市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

親告罪の恐喝罪の取扱い方に雲泥の差…安中市の巨額横領と日本相撲協会の野球賭博問題

2010-06-23 23:28:00 | 土地開発公社51億円横領事件
■日本相撲協会が野球賭博でいよいよ崖っぷちに立たされています。無理もありません。相撲協会のトップ、さらに将来の理事長候補の部屋にまで、角界の賭博汚染が及んでいたのですから。

 安中市民としては、この相撲協会の重大危機を目の当たりにして、15年前のタゴ51億円事件発覚当時の市役所の状況が脳裏にオーバーラップするのです。
■日本相撲協会の場合、野球賭博汚染は、武蔵川理事長(元横綱・三重ノ海)の弟子、幕内・雅山と、九重理事(元横綱・千代の富士)の弟子、十両・千代白鵬へと関与の広がりが新たに判明しました。角界のイメージダウンは計り知れず、理事長や理事の辞職へ発展する可能性が出てきました。

 相撲協会は、自ら野球賭博を認め、名古屋場所(7月11日初日、愛知県体育館)への出場辞退を申し出た大関・琴光喜を除き、賭博行為の申告者の名前を公表していません。この理由として、警察の指導と個人情報保護が挙げられています。

 しかし、協会の幹部の弟子が、暴力団とのつながりが取りざたされている野球賭博に絡んで、警視庁から事情聴取された事実は重大です。6月15日の会見で「ウミを出し切る」と語った武蔵川理事長には、身内のウミを自ら率先して出し切る覚悟と実行が特に求められていたのです。しかし、自らには何も覚悟をもたないまま、賭博問題の処理ができるわけがありません。武蔵川理事長のリーダーシップの欠如は明らかです。

■さて、15年前の安中市役所はどうだったのでしょうか。膨大な刑事記録から、タゴはタゴと親しかった市職員らと高額な賭けマージャンにふけったり高崎競馬にいりびったり、ギャンブルに興じていたことが分かっています。

 加えて、当会ではタゴの親友を仲介者としてタゴに多量の骨董品を売っていた古物商の一品堂店主から、次のような市役所の実態に関する情報を入手していました。

<伏魔殿の市役所と骨董品>
 いろいろな人の話を聞くと、ノミ行為で暴力団絡みのやつは、あとが恐いから一切言わないとか、そういうのもあるような気がする。話によると凄い金額だ。噂だからほんとか嘘か、私などにはわからないが、タゴは昔から相当好きだったらしい。
 市役所の中でそういうノミ行為をやっていた話が、当然表面に出ている筈だ。凄い金額のノミ行為をやっていたという話だからだ。これはあくまでも噂だから分からないが、私の耳までそういう話が聞こえてきた。地元の業者が来て、そういう話を前にしていったことがある。
 タゴはすごいギャンブル好きだから、当然そういう話は出ていると思う。それと、いろんな人との付き合いのお金とか、そういう絶対言えないやつがみんな骨董を買った金として、その中に含まれているんじゃないか、という話だ。
 とにかくタゴがそうしたことを長年続けられたというのが実に不思議だ。長年にわたり、あれだけのことができるわけがない。単純に部外者が判断すればそういう考えは自然だと思う。

■タゴ51億円事件の発覚で、安中市民は行政に大きな失望を感じました。ちょうど今回の相撲協会に対する相撲ファンの気持と共通点があります。相撲協会の場合は、大関琴光喜個人の問題かと思ったら、多くの有望な関取も野球賭博を認め、さらに部屋を持つ親方までが賭博に関与していました。

 安中市役所も、タゴを中心としたギャンブル汚染が深刻でした。タゴのマージャン好き、ゴルフ好きは有名で、競馬も同僚の職員らを連れて高崎競馬に入り浸っていました。さらには、古物商店主のいうように、市役所の中で競馬のノミ行為をやっていたのですから、日本相撲協会の野球賭博顔負けです。

 ただし、不幸なことにタゴ事件は巨額の横領事件だけが世間の注目を集め、警察もわざと横領事件だけに情報管理を誘導していました。この背景には、地元の著名な政治家の影が影響を及ぼしていたことが現在ではわかっています。

■ここで興味深いのは、大相撲の野球賭博問題では、約300万円を脅し取られたとされる大関琴光喜が、警視庁に被害届を出したことが6月21日までに判明したことです。報道によると、警視庁は恐喝などの疑いで、暴力団関係者の男(38)を近く本格捜査する方針ということです。

 賭博にはこうした恐喝がつきもののようです。安中市の場合にも、タゴを恐喝して総額9千万円ものカネを脅し取った猛者夫婦がいます。しかし、恐喝罪には問われていません。いったいなぜなのかと不思議な思いでしたが、今回の琴光喜への恐喝で理由が判明しました。

■それは、恐喝罪は親告罪のため、被害届などの形で告訴がなされないと公訴を提起することができないのです。告訴を欠く公訴は、訴訟条件を欠くものとして判決で公訴棄却とされてしまいます。

 警察は、琴光喜に被害届を出させることによって、野球賭博事件の全貌を明らかにする方針であることがわかります。

 ところが、安中市土地開発公社51億円年巨額横領事件では、警察はタゴに被害届を出すように促すことはしませんでした。タゴも被害届を出しませんでした。だから、古城団地分譲に伴う恐喝出資金として、田口保洋・咲子夫婦は総額8995万9800円をなんなく自分のものにできたのです。タゴが被害届を出せば、警察は巨額横領金の使途としてこの夫婦を取り調べる必要が生じます。となると、ほかの無数の関係者の取り扱いにも影響が及ぶことになります。

<古城団地分譲に伴う恐喝出資金>
【内訳】
 昭和63年頃          1,500,000円(古城団地上乗分)
 平成元年           15,000,000円(安中郵便局から振込)
 平成2年9月6日       16,459,800円(国税納付分)
 平成2年10月11日      22,000,000円(田口保洋口座振込)
 平成3年           10,000,000円(特別会計口座から)
 平成4年            5,000,000円(特別会計口座から)
 平成6年5月頃        10,000,000円(特別会計口座から)
 平成7年3月28日      10,000,000円(安中支店駐車場で交付)

■なぜか、安中の51億円事件では、競馬のノミ行為等をしていたタゴを徹底して単独犯扱いをしていました。一方、相撲協会の野球賭博事件では、協会自体は消極的にしても、世論を背景に、この機会にウミを徹底してなくし、協会を浄化しようという協会以外の関係者の姿勢と熱意が、強く感じられます。

 やはり、安中市土地開発公社51億円事件の異常性はここでも際立っていることがわかります。

【ひらく会情報部】
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横領金から1億5千万円もらったタゴ配偶者が岡田市長に寄贈した絵画6点の真贋

2010-06-22 23:47:00 | 土地開発公社51億円横領事件
■今日の上毛新聞に、タゴの配偶者が、安中市土地開発公社理事長を兼務している岡田義弘市長に、夫が横領金51億円のなかから購入したものと見られる絵画6点を寄贈していたことが報じられています。

 事件からちょうど15年目に、なぜ、まだこのようなタゴの横領事件の名残が、しかも、タゴの配偶者の手元にあったのか、まことに不思議です。

 まずは、上毛新聞の報じた記事を見てみましょう。

**********
安中・巨額詐欺事件 「債務履行の一部に」
元職員の妻 絵6点、公社に提出
 安中市の元職員による巨題詐欺事件に絡み、元職員の妻が「夫所有と思われる絵画6点を損害賠償の債務履行の一部にしたい」として、市土地開発公社(理事長・岡田義弘市長)に提出していたことを、市が6月21日の市議会全員協議会で報告した。公社が預かり、処分方法を検討しているが、絵画の価値は不明。議員からは「鑑定料の方が高ければ、かえって公社と市に損害を与えることになる」との意見が出された。
 同事件の民事訴訟は、公社と市が連帯して群馬銀行に24億5千万円を支払うことで和解した。このうち約2億2690万円は公社の正規業務による借り入れ。元職員所有の不動産などを処分した約1488万円を除き、公社と市の元職員への債権は約22億821万円残っている。
 元職員の妻からは4月に申し出があり、公社の理事に諮った上で5月に受け入れた。6点の中には東洲斎写楽作とされる版画、高橋由一作とされる油彩画「風景」などが含まれているが真贋は分かっていない。市は「鑑定料を精査し、損害の出ないよう対応したい」としている。
(上毛新聞平成22年6月22日)
**********

■タゴは、51億円事件で警察に逮捕された後、供述の中で、美術品については、主に栃木県足利市の一品堂から、「約400点の品物を10億円から12億円の骨董品・古美術品を購入している。納品書、領収書等はなく、一切現金払いである」と自供し、タゴの自宅や骨董倉庫等の捜索の結果、503点に及ぶ骨董品・古美術品等が警察により押収されましたが、同骨董品等に関する領収書等の書類関係はありませんでした。

 一方、タゴにこれらの膨大な骨董品・古美術品等を売ったとされる一品堂の店主である小貫達(当時53歳)は、警察の取調べに対して「タゴとの取り引きは、平成3年から平成7年の間に約4億5千万円である」と供述しましたが、その供述を明確に裏付ける納品書・領収書等の書類等は一切提出されませんでした。

 警察は、骨董品・古美術品の購入金額について、タゴと小貫との供述に約5億円ないし7億円もの大きな差額があることから、捜査差押礼状の発行を得て、平成7年11月11日、一品堂の小貫の自宅及び一品堂店舗を捜索しましたが、タゴとの取引を解明する資料は得られなかったというふうに、捜査結果に記しています。捜査結果として明らかに不自然です。

■この不自然さを裏付ける証拠があります。検察の冒頭陳述では、甲103号として、一品堂店主の小貫達氏は、タゴに骨董品を販売していた状況について平成7年6月29日に警察に対して「タゴとの交際状況等、タゴに骨董品を販売していた状況、平成3年頃かんら信金職員の石原保の紹介でタゴと知り合い、長期間多量に被告人タゴに販売していた」と供述したことになっています。

 ところが、当会がタゴ事件発覚後約2年経過した平成9年5月25日に、〒326-0337栃木県足利市島田町74にある古物商の一品堂を訪れた機会に、店主の小貫氏はタゴ事件に関する情報について、当会のインタビューに対して次のとおり告白したのでした。(以下、当会発行の「まど(安中市民通信)」2005年5月20日第113号P1~P4から引用)

