■群馬県渋川市において小林製工運送が名目上運営する廃棄物最終処分場は、実質的には大同特殊鋼渋川工場の廃棄物最終処分場です。これが深刻な地下水汚染を引き越していることが目下、大きな問題となっています。この処分場は管理型最終処分場とは名ばかりで、汚染物質が地下深くにザザ漏れ状態の、言わば“単なる大きな穴”というような場所と化しています。そこから汲み上げた汚染水が一般道を使ってタンクローリーで大同特殊鋼渋川工場にまで運ばれている事件について、群馬県民から危険を指摘する声が上がっています。
↑問題の小林製工運送株式会社が運営するナンチャッテ管理型最終処分場入り口。廃棄物と地下水の接触を遮るシートや地層などなく、“大きな穴”でしかないので、深刻な地下水汚染を引き起こしていることが、新聞報道され問題となっている。↑
このトンデモ処分場の地下水汚染事件が新聞報道されました↓↓
〇2017年10月1日:【詳報】大同有毒スラグを斬る!…処分場の地下水汚染を隠蔽12年!ふざけるな群馬県環境部局!
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2427.html#readmore
↑2016年3月に撮影されたこの写真には、地下水汚染事件を起こした廃棄物処分場から一般道へ出るタンクローリーが写っている。このタンクローリーには、環境基準値を大幅に超える六価クロムやフッ素が含まれた猛毒水が満載されている。↑
↑現在もなお、群馬県渋川市金井大野2834番7号外にある小林製工運送の最終処分場から、群馬県渋川市石原500にある大同特殊鋼渋川工場まで一般道を走り、汚染毒水を満載して運ぶタンクローリー。↑
■読者の皆様より、「タンクローリーで運ぶ汚染毒水は、やはり廃棄物だよね」との群馬県の対応を疑問視する声をいただきましたので、前回に引き続いて深く考察してみましょう。
前回の「大同産廃処分場・地下水汚染問題」群馬県議会での質疑応答はこちらをご覧ください。↓↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2453.html
もう一度タンクローリーに関する群馬県議会での質疑応答を振り返ってみましょう。
********2017年10月24日 決算特別委員会総括質問 伊藤県議(日本共産党)一部抜粋
※当会注;質問を行った日本共産党から、大同スラグ問題を追及している当会に、質疑内容の通告がありました。答弁者は群馬県環境森林部長であるようだ。
伊藤)この最終処分場は、大同製鋼排出のスラグなどが埋め立て処分を長年されてきた。六価クロムによる地下水汚染が明らかとなった。この処分場では昨年も県の指導のもとに大規模な対策工事がされているが、まず汚染水の処理について伺う。
現在同処分場からは日量タンクローリー20台以上汚染水がくみ上げられているが、それを大同特殊鋼に運んで処理している。大同は廃棄物処理の認可を持っていない。このような処理はできないはずだが、処理している根拠は。
部長)小林製工運送株式会社が設置した最終処分場からの保有水等の処理にかかる法的根拠についての質問。一般廃棄物の最終処分場および産業廃棄物の最終処分場にかかる技術上の基準を定める環境省令、いわゆる基準省令と呼ばれているが、こちらの省令では、最終処分場には保有水等集排水設備により集められた保有水等について、排水基準等に適合させることができる浸出液処理設備を設けることとされている。また、この省令のただしがきにおいては、保有水等集排水設備により集められた保有水等を貯留するための十分な容量の耐水構造の貯留槽が設けられ、かつ、当該貯留槽に貯留された保有水等が当該最終処分場以外の場所に設けられた浸出液処理設備と同等以上の性能を有する水処理施設で処理される最終処分場にあっては、この限りではないとされている。
※当会注:まずはじめに、保有水という用語が出てきますが、これは廃棄物処分場が持つ水という意味で、廃棄物から染み出した水を遮水シートなどで遮断する設備がある廃棄物処分場について、遮水シートにより遮られ、この処分場が持つ水という意味で保有水と呼ばれます。小林製工運送の廃棄物処分場は遮水シートや遮水層などないので、保有水という概念そのものが崩れています。
この環境森林部長の答弁によると「当該貯留槽に貯留された保有水等が当該最終処分場以外の場所に設けられた浸出液処理設備と同等以上の性能を有する水処理施設で処理される最終処分場にあっては、この限りではない」との発言であるが、浸出水処理設備を設けるか否かについての記述であると考えられる。外部の浸出水処理施設でも廃棄物余分場から出た保有水を処理できるとする記述であるので、タンクローリーの汚染水運搬先の最終処分場許可が必要か否かはこの但し書きには書いていない。タンクローリーの運ぶ水の情況に応じて、個別具体的に廃棄物か否かの判断をする必要があろう。
