■知事・大澤正明が、群馬県知事公舎を週末頻繁にラブホテル代わりに使っていた問題で、市民オンブズマン群馬は、週刊誌がこの問題をスクープした平成23年7月13日以降、大澤正明群馬県知事に対して、情報開示請求や公開質問状、それに知事公舎見学会の申し入れを通じて、真相解明と責任の所在の明確化、そして、再発防止策を追及してきました。その結果、公金の違法不当な支出が見られるため、住民監査請求を群馬県監査委員に行いましたが、監査委員の中に、知事・大澤と同じように不倫問題で女性の人権を踏みにじった人物がいたため、監査結果が歪められるのではないかと懸念しました。平成24年5月2日の監査結果は、懸念された通り、全て棄却とされたため、市民オンブズマン群馬のメンバー2名が同6月1日に、大澤正明知事に、知事・大澤から違法不当な支出ないし不当利得の返還を命ずるように、知事公舎ラブホテル化損害賠償請求を行いました。そして、本日、平成24年7月11日(水)午前11時から11時14分まで、前橋地方裁判所2階の第21法廷で第1回口頭弁論が開かれました。

↑知事と県職員のモラルを問う平成24年(業ウ)第10号事件の第1回口頭弁論が行われる朝の前橋地方裁判所の正面ファサードの様子。↑
■開廷にあたり、傍聴席には20名前後の傍聴者が集まりました。そのうち、被告群馬県の関係者が10名余りで、この問題に関する関心の高さを伺わせました。その他、原告を支援する住民らが3名、取材のためやってきたマスコミ各社(読売、上毛、朝日、毎日、共同通信など)の関係者が数名という構成でした。
原告席には市民オンブズマン群馬の代表と事務局長が陣取り、被告席には、訴訟代理人と管財課職員2名が着席しました。開廷前に、ちょうど、県庁から裁判所に向かう際に前に2名の管財課職員が歩いていて、第21号法廷に入ったため、「おはようございます。ご苦労さんです」と声を掛けましたが、2名の職員は、こわばった顔のまま、こちらの方に目を合わせようともせずに、完全に無視状態でした。
第21号法廷に張り出された紙には、「平成24年7月11日(水) 第21号法廷開廷表」と書かれており、本件事件について次のように記載がありました。
11:00~11:15 第1回弁論 平成24年(行ウ)第10号損害賠償請求事件
原告 鈴木庸 外
被告 群馬県知事 大澤正明 代理人 新井博
担当 民事第1部合議係
裁判長 大野和明
裁判官 佐伯和子
裁判官 毛受裕介
書記官 継田美貴
■午前11時きっかりに、裁判官3名が法廷に姿を現すと、全員起立して一礼をして、早速平成24年(行ウ)第10号知事公舎ラブホテル化損害賠償請求事件の第1回口頭弁論が開始されました。法廷内での当事者間のやり取りは概ね次のようでした。
最初に裁判長が、原告らに向かって、2名の氏名を確認した後、原告側から訴状を陳述しました。陳述といっても、実際に訴状の全文を陳述したわけではなく、既に提出した書面の訴状を「陳述する」と言えば、法廷で全部読み上げたことになるのです。
続いて裁判長が、今度は、被告の訴訟代理人に向かって、答弁書について促すと、代理人の弁護士が「陳述します」と言いました。その後裁判長が再び原告らに向かって、準備書面(1)と(2)が提出されていることを告げたので、原告側が「(それらについて)陳述します」と言いました。
裁判長は原告側に向かって、今度は、「証拠説明書というものを普通、提出することになっているので、証拠書類の内容について、タイトルや日付、原本か写し、請求内容を簡単でいいから原告側から説明したものを出してもらい、被告側がそれについて反論してもらった方が分かりやすい」と訴訟指揮をとってきたので、原告側は「了解しました」と答えました。
裁判長は、また、本件事件の問題点として、ラブホテル代わりに知事公舎が使用されたと言う話は理解できる。また衛生についても分かる。問題なのは、いちばん金額の大きい部分で、改修のため支出したというところであるので、原告側としては、公舎がラブホテル代わりに使われたということを主張したいのかどうか、ということの確認を原告側に求めて来ました。
■原告側は、最初、裁判長が何を言っているのかよく分からず、甲号証で提出した1~4までの証拠書類では不足していると考えて、群馬県に情報開示請求をして入手した文書を全て添付するのか、と勘違いをしました。
全部の証拠文書を添付するとなると、相当時間がかかります。そのため、全部の書類を用意するにはコピーだけでも相当時間がかかることを告げたところ、裁判長は、引用している支出項目に係る文書のそれぞれについて、枝番を付けた上で、上述のように、証拠説明書としてリストを作成すればよい、と分かりやすく説明してくれました。
このことからも、裁判長は、原告側から既に提出済みの訴状や準備書面(1)と(2)について、よく目を通している様子がうかがえました。そのために、本件事件の問題点の本質とも言うべき事項について、ズバリ確認のための質問を原告側にしてきました。
原告側からは、公舎の目的外使用、つまり週末に頻繁に知事・大澤が県有施設をラブホテル代わりに利用していたことにより、施設改修についても当然指示が出ていたはずだが、知事・大澤は入居後、指示を出した覚えがない、と主張していること。となると、勝手に管財課が公舎を改修したことになり、この場合にも、管理規則上、違法不当な支出になること。だが、知事・大澤から指示が何らかの形で出たはずなので、まずはその事実関係を確認する必要があり、その後で、公務とは無関係にラブホテル代わりに使用するために費やした支出について、違法不当性を追求したいこと、を説明したところ、裁判長も原告側の主張をはっきり理解したようです。ついでに原告側は、監査委員がいかに役に立たない存在か、についても、強調しておきました。
そして、裁判長は、知事・大澤がそうした指示を管財課に対して指示をしていることがはっきりした場合には、本当はラブホテル代わりに使用している実態を外から見られたくないために、そのような無用な改修をしたのかどうか、について、被告側にきちんと反論するように求めました。
被告の訴訟代理人の弁護士は、まずは原告側が甲号証をきちんと出してもらうことが先決だと主張しました。しかし、裁判長は、原告側にはいちおう甲号証として枝番をつけて、違法不当支出にかかるそれぞれの開示資料のリストを証拠説明書で提出を求めましたが、それは単に形式上のことであり、被告側には、あらためて、改修の目的や効果として、ラブホテルとして使用していたかどうか、その根拠をきちんと示すためには、外部の目から公舎を遮ることを狙った改修なのかどうかがポイントであることを示唆しました。
■それでもなお、被告の訴訟代理人が怪訝な顔をしていたため、裁判長は非常に分かりやすい例えで、被告に説明しました。つまり、裁判長は、原告が例示した違法不当支出について、被告はその防御のために、公舎の改修工事はどのような規則に基づいて行われたのかを明らかにする必要があるとしました。その上で、しかし、書類などを出してもらっても、会計上の細かいところまでは、読み取れないため、誰でも見て分かりやすい情報として、工事写真のような証拠の提出を被告側に課しました。裁判長は、当然被告には撮影したものがあるはずなので、工事着工前(ビフォー)と、工事完工後(アフター)の様子が分かる写真の提出が必要であるという見方を示したのでした。このやり取りを聞いていた県の管財課の皆さんは、一層顔をこわばらせていました。
それを聞いていた原告側は、「その件に関して一言言わせてもらいます。やはり改修工事が、公舎をラブホテル化するために、どのような目隠し効果等を発揮したのかどうかは、この問題が明るみに出た直後から、知事公舎の内部・外部見学を管財課に申し入れました。肉眼で様子を確認しないと、そうしたことは明らかにされないためです。しかし、管財課は、原告側のそうした再三にわたる知事公舎見学要請に対して、安全上のセキュリティ確保に支障をきたすという理由でことごとく却下しました」と裁判長に強くアピールしました。
裁判長は、原告側の主張に耳を傾けた後、被告に向かって、BeforeとAfterを示す件数はせいぜい20ないし30程度だから、そんなに困難なことではないはずだ、として、まず公舎管理規則の運用について説明を出してもらってから、BeforeとAfterの証拠をだしてもらいたい、と言いました。
