおりである。
(1)当庁は設計技術の公表によるノウハウ流出を非開示理由に挙げているが、公文書のタイトルを見る限り、一般的な技術であり、ノウハウ流出とは考えられない。
(2)開示請求をしたのは、放散塔の設計図書である。東京ガスによれば、放散塔は首都圏だけでも数百箇所設置されており、これらは大地震発生に備えて、ガス施設の防災計画の一環として、施設の安全対策として、ガス事業法、消防法、建築基準法、道路法等の諸法規並びに建築学会、土木学会の諸基準及び日本瓦斯協会基準に基づいているものであり、当庁の主張するような「設計事務所に属する設計者の工作物設計に関する知識と独自の技術力を駆使した設計成果品の一部」に相当するものではない。
(3)申立人は、放散塔が設置される地元で生活しており、本件により、生命、健康、生活又は財産の安全を脅かされるので、条例第14条第3号ただし書により、本件非開示情報は公にすることが必要である。
(4)放散塔など防災施設の保安管理の責任は東京ガスにあり、そうした対策は別途措置しているはずである。本件情報を開示したくらいで、保安管理に重大な支障があるとは到底思えない。普段、人気のない当該施設の周辺に居住する地元住民は、むしろ不審者の徘徊等に対して、施設の間接的な監視役の立場にあるといえる。
第2 当庁の認定事実及び判断
1 当庁の認定事実
(1)申立人は、平成21年1月21日付けで、「平成20年11月6日付で群馬県建築主事佐藤雅彦名にて、東京瓦斯株式会社群馬幹線建設事務所に出した「H20確認―工群馬県000092」の建築基準法の確認手続にかかる一切の情報」の開示請求(以下「本件請求」という。)を行った。
(2)当庁は、平成21年2月27日、本件請求に係る公文書を本件公文書であると判断し、条例第14条第2号、第3号イ及び第4号に該当する情報が含まれていることを理由として、本件処分を行い、申立人に通知した。
なお、本件処分における非開示部分及び当該部分を開示しない理由は、別表2のとおりである。
(3)申立人は、行政不服審査法第6条の規定に基づき、平成21年4月13日付けで、本件処分における非開示部分のうち、本件設計図書について非開示の取り消しを求めるという趣旨で、当庁に対し異議申立てを行った。
(4)当庁は、条例第26条の規定に基づき、群馬県公文書開示審査会(以下「審査会」という。)に対して、平成21年5月7日、本件異議申立て事業(以下「本件事業」という。)の諮問を行った。
(5)当庁は、平成21年6月12日付けで、本件処分の理由説明書を審査会に提出した。
(6)申立人は、平成21牟6月18日付けで、当庁が作成した平成21年6月12日付け理由説明書に対する意見書を提出した。
(7)当庁は、審査会から平成22年4月22日付けで、本件処分については、異議申立人が開示すべきとする部分のうち、別表1に掲げる部分は開示すべきであるが、その他の部分については非開示が妥当である旨の答申を受けた。
(8)審査会の答申によれば、設計会社及び築造主(以下「設計会社等」という。)に対して条例第30条第4項に基づき陳述依頼を求め、当該設計会社等から平成21年11月24日付け回答書が提出された。さらに、平成21年11月30日に開催した第29回群馬県公文書開示審査会第一部会において、同設計会社等の口頭陳述が行われた。
そして審査会は、上記回答書及び口頭陳述における設計会社等の主張は、
①ガス事業関連建設工事分野は、一般の構造物と異なり特殊な技術を含む分野で、その工事の受注については、一定の技術ノウハウを有する複数のエンジニアリング会社による競争入札が通例となっており、いかに高品質かつ低価格の製品を納入するかが勝負となり入礼者間の競争は激化している。
②こうした状況を踏まえ、本件設計図書の開示による正当な利益の侵害について考えると、設計会社等が共同で蓄積した技術ノウハウが公にされることにより、競合する他の事業者が設計図書及び計算書等の技術ノウハヴを入手する可能性がないとはいえず、これらを入手した事業者は、ほとんど労力をかけずに活用することや、手を加えてより優れたものとすることも可能と考えられ、同程度以上の成果を挙げるために払う対価等において、設計会社等が競争上不利益を破る可能性があり、条例第14条第3号イの「正当な利益を害するおそれ」に該当するものと考える。