<一品堂店主の言い分>
 事件発覚直後に地方紙や週刊誌に、あたかも私がタゴに骨董品を全部売ったかのように書かれた。これはペンの暴力だ。私がタゴに直に売った骨董品は一点もない。警察も「被害者ですね」って言ってくれている。客が皆嫌がって来なくなってしまうからだ。
 私は、タゴの骨董倉庫にある品物を全部見た。警察に頼まれて一緒に調べた。警察の人では骨董品をどうやって整理して良いかわからないというからだ。
 3日くらいで整理を終ったが「予想より大分早く終って助かりました」と警察に感謝された。倉庫の中には、いろんなものがあった。
 私から流れた品物が、タゴの骨董品の中で何パーセントくらいだったか、はっきり覚えていないが、点数として3分の1か4分のIだと思う。
 週刊誌か訴聞だか「大観の絵を何億で…」などと、私が売ったようなことを書いていた。確かに大観の絵と称するものがあった。私は陶磁器専門なので書画のことはよく分からないが、判らない私が見ても変なものだった。私が見た限りでは三つあった。
 週刊誌では、私だとは書いてないけれど、私みたいな感じで書いた。週刊新潮は取材に来たが、私も店に居ないことが殆ど。ただ警察に協力して骨董品を調べた時に、たまたま警察の前で取材の記者と行きあって、ちょっと立ち話したことがある。
<タゴの仲介者>
 警察からは「誰にもあのことは言うな」と言われている。記者などに何か言うと、警察に怒られてしまう。そのため、記者には「警察で聞いてください」と言った。
 ただし、記者に聞かれたとき、事実として「私はタゴに直に一点も売っていないし、その間に入った人の家にも行ったことがないし、タゴ本人の家にも行ったことがない」ということは言った。
 実際には、ある人を介してタゴに骨董を売った。最初に私の店に、私の友達と一緒にその人が来て「あのう、美術館を作る人がいるので、骨董品のいいものを見つけてくれませんか」と頼まれたのが始まりだ。
 その後は、もっぱらその仲介者から電話で連絡があった。その人は、いつも私に電話で「何か入りそうですか?」とか「サンプルを借りられますか?」と言うので、私の客とか業者の人でそういうものを持っていれば借りてきたりして渡したわけだ。
 ただし、その仲介者が誰にいくらで売っているかは分からない。私がよそから借りてきて、それに手数料を載せて、仲介者に渡したが、その仲介者とタゴとの間の取引は見たことはないからだ。仲介者が、実際にいくらでタゴに売ってるか、どこで売ってるかもわからなかった
 仲介者の名前は私の口から言えない。警察も最初の時は、やはりマスコミ同様に誤解していた。私は「一点も売ってませんよ」と警察にも言った。
 仲介者は、タゴ本人とものすごく、昔から親しい人だったらしい。地元群馬の人だ。かなり昔から親しい様な感じだが、私もよく当人から聞いたわけではない。
 警察でも[そのことについて教えてくれ」と言われたから、「いや私のロから言えないので、調べて下さい」と言ったら、ちゃんと調べていた。警察の方から「この人ですか?」と言うので、私は「いやあ、それを知っているなら結構です」と言った。
 その仲介者は、骨董の業界外の人で、ふつうの勤め人だ。後で警察に聞いたら、その人は昔、骨董の許可証を持っていたという。「ちゃんとした勤め人だと、今は骨董許可証は取れないのだが」と言ったら、警察では「昔から持っていたらしい」と言う。というわけで、その仲介者は古物商許可証を持っているらしい。安中在住ではない。
<他言無用と警察からクギ>
「誰がどうだということはいっさい言わないでくれ」と警察から固く釘を刺されている。警察では、事件直後は特にマスコミなど関係者に神経を尖らせていた。「マスコミとか関係者に聴かれても一切警察へ言ってきいて下さい」と言うように、警察からそう言われていた。警察は全部調べたから、事件の情報はすべて握っている。そうでなければ、刑事裁判も何も進められないからだ。
 私がはっきり言えることは、直にタゴには一点も売っていないことだ。また、変な品物は一点も売っていない。偽物は売っていないこと、これだけははっきり言える。その他のことは、まあいろいろ言えないことがある。言うと警察で怒られるかもしれない。私の方としては骨董倉庫の整理で協力したので、これまで警察からはまだ怒られたことはないが。
<役人の所得税は無法状態?>
 あの事件には私も驚いた。だけど、はっきり言って、こんな事件が10何年も分からないわけはない。タゴは役所のすぐ近くに住んでいたというから。市役所職員だから、市民税をとるのに、収入がすぐ分かるわけだ。それも誰も市の職員が知らなかったはずはない。
 人の話か、警察の話か分からないが、問題になった年代よりずっと前から、いろいろなことがあったらしい。10年くらい前から既にあったらしい。ただ時効とかの部分で、警察は問題にしなかったらしいが、随分前からあったようなことをきいている。
<仲介者の石原保が一品堂に持ちかけた美術館計画>
 安中市民がこの事件を不思議に思うのも当然だ、私も仲介者から最初にちょっと耳にしたのは「昔から持っている地所をゴルフ場に売って金があるので、それで美術館を建てる」とか、「将来美術館を作るので、いい品物がほしい」という話だった。
 ただし、私は金がどうこうと聞いたわけではない。タゴと直取引ではないし、仲介者に「何で金があるんですか」などと聞くわけにいかないからだ。
 勿論、横領した金で買うなんて想像もつかなかった。美術館を作るという人が「いい品物を今までにもいろいろ買ったけど、もっといい品物を欲しがっているから探して下さい」というのが、そもそもの始まりだった。
 私はその仲介者の家にも行ったことがないし、こちらから「ほら、何が入りました」という電話はしなかった。私は客に電話はしない。客は欲しい時は店に遊びに来る。忙しいとかいろいろ事情があれば、やはり自分の商売の方が忙しいので、買う気にならないからだ。
 だから私は「こういうのが入りましたから来て下さい」というPRは一切やらない。客から「こういうものを見つけて下さい」と依頼があると、そういうのを業者が持っていたり、別の客が持っていたりすると、それを預かって5%とか10%の手間賃を乗せて、仲介者に大抵渡したわけだ。
 当然、私の所属する骨董業者の会や交換会で買った品物を、仲介者に買ってもらったこともある。しかしあまり高価な品物を自分で買って持っていることは、リスクがある。客に気に入ってもらえなければ、自分で抱えていなければならないからだ。
 自分で買う場合には、自分の好きなものが一番の条件だ。だから自分で無理して買ったりせずに、誰か持っているものを借りたりして、商品を探す。
<一品堂と笹塚会>
 タゴの弁護士の依頼を受けて、タゴが買い集めた骨董品を、私の所属する業界の会で全部処分した。あれを全部、タゴの弁護士か警察か誰がやったのか知らないが、私も所属する骨董品の会は、日本で一番定評のある会で、そこで処分した。会の名前は笹塚会といい、東京美術倶楽部でやっている。
 ここでタゴの骨董を処分した時に、私が扱った品物には、私が仲介者に出した金額よりも、もっと高い値が付いたのが結構あった。ただし、仲介者がタゴ本人にいくらで売っていたのか、それは分からない仲介者とタゴとの間の取引を、見たわけではないためだ
 新聞や週刊誌には、タゴが買った骨董品の総量というのは10億ないし12億だと書かれているようだが、そういう金額にはいろいろなものも含まれていると、誰かが言っていた。ギャンブルとか、諸々の《言えない金》とか、そういうのも骨董部分に含まれているようなことを誰か言っていた。
<真相を知る立場だった石原保>
 タゴは説明できないカネを一括に骨董の中に含ませているのではないか。警察でも金額が「いくら計算しても合わない」と言っていた。結局、私はこうではないかと推測している。なぜかと言うと、私の店がああいう形ではっきりとではないが活字で出たということは、骨董品でいろいろとタゴが変なものを買っていたからだと思う。
 誰がタゴに売ったのかわからないが、贋物が随分多い。骨董屋も殆どがそういう傾向だ。タゴが買った骨董品は、全部その仲介者が仲介したのかどうかわからない。だからそういう贋物の部分について、警察が絡むと煩わしいんで、私の店だけから買ったということにしたのではないか。
 私以外に、タゴに骨董品を販売した業者が誰なのか、私には分からない。多分、みんなその仲介者が関与したのではないか。
 えらくタゴと親しい人だという。だから直に業者がタゴに売ったとか、それから暴力団の人も、九州とかどっかの人が持ってきて売ったとかいう話も聞いた。
 私も、そういうのを実際に見たことがないので、はっきりと言うわけにはいかない。また、余計なことも言えないし、誰が売ったのかも分からない。
<贋物を仲介した石原保>
 ただタゴの骨董倉庫の中には贋物はいっぱいあった。だからタゴが買ったものが贋物とかだと、それらがまた別な警察問題になるので、「私の店から買ったとか、そう言ってくれ」とかいうふうになったんではないだろうか。あくまでも推測だが、多分そうではないかなと。これは私の感じだ。おそらくそういう状況で、私のところだけからタゴが買ったという話になったと思う。
 たぶん警察でも、最初そういう話になっていたのだと思う。それで私が事情を説明したらみんな分かってもらえたが、最初はそういう感じで警察を初め関係者はみんな思っていたらしい。
 誰が、そういうふうにタゴ本人に頼んだか、あるいはタゴ本人がそう言ったのか、本当のところは分からない。しかし今になってみると、そういう感じがする。
 私は、はっきり自分のことだから言えるが、直に一度もタゴに売ってはいない。また変な贋物も私は扱っていない。
<タゴ骨董倉庫の様子>
 タゴの骨董倉庫を整理したときは、なにしろ暑い盛りにやった記憶がある。警察の人たちと5人くらいで、みんなで大変だなあ」と言いながら、一品ずつ全部写真を撮ったりした。
 それと、何という判定のものか、いろいろな型があった。刀とか絵も沢山あった。横山大観の絵なども並べていたような気がした。確かに3本あった。私は絵は分からないが、カンで、これはまっとうな絵ではないと分かった。それをタゴがいくらで買ったのか。週刊誌に書いてあるような値段では買ってないとは思う。タゴが買っているところを見たわけではないため、想像でものは言えないが、現実に贋物が沢山あったことだけは間違いない。私が売った品物がどれくらいになるのか、警察には全部、帳面を持っていって調べてもらった。警察は全部知っている。
 私もこの件は早く忘れたい。記憶が曖昧なことを言って、後でどうこう言われると困ることも事実だ。マスコミとか関係者から事件のことを聞かれた場合、「警察で全部聞いて下さい、とそう言って下さい」と何回も警察に念を押された。タゴの骨董倉庫で整理をしているとき、マスコミなんかも来ていた。その時も警察の人が、マスコミ関係者らをみんな帰していた。
「マスコミがもし黙って、あんたの店に事件のことを聞きに来ても、絶対『警察で聞いて下さい』という以外のことを言わないで下さい」と警察には念を押されている。
 骨董品の取引については、手数料を乗せているものに、一部落ちていたものがあったので、役所の方にはその後きちんと修正申告をしてある。
<タゴには3億円程度販売>
 タゴの骨兼倉庫にある品物のうち、私が納めた品物は3分の1くらいだった。金額については、私ももう何年か前のことではっきり分からないが、3億円近くじゃないかなと思う。今はもう忘れようと思っていることなので、はっきりとした数字も思い出したくないほどだが、そのくらいはあるかな、と思う。