これに対して、被告の訴訟代理人は、まだ、甲号証の引用は非常に膨大にならざるを得ないので、原告側からの甲号証の細かな証拠資料の提出が必要だといわんばかりに、縷々主張しました。しかし、裁判長は、住民であり納税者である原告側の県民にそこまで準備させるに必要なないと考えたのでしょう。裁判長は原告側に立証義務を課したことになります。裁判長のこうした訴訟指揮は、非常に理にかなった対応だと感じました。
そして、次回第2回口頭弁論については、夏休みを挟んで、9月19日(水)午前10時30分から、今日と同じく第21号法廷で開催されることに決まりました。次回期日が決まると、全員起立して裁判官の退出を見送りました。
■法廷の外に出ると、マスコミ各社が待ち構えており、予め用意してあった裁判資料の写しを幹事社を初め、各社に配布して、解説をしました。おそらく明日の朝刊には、初公判が開かれたことが簡単に紹介されるものと思われます。
一方、被告の群馬県側は、悲壮感さえ漂わせて、傍聴していた10名ほどの職員らと、訴訟代理人として依頼した弁護士が、第21号法廷に向かう廊下入口の左手にある待合室になだれ込むと、中から鍵をしてシャットアウトし、あれこれ善後策を打ち合わせている様子が部屋の外から伺えました。
そして、オンブズマン会員が、マスコミの取材を終えて、外に出て車で裁判所を出ようとしたところ、被告の群馬県の職員らや訴訟代理人10名余りが、裁判所の入り口から歩道に出て、地裁前にある群馬会館に歩いて向かう光景が見られました。おそらく、食事を採りながらさらに詳細な打合せを行う模様です。

↑最大の危機に直面した群馬県総務部管財課の職員らが急きょ会合を開くために群馬会館に入るところ。↑
■それにしても、せっかく県民納税者でもある原告側から、「おはようございます」と挨拶されたら、会釈の一つくらい返せそうなものです。それが、公務員としての最低限のマナーだと思いますが、今日の群馬県管財課の職員らは、まるで北朝鮮の官吏のようにムスッと黙ったまま、無愛想な反応しか示さなかったことは誠に遺憾であり、残念に思いました。
引き続きこの問題については、都度報告する所存です。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
※参考資料<原告の準備書面(2)>
平成24年(行ウ)第10号 知事公舎ラブホテル化損害賠償請求事件
原 告 鈴木 庸、 小川 賢
被 告 群馬県知事 大澤正明
平成24年7月9日
原 告 準 備 書 面 (2)
前橋地方裁判所 民事第1部合議係 御中
原 告 鈴木 庸 印
同 小川 賢 印
平成24年7月4日付の答弁書に関して、次のとおり陳述する。
第1.被告の資格について
平成14年の地方自治法改正により、地方自治法第242条の2第4号に規定する住民訴訟(いわゆる「4号訴訟」)の構造が抜本的に改正され、従来、職員が個人として被告となっていたものが、首長等の執行機関等が被告となるように改められた。
本件請求では、原告らは、この改正された地方自治法に基づき、地方自治法第242条に定めた手続に沿って、知事・大澤の違法・不当行為により群馬県のこうむった損害を補填するよう住民監査請求を行った。その結果、原告らの請求が監査委員により全て棄却されたため、執行機関である群馬県知事の大澤正明を被告とし、「違法な財務会計行為を行った長又は職員に対する損害賠償請求、あるいは、違法な財務会計行為の相手方に対して不当利得返還請求をせよ」とする内容の請求を行う「義務付け訴訟」を行っているものである。
したがって、本件請求の根拠とする第242条の2第4号には、被告の群馬県知事大澤正明が、相手方の知事・大澤を対象に、第243条の2第3項にもとづき、被告が、監査委員に対して事実の有無を監査させて、賠償責任の有無及び賠償額を決めさせて、その決定に基づき相手方に賠償を命じることを求めることができることも含まれるが、既に群馬県の監査委員が全く監査をするつもりがなく機能不全状態にあることが、原告らの前置した住民監査請求の手続の過程と結果で明らかになった。そこで、原告らは被告の群馬県知事に対して、本件請求を行ったものである。
本件請求に関連して看過されてならないことは、相手方である知事・大澤の知事公舎の恒常的な目的外使用について、群馬間の実施機関の長以外の職員らも従来からその事実を承知していたにもかかわらず、長年にわたり、知事・大澤の目的外使用を黙認していた上に、知事・大澤が公舎施設を目的外使用し易くするための便宜をも図っていたことである。
このことに関連して、知事・大沢の知事公舎目的外使用の証拠写真とともに、関連記事が週刊新潮平成23年7月13日発売号に掲載された(甲1 監査請求書別紙 事実証明書の(1)参照)が、発売当日の朝、県職員と思しき相当数の人物らが、前橋駅前の売店や同市内の書店や書籍売り場で当該週刊誌を買い占めるという所業に及んだことも、こうした背景をうかがわせる。なお、この件について、知事・大澤は原告らの公開質問状(甲1 監査請求書別紙 事実証明書の(3)参照)に対して回答書(甲1 監査請求書別紙 事実証明書の(4)参照)で、「そのような事実は承知していません。もちろん指示等もしていません」と否定しているが、状況証拠から見ても、週刊誌の買占め行為が組織的に行われたことは事実であることを示唆している。
こうした知事・大澤の為した違法不当行為は、知事・大澤の指示によるものか、或いは職員らが自発的に行っていたものか、住民監査請求をもってしても、その実態が明らかにされなかった。
このことについて、原告らは、前者、すなわち、群馬県の実施機関の長の指示を受けて、長以外の職員らが違法不当行為に加担したものと考えている。いずれにしても、原告らは本件請求を通じて、このことを明らかにする所存である。そのために、原告らは訴状に、被告として群馬県知事大澤正明を明記した。
しかしながら被告は答弁書で、被告として恣意的に「群馬県」とだけしか記載していない。これでは、「群馬県の長である知事」のことなのか、それとも「群馬県の長以外の職員」のことなのか判然としない。よって、被告に確認を求める。(第4 求釈明(1)参照)
第2 答弁書「第3 請求の原因及び原告準備書面(1)に対する認否、反論」に示された被告の主張概要に関する反論等。
1 「2 同第2の(1)について(公舎の目的外使用)」について
(1)住民訴訟の要件不備
被告の主張を全て否認する。
被告は「2 同第2の(1)について(公舎の目的外使用)」で、本件請求が住民訴訟の要件を備えていないと主張し、その理由として『本件では損害も不当利得も該当する余地はない』とし、『違法若しくは不当な公金の支出、財産の取得・・等』に該当しない」ことを挙げている。原告らは、本件請求が、知事公舎という財産の違法・不当な管理に関する事項でもあると考えているが、被告は相手方の為した行為が、本当に第242条の2第1項第4号に該当しないと判断しているのか、そうであれば、詳しく理由を明らかにされたい。(第4 求釈明(2)参照)
(2)目的外使用との主張について
被告の主張を全て否認する。
被告(実施機関の長、或いは長以外?)は、群馬県公舎管理規則を都合よく解釈して縷々釈明しているが、県民の常識としては、①知事公舎は県有施設であること、②その知事用に公金を投入して整備された施設に、公舎管理規則に定めのない、県に勤務していない非職員(=知事・大澤の愛人)を恒常的に週末にたびたび宿泊させる(週刊新潮平成23年7月13日号によれば、2010年(平成22年)だけで30回、2011年(平成23年)は既に13回は泊めた、と指摘あり)という行為が、公舎管理規則に合致する行為であるとは、常識のある県民の誰ひとり思いもよらないことであろう。
なお、被告は、「本件では、知事が公舎に居住していることは明らかであり」と主張するが、実際には相手方の知事・大澤は、平成23年5月の会見で、知事公舎について「大きすぎる」との立場を示し、「知事公舎は週に1、2回しか使っていない」と明かしていた。また、週刊新潮発売日の平成23年7月13日の会見では「今後について廃止も含め第3者委員会を設けて検討したい、と語っていた。このことは、知事・大澤が、知事公舎に単身で居住する動機としては、週末に自宅に戻らず、愛人と過ごすことしか脳裏に浮かんでこないため、という見方も成り立つ。すなわち、知事・大澤にとって、知事公務で公舎に居住する必要性については常日頃、自問自答していたため、こうした発言に繋がったと言える。
また、家族ではなく、愛人と二人だけで過ごすには、たしかに知事・大澤の言うとおり、知事公舎は「大きすぎる」のであろう。何しろ、することが限られるからだ。