③また、当該施設はガス安定供給上大変重要な施設であり、万が一でもガス供給が停止しないような設備の設置及び管理を行う必要がある。さらに、都市ガスという可燃性気体を扱うため、当該施設が破壊活動に利用される可能性がある。これらにより、本件設計図書の外部への公開等、第三者による侵入及び破壊活動を容易たらしめるおそれがある行為は最大限排除すべきと考える。
④よって、本件設計図書を公にすることにより、当該築造物への不法な侵入及び破壊活動に利用されるおそれがあるなど、施設保安・管理に支障を生ずるおそれがあり、条例第14条第4号にも該当すると思料する。
であるとした。
2 当庁の判断
(1)本件公文書について
本件公文書は、建築基準法(以下「基準法」という。)第88条第1項において準用する同法第6条第1項に基づき、築造主が本件工作物を築造するに当たり、群馬県建築主事に対しで提出した「確認申請書(工作物)及び添付文書」であり、別表2に掲げる文書によって構成されている。このうち、申立人が開示を求めているのは、本件設計図書の非開示部分である。
(2)本件設計図書の構成について
本件設計図書は、その性質及び内容からみて以下の5つに分類できる。
①一つ目は、「放散塔全体外形図」、「放散塔基礎詳細図・構造特記仕様書」及び「PHC杭用継手金真姿図」(以下「本件公文書1」という。)であり、「放散塔全体外形図」には、本件工作物に係る設計仕様、使用材料の口径・材質、寸法等が記載されており、「放散塔基礎詳細図・構造特記仕様書」及び「PHC杭用継手金具姿図」には、本件工作物基礎の寸法・構造、ボルトの規格・配置数、配筋図・仕様、各部材の寸法等が記載されている。
②二つ目は、「杭伏図・柱状図・敷地断面図」及び「基礎・地盤説明書」(以下「本件公文書2」という。)であり、これらの文書には、本件工作物の地盤に係る土質調査の結果、基礎杭の材質・長さ・仕様、杭支持層の選定、支持地盤、荷重根拠等が記載されている。
③三つ目は、「避雷設備設置概要」、「避雷設備設置概要図」、「避雷突針姿図」、「ダイヒカップリング姿図」、「鉄骨用接続端子姿図」、「導線取付金物姿図」、「ビニル管取付金物姿図」、「端子ボックス姿図」及びヽ「接地銅板姿図」(以下「本件公文書3」という。)であり、これらの文書には、本件工作物に設置される避雷設備の概要、設置方法、材料種別、数量、各部材の詳細寸法等が記載されている。
④四つ目は、「主要構造部材特記仕様書」及び「使用構造材料一覧表」(以下「本件公文書4」という。)であり、これらの文書には、本件工作物に使用される構造材及び材料規格、主要溶接構造等が記載されている。
⑤五つ目は、「放散塔構造計算書」及び「放散塔基礎構造計算書」(以下「本件公文書5」という。)であり、これらの文書は基準法等に基づき作成された計算書であり、本件工作物の構造及び基礎構造の詳細や構造計算の設定、結果等が記載されている。
(3)本件公文書1について
①条例第14条第3号イの該当性について
当庁が条例第14条第3号イに該当することを理由に非開示としたうち、「放散塔全体外形図」には、本件工作物に係る設計仕様、使用材料の口径・材質、寸法等が詳細に記載されており、「放散塔基礎詳細図・構造特記仕様書」及び「PHC杭用継手金具姿図」には、本件工作物基礎の寸法・構造、設計計算に基づくボルト配置数・規格、配筋図・仕様、杭用継手金具部材の寸法等が詳細に記載されている。
一般に、建築物の設計に関して設計者は、土地の地耐力等を把握し、最も適切な部材、寸法を選択し、必要かつ十分な強度を確保しつつ、建設費を一定の経費内に納めなければならないなど種々の要素を勘案して設計図面等を作成しており、建築物を建築するための設計図面等には、設計者の創意工夫又はノウハウが含まれているものである。この点、特殊な施設である本件工作物に係る設計技術は、設計会社等がこれまで蓄積してきた技術経験やノウハウを踏まえたもの々あることは、設計会社等の(平成21年11月24日付け回答書及び口頭陳述による)主張に基づく審査会の答申からも明らかである(前記第2、1(8)①、②)。