伊藤)小林製工の最終処分場だ。産廃だ。大同特殊鋼はそこから運び込んできたものを処理できる免許を持っているか。
部長)さきほど申し上げた通り、小林製工運送株式会社の処分場から出た保有水等については、基準省令にもとづいて処理されている。
※当会注:伊藤県会議員は、タンクローリーの汚染水は産業廃棄物であると考えている。対して環境森林部長は、基準省令に基づいて処理しているので、小林製工運送の処分場から出た保有水は外部で処理してもよい。と質疑がかみ合っていない。
この議論の本質は、保有水を外部で処理するのを問題としているのではなく、保有水を処理するにあたり、産業廃棄物の許可が必要ではないか?となるべきである。
伊藤)基準省令にもあっていない。県の指導であの処分場は小林製工運送がやっている、設置しているのも一般質問でも部長は何回も繰り返し指摘している。その違う会社の処分場から出てきたものを、その産廃の保有水や汚染水を産廃業者ではない大同特殊鋼が処理できるなんてことは、どこの法律にもない。そういうことを指導するなんていうのは、脱法行為どころか法律違反を教唆しているようなもの。絶対におかしい。
部長)さきほども答弁したが、この省令の但し書きにおいて、保有水等を貯留するための十分な容量の耐水構造の貯留槽が設けられ、かつ、当該貯留槽に貯留された保有水等が当該最終処分場以外の場所に設けられた浸出液処理設備と同等以上の性能を有する水処理施設で処理される最終処分場にあっては、これを認めているということだ。
※当会注:基準省令で、廃棄物処分場の保有水を外部施設で処理できるとしても、その汚染水が廃棄物に該当するかどうかは別問題であり、群馬県環境森林部が廃棄物処理法から物事を考えることを忘れているのは、県民の生活環境を保全する上でかなり問題だ。
伊藤)いいですか。タンクローリーの中にあるのは、今までの調査では、最高では2.3mg/l、環境基準の50倍にもなるような六価クロムが含まれている汚染水だ。そういう汚染水を大同特殊鋼は処理する免許も何も持っていないではないか。そういうのは脱法行為どころか(違法行為の)教唆だ。犯罪を教唆していると言わざるを得ない。
※当会注:地下水汚染の状況はかなりひどい。六価クロムの環境基準値は0.05mg/lだ。この汚染水はまぎれもなく特別管理産業廃棄物だ。
↑地下水汚染事故を起こした問題の処分場は小林製工運送株式会社の運営する管理型最終処分場だ。しかし大同特殊鋼渋川工場から出る産業廃棄物のみ受け入れている。↑
■群馬県環境森林部長の答弁を再確認しましょう
部長)小林製工運送株式会社が設置した最終処分場からの保有水等の処理にかかる法的根拠についての質問。一般廃棄物の最終処分場および産業廃棄物の最終処分場にかかる技術上の基準を定める環境省令、いわゆる基準省令と呼ばれているが、こちらの省令では、最終処分場には保有水等集排水設備により集められた保有水等について、排水基準等に適合させることができる浸出液処理設備を設けることとされている。また、この省令のただしがきにおいては、保有水等集排水設備により集められた保有水等を貯留するための十分な容量の耐水構造の貯留槽が設けられ、かつ、当該貯留槽に貯留された保有水等が当該最終処分場以外の場所に設けられた浸出液処理設備と同等以上の性能を有する水処理施設で処理される最終処分場にあっては、この限りではないとされている。
出典:環境省総合環境政策局環境影響評価課
http://www.env.go.jp/policy/assess/4-2preservation/02_keyword/g08.html
上図は、優良廃棄物最終処分場の説明図です。ごらんのように遮水シートで廃棄物から染み出た雨水を地下水と分離遮断しています。遮水シートの上にある水を処分場が持つ水という意味で保有水と呼びます。
県の部長様は、最終処分場にかかる技術上の基準を定める環境省令のただし書きを絵に描いた餅のようにかざしていますが、残念ながら、小林製工運送の処分場は、危険極まりない処分場です。なので、遮水シートなどありません。その結果、分かっているだけで、地下150メートルもの深さに及ぶまで、六価クロム汚染事故を起こしているのです。
環境森林部長の説明は、上図にある水処理施設を設けず、他の施設の水処理施設を利用することができるというだけで、タンクローリーで運ぶ水が廃棄物に当たるかどうかは、別問題なのです。