このことから、被告のいうとおり、知事・大澤は、公舎に居住(ただし、殆どが週末の1日、2日だけで、しかも単身でなく愛人と一緒に居住)していたことがあることは確かであり、少なくとも、平成23年7月7日の午後から翌8日の午前に掛けて、愛人と一緒に居住していたことは、自ら会見で認めている。公私混同もここまでくると明らかに意図的であり、長以外の職員らもこのことを知らないわけがない。
被告は、相手方の知事・大澤による群馬県公舎管理規則の目的外使用について、「その使用形態が目的に沿っているかどうかは、知事が居住に供しているかどうかで判断される」と、この重大な問題を意図的にはぐらかしているが、被告の主張は失当である。なぜなら、群馬県公舎管理規則では、第二条(定義)において「公務の円滑な運営をはかるため、県に勤務する職員の居住に供する目的を持って設置した施設をいう」と定めており、非職員は家族、使用人以外を除いて、居住できないことになっている。この点について、相手方の知事・大澤は、宿泊させていた愛人とされる知人女性について「家族同様の付き合いをしている」という趣旨のことを平成23年7月13日の会見で述べている。しかし、家族同様の付き合いをしている関係をいくら強調したところで、家族や使用人とは本質的に異なる。また、宿泊させていた愛人とされる知人女性については、当時、知事・大澤が運営する社会福祉法人明光会の特養老人ホームで幹部を務めていたとされるが、その場合でも、管理規則にある“使用人”と見なすことは困難である。
したがって、被告の「上記規則第8条第1項で禁止されている行為に該当する事項すら存在しない」という主張は失当であり、同条第1項第2号に定める禁止行為である「職員と生計を一にするもの以外の者(使用人を除く)を同居させること」に抵触することは明らかである。ついでに言えば、上記規則第4条には、居住資格が明記されており、知事・大澤の愛人に居住資格のないことは明らかである。
同条第2項では「前項の規定に違反した使用者については、知事又は地域機関等の長は、公舎の退去を命じることができる」と定めてあり、実際に、本件で被告が、知事・大澤に対して公舎の退去命令を出したのかどうかは確認されていないが、知事・大澤が平成23年7月31日をもって、公舎を退去したことは事実である。
このことからしても、被告も知事・大澤も、知事・大澤の為した行為が、上記規則第8条で禁止されている行為に該当する、と認識していたことは明らかである。
また、「2010年(平成22年)だけで30回、2011年(平成23年)は既に13回は泊めた、と指摘あり、と報道された行為が事実であれば、公舎を恒常的にラブホテル代わりに利用していたことになり、上記規則第8条第1項第3号の「転貸し、又は目的外に使用すること」に違背することは明らかである。
2 「3 同第2の(2)について(公舎の改修について)」について
(1)改修工事の必要性
被告の主張をすべて否認する。
答弁書では、被告の訴訟代理人がまだ実情をよく認識していないようなので、あらためて、原告らは次の点を指摘しておく。
群馬県公舎管理規則第8条第1項で禁止されている行為に該当する事項として、同条第1項第1号に「構築し、改築し、若しくは模様替えをし又は工作物を設置すること」の定めがあり、ただし書きとして、「第1号及び第2号に掲げる行為で知事又は地域機関等の長の許可を受けたものは、この限りでない」とある。
このため、原告らは、知事公舎の改修について、知事・大澤が入居届を出した入居予定日の平成18年12月1日以降に構築、改築、若しくは模様替え又は工作物を設置したことが、知事の許可を受けたのかどうか確認すべく、被告に対する情報公開請求、知事・大澤に対する公開質問状、そして、現地調査のための視察会申入れを通じて、事実関係を確かめようとした。しかし、結局、知事・大澤が秘書課を通じて管財課にそうした改修工事を命じた経緯があったのかどうかの確認はできなかった。
また、被告である知事・大澤本人も、公開質問状への回答のなかで、「知事公舎に係る改修工事は、公舎管理上の必要性から県(管財課)が行ったものであり、私が入居してから、改修の指示をしたことはありません」と回答しており、目隠しフェンスの設置工事等、公舎の具体的な改修工事に関する原告らの公開再質問状への回答の中でも、「書類の有無は承知していません」とか「詳細は承知していないので、担当課に確認してください」と述べるばかりで、結局、知事・大澤が被告から、知事公舎の改修の許可を受けたのかどうか、確認はできなかった。
確認ができていないため、原告らとしては、知事公舎の改修は群馬県公舎管理規則に基づく手続を踏まえていないと判断せざるを得ない。
そもそも、知事公舎は、「県が公務の円滑な運営を図るため、県に勤務する職員の居住に供する目的をもって設置」(上記規則第2条)されたもので、その居住資格として「公舎を使用することができる者は、県に常時勤務する職員(知事が特に認めた場合は、この限りでない)で公務の円滑な運営を図るため居住の必要があるものに限る」ことになっている。
知事・大沢が、愛人に公舎を使用することを特に認めていたのかどうか、管財課にそのような指示が出されたのかどうか、少なくとも原告らに開示された資料にはそのような証拠文書がないため、原告らは事情が分からない。被告は、この点について、どのように認識しているのか、明らかにされたい。(第4 求釈明(3)参照)
(2)「(2) 原告準備書面(1)について」
①について、被告の主張を全て否認する。
被告が、原告らの監査請求について、1件以上の期限徒過を理由に、大部分の支出について、無効を主張しているが、原告らは、被告や知事・大澤とその指示を受けた長以外の職員が為した全ての情報を入手できたわけではない。限られた情報をもとに、乱訴のそしりをできる限り回避すべく、ぎりぎりまで時間を掛けて、情報収集や収集した資料の分析と評価に努めた上で、真相の追及と責任の所在の明確化をはかるために、監査委員に対して住民監査請求をしたものである。その結果、監査委員の中に知事・大澤と同様に倫理観の欠如した監査委員が関与していたため、原告らの監査請求は、結局、門前払いの形で棄却されて、強引に幕引きをされてしまったのである。
よって、原告らが平成19年までの支出行為に対して住民監査請求を行ったのには、正当な理由があり、原告らには請求の利益がある。
②について、被告の主張を全て否認する。
前項で述べたとおり、知事・大澤は、原告らの公開質問状への回答のなかで、「知事公舎に係る改修工事は、公舎管理上の必要性から県(管財課)が行ったものであり、私が入居してから、改修の指示をしたことはありません」と回答しており、群馬県公舎管理規則第8条第1項により、知事の許可なく為された増築、改築、模様替え、工作物の設置は全て違法・不当であり、これらの改修工事に費やした費用は損害として回収されなければならない。
③について、被告の主張を認め、次のとおり訴状を修正する。
被告の「訴状のP5の(3)の上には、支出項目No.19からNo.29までについて返還を求めるとあるが、蒸気準備書面はこれと合致していない」との指摘については、原告の準備書面(1)で示した支出の内訳が正であり、これにより訴状の「支出項目No.19からNo.29」の部分の後に、「No.30、No.31-3~6、No.32-5~10及びNo.33-1~2」を加える。(第5 訴状の訂正を参照)
3 「4 同第2の(3)について(公舎の衛生費等の支出)」について
(1)被告の「(1) 認否」について
被告が「② 平成20年2月以降平成22年3月まで自己負担ゼロとの主張を否認する。毎月16,700円を支払っている」と主張するが、原告らの開示情報の分析結果によれば、平成19年12月1日に入居以降、知事・大澤が公舎利用料として月額19,496円(平成22年4月1日以降は月額19,490円に変更)を支払っていたことは確認できるが、公舎利用に係る自己負担額について、平成22年3月以前ははっきりと確認できない。このため、被告は、それまで、きちんとした公舎利用料の自己負担分の取り決めが為されて居なかったことを踏まえて、平成23年4月1日付けで管財課長に「公舎利用料の調定について」と題する簡易回議書を起案・決裁させている。((甲1 別紙 事実証明書(14)公舎利用料の調定について参照)