特に、本件公文書1には、放散塔及び基礎の形状、放散塔上部と基礎との接続において、いかに強度を確保しつつ建設費の抑制等、設計会社等がこれまで蓄積してきた技術経験やノウハウを踏まえた設計上の工夫、使用部材の選定等、設計技術上の詳細な情報が記載されていることが認められる。
これらの情報を公にした場合、他の事業者に設計上の技術的ノウハウが知られることとなり、容易に模倣され、延いては設計会社等が競争上の不利益を被ることとなる事態も否定できないと考えられる。
したがって、本件公文書1を公にすることにより、設計会社等の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあると認められるから、本件公文書1に係る情報は条例第14条第3号イに該当する。
②条例第14条第3号ただし書の該当性について
本件工作物の確認申請は、群馬県建築主事の審査を受け、確認済証が交付されているのであるから、建築基準関係規定に適合していると考えられる。一方、申立人の主張からは、本件工作物に関し明らかな危険性が存在するものと認めるに足る特段の事情は窺われない。
したがって、将来発生する可能性の極めて高い人の生命、健康、生活又は財産に対する危険や損害を未然に防止するために、本件公文書1を開示することが必要であると認められないから、本件公文書1に係る情報は条例第14条第3号ただし書に該当しない。
③条例第14条第4号の該当性について
前記①で述べたとおり、本件公文書1には、放散塔及び基礎の形状、放散塔上部と基礎との接続などの点において、設計技術上の詳細な情報が記載されていることが認められる。
これらの情報を公にすることによって何人にも入手できることとなった場合、本件工作物への不法侵入及び破壊活動に利用されるおそれがあるなど、犯罪を誘発し又は犯罪の実行を容易にする可能性があり、施設保安・管理に支障を生じるおそれがあると認められるから、上記情報は条例第エ4条第4号に該当する。
④本件公文書1のすべてを非開示とすることの妥当性について
本件公文書1の欄外には、それぞれ工事名称、図面名称、設計会社、建築士の氏名及び図面作成目等が記載されている。これらの情報に関しては、設計図面等に記載される一般的項目であり、設計会社等の設計上の技術的ノウハウは旱やられない。また、これらの情報が公にされたとしても、本件工作物への不法侵入及び破壊活動に利用されるおそれがあると認めるに足る特段の事情は窺われない。
ところで、設計会社及び建築士等に係る記載部分については、確認申請書に記載されていない個人の氏名及び印影が記載及び表示されていることが認められる。当該個人の氏名,及び印影は、特定の個人を識別することのできる情報と認められ、これらは条例第14条第2号に該当する。
しかしながら、本件公文書1から前記①及び③で示した非開示情報に該当する部分及び上記の個人情報に該当する部分を除くと、既に申立人に開示されている確認申請書等に記載された情報と同様のものしか残らず、これらの情報は客観的に申立人にとって有意な情報であるとは認められない。
⑤まとめ
以上の次第であるから、本件公文書1は非開示とする,
(4)本件公文書2について
①条例第14条第3号イの該当性について
ア 「杭伏図・柱状図・敷地断面図」について
「杭伏図・柱状図・敷地断面図」には、本件工作物の詳細位置を示した「杭伏図」、本件工作物の地盤に係る土質調査の結果を表したボーリング柱状図に、設計会社が本件工作物の基礎構造園を追加記載した「ボーリング柱状図・断面図」、杭の材質、仕様及び詳細寸法等を示した「杭仕様」並びに「杭頭詳細図」が記載されている。
(ア)「杭伏図」について
「杭伏図」は、本件工作物の建設予定地の敷地形状や隣地境界線からの本件工作物の基礎位置を示したもので、設計会社等の設計上の技術的ノウハウに関する情報とは認められない。また、これらの情報は、申立人に既に開示している「配置図」に記載された情報と同様のものであるから、杭伏図に係る情報は条例第14条第3号イに該当しない。
(イ)「ボーリング柱状図・断面図」について