 この事件で、業者聞ですっかり名が知られてしまった。最初、同業者に東京で行き会うと、みんな私のことを事件に関与したと思っている。「いや、私は一品も直に売っていないんですよ」と言うと「そりゃあよかったですねえ」と分かってくれた。
 この商売では、最初は全然どこの人が客かも分からない。来た客に「どこの人が買っているのか」と聞くわけにはいかない。しかし、どこにもはしっこく頭のいい人がいる。話を聞いて、どこの人が買っているか分かれは、直にみんなそこへ殺到する。ワンクッション抜いて自分で直接売ればいいと思って、みんなそういうことをやる。私はそういうことは相性に合わない。ものを買うのも売るのもやっぱり人問の相性というものがある。
 私はコレクターからこの商売に入った。某美術館の偉い人から、そこで展覧会やったら、すごく褒められ感謝された。「いやこっちこそ買ってもらって感謝している」と恐縮した次第だ。
 私は無理に「これは安いからいい」とか「これはいいものだから」とか「どこにもないから買っておいたほうがいいよ」と店に来た客に言わない。だから「変人だね」と言われる。客に気に入ったものを買ってもらうのが、一番いいわけだ。
 今の時代は、いいものを買ってくれる人は世の中にどこにもいない。こういう景気だからだ。バブルの時は金持ちが沢山いたからよかった。直接に売らなくてもそういう客が結構多かった。
<いろいろな人が絡んだタゴ事件>
 この事件にはいろいろな人が絡んでいるに違いない。そうでなければ、こんな大それた事件が続くわけがない。部外者の誰もが不思議と思う。タゴは市の職員だし、その収入は市では市民税で分かるのだから、それを分からないということ自体おかしいことだ。誰もが、その疑問点を思い浮かべるに違いない。
 群馬の同業者や客が私の店に遊びに来て話をするのを聞いた。タゴとゴルフにみんな行っていたとか、選挙の時はどうのこうのとか聞いた。それは単なる噂だから「ああそうですか」と私は聞く以外にない。噂ではそういうのを聞くが、私は何も分からないからどうだとか言えないが、ただ普通の人が考えれば考えるほど不思議な事件だ。
 骨董品の販売では、価格は直相場で、私の方は手数料をもらって買ってもらった。今は骨董相場が下がってしまった。先年のタゴの骨董品の処分でも、早い話があれは投売り同然だ。何百点も投売りで一緒に出せば、需要と供給のバランスだから当然そうなる。一点とか二、三点だったらみんな欲しい人が競るが、あんなに山ほど出されたのでは、みんな迷って詳しい値段など出ない。【情報部注・一品堂は、タゴの骨董を処分した笹塚会のオークションで、数点の古伊万里を買い戻している】
 でも私の記憶では、私が仲介した商品でも、他の人が預けた金額よりも高く値が付いた品物も結構あった。それは、やはり美術館を作るという話だったから、私には信用が第一だった。金の支払もそんなに遅くなかった。一ケ月以内にもらえた。もらえたといっても、タゴから直にもらったことは一回もない。
 美術館を作るという話だったから、いい品物を納めておいて、後でいい美術館ができたとき、私が納めたものだと分かると、やはりそれが信用になる。私にはそういう感覚があった。
 私の店などは田圃の中だから、最初の頃は知名度もなく、店があることを知ってもらうため、最初の頃は広告を出したけれど、なかなか広告で売れることはない。それと、一括で欲しいなどと言う客もめったにいない。店に出向いてくる客も滅多にない。
<バブルのあだ花、骨董業界>
 だからこの事件以来、年に何点か買ってくれる人も足が遠のいた。やはりそんな店に出入りしていると巻き込まれてしまうと思って来なくなってしまうのではないか。新聞などにははっきり言いてなかったが、どこそこの県の骨董屋というと大体分かる。それでみんな足が遠のいてしまう。
 骨董業界は深刻な不況だ。私の場合、この事件も影響しているが、今世の中全体が不景気だ。鑑賞用の骨董を扱っている東京のちゃんとした業者で、ちゃんとした品物を売っている人などは、どこも商売にならないと思う。テレビの影響で、どこかの露天とか、平和島とか、ああいうところでは買い易いものだけが売れる。みんな素人の人が散歩に行くから何十万人も来る。
 そこで誰でも買えるものは売れるが、ちゃんとしたものを扱っている店は今商売がないのではないか。仕入れもできないし、売れないし、売れても消費税程度しかもらえない。ちゃんとした店の利幅はそんな程度だ。
 いい品物を買う人はみな、目が肥えているし、この業界は狭いから、買ったばかりの品物はどこで買ったというのがすぐ分かる。ノミの市とか平和島なんかで売っているものは単価の安いものだから、何倍かで売れるものもあるが、ちゃんとしたものは買う人がしっかりしているから、そういう馬鹿なことは言えない。
<90年ごろから軽井沢へ出店>
 今回タゴに売って利益を出して、軽井沢に店を出したのかと言われるが、その逆だ。売れないし、何か手を打たなくてはしょうがないと思って店を出した。
 こんな田圃の店の中では客も来ないし買う人も少ない。軽井沢なら世界の金持ちが集まっているかと思って出店して、もう5、6年経過する。やはり同じだ。
 日本の凄い人が遊びに来る。日本の昔の大財閥の人たちがみんな来るがパワーがない。結局今の時代はそういう時代だ。利益が出た時代はそんなにいつまでも続かない。もう買わなくなるだろうと、いつも不安に思っていた。だから打開策として、軽井沢なら金持ちが集まるかと思って店を出したわけだ。
 現実は、そういう凄い人は山ほど遊びに来るが、皆お茶を欲んでいろいろ話をするだけで、現実には売れない。今はそういう余裕がないのではないか。だから軽井沢などでは毎年骨董店が代わっている。みんな軽井沢だから、凄い人が来て売れると思い、夢を持ってくるけど、なかなか売れないのが現実だ。
 5、6年も店を維持しているから、さぞ売れると思うだろうがそうではない。売れるということは、前からの客が田圃の中の店には来ないけど、軽井沢にゴルフで来るとか別荘に来るとか、そういう人がいる。田圃の中の店にわざわざ来るよりも、軽井沢に来た時に寄って、欲しいものがあれば買ってもらうという感じだ。
「軽井沢の店に行きます」という連絡が入った時でないと、私も軽井沢には来ない。きょうも友達が遊びにくるというので来た次第だ。だから普段来ても一人も店に入らない。誰か来るとか、そういう時しか行かないという感じだ。
<事件発覚当時の様子>
 警察から連絡があったのは、いつだったかはっきり思い出せない。最初に「いろいろ教えて下さい。幾日付き合えますか?」と言うので、それで安中に行ったわけだ。暑い最中だったという気がするが、最初は警察もそういうニュアンスだった。タゴ本人が言っているのか、誰が言っているのか知らないが、私の店が殆ど売ったという感じだった。だけど警察にいろいろ説明した。いろいろと言っても、人のことは言わないけれど、自分のことは言った。それで「帳面とか持ってきてください」と警察が言うので、持って行った。私がいろいろ説明して、経緯は仲介者にも聞いて、いろいろなことを分かってもらったのではないかと思う。
 あまり詳しく私の口から言えないが、仲介者にも警察は当然聞いた筈だ。その仲介者は、タゴと昔からのいろいろの知合いであるようだ。しかし公務員のタゴとどういう交遊関係なのか、私にはさっぱり分からない。ただ、タゴと随分親しいような、信用しているような、無二の親友のような感じだった。
 職業は会社を経営しているという人物ではなく、普通の勤め人らしい。私も事件発覚後、全然会っていないので分からないけれど。私はその人とそんなに相性が良いわけではないから、その人の自宅にも一回も行ったことがない。
<すべて仲介者が支払い>
 仲介者から電話を受けると、私は商品を揃え、車に積んで、私の店と安中の中間あたりの国道脇の喫茶店で落ち合い、品物を仲介者に旅した。その場では、買う買わないは決めずに、一旦仲介者が車に積んで持ち帰る。気に入ったら、後でその旨、仲介者から電話があり1ヶ月後には入金されてくる。勿論気に入らなければ買わない。一且仲介者に品物を預ける形にしていた。
 仲介者がタゴ本人に見せて、タゴが気に入ったものを買ってもらうのだろう。私は一回も彼ら同士の聞の取引を見ていないから分からないが、そういう感じだ。だから何度も言うようだが私は仲介者の家に一回も行ったことがない。
 その仲介者が「こういうものが何か入りました?」と電話で聞いてくるから、「うん、今のところないけど、こういうのを見てると、こういうのが話が来てますけど」と答える。すると仲介者が「いつ頃見られますか?」と言うので、いつごろだったら、返事できますけど」と答えると、そのころ電話がある。
 私が「うん、いいものが来ました」とか「あおそれ、話がだめになった」とか電話で言う。大抵「商品が入った」という場合に、仲介者が「じやあ見せて下さい]ということで、それで車で指定の場所に積んで行って、その人に渡すわけだ。
 そして、その仲介者の人がタゴのところに持って行って、二人で「これはいい」とか悪いとか、タゴ本人が「気に入った」とか「気に入らない」とか。気に入った品物は、その場で「買う」ことになり、気に入らない品物だけ次回返品で持ってくるのだと思う。私はタゴが立ち会っているところを見たことがないから、取引状況は分からない。私がいっぺんも売っていないというのは、直に売ってないから売ってないと言ってるわけだ。
<調べればわかるはず>
 以上のことは調べれば分かると思う。タゴの骨董倉庫の調査で県警の方から来たのは、みんな応援の人だと、地元の警察が言っていた。県警からは3日くらい来てやったと思う。顔ぶれは毎日変わっていたが、冗談を言い合いながら、皆でわいわいとやったり、いろいろした。4、5人で県警から応援に来たような感じだった。3日かかったが「思ったより何分の1で済んだ」などと県警の人たちは言っていた。
 私がはっきり言えるのは、この2点だけで、ほかの事は忘れたこともあるし、はっきり言えない面もあるし、人のことはあまり言いたくない。やはり警察というのは外部にいろいろ情報を洩らす時と洩らさない時があるようだ。
<伏魔殿の市役所と骨董品>
 私のあくまでも想像なのだが、タゴ事件の何億とかいうのも、いろんな含みのお金も含まれているのではないか。いろいろな人の話を聞くと、ノミ行為で暴力団絡みのやつは、あとが恐いから一切言わないとか、そういうのもあるような気がする。話によると凄い金額だ。噂だからほんとか嘘か、私などにはわからないが、タゴは昔から相当好きだったらしい。
 市役所の中でそういうノミ行為をやっていた話が、当然表面に出ている筈だ。凄い金額のノミ行為をやっていたという話だからだ。これはあくまでも噂だから分からないが、私の耳までそういう話が聞こえてきた。地元の業者が来て、そういう話を前にしていったことがある。
 タゴはすごいギャンブル好きだから、当然そういう話は出ていると思う。それと、いろんな人との付き合いのお金とか、そういう絶対言えないやつがみんな骨董を買った金として、その中に含まれているんじゃないか、という話だ。
 とにかくタゴがそうしたことを長年続けられたというのが実に不思議だ。長年にわたり、あれだけのことができるわけがない。単純に部外者が判断すればそういう考えは自然だと思う。ただし証拠がないし、確たることがないからはっきりしたことは言えないが…。
 以上、この事件について私の感じを言った。ただし警察から「いろいろなことは警察に聞け」と、前から釘を刺されている。だから、言えない部分も忘れた部分もあるかもしれない。