群馬県環境部局は、自分に都合のより省令などの説明を見つけると、廃棄物処理法を無視する悪癖を持っています。特に環境行政は様々な法律が入り組んで規制を行っています。これらに全て精通していればこそ、お役人様は偉いのです。が、環境森林部のように廃棄物処理法を無視し、浅い法律知識しか持たないようでは、おバカ役人の称号をあたえられても仕方がないでしょう。
■問題のタンクローリーに満載された汚染水が廃棄物かどうか?について考えてみましょう。
最高裁の判例などを基に環境省がまとめたとされる「行政処分の指針」には廃棄物の定義について、次のように説明しています。
「廃棄物とは、占有者が自ら利用し、又は他人に有償で譲渡することができないために不要となったものをいい、これらに該当するか否かは、その物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無及び占有者の意思等を総合的に勘案して判断すべきものであること。」
これに沿って考えてみましょう。まず事実を整理しましょう。
・タンクローリーに満載された汚染水の排出者は小林製工運送(株)です
・タンクローリーの所有者も小林製工運送(株)のようで、排出者の自社運搬のようです。
・タンクローリーの水の処理者は大同特殊鋼(株)渋川工場です。
となります。
環境省の「行政処分の指針」に沿って廃棄物か否かを考えてみましょう。
ア 物の性状
「利用用途に要求される品質を満足し、かつ飛散、流出、悪臭の発生等の生活環境の保全上の支障が発生するおそれのないものであること」と定義されています。
新聞報道によれば、この処分場は地下水汚染事故を起こし、汚染水をくみ上げてタンクローリーに積み込んでいるので、有毒であることが濃厚です。当然、廃棄物と考えてよいでしょう。
イ 排出の状況
「排出が需要に沿った計画的なものであり、排出前や排出時に適切な保管や品質管理がなされていること」と定義されています。
タンクローリーは、誰かの注文により、生産されるものではなく、雨が降ると、汚染水が大量に発生するので、また、汲み上げないと地下水汚染が広がるので、それを防止するため、仕方がなくタンクローリーに積み込んでいるのです。当然、廃棄物と考えてよいでしょう。
ウ 通常の取扱い形態
「製品としての市場が形成されており、廃棄物として処理されている事例が通常は認められないこと」と定義されています。猛毒六価クロムに汚染された、猛毒水に製品としての市場などあるはずがありせん。あるとすれば、裸の王様・大同特殊王様の屁理屈であることでしょう。
エ 取引価値の有無
「占有者と取引の相手方の間で有償譲渡がなされており、なおかつ客観的に見て当該取引に経済的合理性があること」と定義されています。
猛毒六価クロムに汚染された、猛毒水に取引価値などあるのでしょうか?環境森林部長ほどにもなれば、お金を出してでも、欲しいという事になるのかもしれませんが、通常人をして、お金を払って猛毒水を買う人などいないでしょう。
オ 占有者の意思
「客観的要素から社会通念上合理的に認定し得る占有者の意思として、適切に利用し若しくは他人に有償譲渡する意思が認められること、又は放置若しくは処分の意思が認められないこと。」と定義されています。
タンクローリーの汚染水の占有者は小林製工運送(株)であると考えらます。小林製工運送(株)の意思は、大同特殊鋼渋川工場で、汚染水を利根川に垂れ流すことです。
環境省の「行政処分の指針」には、固体と液体の区別は書いてありません、従って問題のタンクローリーに積み込まれた汚染水は、産業廃棄物です。
環境森林部長におかれましては、環境省の「行政処分の指針」やおから裁判の最高裁判決、そして廃棄物処理法を勉強し直すことを強くお勧めいたします。
■タンクローリーにより運ばれる汚染水が、猛毒の廃棄物と分かったところで、大同特殊鋼渋川工場で処理するためには、どのようにしたらよいか?廃棄物処理法を見てみましょう。
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廃棄物処理法第14条
第6項
産業廃棄物の処分を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。
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と定められています。
ネットで法律用語の「業として」の解釈を調べると、「反復継続の意思をもって行うことで、その対象が特定であるか不特定であるかを問わず、また目的が営利・非営利であるかは問わない」とするのが一般的なようです。
タンクローリーは連日、毎日3台が一日中、走り続けています。なぜなら、こうして毎日
「小林製工運送の最終処分場」→「大同特殊鋼渋川工場」
へと汚染水が運び込まれ、利根川に垂れ流し続けなければならない事情を抱えているからです。
どうでしょうか?皆様!