「ボーリング柱状園・断面図」は、本件工作物建設予定地の地盤に係る土質調査の結果を表したもので、設計会社等の設計上の技術的ノウハウに関する情報とは認められない。しかし、「ボーリング柱状図」中の標準貫入試験N値欄に設計会社が本件工作物の基礎構造図を追加記載しており、この部分については、本件工作物の構造に関係する情報と認められ、これら公にすると、本件工作物の構造設計に関する事項が明らかとなり、他の事業者が構造設計に関係するノウハウを活用することで、設計会社等の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあると認められる。
したがって、「ボーリング柱状図・断面図」のうち、本件工作物の基礎構造に関する情報は条例第14条第3号イに該当するが、それ以外の.情報は条例第14条第3号イに該当しない。
(ウ)I「杭仕様」及び「杭頭詳細図」について
「杭仕様」及び「杭頭詳細図」には、本件工作物の基礎に使用する杭の材質、仕様、本数、詳細寸法等が記載されており、設計会社等がこれまで蓄積してきた技術経験やノウハウを踏まえた使用部材の選定等、設計技術上の詳細な情報が記載されていることが認められる。しかし、杭仕様を示した表の項目部分は一般的項目であり、設計会社等の設計上の技術的ノウハウは認められない。
したがって、「杭仕様」及び「杭頭詳細図」のうち、杭仕様を示した表の項目部分に係る情報は条例第14条第3号イに該当しないが、それ以外の情報は条例第14条第3号イに該当する。
(エ)「杭伏図・柱状図・敷地断面図」の欄外の記載事項について
「杭伏図・柱状図・敷地断面図」の欄外には、工事名称、図面名称、設計会社、建築士の氏名及び図面作成日等が記載されている。これらの情報に関しては、設計図面等に記載される一般的項目であり、設計会社の設計上の技術的ノウハウは認められないから、同欄外の情報は条例第14条第3号イに該当しない。
イ 「基礎・地盤説明書」について
「基礎・地盤説明書」には、基礎の種類、基礎杭の先端位置、荷重根拠等が記載されており、風、地震等に対応するための技術的な工夫や設計会社がこれまで蓄積してきた技術経験やノウノハウを踏まえた使用部材及び規格の選定等、設計技術上の詳細な情報であると認められる。これらを公にすると、他の事業者に設計上の技術的ノウハウが知られることとなり、容易に模倣されるなど設計会社等の競争上の地位が損なわれるおそれがあると認められる。しかし、「基礎・地盤説明書」のうち、表紙、項目、添付資粁の名称及び杭仕様を示した表の項目部分については、一般的なものであり設計会社等の設計上の技術的ノウハウに関する情報とは認められず、
また、添付資料2「ボーリング柱状図」及び添付資料3「地質断面図」についても、前記ア(イ)で述べたとおり、土質調査の結果を表したものにすぎない。
したがって、これらの情報は条例第14条第3号イに該当しないが、それ以外の情報は条例第14条第3号イに該当する。
また、「基礎・地盤説明書」には、本件公文書2の「ボーリング柱状図・断面図」と同様の図も記載されているが、前記ア(イ)で述べたとおり、本件工作物の基礎構造に関する情報は条例第14条第3号イに該当するが、それ以外の情報は条例第14条第3号イに該当しない。
②条例第14条第3号ただし書の該当性について
前記①により条例第14条第3号イに該当するとした情報については、前記(3)②で述べた理由と同様の理由により、同号ただし書に該当しない。
③条例第14条第2号の該当性について
前記①ア(エ)及びイにより条例第14条第3号イに該当しないとした情報には、確認申請書に記載されていない個人の氏名及び印影が記載及び表示されていることが認められる。個人の氏名及び印影は、特定の個人を識別することのできる情報と認められるから、これらは条例第14条第2号に該当する。
④条例第14条第4号の該当性について
前記①において条例第14条第3号イに該当しないとした情報について条例第14条第4号の該当性を検討すると、これらの情報は、本件工作物の基礎位置を示したものや土質調査結果、杭仕様を示した表の項目部分、設計図面等に記載される一般的項目を示したものに過ぎず、これらの情報が公にされたとしても、本件工作物への本法侵入及び破壊活動に利用されるおそれがあると認めるに足りる特段の事情は窺われない。したがって√前記①において条例第14条第3号イに該当しないとした情報は条例第14条第4号にも該当しない。