原告らの調査によれば、電気代については、少なくとも平成19年10月以降、知事公舎の電気料金は100%群馬県が負担しており、これが平成20年3月まで継続している。このため、知事・大澤が平成19年12月1日から入居予定していたが、実際には平成20年2月1日頃から入居したとも言われている。電気料金の県側100%負担は、平成20年3月まで続いているのは確かである。このほか、ガス代、上下水道代、電話代、インターネット代が、平成22年3月までの間、被告と知事・大澤との間でどのような負担割合で処理されたのかは判然としない。これらの期間において、上記の公舎利用にかかる自己負担分が、もし被告の言うように毎月1万6700円であったとすれば、この期間においても、公金による知事・大澤の目的外使用にかかる知事公舎の利用経費の過剰補填が行われていたことになる。
また、平成20年2月1日頃からの知事・大澤による実質的な知事公舎の利用開始以降、知事・大澤が、目的外使用を行っていたことについては、目隠しフェンスや植栽にかかる改修工事等の支出状況から、事実であると推察されるに足りる蓋然性がある。
本来、平成22年3月以前の公舎利用料の公金による過剰な補填(公舎利用者への違法・不当な利益供与)についても、被告は、知事・大澤に対して返還請求をすべきところ、本件請求では、平成22年4月1日付の管財課長による「公舎利用料の調定」にかかる決定(甲1 別紙 事実証明書(14)公舎利用料の調定について参照)に基づき、同日以降分のみ、本件請求の対象としたものである。
(2)被告の主張について
全て不知ないし否認する。
知事公舎が知事の公務の円滑な運営を図るために知事の居住に供する目的をもって設置した施設であることは、群馬県公舎管理規則の目的にも書かれている。したがって、私生活の場として、知事公舎の一部利用は、他県の場合、たとえば新潟県の知事公舎などでも認められている。
群馬県の場合、本来の知事公舎(知事・大澤が公約で廃止を言い、当選後、前任の小寺前知事が平成19年8月31日に退居後、平成20年2月4日に用途廃止され、平成20年3月21日に公共施設のあり方検討委員会で廃止について検討され、同年4月24日に検討結果として解体で答申され、その後、夏にかけて解体された)には、前知事が家族と同居していた。
また、知事・大澤が、前知事が使用していた知事公舎に住むことを嫌い、それまで副知事公舎として使用されていた大手1号町1号公舎に目を付けて、そこを愛人と居住するために改修させた今回の知事公舎については、そこに今日中した歴代の副知事のうち、小寺弘之(昭和61年4月1日~平成3年7月31日)は家族5名と同居しており、女屋覚元(平成3年12月30日~平成7年10月7日)は家族1名と同居しており、高山昇(平成8年1月1日~平成15年10月10日)は当初家族3名で途中から家族2名と同居していた。ところが、元・管財課長だった高木勉(平成17年11月9日~平成19年8月3日)から、単身で居住するようになった。
当時、小寺前知事のもとで県総務担当理事だった高木勉は、平成17年10月17日の県議会で、それまでの副知事2人制を全会一致で否決した上で、ただ一人の副知事として承認されたが、おそらく、前知事と県議会との確執から、長期にわたって副知事職には留まれないと判断したらしく、また、出身が子持村だったため、家族の同居はしなかったものと推測される。
このように、歴代の副知事はいずれも公務をこなすため、副知事公舎に家族随伴で居住するケースが多いが、副知事公舎として、「広すぎる」こともなく、問題なく使用されてきたと思われる。ところが、平成19年7月に知事が代わった途端、群馬県の管財課が、知事・大澤の指示もなく勝手に知事公舎に目隠しフェンスを張り巡らしたり、前知事の小寺が長年居住していた本来の知事公舎を解体するにあたり、庭にあったサンゴジュを、隣接マンション側に目隠し用として移植したりした。おそらく、前知事時代に重用された管財課OBの高木勉の人事の激変ぶりを目の当たりにした管財課としては、新知事にゴマをする必要があると痛感したとしても、無理はない。
それにしても、群馬県の知事公舎の場合、本来、長年にわたり知事公舎として利用されてきた本来の知事公舎が、知事・大澤が就任後、耐震強度不足等を理由に解体されたのである。知事・大澤自身も、平成19年の知事選では、「知事公舎は要らない」「自宅からエコカーで通勤する」と言って当選を果たしていたのである。知事・大澤は平成19年7月に当選後、公約に則って、それまで知事公舎として使われてきた本来の知事公舎の解体を早速命じたが(実際の解体は平成20年夏だったらしい)、奇妙なことに、副知事用の公舎だった大手町1号公舎から平成19年8月3日に、元・管財課課長だった高木勉副知事が退去後、同8月に茂原璋男副知事が入居予定だったところ、知事・大澤は、平成19年9月、群馬県南西部を襲った台風9号の被害を契機に、迅速な危機管理対応のためと称して、大手町1号公舎(旧・知事公舎)の入居を決め、浴室などの大改造を命じたのである。このように、在来の知事公舎を壊しておきながら、副知事公舎を愛人との居住専用の知事公舎にしたて、多額の公金投入による改修を行うなど、矛盾した施策による公金の無駄遣いは到底許されるものではない。
しかも、知事・大澤は、太田市内の自宅から家族を呼び寄せることもせず、当初から同居者「0」として大手町1号公舎(=知事公舎)への入居届を出し、セキュリティの充実と称して、目隠しフェンスや隣接マンションからの人目をはばかる為の植栽工事など、愛人を居住させるためのプライバシー対策を当然の改修だと不思議にも思わず、知事公舎で逢引を重ねていたのである。こうして、知事・大澤は、公務の円滑な運営とは名ばかりの週末の不倫業務に精を出していたのである。このために支出された費用は、本来、被告が、知事・大澤に対して、全額負担させるべきものである。
被告は、「これは群馬県公舎管理規則第9条に規定している『特別の事情』に該当するものであり、手続き上何ら問題はない。他県でも同様にしているのが一般的であり、群馬県でも歴代この方法がとられている」と主張するが、同第9条に定める「特別な事情」として、知事・大澤が必要と認めた場合に相当するのかどうか、原告らには確認のしようがない。
しかも、原告らの平成23年12月19日付の公開再質問状の質問(17)で、原告らはこの自己負担分の根拠について知事・大澤に質したところ、平成23年12月26日付の回答で、知事・大澤は「自己負担額の設定根拠は承知していません」という見解を示してきた。
このことから、被告の言う同規則第9条ただし書きの「ただし、特別の事情があって知事が必要と認めた場合は、県が負担する」という説明に理由がない。もし、知事・大澤が、目的外使用として、愛人を居住させた際の光熱費等について、事前に「必要と認めた」証拠があれば、どんな内容なのか、それを確認する必要がある。(第4 求釈明(4)参照)
さらに、被告は「その金額は一般的な家計調査等の数値を基準として算出されたものである」として、数値の合理性を強調しているが、どのような数値をもとに算出したのか、原告らはそれらを確認する必要がある。(第4 求釈明(5)参照)
第4.求釈明
(1)被告は、答弁書の被告として恣意的に「群馬県」とだけしか記載していない。これでは被告が「群馬県の長である知事」のことなのか、それとも「群馬県の長以外の職員」のことなのか、あるいは両方なのか、判然としない。よって、被告に具体的に確認することを求める。
(2)原告らは、本件請求が、知事公舎という財産の違法・不当な管理に関する事項でもあると考えているが、被告は相手方の為した行為が、本当に第242条の2第1項第4号に該当しないと判断したのか、詳しく理由を明らかにされたい。
(3)知事公舎は、「県が工務の円滑な運営を図るため、県に勤務する職員の居住に供する目的をもって設置」(群馬県公舎管理規則第2条)されたもので、その居住資格として「公舎を使用することができる者は、県に常時勤務する職員(知事が特に認めた場合は、この限りでない)で公務の円滑な運営を図るため居住の必要があるものに限る」ことになっている。知事・大沢が、愛人の公舎居住を特に認めていたのかどうか、原告らは知らないが、被告は、この点について、どのように認識しているのか、明らかにされたい。
(4)被告の言う群馬県公舎管理規則第9条ただし書き「ただし、特別の事情があって知事が必要と認めた場合は、県が負担する」という説明の理由付けとして、知事・大澤が、目的外使用として、愛人を居住させた際の光熱費等を含め、事前にどのような「特別の事情」があり、「必要と認めた」のか、原告らはそれらを確認する必要があるので、証拠等を示して明らかにされたい。