■このように一品堂の店主はタゴ事件で注目された骨董に纏わる話をしました。しかし、捜査に携わった警察担当者は、「一品堂の店主をはじめ、タゴ事件関係者の供述はウソだらけだ」と言い切っていました。どちらが正しいのか。当会では一品堂の小貫の話は9割方正しいと考えています。

 一品堂の小貫のほかにも、タゴに、いや、正確にはタゴの親友のかんら信金(現・しののめ信金)元職員の石原保に骨董品を売っていた古物商には次の業者がおりました。いずれも、タゴ刑事事件証拠等関係カードのうち骨董品関連の証拠資料からの出典です。

▼103 供述調書
 H7・06・29(小貫達)
 被告人との交際状況等、被告人に骨董品を販売していた状況、平成3年頃かんら信金職員石原保の紹介で被告人と知り合い、長期間多量に被告人タゴに販売していた。
※甲33号 336号として
 立証:被告人に骨盗品を販売していた状況
▼359 捜査報告書
 H7・11・16 小貫達方
▼360 捜査報告(押収)
 H7・11・16
※甲43号 445として
 立証:一品堂を紹介・仲介
▼361 捜査報告(写報)
 一品堂状況
▼362 供述調書
 H7・7・12(小貫達)
 被告人に骨董品を販売していたこと及びその販売価格
▼363 供述調書
 H7・6・12(石原保)
 被告人に一品堂を紹介し骨董品を仲介
※甲43号 445として
 立証:一品堂を紹介・仲介
▼364 供述調書
 H7・6・21
▼365 供述調書
 H7・7・12
▼366 供述調書
 H7・7・14
▼367 供述肩書
 H7・6・23(佐藤洋一)
 石原保に古美術品を販売していた状況
※甲143号 455として
 立証:石原保に古美術品を販売していた状況
▼368 供述調書
 H7・8・22(佐藤洋一)
 石原保に古美術品を販売していた状況
※甲43号 456として
 立証:石原保に古美術品を販売していた状況
▼369 供述調書
 H7・6・30(小林紀一)
 石原保に古美術品を販売していた状況
※甲43号 457として
 立証:石原保に古美術品を販売していた状況
▼370 供述調書
 H7・6・30(小林紀一)
 石原保に古美術品を販売していた状況
※甲43号 458として
 立証:石原保に古美術品を販売していた伏況
【一品堂】
郵便番号:326‐0337
住所:栃木県足利市島田町74
電話:0284‐71‐0097
取扱品:伊万里、飯島、古九谷

■こうしてみると、今回、タゴの配偶者が、安中市土地開発公社の理事長でもある岡田義弘市長に持ち込んだ6点の絵画は、事件直後の警察の捜査では見つからなかったことになります。

 となると、考えられるのは、タゴの盟友で、銀行員であるにもかかわらず古物商の免許を所有していた石原保が事件発覚後、タゴが警察に出頭する直前にタゴに頼まれて隠し持っていた絵画を、タゴの配偶者に渡していた可能性があります。

 なぜなら、石原保はタゴと極めて親しく、一品堂から預かった骨董品をタゴの家に持ち込んで、タゴと二人で品定めをしていたと考えられるからです。ということは、当然石原保はタゴの妻とも顔なじみだからです。

■おそらく、昨年9月21日に千葉刑務所を正式に出所したあと、タゴはまっさきに富岡市内に在住している親友のところに行ったでしょうから、そのとき預けていた絵画を返還してもらった可能性があります。

 51億円余の横領金のうち、1億5千万円をタゴからもらっていた配偶者をはじめ、多胡運輸の役員の実母にも金が流れていたことは警察の捜査でもあきらかです。また多胡運輸の社長の実弟は、タゴの取り巻き連中らと一緒に株式会社芙蓉という不動産会社を設立していました。土地開発公社を一手に牛耳っていた実兄のタゴから土地情報を得ていたことは間違いありません。

■今日の上毛新聞の記事によると、6点の絵画の真贋について、安中市の岡田市長、あるいは安中市土地開発公社の岡田理事長は、「鑑定料を精査し、損害の出ないよう対応したい」と言っているようですが、タゴが購入した絵画はすべて、富岡市内に在住する古物商の免許をもつ甘楽信金元職員石原保がタゴに代わって、一品堂の小貫達や佐藤洋一、小林紀一、有坂真一から購入したのですから、石原保に聞けば、これらの絵画が本物かどうか、直ぐにわかるはずです。

 この場合、鑑定料は不要でなければなりません。ついでに、石原保に聞けば、本当にタゴは、タゴの警察での供述どおり総額10億円以上から12億円もの骨董品を一品堂から購入したのかどうか、一品堂の小貫のいう3億円の販売総額が実際には正しいのかどうか、そしてまた、一品堂の話がただしければ、差額の最大である12億円マイナス3億円=9億円のカネが、どこにいったのか、が判明するはずです。

■さらには、警察の捜査でも使途不明とされた14億3445万3367円についても、そのうちの一部がどこにいったのかを知っているはずです。ぜひ、岡田市長、いや、岡田理事長には、タゴの妻に頼んで、石原保に市役所に来てもらい、6点の絵画を鑑定してもらうようにしてほしいものです。もちろん、鑑定料は無料でなければなりません。

 岡田市長におかれては、僅か6点の絵画でごまかされないように、巨額の使途不明金についてもタゴ一族及びその関係者を厳しく追及して、安中市民に損害が及ばないように最大限の配慮をしてもらいたいものです。でも、それは難しそうです、なぜなら岡田市長自身がタゴ事件の関係者のひとりだからです。

【ひらく会情報部】

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飲酒ひき逃げで高校生を重体にしたハンコ店主への懲役3年求刑と未処分を続ける安中市長の温情

2010-06-10 23:54:00 | 安中市消防団員の飲酒ひき逃げ運転
■先週の週末、6月5日(土)から6月6日(日)にかけて、高崎高校で毎年恒例の文化祭、第58回翠巒(スイラン)祭が盛大に行われ、無事終了しました。天候にも恵まれて絶好の文化祭日和だったようです。

 ところで、昨年の第57回翠巒祭は6月6日(土)と7日(日)に開催されましたが、二日目の6月7日午前1時ごろ、同校正門前の市道で、スイラン祭の準備作業中だった同高1年の沢田拓朗さん(15)が乗用車にはねられたことを記憶している市民も多いと思います。

 このとき、沢田さんは頭を打ち、意識不明の重体となったのです。しかし、その後の、賢明な治療と、なによりも若い肉体と強靭な精神のおかげで一命をとりとめたばかりか、驚異的な回復力を見せて、現在は若干の事故の後遺症は残るものの、勉学にはほとんど支障ない状況まで回復しています。きっと、今年のスイラン祭にも元気よく参加したことでしょう。

■昨年6月に事故をおこしたのは、安中市のハンコ屋の店主で、安中市消防団の副分団長の経験者でもあり、配偶者は安中市議会議員として、岡田市長を支える創政会のメンバーです。

 昨年の事故の報道によると、高崎署は平成21年6月7日に、道交法違反(ひき逃げ)などの疑いで、同県安中市安中、自営業、瀧本雄次容疑者(62)が逮捕されました。そして、同日午前6時半ごろ、同容疑者の家族が「(同容疑者が)人をはねたと言っている」と同署に通報しました。同署によると、同容疑者は「飲酒運転の発覚を恐れて逃げた」と容疑を認めているとのことでした。

 つまり、ひき逃げした店主本人は気が動転して何もできず、市議会の修羅場をくぐった経験のある妻が、本人に代わり、高崎警察署に連絡をとり、警察に対してアピールをしたかったのか、あるいは危機管理対応ができない本人に代わり、度胸のあるところを示したことがわかります。