しかし、前記①において条例第14条第3号イに該当するとした情報は、本件工作物の構造に関係する情報や使用部材等に関係する情報であり、これらの情報を公にすることによって何人にも入手できることになった場合、本件工作物への不法侵入及び破壊活動に利用されるおそれがあるなど、犯罪を誘発し又は犯罪の実行を容易にする可能性があり、施設保安・管理に支障を生じるおそれがあると認められるから、当該情報は条例第14条第4号に該当する。
⑤まとめ
以上の次第であるから、本件公文書2のうち、別表1に掲げる部分については開示するものとし、その他の部分については非開示とする。
(5)本件公文書3について
①条例第14条第3号イの該当性について
本件公文書3には、本件工作物に設置される避雷設備の設置概要図や設計計算に基づく設置方法及び落雷経路ミ使用部材の種別、数量、寸法等が詳細に記載されており、設計会社等がこれまで蓄積してきた施工実績等に基づく技術経験やノウハウを踏まえた設置基準及び方法、使用部材の選定等、設計技術上の詳細な情報が記載されていることが認められる。これらを公にすると、他の事業者に設計上の技術的ノウハウが知ちれることとなり、容易に模倣されるなど設計会社等の競争上の地位が損なわれるおそれがあると認められる。しかし、表紙、避雷設備設置概要の項目及び設置基準については、避雷設備に関する一般的項目を示したものに過ぎず、設計会社等の設計上の技術的ノウハウに関する情報とは認められない。
したがって、表紙、避雷設備設置概要の項目及び設置基準に係る情報は条例第14条第3号イに該当しないが、それ以外の情報は条例第14条第3号イに該当する。
②条例第14条第3号ただし書の該当性について
前記①により条例第14条第3号イに該当するとした情報については、前記(3)②で迷べた理由と同様の理由により、同等ただし書に該当しない。
③条例第14条第2号の該当性について
前記①により条例第14条第3号ィに該当しないとした「表紙」には、個人及び印影が記載及び表示されていることが認められる。個人の氏名及び印影は、特定の個人を識別することのできる情報と認められるから、これらは条例第14条第2号に該当する.
④条例第14条第4等の該当性について
前記①において条例第14条第3等イに該当しないとした情報について条例第14条第4号の該当性を検討すると、これらの情報は、本件工作物に設置される避雷設備に関する概要を記載した文書の表紙、項目及び設置基準等、一般的項目を示したものに過ぎず、これらの情報が公にされたとしても、本件工作物への不法侵入及び破壊活動に利用されるおそれがあると認めるに足る特段の事情は窺われない。したがって、前記①において条例第14条第3号ィに該当しないとした情報は条例第14条第4号にも該当しない。
しかし、/前記①において条例第14条第3号ィに該当するとした情報は、本件工作物の避雷設備の設置概要図や設計計算に基づく設置方法及び落雷経路、使用部材の種別、数量、寸法等に関係する情報であり、これらの情報を公にすることによって何人にも入手できることになった場合、本件工作物への不法侵入及び破壊活動に利用されるおそれがあるなど、犯罪を誘発し又は犯罪の実行を容易にする可能性があり、施設保安・管理に支障を生じるおそれがあると認められるから・、当該情報は条例第14条第4号に該当する。
⑤本件公文書3のうち「避雷設備設置概要図」のすべてを非開示とすることの妥当性について
「避雷設備設置概要図」の欄外には、本件公文書1と同様に工事名称、図面名称、設計会社、建築士の氏名及び図面作成目等が記載されており、これらの情報に開しては、設計図面等に記載される一般的項目であり、設計会社等の設計上の技術的ノウハウは認められないが、前記(3)④で述べた理由と同様の理由により、「避雷設備設置概要図」全体を非開示とすることが相当である。
⑥まとめ
以上の次第であるから、本件公文書3のうち、別表1に掲げる部分については開示するものとし、その他の部分については非開示とする。
(6)本件公文書4について
①条例第14条第3号イの該当性について
本件公文書4には、本件工作物に使用される構造材の材料、規格、寸法及び溶接材料等が詳細に記載されており、これらには設計会社等がこれまで蓄積してきた施工実績等に基づく技術経験やノウハウを踏まえた使用部材の選定、主要溶接構造等、設計技術上の詳細な情報が記載されていることが詰められる。