(5)被告は「その(自己負担分の)金額は一般的な家計調査等の数値を基準として算出されたものである」として、数値の合理性を強調しているが、どのような数値をもとに算出したのか、原告らはそれらを確認する必要があるので、証拠等を示して明らかにされたい。
第5 訴状の訂正
訴状のページ5/9の下から14行目、「支出項目No.19からNo.29」の部分の後に、「、No.30、No.31-3~6、No.32-5~10及びNo.33-1~2」を付け加える。
以上

↑知事と県職員のモラルを問う平成24年(業ウ)第10号事件の第1回口頭弁論が行われる朝の前橋地方裁判所の正面ファサードの様子。↑
■開廷にあたり、傍聴席には20名前後の傍聴者が集まりました。そのうち、被告群馬県の関係者が10名余りで、この問題に関する関心の高さを伺わせました。その他、原告を支援する住民らが3名、取材のためやってきたマスコミ各社(読売、上毛、朝日、毎日、共同通信など)の関係者が数名という構成でした。
原告席には市民オンブズマン群馬の代表と事務局長が陣取り、被告席には、訴訟代理人と管財課職員2名が着席しました。開廷前に、ちょうど、県庁から裁判所に向かう際に前に2名の管財課職員が歩いていて、第21号法廷に入ったため、「おはようございます。ご苦労さんです」と声を掛けましたが、2名の職員は、こわばった顔のまま、こちらの方に目を合わせようともせずに、完全に無視状態でした。
第21号法廷に張り出された紙には、「平成24年7月11日(水) 第21号法廷開廷表」と書かれており、本件事件について次のように記載がありました。
11:00~11:15 第1回弁論 平成24年(行ウ)第10号損害賠償請求事件
原告 鈴木庸 外
被告 群馬県知事 大澤正明 代理人 新井博
担当 民事第1部合議係
裁判長 大野和明
裁判官 佐伯和子
裁判官 毛受裕介
書記官 継田美貴
■午前11時きっかりに、裁判官3名が法廷に姿を現すと、全員起立して一礼をして、早速平成24年(行ウ)第10号知事公舎ラブホテル化損害賠償請求事件の第1回口頭弁論が開始されました。法廷内での当事者間のやり取りは概ね次のようでした。
最初に裁判長が、原告らに向かって、2名の氏名を確認した後、原告側から訴状を陳述しました。陳述といっても、実際に訴状の全文を陳述したわけではなく、既に提出した書面の訴状を「陳述する」と言えば、法廷で全部読み上げたことになるのです。
続いて裁判長が、今度は、被告の訴訟代理人に向かって、答弁書について促すと、代理人の弁護士が「陳述します」と言いました。その後裁判長が再び原告らに向かって、準備書面(1)と(2)が提出されていることを告げたので、原告側が「(それらについて)陳述します」と言いました。
裁判長は原告側に向かって、今度は、「証拠説明書というものを普通、提出することになっているので、証拠書類の内容について、タイトルや日付、原本か写し、請求内容を簡単でいいから原告側から説明したものを出してもらい、被告側がそれについて反論してもらった方が分かりやすい」と訴訟指揮をとってきたので、原告側は「了解しました」と答えました。
裁判長は、また、本件事件の問題点として、ラブホテル代わりに知事公舎が使用されたと言う話は理解できる。また衛生についても分かる。問題なのは、いちばん金額の大きい部分で、改修のため支出したというところであるので、原告側としては、公舎がラブホテル代わりに使われたということを主張したいのかどうか、ということの確認を原告側に求めて来ました。
■原告側は、最初、裁判長が何を言っているのかよく分からず、甲号証で提出した1~4までの証拠書類では不足していると考えて、群馬県に情報開示請求をして入手した文書を全て添付するのか、と勘違いをしました。
全部の証拠文書を添付するとなると、相当時間がかかります。そのため、全部の書類を用意するにはコピーだけでも相当時間がかかることを告げたところ、裁判長は、引用している支出項目に係る文書のそれぞれについて、枝番を付けた上で、上述のように、証拠説明書としてリストを作成すればよい、と分かりやすく説明してくれました。
このことからも、裁判長は、原告側から既に提出済みの訴状や準備書面(1)と(2)について、よく目を通している様子がうかがえました。そのために、本件事件の問題点の本質とも言うべき事項について、ズバリ確認のための質問を原告側にしてきました。
原告側からは、公舎の目的外使用、つまり週末に頻繁に知事・大澤が県有施設をラブホテル代わりに利用していたことにより、施設改修についても当然指示が出ていたはずだが、知事・大澤は入居後、指示を出した覚えがない、と主張していること。となると、勝手に管財課が公舎を改修したことになり、この場合にも、管理規則上、違法不当な支出になること。だが、知事・大澤から指示が何らかの形で出たはずなので、まずはその事実関係を確認する必要があり、その後で、公務とは無関係にラブホテル代わりに使用するために費やした支出について、違法不当性を追求したいこと、を説明したところ、裁判長も原告側の主張をはっきり理解したようです。ついでに原告側は、監査委員がいかに役に立たない存在か、についても、強調しておきました。
そして、裁判長は、知事・大澤がそうした指示を管財課に対して指示をしていることがはっきりした場合には、本当はラブホテル代わりに使用している実態を外から見られたくないために、そのような無用な改修をしたのかどうか、について、被告側にきちんと反論するように求めました。
被告の訴訟代理人の弁護士は、まずは原告側が甲号証をきちんと出してもらうことが先決だと主張しました。しかし、裁判長は、原告側にはいちおう甲号証として枝番をつけて、違法不当支出にかかるそれぞれの開示資料のリストを証拠説明書で提出を求めましたが、それは単に形式上のことであり、被告側には、あらためて、改修の目的や効果として、ラブホテルとして使用していたかどうか、その根拠をきちんと示すためには、外部の目から公舎を遮ることを狙った改修なのかどうかがポイントであることを示唆しました。
■それでもなお、被告の訴訟代理人が怪訝な顔をしていたため、裁判長は非常に分かりやすい例えで、被告に説明しました。つまり、裁判長は、原告が例示した違法不当支出について、被告はその防御のために、公舎の改修工事はどのような規則に基づいて行われたのかを明らかにする必要があるとしました。その上で、しかし、書類などを出してもらっても、会計上の細かいところまでは、読み取れないため、誰でも見て分かりやすい情報として、工事写真のような証拠の提出を被告側に課しました。裁判長は、当然被告には撮影したものがあるはずなので、工事着工前(ビフォー)と、工事完工後(アフター)の様子が分かる写真の提出が必要であるという見方を示したのでした。このやり取りを聞いていた県の管財課の皆さんは、一層顔をこわばらせていました。
それを聞いていた原告側は、「その件に関して一言言わせてもらいます。やはり改修工事が、公舎をラブホテル化するために、どのような目隠し効果等を発揮したのかどうかは、この問題が明るみに出た直後から、知事公舎の内部・外部見学を管財課に申し入れました。肉眼で様子を確認しないと、そうしたことは明らかにされないためです。しかし、管財課は、原告側のそうした再三にわたる知事公舎見学要請に対して、安全上のセキュリティ確保に支障をきたすという理由でことごとく却下しました」と裁判長に強くアピールしました。
裁判長は、原告側の主張に耳を傾けた後、被告に向かって、BeforeとAfterを示す件数はせいぜい20ないし30程度だから、そんなに困難なことではないはずだ、として、まず公舎管理規則の運用について説明を出してもらってから、BeforeとAfterの証拠をだしてもらいたい、と言いました。
これに対して、被告の訴訟代理人は、まだ、甲号証の引用は非常に膨大にならざるを得ないので、原告側からの甲号証の細かな証拠資料の提出が必要だといわんばかりに、縷々主張しました。しかし、裁判長は、住民であり納税者である原告側の県民にそこまで準備させるに必要なないと考えたのでしょう。裁判長は原告側に立証義務を課したことになります。裁判長のこうした訴訟指揮は、非常に理にかなった対応だと感じました。
そして、次回第2回口頭弁論については、夏休みを挟んで、9月19日(水)午前10時30分から、今日と同じく第21号法廷で開催されることに決まりました。次回期日が決まると、全員起立して裁判官の退出を見送りました。