■ひき逃げ傷害事件から、ちょうど約1年を経過した今年の6月9日に、このひき逃げ傷害事件で起訴された製印業店主の滝本雄次被告に対する論告求刑がありました。それを報じた上毛新聞の社会面の記事です。

**********
懲役3年を求刑 高崎高前ひき逃げ 一部、無罪を主張 地裁高崎支部
 高崎高正門前の市道で昨年6月、文化祭の準備中に同校1年の男子生徒=当時(15)=が乗用車にはねられた事故で、自動車運転過失傷害と道交法違反(ひき逃げ、酒気帯び運転)の罪に問われた安中市安中、製印業、滝本雄次被告(63)の論告求刑公判が9日、前橋地裁高崎支部(佐藤基裁判官)であり、検察側は「被害者や家族に与えた苦痛は甚大」として、懲役3年を求刑した。
 論告で検察側は、提出された証拠を基に、滝本被告が当時酒気帯び状態であったこと、前方を注視していれば事故を回避できたことを指摘。「飲酒運転に対する規範意識が極めて低く、人の生命を顧みず逃走した行為は危険かつ悪質」と非難した。
 被告側は「事故当時の被告の血中アルコール濃度は立証されていない。現場の状況で衝突前に被害者を発見するのは難しく、被告に過失はない」として、酒気帯び運転と自動車運転過失傷害について無罪を主張した。
 男子生徒の父親が意見陳述し、「息子は何日も激しい痛みに耐えなければならなかった。事故は無念であり、痛恨の極み」と声を詰まらせながら訴えた。
<上毛新聞平成22年6月10日付け社会面>
**********

■高校生をひき逃げして重体にしたまま放置して、同乗の女性を送り届けてから自宅に逃げ帰って、明るくなってから市議の妻に高崎署に電話してもらって、警察の来るのを待っていたのに、「事故当時の被告の血中アルコール濃度は実証されていない」などと無罪を主張するとは、あきれ果ててしまいます。

 しかも、被害者にまともに謝罪さえしていないのですから、罪の意識が希薄なのはあきらかです。にもかかわず、検察がたった懲役3年しか求刑しないのみ不可思議です。

■一方、安中市議でもある被告の妻は、来年4月の安中市議選に再度立候補する意向のようですが、この背景には、岡田市長を支える与党会派所属という自負があると思われます。事故発生直後から、市議会議長を同伴して、岡田市長のところに挨拶にいっており、司直に対する岡田市長の政治的な影響力を期待しているものと見られます。

 これを裏付けるかのように、消防団員だった滝本雄次被告の退団届は、事故直後に消防団長に受理されましたが、退職金の取り扱いも含め、処分の方法については、事故発生から1年以上経過するのにまだ先送りされているようです。

■安中市では、一昨年の10月4日午前0時5分ごろ、長野県軽井沢町追分の町道で車体がへこんだ軽乗用車を運転中、通報で駆けつけた軽井沢署員の調べで呼気1リットル中0・2ミリグラムのアルコールが検出されたことから、道交法違反(酒気帯び運転)の疑いで現行犯逮捕された当時55歳の公民館長補佐の例があります。

 この安中市職員の場合は、その後の調べで、平成20年10月3日午後11時50分ごろ、同町内の交差点で信号待ちしていた乗用車に追突、2人に2週間のけがを負わせて逃げた疑いもあることが分かり、同24日、長野地裁佐久支部に自動車運転過失傷害と道交法違反(酒気帯び、ひき逃げ)の罪で起訴されて、安中市は同被告の上司の教育長ら3人も文書による厳重注意にしたあと、逸早く、翌25日付けで懲戒免職処分にしたことを同26日に発表しました。

■一方、滝本雄次被告の場合は、事故発生から1年経過しておりますが、本人からの退団届は受理されていても、処分はまだ行われていない可能性があります。安中市は今回の飲酒運転致傷事故については、なぜか、まったく公表しようとせず、当会は都度、情報公開請求で事情を把握してきました。

 安中市では当初は、滝本容疑者の起訴を待って、処分を検討するとしていましたが、既にとっくに起訴されて、裁判で論告求刑が行われた現在もなお、未処分のままなのか、疑問の声が上がっています。


いつもながらの摩訶不思議な安中市役所の二重基準で、店主が未処分のまま起訴されながらも通常通り営業中の店舗。

■市民の間には、岡田市長が政治圧力を行使して、滝本被告の刑事判決では、執行猶予付きの判決が出され、実質的に無罪になることを見越して、未処分のままにしているのではないか、とのうがった見方もあります。

 いずれにせよ、本当にまだ未処分のままなのかどうか、当会としては、さっそく情報公開請求で事実関係の確認を取ってみたいと思います。

【ひらく会情報部】


こちらも首都高で大事故を起こしながら平常通り営業中の多胡運輸。
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タゴ51億事件発覚から15年・・・タゴ逮捕を報じた新聞各紙

2010-06-08 23:41:00 | 安中市土地開発公社事件クロニクル
■15年前のきのうの6月7日に、県警捜査二課と安中署がタゴを逮捕しました。それを新聞各紙が大々的に報じました。はじめて、新聞に載ったタゴの写真に市民はびっくりしました。どこかで見た顔だったからです。それもそのはず、タゴは公社での15年という長期間、安中市のあらゆる公共事業の土地買収に関与しており、目立たなかったとはいえ、あちこちに顔をだしていたからです。

 それでは、タゴ逮捕を報じた各紙の記事を見ていきましょう。最初は地元の上毛新聞です。続いて、読売新聞、産経新聞、毎日新聞の順に紹介します。なお、文中の赤字は当会のコメントです。

**********
★安中の公社不正借り入れ 元職員を逮捕★
★公印繰り37億円 「はんこ行政」もろさ露呈★
 安中市土地開発公社(理事長・小川勝寿市長)で元職員が公文書を偽造して金融機関から巨額の不正借り入れをした事件で、県警捜査二課と安中署は七日、詐欺、公文書偽造、同行使の疑いで同公社を担当していた元同市都市計画課職員の安中市安中一丁目、熊取、多胡邦夫容疑者(四三)=五月三十一日に懲戒免職=を逮捕。同市役所や多胡容疑者の自宅など関連三カ所を家宅捜索し、同容疑音の預金通帳、公社予算関係書類など二百八十点を押収した尚容疑者の犯行は二つの公印を巧みに利用して公文書を偽造、公社事業費に不正に億単位の金額を上乗せし、差額分をだまし取るという手口。事件は公印に頼る「はんこ行政」のもろさも露呈した。同署と同課は今後、金の使途について、同容疑者を追及する。(関連記事18面)
 巨額の不正借り入れで多胡容疑者は、土地開発公社の理事長印を悪用して、“公印”を操って三十七億円もの大金を手にしていことが明らかになった。背景には、市長印への高い信頼が横たわっており、それだけに同容疑者に公印を使うチャンスを与えた市の管理体制が改めて問われることになりそうだ。
 今回の事件で悪用された理事長印は同公社の事務局長(同市都市計画課長が併任)が管理。勤務中は局長の机上に置かれ、勤務時間外はロッカー内の金庫に収められている。一方の市長印の管理は秘書課が担当し、市長の決済を受けた書類について市長印を押印する。
 同公社が事業を起こす際、金銭借り入れのための起案書を作成。公社内で決済を受けたあと、金銭借入依頼書に理事長の公印が押印される。依頼書とともに金銭貸借契約証書も作成。両書類は財政課に回り、市の債務保証限度額を越えていないかチェックされたうえ、秘書課で契約証書に市長公印が押される。
 安中署の調べでは、多胡容疑者は正規の借入金額を記載した契約証書で理事長、市長の決済を受けたあと、別の契約証書に上乗せした金額を記載し、理事長印を勝手に押印。他の書類と混ぜて秘書課に提出し、市長印を押印させた疑いがもたれている。
 市側の説明では依頼書と契約書はともに正規の金額で正規のルートを通って作成され、二つの公印とも正しく利用された場合でも、銀行に提出するまでの間に金額を改ざんされたことがあるという。多胡容疑者の犯行手口は複数あると見られるが、いずれも市側の管理体制の不備と、仕事内容を熟知している上での犯行だった。←問題は、群馬銀行の金銭消費貸借契約証書だけが手書きでの記入だったこと。他の金融機関はすべて金額をチェックライターで打ち込んでいたが、群馬銀行の金銭消費貸借契約証書は手書きだったため、タゴは「金 ○○○○○円也」というふうに、「金」のあとに少し空欄を作っていた。それを公社・市側は不思議に思わず、群銀は、狭い空欄に窮屈に書かれた金額の漢数字に不審を抱かなかった。
 いずれにしても、公印が押印されたものは大きな効力を持つ。群馬銀行広報室は「借入依頼書、契約証書に公印が押してあれば信用もあるし、融資もする」と話し、ある弁護士も「銀行は市長の印がある以上融資はするでしょう」と、公印の重さを強調している。
 七日の会見で小川市長は、理事長印を公社の管理から秘書課の管理に移行するなど公印管理の強化を打ち出し、善後策に乗り出したが、今回の事件では「群馬県安中市長之印」と刻まれた角印の“重み”がまざまざと見せつけられた。←理事長印を公社から秘書課に移しても、秘書課の係員がタゴのいうことを聞いて、メクラ判をバンバン押していたのだから、これは対策にならない。なお、この秘書課係長は、当時、市内に身分不相応な豪邸を建てて市民から疑惑の目で見られていたことがある。この係長は事情聴取を受けたが起訴はされなかった
★2億数千万の詐欺容疑★
 多胡容疑者の直接の逮捕容疑は、今年三月、二億数千万円をだまし取った事実。しかし、不正借り入れた額は最終的に三十七億円あまりに上るとみられ、県警捜査二課と安中署は余罪と使途の解明に全力を挙げている。
 調べによると、多胡容疑者は今年三月下旬ごろ、当時勤務していた同市都市計画課で、正規の借り入れ額数百万円を書き入れた資金借入依頼書を作成、さらに、課備え付けの理事長印を盗用して、正規な依頼文書を作成した。その後、金額欄に二億数千万円を上乗せした偽の資金借入依頼書を作成し、再び理事長印を盗用。偽依頼書を金融機関に提出し、不正な融資を申し込んだ。
 同容疑者は現金引き出しに必要な契約証書も偽造。正規な借り入れ金額を書き入れた証書で市長の決済を受けて、犯行の発覚を防いだ上で、課内取り置きの契約証書を使って、金額を上乗せした偽の契約証書を作成。偽証書を他の書類に混ぜて再び市長の決済を受け、金融機関に提出。上乗せ分を架空口座「安中市土地開発公社特別会計口座」に振り込ませ、同月三十一日、二億数千万円を引き出した疑い。←この日の3日前の3月28日に、群銀安中支店の駐車場で、タゴは田口咲子という当時69歳の女性人物に現金1000万円を車の窓越しに渡している。この田口咲子という女性とその配偶者か親族らしい田口保洋という人物に、タゴは、板鼻の古城団地分譲に伴う恐喝出資金として、昭和63年度に150万円を上乗せして支払ったことを契機に、その後、平成元年に1500万円を安中郵便局から振り込み、平成2年9月6日に1645万円を国税納付分として支払い、同10月11日に群銀の田口保洋名義の口座に振り込み、平成3年には公社裏口座である特別会計口座から1千万円、平成4年にも同じく裏口座から5百万円、平成6年5月頃にも同様に1千万円、そして事件発覚直前の平成7年3月28日に現金1千万円を手渡すなど、総額8995万9800円を搾り取られている。タゴを脅して上前を撥ねた猛者がいたわけだが、この田口夫妻?はなぜか起訴された痕跡がない。当会の調査では当時原市に在住していたことがわかっている
 これまでの調べによると、同容疑者は架空口座を開設した平成二年四月ごろから、同様の犯行を重ねていたとみられ、余罪は数十回に上るという。都市計画課勤務当時多胡容疑者の仕事は、公共用地取得、用地交渉、契約事務など。今春の定期人事異動で同市教委社会教育課の異動、係長に昇任していた。