これらを公にすると、他の事業者に設計上の技術的ノウハウが知られることとなり、容易に模倣されるなど設計会社等の競争上の地位が損なわれるおそれがあると認められる。しかし、「主要構造部材特記仕様書」の表紙については、設計会社等の設計上の技術的ノウハウに関する情報とは認められない。
したがって、表紙に係る情報は条例第14条第3号イに該当しないが、それ以外の情報は条例第14条第3号イに該当する。
②条例第14条第3号ただし書の該当性について
前記①により条例第14条第3号イに該当するとした情報については、前記(3)②で述べた理由と同様の理由により、同号ただし書に該当しない。
③条例第14条第2号の該当性について
前記①により条例第14条第3号イに該当しないとした「表紙」には、個人の氏名及び印影が記載及び表示されていることが認められる。個人の氏名及び印影は、特定の個人を識別することのできる情報と認められるから、これらは条例第14条第2号に該当する。
④本件公文書4のうち「使用構造材料一覧表」のすべてを非開示とすることの妥当性について
「使用構造材料一覧表」には、前記①で条例第14条第3号イに該当するとした情報を除いた情報には、文書名称、設計会社、建築士の氏名及び一覧表の項目名が記載されており、これらの情報に関しては、設計会社等の設計上の技術的ノウハウは認められないが、前記(3)④で述べた理由と同様の理由により、「使用構造材料一覧表」全体を非開示とすることが相当である。
⑤条例第14条第4号の該当性について
前記①において条例第14条第3号イに該当しないとした「主要構造部材特記仕様書」の表紙に係る情報の条例第14条第4号の該当性について検討すると、これは本件工作物に使用される構造部材に関する内容を記載した文書の表紙に過ぎず、これらの情報が公にされたとしても、本件工作物への不法侵入及び破壊活齢に利用されるおそれがあると認めるに足りる特段の事情は窺われない。
したがって、前記①において条例第14条第3号イに該当しないとした情報は条例第14条第4号にも該当しない。
しかし、前記①において条例第14条第3号イに該当するとした情報は、本件工作物に使用される構造材の材料、規格、寸法及び溶接材料等に関係する情報や使用部材の選定、主要溶接構造等、設計技術に関係する情報であり、これらの情報を公にすることによって何人にも入手できることになった場合、本件工作物への不法侵入及び破壊活動に利用されるおそれがあるなど、犯罪を誘発し又は犯罪の実行を容易にする可能性があり、施設保安・管理に支障を生じるおそれがあると認められるから、当該情報は条例第14条第4号に該当する。
⑥まとめ
以上の次第であるから、本件公文書4のうち、別表1に掲げる部分については開示するものとし、その他の部分については非開示とする。
(7)本件公文書5について
①条例第↓4条第3号イの該当性について
本件公文書5は、本件工作物が自重、地震荷重等に対して安全な構造であることを検証するため、建築基準関係規定等に基づき作成されたものであり、本件工作物の構造及び基礎構造の詳細々構造計算の設定、結果等が記載されている。前記(3)①で述べたとおり、建築物等を建築するための設計図面等には、設計者の創意工夫又はノウハウが含まれているところ、本件公文書5にも、風、地震等に対応するための技術的な工夫や設計会社等がこれまで蓄積してきた技術経験やノウハウを踏まえた使用部材及び規格の選定等、設計技術上の詳細な情報が記載されていることが認められる。これらを公にすると、他の事業者に設計上の技術的ノウハウが知られることとなり、容易に模倣されるなど設計会社等の競争上の地位が損なわれるおそれがあると認められる。しかし、「構造計算書」の表紙、改定履歴、日次のうち基準法で検討項目とされている部分、概要、構造概要の表の項目名及び確認申請書に記載されている内容、環境条件及び適用法規、ミまた「放散塔基礎構造計算書」の表紙、目次のうち基準法で検討項目とされている部分、一般事項の項目名及び確認申請書に記載されている内容については、一般的項目等を示したものに過ぎず、設計会社等の設計上の技術的ノウハウに関する情報とは認められない。また、「放散塔基礎構造計算書」には、地盤条件として本件公文書2のボーリング柱状図が記載されているが、これも前記(4)①ア(イ)で述べたとおり、設計会社等の設計上の技術的ノウハウに関する情報とは認められない。