■法廷の外に出ると、マスコミ各社が待ち構えており、予め用意してあった裁判資料の写しを幹事社を初め、各社に配布して、解説をしました。おそらく明日の朝刊には、初公判が開かれたことが簡単に紹介されるものと思われます。
一方、被告の群馬県側は、悲壮感さえ漂わせて、傍聴していた10名ほどの職員らと、訴訟代理人として依頼した弁護士が、第21号法廷に向かう廊下入口の左手にある待合室になだれ込むと、中から鍵をしてシャットアウトし、あれこれ善後策を打ち合わせている様子が部屋の外から伺えました。
そして、オンブズマン会員が、マスコミの取材を終えて、外に出て車で裁判所を出ようとしたところ、被告の群馬県の職員らや訴訟代理人10名余りが、裁判所の入り口から歩道に出て、地裁前にある群馬会館に歩いて向かう光景が見られました。おそらく、食事を採りながらさらに詳細な打合せを行う模様です。

↑最大の危機に直面した群馬県総務部管財課の職員らが急きょ会合を開くために群馬会館に入るところ。↑
■それにしても、せっかく県民納税者でもある原告側から、「おはようございます」と挨拶されたら、会釈の一つくらい返せそうなものです。それが、公務員としての最低限のマナーだと思いますが、今日の群馬県管財課の職員らは、まるで北朝鮮の官吏のようにムスッと黙ったまま、無愛想な反応しか示さなかったことは誠に遺憾であり、残念に思いました。
引き続きこの問題については、都度報告する所存です。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
※参考資料<原告の準備書面(2)>
平成24年(行ウ)第10号 知事公舎ラブホテル化損害賠償請求事件
原 告 鈴木 庸、 小川 賢
被 告 群馬県知事 大澤正明
平成24年7月9日
原 告 準 備 書 面 (2)
前橋地方裁判所 民事第1部合議係 御中
原 告 鈴木 庸 印
同 小川 賢 印
平成24年7月4日付の答弁書に関して、次のとおり陳述する。
第1.被告の資格について
平成14年の地方自治法改正により、地方自治法第242条の2第4号に規定する住民訴訟(いわゆる「4号訴訟」)の構造が抜本的に改正され、従来、職員が個人として被告となっていたものが、首長等の執行機関等が被告となるように改められた。
本件請求では、原告らは、この改正された地方自治法に基づき、地方自治法第242条に定めた手続に沿って、知事・大澤の違法・不当行為により群馬県のこうむった損害を補填するよう住民監査請求を行った。その結果、原告らの請求が監査委員により全て棄却されたため、執行機関である群馬県知事の大澤正明を被告とし、「違法な財務会計行為を行った長又は職員に対する損害賠償請求、あるいは、違法な財務会計行為の相手方に対して不当利得返還請求をせよ」とする内容の請求を行う「義務付け訴訟」を行っているものである。
したがって、本件請求の根拠とする第242条の2第4号には、被告の群馬県知事大澤正明が、相手方の知事・大澤を対象に、第243条の2第3項にもとづき、被告が、監査委員に対して事実の有無を監査させて、賠償責任の有無及び賠償額を決めさせて、その決定に基づき相手方に賠償を命じることを求めることができることも含まれるが、既に群馬県の監査委員が全く監査をするつもりがなく機能不全状態にあることが、原告らの前置した住民監査請求の手続の過程と結果で明らかになった。そこで、原告らは被告の群馬県知事に対して、本件請求を行ったものである。
本件請求に関連して看過されてならないことは、相手方である知事・大澤の知事公舎の恒常的な目的外使用について、群馬間の実施機関の長以外の職員らも従来からその事実を承知していたにもかかわらず、長年にわたり、知事・大澤の目的外使用を黙認していた上に、知事・大澤が公舎施設を目的外使用し易くするための便宜をも図っていたことである。
このことに関連して、知事・大沢の知事公舎目的外使用の証拠写真とともに、関連記事が週刊新潮平成23年7月13日発売号に掲載された(甲1 監査請求書別紙 事実証明書の(1)参照)が、発売当日の朝、県職員と思しき相当数の人物らが、前橋駅前の売店や同市内の書店や書籍売り場で当該週刊誌を買い占めるという所業に及んだことも、こうした背景をうかがわせる。なお、この件について、知事・大澤は原告らの公開質問状(甲1 監査請求書別紙 事実証明書の(3)参照)に対して回答書(甲1 監査請求書別紙 事実証明書の(4)参照)で、「そのような事実は承知していません。もちろん指示等もしていません」と否定しているが、状況証拠から見ても、週刊誌の買占め行為が組織的に行われたことは事実であることを示唆している。
こうした知事・大澤の為した違法不当行為は、知事・大澤の指示によるものか、或いは職員らが自発的に行っていたものか、住民監査請求をもってしても、その実態が明らかにされなかった。
このことについて、原告らは、前者、すなわち、群馬県の実施機関の長の指示を受けて、長以外の職員らが違法不当行為に加担したものと考えている。いずれにしても、原告らは本件請求を通じて、このことを明らかにする所存である。そのために、原告らは訴状に、被告として群馬県知事大澤正明を明記した。
しかしながら被告は答弁書で、被告として恣意的に「群馬県」とだけしか記載していない。これでは、「群馬県の長である知事」のことなのか、それとも「群馬県の長以外の職員」のことなのか判然としない。よって、被告に確認を求める。(第4 求釈明(1)参照)
第2 答弁書「第3 請求の原因及び原告準備書面(1)に対する認否、反論」に示された被告の主張概要に関する反論等。
1 「2 同第2の(1)について(公舎の目的外使用)」について
(1)住民訴訟の要件不備
被告の主張を全て否認する。
被告は「2 同第2の(1)について(公舎の目的外使用)」で、本件請求が住民訴訟の要件を備えていないと主張し、その理由として『本件では損害も不当利得も該当する余地はない』とし、『違法若しくは不当な公金の支出、財産の取得・・等』に該当しない」ことを挙げている。原告らは、本件請求が、知事公舎という財産の違法・不当な管理に関する事項でもあると考えているが、被告は相手方の為した行為が、本当に第242条の2第1項第4号に該当しないと判断しているのか、そうであれば、詳しく理由を明らかにされたい。(第4 求釈明(2)参照)
(2)目的外使用との主張について
被告の主張を全て否認する。
被告(実施機関の長、或いは長以外?)は、群馬県公舎管理規則を都合よく解釈して縷々釈明しているが、県民の常識としては、①知事公舎は県有施設であること、②その知事用に公金を投入して整備された施設に、公舎管理規則に定めのない、県に勤務していない非職員(=知事・大澤の愛人)を恒常的に週末にたびたび宿泊させる(週刊新潮平成23年7月13日号によれば、2010年(平成22年)だけで30回、2011年(平成23年)は既に13回は泊めた、と指摘あり)という行為が、公舎管理規則に合致する行為であるとは、常識のある県民の誰ひとり思いもよらないことであろう。
なお、被告は、「本件では、知事が公舎に居住していることは明らかであり」と主張するが、実際には相手方の知事・大澤は、平成23年5月の会見で、知事公舎について「大きすぎる」との立場を示し、「知事公舎は週に1、2回しか使っていない」と明かしていた。また、週刊新潮発売日の平成23年7月13日の会見では「今後について廃止も含め第3者委員会を設けて検討したい、と語っていた。このことは、知事・大澤が、知事公舎に単身で居住する動機としては、週末に自宅に戻らず、愛人と過ごすことしか脳裏に浮かんでこないため、という見方も成り立つ。すなわち、知事・大澤にとって、知事公務で公舎に居住する必要性については常日頃、自問自答していたため、こうした発言に繋がったと言える。
また、家族ではなく、愛人と二人だけで過ごすには、たしかに知事・大澤の言うとおり、知事公舎は「大きすぎる」のであろう。何しろ、することが限られるからだ。
このことから、被告のいうとおり、知事・大澤は、公舎に居住(ただし、殆どが週末の1日、2日だけで、しかも単身でなく愛人と一緒に居住)していたことがあることは確かであり、少なくとも、平成23年7月7日の午後から翌8日の午前に掛けて、愛人と一緒に居住していたことは、自ら会見で認めている。公私混同もここまでくると明らかに意図的であり、長以外の職員らもこのことを知らないわけがない。