<上毛新聞1995年(平成7年)6月8日(木曜日)一面>

★「派手な生活したかった」多胡容疑者★
★古美術品や高級外車3台 依然、多くのなぞ★
 元安中市役所職員の巨額不正借り入れ事件。七日、詐欺などの疑いで逮捕された多胡邦夫容疑者は「迷惑をかけてしまった。今ある資産をすべて使い、返済に努めたい」と担当弁護士に漏らしている、という。しかし、三十七億円にも上る多額の被害額を生んだ異常な事件は、多くのなぞに包まれている。動機、使い道、被害者はだれか―。逮捕をきっかけに、こうした疑問の解明は進むのか―。←タゴは「今ある財産をすべて使い、返済に努めたい」と担当弁護士に漏らしている、という記事だが、これは事件直後の宣伝文句。巨額の使途不明金はほとんどがタゴ一族およびその取り巻きの懐に消えるこおtになり、事件そのものは結局、タゴの単独犯行で幕引きされてしまった
★動機★
 「派手な生活がしてみたかった」-。市役所入りまもない二十歳ごろ、一般会社に就職した同級生の給料が自分の物と、年俸で百万円位差があったことから「派手な生活」へのあこがれを強めたという同容疑者。平成二年ごろには競馬にもこり、金への執着が強まった。そしてこの年、以前かかわった住宅団地分譲で、公社内に別会計の口座が設けられたのを参考に、架空の別口座を開設、借り入れ金に手をつけるようになった。
 これまでの調べでは、五年前から不正借り入れが始まったが、同容疑者については、以前から土地売買もうわさされていた。三十七億円はあまりにも巨額だが、同容疑者の「派手好み」が犯行の一因になったようだ。
★使い道★
 「とても一人で使い切る額ではない。何か背景があるはず」との声がある一方、多胡容疑者を知る人は、一般公務員では想像もつかない派手な生活ぶりを指摘している。一枚数百万円もの古美術品の皿、クラシックカーも含む三台の高級外国車。このほか、海外リゾートマンション、ゴルフ会員権の取得など、派手な噂(うわさ)がつきまとう。職場の同直には「骨董(こっとう)品売買でもうけた。東南アジアや中国にも買い付けに行った」などと豪語していたという。
 同容疑者の月収は約三十五万円。妻と子ども二人の四人家族での生活からすれば、「到底、外車三台も買える額ではない」と同市職員。昔を知る同級生の一人は「高校ぐらいまでは、目立つ男ではなかった。十五、十六年ほど前から目に見えて持ち物が変わった」と話す。←海外旅行については、ジェットツーリストを通じて、サイパン旅行3回を含むトータルで7~8回の渡航をしており、昭和61年12月22日に94万8千円、昭和62年10月20日に35万円、同年12月18日に230万円、平成元年12月25日に88万6660円を支払っている。年末が多いが、10月下旬にも出かけており、市役所の職員と言うものがヒマなことがわかる。なお、平成4年8月13日は国内旅行で55万2800万円を払っている。当然、一人では使い切れない旅行金額であり、家族をはじめ親しい友人、知人が同行していたと考えられる。その中には元市議らも含まれている。
★高崎署に護送 疲れた様子見られず★
 多胡容疑者はこの日午後二時、安中署から高崎署に護送された。
 五日聞、連日、任意で事情を聴かれていたが、疲れた様子は見られず、捜査員にうながされて、落ちついた足どりで車に乗り込んだ。
★「民事上の実害ない」群銀★
 県警捜査二課と安中署は、巨額の不正借り入れ事件を「詐欺容疑」で簡発した。刑事事件の処理としては、群馬銀行安中支店が“被害者”との判断を下したわけだ。
 しかし、三十七億円ともみられる被害額の大きさから、刑事事件とはまったく構成を異にする民事事件の被害者がストレートに同銀行になるかは、疑問視する見方もある。
 同銀行総合企画部広報室は「融資するに当たって公社は最も信頼している取引先の一つ。刑事上は当行が被害者になっているが、民事上のことはまったく別の問題。安中市の保証がある安中市土地開発公社を信頼しており、(民事上の)実害があったとは考えていない」とコメント。
 小川勝寿・安中市長は「刑事と民事の区別はよく分からないが、弁護士と相談して決めていきたい」と話した。信頼されるべき存在の「市」と「地元銀行」のどちらが被害者かの判断は、最終的には法廷の場に移される妥当、との予測が強まっている。
★不正37億は小学校2校分 異常さ「前例ない」 金額の大きさ★
 七日記者会見した小川勝寿市長(同公社理事長)は不正額について「借入額は四十七億六千万円。このうち公社が把握しているのが十億円。差し引きはおよそ三十七億円だが、これがすべて証拠的に不正のものかどうかは調査している」と語った。しかし三十億円を超える額は一般公務員が詐欺、横領、背任などの事件にかかわって得た金額では、「全国でも例がない」(県警)。←このことから、当会は、タゴ51億円事件を「前代未聞」「空前絶後」と評している。
 仮に三十七億とするとどんなことができるか。県教委管理課によると、玉村町角渕に新設された玉村南小学校は約二万二千平方メートルの用地買収費が四億七千万円。鉄筋コンクリート造り三階建ての校舎建設タイプの学校で、今回の額は小学校二校分の建設費にあたる。
 平成七年度の県内市町村の当初予算(普通会計)をみると、北橘、宮城、粕川、倉渕、子持村などが三十五億円前後。安中市は百六十億五千五百万円。
 三十七億円を安中市民約四万七千人で分配すると一人八万円近くになる。