したがって、これらの情報は条例第14条第3号イに該当しないが、それ以外の情報は条例第14条第3号イに該当する。
②条例第14条第3号ただし書の該当性について
前記①により条例第14条第3号イに該当するとした情報については、前記(3)②で述べた理由と同様の理由により、同号ただし書に該当しない。
③条例第14条第2号の該当性について
前記①により条例第14条第3号イに該当しないとした各表紙及びボーリング柱状図には、個人の氏名及び印影が記載及び表示されていることが認められる。個人の氏名及び印影は、特定の個人を識別することのできる情報と認められるから、これらは条例第14条第2号に該当する。
④条例第14条第4号の該当性について
前記①において条例第14条第3号イに該当しないとした情報のうち、条例第14条第4号の該当性について検討すると、これらは構造計算書の表紙や一般的項目、土質調査結果を示したものに過ぎず、これらの情報が公にされたとしても、本件工作物への不法侵入及び破壊活動に利用されるおそれがあると認めるに足りる特段の事情は窺われない。したがって、前記①において条例第14条第3号イに該当しないとした情報は条例第14条第4号にも該当しない。
しかしながら、前記①において条例第14条第3号イに該当するとした情報は、本件工作物の構造及び基礎構造の詳細や構造計算の設定、結果等に関係する情報であり、これらの情報を公にすることによって何人にも入手できることになった場合、本件工作物への不法侵入及び破壊活動に利用されるおそれがあるなど、犯罪を誘発し又は犯罪の実行を容易にする可能性があり、施設保安・管理に支障を生じるおそれがあると認められるから、当該情報は条例第14条第4号に該当する。
⑤まとめ
以上の次第であるから、本件公文書5のうち、別表1に掲げる部分については開示するものとし、その他の部分については非開示とする。
第3 結論
以上のとおり、平成21年2月27日付け高土第76024号による部分開示決定において非開示とした情報の一部について、群馬県公文書開示審査会の答申を尊重し、条例第15条に規定する部分開示すべき情報に該当すると判断した。
よって、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)第47条第3項の規定により、主文のとおり決定する。
教示
この決定があったことを知った日の翌日から起算して6月以内に、群馬県を被告として(提訴において群馬県を代表する者は、群馬県知事となります。)、決定の取消しの訴えを提起することができます(決定があったことを知った日の翌日から起算して6月以内であっても、決定の日の翌日から起算して1年を経過すると決定の取消しの訴えを提起することができなくなります。)。
平成22年6月3日
群馬県知事 大澤正明
<別表1>開示すべき文書
対象公文書/開示すべき部分
本件公文書2:杭伏図・柱状図・敷地断面図/各図面名称、杭伏図、「ボーリング柱状図・断面
図」のうち本件工作物の基礎構造に関係する部分を除いた部分、杭仕様の工法及び凡例の項目部分、図面欄外の部分(設計者の印影、確認申請書に記載されていない個人の氏名を除く)
:基礎・地盤説明書/表紙(設計者印影を除く)、1のうち杭工法及び杭の種類の内容部分を除いた部分、2の項目名及び添付資料名称、「ボーリング柱状図・断面図」のうち本件工作物の基礎構造に関係する部分を除いた部分、添付資料2(コア鑑定者及びボーリング責任者の氏名を除く)、添付資料3
本件公文書3:避雷設備設置概要/表紙(設計者等の印影を除く)、避雷設備設置概要の項目及び設置基準
本件公文書4:主要構造部材特記仕様書/表紙(設計者等の印影を除く)
本件公文書5:放散塔構造計算書/表紙(設計者等の印影を除く)、改定履歴、目次(1~4)、1.構造、2.一般事項、2-1構造概要の項目部分、形式内容及び高さ、2-2、2-3(1)