被告は、相手方の知事・大澤による群馬県公舎管理規則の目的外使用について、「その使用形態が目的に沿っているかどうかは、知事が居住に供しているかどうかで判断される」と、この重大な問題を意図的にはぐらかしているが、被告の主張は失当である。なぜなら、群馬県公舎管理規則では、第二条(定義)において「公務の円滑な運営をはかるため、県に勤務する職員の居住に供する目的を持って設置した施設をいう」と定めており、非職員は家族、使用人以外を除いて、居住できないことになっている。この点について、相手方の知事・大澤は、宿泊させていた愛人とされる知人女性について「家族同様の付き合いをしている」という趣旨のことを平成23年7月13日の会見で述べている。しかし、家族同様の付き合いをしている関係をいくら強調したところで、家族や使用人とは本質的に異なる。また、宿泊させていた愛人とされる知人女性については、当時、知事・大澤が運営する社会福祉法人明光会の特養老人ホームで幹部を務めていたとされるが、その場合でも、管理規則にある“使用人”と見なすことは困難である。
したがって、被告の「上記規則第8条第1項で禁止されている行為に該当する事項すら存在しない」という主張は失当であり、同条第1項第2号に定める禁止行為である「職員と生計を一にするもの以外の者(使用人を除く)を同居させること」に抵触することは明らかである。ついでに言えば、上記規則第4条には、居住資格が明記されており、知事・大澤の愛人に居住資格のないことは明らかである。
同条第2項では「前項の規定に違反した使用者については、知事又は地域機関等の長は、公舎の退去を命じることができる」と定めてあり、実際に、本件で被告が、知事・大澤に対して公舎の退去命令を出したのかどうかは確認されていないが、知事・大澤が平成23年7月31日をもって、公舎を退去したことは事実である。
このことからしても、被告も知事・大澤も、知事・大澤の為した行為が、上記規則第8条で禁止されている行為に該当する、と認識していたことは明らかである。
また、「2010年(平成22年)だけで30回、2011年(平成23年)は既に13回は泊めた、と指摘あり、と報道された行為が事実であれば、公舎を恒常的にラブホテル代わりに利用していたことになり、上記規則第8条第1項第3号の「転貸し、又は目的外に使用すること」に違背することは明らかである。
2 「3 同第2の(2)について(公舎の改修について)」について
(1)改修工事の必要性
被告の主張をすべて否認する。
答弁書では、被告の訴訟代理人がまだ実情をよく認識していないようなので、あらためて、原告らは次の点を指摘しておく。
群馬県公舎管理規則第8条第1項で禁止されている行為に該当する事項として、同条第1項第1号に「構築し、改築し、若しくは模様替えをし又は工作物を設置すること」の定めがあり、ただし書きとして、「第1号及び第2号に掲げる行為で知事又は地域機関等の長の許可を受けたものは、この限りでない」とある。
このため、原告らは、知事公舎の改修について、知事・大澤が入居届を出した入居予定日の平成18年12月1日以降に構築、改築、若しくは模様替え又は工作物を設置したことが、知事の許可を受けたのかどうか確認すべく、被告に対する情報公開請求、知事・大澤に対する公開質問状、そして、現地調査のための視察会申入れを通じて、事実関係を確かめようとした。しかし、結局、知事・大澤が秘書課を通じて管財課にそうした改修工事を命じた経緯があったのかどうかの確認はできなかった。
また、被告である知事・大澤本人も、公開質問状への回答のなかで、「知事公舎に係る改修工事は、公舎管理上の必要性から県(管財課)が行ったものであり、私が入居してから、改修の指示をしたことはありません」と回答しており、目隠しフェンスの設置工事等、公舎の具体的な改修工事に関する原告らの公開再質問状への回答の中でも、「書類の有無は承知していません」とか「詳細は承知していないので、担当課に確認してください」と述べるばかりで、結局、知事・大澤が被告から、知事公舎の改修の許可を受けたのかどうか、確認はできなかった。
確認ができていないため、原告らとしては、知事公舎の改修は群馬県公舎管理規則に基づく手続を踏まえていないと判断せざるを得ない。
そもそも、知事公舎は、「県が公務の円滑な運営を図るため、県に勤務する職員の居住に供する目的をもって設置」(上記規則第2条)されたもので、その居住資格として「公舎を使用することができる者は、県に常時勤務する職員(知事が特に認めた場合は、この限りでない)で公務の円滑な運営を図るため居住の必要があるものに限る」ことになっている。
知事・大沢が、愛人に公舎を使用することを特に認めていたのかどうか、管財課にそのような指示が出されたのかどうか、少なくとも原告らに開示された資料にはそのような証拠文書がないため、原告らは事情が分からない。被告は、この点について、どのように認識しているのか、明らかにされたい。(第4 求釈明(3)参照)
(2)「(2) 原告準備書面(1)について」
①について、被告の主張を全て否認する。
被告が、原告らの監査請求について、1件以上の期限徒過を理由に、大部分の支出について、無効を主張しているが、原告らは、被告や知事・大澤とその指示を受けた長以外の職員が為した全ての情報を入手できたわけではない。限られた情報をもとに、乱訴のそしりをできる限り回避すべく、ぎりぎりまで時間を掛けて、情報収集や収集した資料の分析と評価に努めた上で、真相の追及と責任の所在の明確化をはかるために、監査委員に対して住民監査請求をしたものである。その結果、監査委員の中に知事・大澤と同様に倫理観の欠如した監査委員が関与していたため、原告らの監査請求は、結局、門前払いの形で棄却されて、強引に幕引きをされてしまったのである。
よって、原告らが平成19年までの支出行為に対して住民監査請求を行ったのには、正当な理由があり、原告らには請求の利益がある。
②について、被告の主張を全て否認する。
前項で述べたとおり、知事・大澤は、原告らの公開質問状への回答のなかで、「知事公舎に係る改修工事は、公舎管理上の必要性から県(管財課)が行ったものであり、私が入居してから、改修の指示をしたことはありません」と回答しており、群馬県公舎管理規則第8条第1項により、知事の許可なく為された増築、改築、模様替え、工作物の設置は全て違法・不当であり、これらの改修工事に費やした費用は損害として回収されなければならない。
③について、被告の主張を認め、次のとおり訴状を修正する。
被告の「訴状のP5の(3)の上には、支出項目No.19からNo.29までについて返還を求めるとあるが、蒸気準備書面はこれと合致していない」との指摘については、原告の準備書面(1)で示した支出の内訳が正であり、これにより訴状の「支出項目No.19からNo.29」の部分の後に、「No.30、No.31-3~6、No.32-5~10及びNo.33-1~2」を加える。(第5 訴状の訂正を参照)
3 「4 同第2の(3)について(公舎の衛生費等の支出)」について
(1)被告の「(1) 認否」について
被告が「② 平成20年2月以降平成22年3月まで自己負担ゼロとの主張を否認する。毎月16,700円を支払っている」と主張するが、原告らの開示情報の分析結果によれば、平成19年12月1日に入居以降、知事・大澤が公舎利用料として月額19,496円(平成22年4月1日以降は月額19,490円に変更)を支払っていたことは確認できるが、公舎利用に係る自己負担額について、平成22年3月以前ははっきりと確認できない。このため、被告は、それまで、きちんとした公舎利用料の自己負担分の取り決めが為されて居なかったことを踏まえて、平成23年4月1日付けで管財課長に「公舎利用料の調定について」と題する簡易回議書を起案・決裁させている。((甲1 別紙 事実証明書(14)公舎利用料の調定について参照)
原告らの調査によれば、電気代については、少なくとも平成19年10月以降、知事公舎の電気料金は100%群馬県が負担しており、これが平成20年3月まで継続している。このため、知事・大澤が平成19年12月1日から入居予定していたが、実際には平成20年2月1日頃から入居したとも言われている。電気料金の県側100%負担は、平成20年3月まで続いているのは確かである。このほか、ガス代、上下水道代、電話代、インターネット代が、平成22年3月までの間、被告と知事・大澤との間でどのような負担割合で処理されたのかは判然としない。これらの期間において、上記の公舎利用にかかる自己負担分が、もし被告の言うように毎月1万6700円であったとすれば、この期間においても、公金による知事・大澤の目的外使用にかかる知事公舎の利用経費の過剰補填が行われていたことになる。