<上毛新聞1995年(平成7年)6月8日(木曜日)社会面>

★市の甘い体質に怒りも 安中土地公社元主査逮捕★
★安中土地公社元主査逮捕★
 安中市土地開発公社の元職員が、金融機関に提出する借り入れ契約書を改ざんして総額約三十七億円をだましとっていた事件で、県警捜査二課と安中署は七日、詐欺、有印公文書偽造、同行使の容疑で逮捕した同公社元主査の多胡邦夫容疑者(四三)(安中市安中)の自宅や、同公社のある市役所など七か所を家宅捜索するとともに、同容疑者の詐欺の手法の解明に本格的に乗り出した。空前の巨額詐欺事件は地域社会に大きな衝撃を与えている同事件を未然に防げなかった市当局の甘い体質に市民からは怒りの声が上がっている。
★詐欺手法解明へ 使途、背後関係も追及 県警★
 同課などの調べによると、多胡容疑者は九〇年四月ごろから、約五年間、同じころに開設した秘密口座に数十回にわたって水増し融資金を入金させていたが、犯行を思い付いたのは、八五年ごろ。同公社が市内の古城団地の土地取得や造成を行った際に、同公社の一般会計口座とは別口に「古城団地会計」の名目で特別会計口座を開設できることを知ったことかきっかけだったという。←古城団地の開発事業は群馬県の企業局が手がけた。このときの企業局の担当者は、タゴの喫茶店に呼ばれて食事を振舞われている。特別会計口座というヒントは県から与えられたと考えられる。
 さらに同容疑者は、融資契約書類の金額を改ざんするため、「書き損じるといけないから」と金融機関から白紙の「金銭消費貸借契約証書」をあらかじめ何枚も入手。入手した契約書に同公社の融資をでっち上げ、他の公文書にまぎれさせて市長印を押印させていたほか、市長印が押された後に借り入れ金額を改ざんするなど、状況に応じ様々な手口を使って市財政当局に不正を見つけられないよう“工夫”していたらしい。
 同課などでは、着服額が巨額なことから同容疑者の協力者がいる可能性もあるとみて、水増し融資金の使途とともに、背後関係も調べる方針。←同容疑者の協力者として、当会がこれまでに確認したのは、タゴの配偶者(警察の調べでも総額1億5千万円が渡っている)、タゴの親族(多胡運輸の役員でもある母親に140万円(タゴの供述では300万円位)、なぜか多胡運輸社長の実弟の名前は使途先には出てこないが、使途不明金が巨額だけに相当額が流れているものと見られる)、タゴの親友の甘楽信金元職員(古物商の免許を持ち、タゴの名代として骨董屋から一手に大量の骨董品を買い付けていた御仁。富岡市内在住。タゴの懲戒免職の日に、甘楽信金の住宅ローン800万円を一括完済してもらい、なぜかその日に甘楽信金を退職したのに不起訴)、高崎市在住の税理士(事件発覚当時、協力者として当会に情報提供があった御仁。タゴの実弟や学習塾経営者の元市議らと親しかった)などなど枚挙に暇がない。もちろん、市長ら幹部、上司、同僚らや市議、県議らも犯罪幇助の関係者だった)
 タゴ容疑者は調べに対し、容疑を全面的に認めており、動機については「二十歳のころ、一般企業に就職した同級生と、年収で約百万円の差があった。派手な生活がしてみたかった」などと供述しているという。←タゴはこのように、事前のシナリオにしたがって、単独犯だと思わせる供述を警察にしていた。
★自宅など7か所捜索★
 県警は七日、安中市役所や多胡容疑者の自宅、同容疑者の妻が経営する喫茶店倉庫など計7か所を家宅捜索。約八時間三十分にわたる捜査で同容疑者名義の預金通帳、領収証、フロッピーディスクなど計約二百八十点を押収した。
★監査、形がい化★
 市の信用につけ込んで巨額の架空融資を申し込んだ多胡容疑者安中市の土地開発公社を舞台にした巨額詐欺事件で、同市のずさんな管理体制も浮き彫りになった。
 同公社では、金融機関から融資を申し込む際、同公社の理事長の決裁印が必要だが、同容疑者は理事長印を自由に利用することができたという。また、同市では、借入残高証明書のチェックが行われておらず、五年間も秘密口座の存在すら判明していないなど監査も形がい化していた。
 また、同市では金融機関からの借り入れの際は、複数の市職員が立ち会うことが義務づけられていたが、同容疑者は一人で金融機関を訪れることが多かったという。金融機関でも、同容疑者は「市長の特命で来ている」と話し、相手を信用させていた。同市では「市長印を押印した後に公文書の偽造が行われたため、事前に防げなかった」と釈明している。←実際には、タゴだけが群馬銀行を訪問していたわけではなく、他の職員や上司の高橋弘安も融資案件で群銀を訪れたことがあるので、群銀のこの説明は根拠に乏しい。
 着服が五年間も続いたことに同市では衝撃を受けており、小川市長も公印管理の甘さを認めて、今後は公印の管理を徹底するなど、事件の再発防止に努めたいとしている。
★「公印管理強化を」小川市長が会見★
 一方、安中市役所では同日、安中市土地開発公社の緊急理事会や市議会全員協議会が開かれるなど、慌ただしい動きをみせ、職員らは県警の家宅捜索を不安そうに見守った。また、市役所で記者会見した小川勝寿市長は「公務員としてあるまじき行為。心から市民の皆さんに深くおわびする」と改めて市民に陳謝した。
 小川市長との一問一答は次の通り。
 ――多胡容疑者の逮捕について
 驚きそのもので、度肝を抜かれている。管理責任と市民に同様を与えた責任はひしひしと感じている。
 ――水増し融資の総額は
 公社として把握している借入残高が約十億千七百万円、金融機関の把握文が約四十七億六千六百万円。差し引き約三十七億四千九百万円が水増しと思われる。
 ――水増し分の利子負担はどうしていたのか
 (多胡容疑者が開設した)秘密口座の中だけで処理されていたのでは。公社は負担しておらず、それしか理解のしようがない。
 ――理事長印が勝手に使われていたようだが
 公印管理に甘さがあった。今後は「公印管理の強化」や「借り入れ実行時の二重チェック」などを行う。←このように、小川市長は東京の虎ノ門から呼び寄せた田邊、菰田両弁護士の書いたシナリオどおりに述べていることがうかがえる。

<読売新聞1995年(平成7年)6月8日(木曜日)>

★着服金で豪勢な生活 高級外車、海外のマンション、骨とう品・・・★
★派手さにあこがれ 多胡容疑者★
 高級スポーツカーに海外のリゾートマンション――。安中市の土地開発公社をめぐる元職員の詐欺事件で県警は七日、逮捕した多胡邦夫容疑者(四三)の安中市内の自宅などを捜索し、外国製の高級乗用車やゴルフ会員権、高額の骨とう品などを大量に発見した。市の借用を悪用して金融機関から三十七億円もの大金をだまし取った同容疑者は、わずか五年間で巨額の“資産”を形成。「派手な生活」にあこがれ、だまし取った金をつき込んでつかの間の豪勢な暮らしを満喫していた。
 多胡容疑者は、だましとった金で栃木県足利市内の骨とう品業者などから、高価な年代ものの皿、花瓶などの骨とう品や、絵画などを大量に購入。←この情報は正確ではない。正しくは、タゴは足利市の一品堂から直接骨董品を購入したのではなく、全部、タゴの親友で、甘楽信金の石原保が買い付けていた。
 妻が経営する安中市内の喫茶店に隣接する倉庫からは、総額で時価十億円にものぼる骨とう品類が発見された。
 また、自宅の増改築や喫茶店経営の借金返済に数値円を投入。サイパン、ハワイではリゾートマンションを購入していた。
 さらに、総額三千三百万円のゴルフ場会員権(三口)、一台千三百万円もするドイツ製スポーツカーなど高級乗用車三台、一着数十万円のブランドもののスーツなどを購入。果ては歯の治療費に八百万円も流用していた。
★多胡容疑者の使途一覧★
・骨とう品(皿、花瓶、美術品など数千点)    約10億円(←実際には4億7000万円程度
・喫茶店経営の借金返済            数億円(←実際には土地代3220万円、店舗4000万円、倉庫関連3000万円、家具類2061万円、店舗キッチン135万円、厨房機器410万円、駐車場舗装工事310万円、看板190万円で総計約1億3500万円
・自宅改築資金                約5000万円(←約1億1000万円と供述
・ゴルフ場会員権(3口)           約3300万円
・外国製高級乗用車(メルセデスベンツ3台)  約3000万円(←全部で外車10台を4116万円。また妻のためにアウディの新車1台を430万円
・海外リゾートマンション(サイパン、ハワイ) 約2000万円
・歯の治療費                 約800万円(←高崎の井汲歯科でインプラント等を約722万円
★多額な返済毎月必要 借り入れ金も増加★
 しかし、借り入れ金額が高額で返済据え置き期間の短いものだったことから、月々の返済金額も多額で、同容疑者は月々の返済額を確保するため、金融機関に次々と架空の借り入れを行うなどして自転車操業的に借り入れ金額を増やしていったらしい。
 県警では、家宅捜索で押収した資料から同容疑者の資産形成の実態を解明するとともに、同容疑者の五年間にわたる巨額詐欺をなぜ発見できなかったのか、市幹部からもくわしく事情を聞くことにしている。

<読売新聞1995年(平成7年)6月8日(木曜日)>

★発覚恐れ“自転車操業” 安中市の元主査逮捕★
★実害は約20億円 「派手な生活」にあこがれて・・・ ワープロを悪用★
 安中市土地開発公社(理事長・小川勝寿市長)の職員による不正借り入れ事件で、県警捜査二課と安中署は七日朝、安中市安中一ノ二三ノ三二、元同市土地開発公社主査、多胡邦夫容疑者(四三)を詐欺と公文書偽造・同行使の疑いで逮捕、自宅などの捜索を行ったが、実際に多胡容疑者の着服額は約二十億円であることがわかった。また、不正借り入れの総額は五年間で三十七億四千八百七十九万二千円と判明したが、発覚を防ぐため借り入れては返済期限までに返す“自転車操業”を繰り返していたことも明らかになった。犯行の手口は、フロッピーを使用すれば、金額を容易に変えることができるワープロを悪用。手にしたカネで海外のリゾートマンションやゴルフ会員権を購入していた。喫茶店も経営していた多胡容疑者は調べに対し、「派手な生活をしたかった」と供述している。
 調べによると、多胡容疑者は昭和五十四年十月から、安中巾役所都市計画課主査兼同市土地開発公社職員として勤務、市内の銀行から用地取得用の資金を借り入れする際に、正規の金額に水増しして、その分を着服することを計画。今年三月下旬ごろ、「資金借入依頼書」と「貸借契約証書」を偽造して、正規の数百万円の融資のほかに、銀行から“水増し分”二億数千万円を、自分で開設した「土地開発公社特別会計」名義の別口座に振り込ませて引き出した疑い。
 多胡容疑者は、ふだん自分が使っている備え付けのワープロで正規の借入依頼書を作成、理事長決済後にフロッピーに保存してあった文書を呼び出して、金額の欄を一回につき一-三億円程度を水増しして記入。自分で「理事長印」を押して、借入依頼書の偽造を数十回繰り返し、銀行に融資の申し込みをしていた。
 さらに銀行から融資金を引き出す際も、銀行との「契約証書」も正規のものを理事長と市長の決裁を受けた後、ストックしてあった別の契約証書に上乗せした金額を記入、自分で理事長印を押し、他の書類の決済時に、「先の証書に間違いがあった」と偽って、管理の厳しい「市長印」を押させて偽造していた。
 市の内部調査によると、別口座に、五年間で総額三十七億四千八百七十九万四千円振り込まれていた。
 銀行の説明によると、多胡容疑者が水増しして借入した融資の貸借契約は一-二年で、多胡容疑者は、返済期日が迫ると、借入しては返す“自転車操業”を繰り返し、返済が滞ったことはなかった、という。多胡容疑者は借入金をプールした別口座から一度に数千万円の現金を引き出したこともある、という。
 動機について多胡容疑者は「二十歳のとき、民間会社に行った同級生と年収を比べたら百万円も低かったので、いつかは派手な生活をしたいと思っていた」と供述。
 現在、実際に返済不能になっている金額は二十億円前後とみられ、この約二十億円について「ベンツ三台に骨とう品、美術品のほか、高級ブランドの洋服や海外のリゾートマンション、ゴルフ会員権まで買った。自宅の改築や、経営する喫茶店の借金にもつぎ込んだ。また株や競馬などに使った」と話している。
 しかし、多胡容疑者の銀行口座には約二億円しか残っておらす、このほかにも使った可能性もあるとみて同署では多胡容疑者を追及する。
 同署ではこの日、多胡容疑者の自宅や市役所などを家宅捜索し、預金通帳など二百八十点を押収した。
★「再発防止に万全期す」 市長が陳謝 公印管理強化など明言★
 多胡容疑者が逮捕されたことについて、開発公社理事長でもある小川市長は七日午後、市役所で会見し、「市民に深くおわびする」と陳謝した。その上で多胡容疑者が不正に借り入れた額を約三十七億円とみていることを明らかにした。
 小川市長との一問一答は次の通り。
 ――事件についてどう思うか。
 「当然ながら市民のみなさんには深くおわびする。今後は網紀粛正に努め、このような事件が起きぬよう万全を期す。多胡容疑者が開設した口座の出入金については、調査に時間がかかるが、現在把握している額は、公社の借り入れ残高が十億一千六百九十万四千円、金融機関で把握している借り入れ残高が四十七億六千五百六十九万六千円で、その差し引きが三十七億四千八百七十九万二千円」
 ――この額は多胡容疑者が開設した口座で、不正に借り入れた残高とみられるものか。
 「そうだ。この数字が正しいかどうかは細かく調査しないとわからない」
 ――公社の会計について市は監査していなかったのか。
 「していたが、別口座なので分からなかった。通帳の預金残高を確認したが、金融機関への借り入れ残高は確認していない」
 ――市長印、(土地開発公社の)理事長印の管理は。
 「市長印は秘書課で管理。理事長印は公社の事務局長が管理していた。盗用できるはずはないのだが」
 ――今後の対応は。
 「基本的には司法の捜査の結果を待つ。同時に弁護士と相談して詐欺罪での告訴を考えている」
 ――市長自身や多胡容疑者の上司など、管理者の処分は。
 「事件の全容解明を待って考える。管理者としての責任はあると感じている」
 ――再発防止策は考えているのか。
 「公印管理の強化、予算決議事項の二重チェック、借り入れ確認書の取り交わし、数字の手書きをやめてチェックライターを使うことなどの具体策を立てた」