:放散塔基礎構造計算書/表紙(設計者の印影を除く)、目次(1~4)、1.一般事項、1.1工事概要、1.2の2行目まで、1.3の項目名及び(3)(工法内容を除く)、1.4地盤条件(ボーリング柱状図中のコア鑑定者及びボーリング責任者の氏名を除く)
<別表2>「本件対象公文書一覧」、「非開示部分と非開示理由」及び「異議申立人が開示を求める文書」
/対象公文書/非開示部分/非開示理由/申立人が開示を求める文書
1/確認申請書(第一面):-/申請者の建設事務所代表者の印影/条例第14条第3号イ/申請者の印影は、取引上重要なものであり、これを公にすることによって何人にも入手できることとなった場合に、当該法人の権利競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため。/-
2/委任状:-/同上/同上/同上/-
3/建築士免許証の写し:-/本籍地/条例第14条第2号/特定の個人を識別することができるもの又は、個人の権利利益を害するおそれがあるため。/-
4/公図写し:-/住所、氏名、地目、面積、調査・製図者の氏名及び印影/同上/同上/-
5/付近見取り図:-/設計者の印影/同上/同上/-
6/配置図:-/同上/同上/同上/-
7/放散塔全体外形図:本件公文書1/全部/条例第14条第3号イ及び条例第14条第4号/法人である設計者が設計に関する知識・技能を用いて作成した設計図書を公にすることによって何人にも入手できることとなった場合に・、築造物の設計技術のノウハウ等が明らかになり当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため。また、申請者(瓦斯事業者)が築造する施設(公共公益施設)の設計図書を公にすることによって何人にも入手できることとなった場合、当該築造物への不法な侵入・破壊活動等に利用される可能性があり、もって公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあるため。/○
8/杭伏図・柱状図・敷地断面図:本件公文書2/全部/同上/同上/○
9/放散塔基礎詳細図・構造特記仕様書:本件公文書1/全部/同上/同上/○
10/PHC杭用継手金具姿図:本件公文書1/全部/同上/同上/○
11/避雷設備設置概要:本件公文書3/全部//同上/同上/○
12/避雷設備設置概要図:本件公文書3/全部/同上/同上/○
13/避雷突針姿図:本件公文書3/全部/同上/同上/○
14/ダイヒカップリング姿図:本件公文書3/全部/同上/同上/○
15/鉄骨用接続端子姿図:本件公文書3/全部/同上/同上/○
16/導線取付金物姿図:本件公文書3/全部/同上/同上/○
17/ビニル管取付金物姿図:本件公文書3/全部/同上/同上/○
18/端子ボックス姿図:本公文書3/全部/同上/同上/○
19/接地銅板姿図:本件公文書3/全部/同上/同上/○
20/基礎・地盤説明書:本件公文書2/全部/同上/同上/○
21/主要構造部材特記仕様書:本件公文書4/全部/同上/同上/○
22/使用構造材料一覧表:本件公文書4/全部/同上/同上/○
23/放散塔構造計算書:本件公文書5/全部/同上/同上/○
24/放散塔基礎構造計算書:本件公文書5/全部/同上/同上/○
25/確認申請書(第二面)/-(全部開示)/-
26/申請敷地の現状写真/-(全部開示)/-
この決定書の謄本は原本と相違ないことを証明する。
平成22年6月3日
群馬県知事 大澤正明
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■そして、6月14日(月)午前10時に高崎土木事務所で、部分開示された資料を受領しました。上記に示してありますが、テロリスト呼ばわりされた住民に対して、いかにつまらない情報しか提供しようとしないのか、東京ガスの姿勢と、それを支える群馬県行政の本質がうかがえます。
東京ガスの施設の安全性が確認できないまま、しかも地元と災害防止協定も結ぼうとしない現状では、東京ガスの施設に危害を加えようとする輩が施設周辺をうろついても、周辺住民としては全て東京ガスがそれらの対策を行う責任があると考えており、万一、事故や災害が発生した場合には、東京ガスに全ての責任があると認識するほかはありません。
【ひらく会情報部・東京ガス高圧ガス導管敷設問題研究班】