また、平成20年2月1日頃からの知事・大澤による実質的な知事公舎の利用開始以降、知事・大澤が、目的外使用を行っていたことについては、目隠しフェンスや植栽にかかる改修工事等の支出状況から、事実であると推察されるに足りる蓋然性がある。
本来、平成22年3月以前の公舎利用料の公金による過剰な補填(公舎利用者への違法・不当な利益供与)についても、被告は、知事・大澤に対して返還請求をすべきところ、本件請求では、平成22年4月1日付の管財課長による「公舎利用料の調定」にかかる決定(甲1 別紙 事実証明書(14)公舎利用料の調定について参照)に基づき、同日以降分のみ、本件請求の対象としたものである。
(2)被告の主張について
全て不知ないし否認する。
知事公舎が知事の公務の円滑な運営を図るために知事の居住に供する目的をもって設置した施設であることは、群馬県公舎管理規則の目的にも書かれている。したがって、私生活の場として、知事公舎の一部利用は、他県の場合、たとえば新潟県の知事公舎などでも認められている。
群馬県の場合、本来の知事公舎(知事・大澤が公約で廃止を言い、当選後、前任の小寺前知事が平成19年8月31日に退居後、平成20年2月4日に用途廃止され、平成20年3月21日に公共施設のあり方検討委員会で廃止について検討され、同年4月24日に検討結果として解体で答申され、その後、夏にかけて解体された)には、前知事が家族と同居していた。
また、知事・大澤が、前知事が使用していた知事公舎に住むことを嫌い、それまで副知事公舎として使用されていた大手1号町1号公舎に目を付けて、そこを愛人と居住するために改修させた今回の知事公舎については、そこに今日中した歴代の副知事のうち、小寺弘之(昭和61年4月1日~平成3年7月31日)は家族5名と同居しており、女屋覚元(平成3年12月30日~平成7年10月7日)は家族1名と同居しており、高山昇(平成8年1月1日~平成15年10月10日)は当初家族3名で途中から家族2名と同居していた。ところが、元・管財課長だった高木勉(平成17年11月9日~平成19年8月3日)から、単身で居住するようになった。
当時、小寺前知事のもとで県総務担当理事だった高木勉は、平成17年10月17日の県議会で、それまでの副知事2人制を全会一致で否決した上で、ただ一人の副知事として承認されたが、おそらく、前知事と県議会との確執から、長期にわたって副知事職には留まれないと判断したらしく、また、出身が子持村だったため、家族の同居はしなかったものと推測される。
このように、歴代の副知事はいずれも公務をこなすため、副知事公舎に家族随伴で居住するケースが多いが、副知事公舎として、「広すぎる」こともなく、問題なく使用されてきたと思われる。ところが、平成19年7月に知事が代わった途端、群馬県の管財課が、知事・大澤の指示もなく勝手に知事公舎に目隠しフェンスを張り巡らしたり、前知事の小寺が長年居住していた本来の知事公舎を解体するにあたり、庭にあったサンゴジュを、隣接マンション側に目隠し用として移植したりした。おそらく、前知事時代に重用された管財課OBの高木勉の人事の激変ぶりを目の当たりにした管財課としては、新知事にゴマをする必要があると痛感したとしても、無理はない。
それにしても、群馬県の知事公舎の場合、本来、長年にわたり知事公舎として利用されてきた本来の知事公舎が、知事・大澤が就任後、耐震強度不足等を理由に解体されたのである。知事・大澤自身も、平成19年の知事選では、「知事公舎は要らない」「自宅からエコカーで通勤する」と言って当選を果たしていたのである。知事・大澤は平成19年7月に当選後、公約に則って、それまで知事公舎として使われてきた本来の知事公舎の解体を早速命じたが(実際の解体は平成20年夏だったらしい)、奇妙なことに、副知事用の公舎だった大手町1号公舎から平成19年8月3日に、元・管財課課長だった高木勉副知事が退去後、同8月に茂原璋男副知事が入居予定だったところ、知事・大澤は、平成19年9月、群馬県南西部を襲った台風9号の被害を契機に、迅速な危機管理対応のためと称して、大手町1号公舎(旧・知事公舎)の入居を決め、浴室などの大改造を命じたのである。このように、在来の知事公舎を壊しておきながら、副知事公舎を愛人との居住専用の知事公舎にしたて、多額の公金投入による改修を行うなど、矛盾した施策による公金の無駄遣いは到底許されるものではない。
しかも、知事・大澤は、太田市内の自宅から家族を呼び寄せることもせず、当初から同居者「0」として大手町1号公舎(=知事公舎)への入居届を出し、セキュリティの充実と称して、目隠しフェンスや隣接マンションからの人目をはばかる為の植栽工事など、愛人を居住させるためのプライバシー対策を当然の改修だと不思議にも思わず、知事公舎で逢引を重ねていたのである。こうして、知事・大澤は、公務の円滑な運営とは名ばかりの週末の不倫業務に精を出していたのである。このために支出された費用は、本来、被告が、知事・大澤に対して、全額負担させるべきものである。
被告は、「これは群馬県公舎管理規則第9条に規定している『特別の事情』に該当するものであり、手続き上何ら問題はない。他県でも同様にしているのが一般的であり、群馬県でも歴代この方法がとられている」と主張するが、同第9条に定める「特別な事情」として、知事・大澤が必要と認めた場合に相当するのかどうか、原告らには確認のしようがない。
しかも、原告らの平成23年12月19日付の公開再質問状の質問(17)で、原告らはこの自己負担分の根拠について知事・大澤に質したところ、平成23年12月26日付の回答で、知事・大澤は「自己負担額の設定根拠は承知していません」という見解を示してきた。
このことから、被告の言う同規則第9条ただし書きの「ただし、特別の事情があって知事が必要と認めた場合は、県が負担する」という説明に理由がない。もし、知事・大澤が、目的外使用として、愛人を居住させた際の光熱費等について、事前に「必要と認めた」証拠があれば、どんな内容なのか、それを確認する必要がある。(第4 求釈明(4)参照)
さらに、被告は「その金額は一般的な家計調査等の数値を基準として算出されたものである」として、数値の合理性を強調しているが、どのような数値をもとに算出したのか、原告らはそれらを確認する必要がある。(第4 求釈明(5)参照)
第4.求釈明
(1)被告は、答弁書の被告として恣意的に「群馬県」とだけしか記載していない。これでは被告が「群馬県の長である知事」のことなのか、それとも「群馬県の長以外の職員」のことなのか、あるいは両方なのか、判然としない。よって、被告に具体的に確認することを求める。
(2)原告らは、本件請求が、知事公舎という財産の違法・不当な管理に関する事項でもあると考えているが、被告は相手方の為した行為が、本当に第242条の2第1項第4号に該当しないと判断したのか、詳しく理由を明らかにされたい。
(3)知事公舎は、「県が工務の円滑な運営を図るため、県に勤務する職員の居住に供する目的をもって設置」(群馬県公舎管理規則第2条)されたもので、その居住資格として「公舎を使用することができる者は、県に常時勤務する職員(知事が特に認めた場合は、この限りでない)で公務の円滑な運営を図るため居住の必要があるものに限る」ことになっている。知事・大沢が、愛人の公舎居住を特に認めていたのかどうか、原告らは知らないが、被告は、この点について、どのように認識しているのか、明らかにされたい。
(4)被告の言う群馬県公舎管理規則第9条ただし書き「ただし、特別の事情があって知事が必要と認めた場合は、県が負担する」という説明の理由付けとして、知事・大澤が、目的外使用として、愛人を居住させた際の光熱費等を含め、事前にどのような「特別の事情」があり、「必要と認めた」のか、原告らはそれらを確認する必要があるので、証拠等を示して明らかにされたい。
(5)被告は「その(自己負担分の)金額は一般的な家計調査等の数値を基準として算出されたものである」として、数値の合理性を強調しているが、どのような数値をもとに算出したのか、原告らはそれらを確認する必要があるので、証拠等を示して明らかにされたい。
第5 訴状の訂正
訴状のページ5/9の下から14行目、「支出項目No.19からNo.29」の部分の後に、「、No.30、No.31-3~6、No.32-5~10及びNo.33-1~2」を付け加える。
以上