大同特殊鋼は廃棄物であるも毒水の処理する「産業廃棄物の処分を業として行おうとする者」として群馬県知事の許可を受けなければなりませんね。
実際には、「産業廃棄物の処分を業として行おうとする者」の許可を受理するのは、環境森林部長です。今回取り上げた群馬県議会の質疑のやりとりを見ていると、環境森林部長が、大同特殊鋼渋川工場に忖度し、廃棄物の処理について、無許可で処理することを黙認しているという印象が強く感じられます。このことはまさに「犯罪の証」になってしまうのでは?と思えてならないのです。
【市民オンブズマン群馬・大同有毒スラグ不法投棄特別調査チーム・この項続く】
※参考資料:環境省・行政処分の指針
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https://www.env.go.jp/hourei/add/k040.pdf
第1 総論
4 事実認定について
(2) 廃棄物該当性の判断について
① 廃棄物とは、占有者が自ら利用し、又は他人に有償で譲渡することができないために不要となったものをいい、これらに該当するか否かは、その物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無及び占有者の意思等を総合的に勘案して判断すべきものであること。
ア 物の性状
利用用途に要求される品質を満足し、かつ飛散、流出、悪臭の発生等の生活環境の保全上の支障が発生するおそれのないものであること。実際の判断に当たっては、生活環境の保全に係る関連基準(例えば土壌の汚染に係る環境基準等)を満足すること、その性状についてJIS規格等の一般に認められている客観的な基準が存在する場合は、これに適合していること、十分な品質管理がなされていること等の確認が必要であること。
イ 排出の状況
排出が需要に沿った計画的なものであり、排出前や排出時に適切な保管や品質管理がなされていること。
ウ 通常の取扱い形態
製品としての市場が形成されており、廃棄物として処理されている事例が通常は認められないこと。
エ 取引価値の有無
占有者と取引の相手方の間で有償譲渡がなされており、なおかつ客観的に見て当該取引に経済的合理性があること。実際の判断に当たっては、名目を問わず処理料金に相当する金品の受領がないこと、当該譲渡価格が競合する製品や運送費等の諸経費を勘案しても双方にとって営利活動として合理的な額であること、当該有償譲渡の相手方以外の者に対する有償譲渡の実績があること等の確認が必要であること。
オ 占有者の意思
客観的要素から社会通念上合理的に認定し得る占有者の意思として、適切に利用し若しくは他人に有償譲渡する意思が認められること、又は放置若しくは処分の意思が認められないこと。したがって、単に占有者において自ら利用し、又は他人に有償で譲渡することができるものであると認識しているか否かは廃棄物に該当するか否かを判断する際の決定的な要素となるものではなく、上記アからエまでの各種判断要素の基準に照らし、適切な利用を行おうとする意思があるとは判断されない場合、又は主として廃棄物の脱法的な処理を目的としたものと判断される場合には、占有者の主張する意思の内容によらず、廃棄物に該当するものと判断されること。
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