<産経新聞1995年(平成7年)6月8日(木曜日)>

★多胡容疑者 手口も使途も大胆 安中市開発公社巨額詐欺★
★骨とう、海外マンション・・・ 「派手な生活したい」★
 安中市土地開発公社(理事稿小川勝寿市長)を舞台にした巨額詐欺事件に七日、強制捜査のメスが入った。県警捜査二課と安中署は、同公社元主査、多胡邦夫容疑者(四三)=安中市安中一=を逮捕するともに、同公社や自宅など三ヵ所を家宅捜索し、関係書類など二百八十点を押収した。不正取得の手口は「消費貸借契約証書]の金額を、正規の数百万円から数字を二けた増やして二億数千万円に偽造するという大胆さ。一九九〇年四月から今年三月末までの間、水増しして借り入れた総額は三千七億円に上り、多くを骨とう品購入につぎこんでいたらしい。県警は共犯の有無、詳しい使途など事件の全容解明に全力を挙げている。
 調べによると、多胡容疑者は今年三月下旬、正規の額(数百万円)を記入した「公有地取得事業資金借入依頼書」で市長の決済を受けた後、二億数千万円分を水増しした「借入依頼書」をもう一通作製、市内の銀行にはこの偽造依頼書を提出した。数日後、契約締結時に銀行側と交わす「金銭消費貸借契約証書」にも水増し金額を書き、他の書類に交ぜるなどの手口で市長印を押させて偽造、自分で開いた「土地開発公社特別会計」名目の架空口座に水増し分を振り込ませた疑い。
 安中署で逮捕状を示された同容疑者は「はい、分かりました」と答え、調べに対して容疑事実を認めているという。動機については「二十歳のころ、一般企業に入った同級生と年収で百万円の差があり、派手な生活がしてみたかった」などと話しているという。
 不正取得した現金は、骨とう・古美術品や複数の高級外車クラシックカーをはじめ海外リゾートマンションやゴルフ会員権、株券などの購入に充てたほか、ギャンブルや、自宅と麦の経営する喫茶店の改築費にも使ったと供述している。
★驚きながらも「やっぱり」★
 「何かおかしいと思っていた。やっぱり悪いことをしていたんですね」--。
 県警の捜査員が同公社などの捜索に着手したこの日午前、多胡容疑者の自宅近くの住民は驚きの表情を見せながらも一様に口をそろえた。
 無職の男性(七二)は「一度家に入ったことがあるが、大きな衣装棚に高そうなシャツがぎっしり並んでいるのを見てびっくりした」と話し、家宅捜索の様子を見守っていた。
 関係者によると、多胡容疑者は、国道18号線沿いにある妻経営の喫茶店で、二年ほど前から不正借入金で購入したとみられる骨とう品や古美術の商売を始めていたという。最近はバブル経済の崩壊でぜいたく品が売れなくなり、近所の飲食店主(四九)は「値が張るものばかりあって、ほとんど客の姿を見なかった。どうしてやっているのか不思議だった」と話した。
 多胡容疑者が水増し分を振り込む架空□座を開いたのは、バブル景気さなかの九〇年。その後、県外の骨とう品店で、三枚で一千万円もする皿をはじめ合計十億円相当の骨とう品を買い入れるなど、次第に常軌を逸した浪費にのめり込んでいったようだ。
★「自分含め処分考える」 小川市長 銀行側の責任も示唆★
 小川勝寿市長はこの日夕、記者会見。「市民に動揺を与えたことに陳謝したい。自分も含めて処分を考えたい」と述べるとともに、「職員の綱紀粛正と管理体制の徹底を図りたい」と語った。
 その一方で、管理責任について「特別口座があることは監査では想像すらできなかった。銀行側にも不正に気付く可能性があったと語り、金融機関にも責任の一端があるとの考えを示した。また県警の調べで、十分なチェックがなされないまま偽造契約証書に市長公印が押されていたことが明らかになったが、市側はずさんな公印押印の可能性を否定。県警と市側の認識に食い違いがあることもうかがわせた。
 市側の調査によると、公社側と銀行側のそれぞれの手持ち資料による借入金残高の差額は、現段階で三十七億四千八百七十九万二千円に上っており、小川市長は多胡容疑者を近く詐欺罪で告発する予定。

<毎日新聞1995年(平成7年)6月8日(木曜日)>

■こうして、タゴは、ある意味では一番安全とも言える塀の向こうに姿をくらましたのでした。そして、後に残されてワリを食わされたのは、結局、タゴ豪遊と取り巻き連中への横領金の流失の尻拭いをさせられる安中市民だったのでした。

【ひらく会情報部】

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タゴ51億事件発覚から15年・・・次第にわかってきた不正の手口とタゴ逮捕前夜

2010-06-07 23:51:00 | 安中市土地開発公社事件クロニクル
■平成7年6月3日(金)午後に、タゴが穂積弁護士に連れられて安中警察署に出頭してから、警察は連日、タゴをはじめ、安中市土地開発公社職員、安中市役所幹部、群馬銀行安中支店関係者らから事情聴取をしてきましたが、6月6日(月)深夜に裁判所で逮捕状を請求し、タゴの逮捕に踏み切ることになりました。

 すでに、タゴ、安中市・公社、群銀の間では、それぞれの弁護士を介して、この事件をタゴの単独犯行に仕立てるシナリオが作られており、タゴが安中市土地開発公社特別会計口座と称する裏口座を群馬銀行安中支店に開設した平成2年4月16日以前に、直接、表口座から横領していたころの犯行を示す資料を、逸早く安中市が廃棄したのも、その一環でした。

 そのため、群馬銀行も平成2年4月16日以前の表口座に関係するデータの取り扱いについては警察の求めに応じて提供はしたものの、開示された刑事記録を見る限り、積極的に説明した経緯は見られません。安中警察署で事件の真相解明に尽力する警察官にとっては、慣れない金融関係の用語や、昭和50年代半ばから積み重ねられた膨大な取引の数字の羅列を前に悪戦苦闘を強いられて、結局、裏口座開設以降に的を絞ることを余儀なくされていったのでした。

 それでは、平成7年6月7日(火)の朝刊各紙の報道記事を見てみましょう。

**********
★元職員の逮捕状請求 安中市土地公社不正借り入れ 公文書偽造と詐欺容疑★
 安中市の元土地開発公社担当職員が公文書を偽造し、金融機関から不正借り入れしていた事件で、安中署は六日深夜、詐欺などの疑いで、この元職員(四三)の逮捕状を地裁高崎支部に請求、きょう七日にも逮捕する方針。
 調べによると、元職員は都市計画課に在籍していた当時、土地開発公社の事業費を金融機関から借り入れる際、申込書を改ざん、正規の借り入れ額に上乗せして、差額をだまし取ろうと計画。金融機関に提出した疑い。
 元職員の不正借入れ総額は三十七億円に上るとみられるが、約二億円分についての容疑を固めた。
 関係者の話を総合すると、元職員は平成二年四月十六日に市内の金融機関で、実際には存在しない「安中市土地開発公社特別会計」名義の口座を開設。理事長印など公印を盗用して金銭借入申込書、金銭貸借契約書など必要書類を偽造、正規の借り入れ額に上乗せし、不正借り入れ分を別口座に入金させていた。引き出しに際しては、再び公印を用いて預金払戻請求書を偽造、金を引き出していた。
 「安中市土地開発公社特別会計」名義の口座を五年間で十数回使い、不正に引き出した総額は約三十七億円に上るとみられている。
 元職員は昭和四十五年六月に市職員に採用され、税務課、農政課を経て同五十四年十月に建設部都市計画課に異動した。翌五十五年四月に安中市土地開発公社が設立され、以来十五年間、同課に勤務し、公社の業務に携わってきた。今年四月の人事異動で、市教委社会教育係長に昇任していた。
 元職員は、市の調べに対して不正借り入れを認めたため、先月三十一日に懲戒免職処分を受けている。(関連記事16面)
★宅地売買で架空登記 安中市土地開発公社分譲地★
★疑惑の元職員関与? 買い戻し、別人に販売★
 安中市土地開発公社が分譲した住宅地売買にからみ、実際には宅地を購入していない人の名を使った架空登記が行われていたことが六日、明らかになった。この架空登記に、公文書を偽造したとして懲戒免職処分を受けた元土地開発公社担当職員が関与した疑いがもたれている。土地は同公社が販売した同市原市の芝原住宅団地の一区画で、名前を使われた人は上毛新聞社の取材に対して土地の購入を強く否定。公社のずさんな体質を批判している。
 問題の土地は昭和五十六年、同公社が売り出した十三区画の住宅団地の一区画(約百八十五平方メートル)。登記簿上では、同年九月二日にAさん夫婦が購入し、翌三日に所有権移転の登記が行われた。その後、平成四年三月三十日にAさん夫婦から同公社が買い戻し、翌三十一日に松井田町内のBさん夫婦が公社から購入した形になっている。
 Aさん夫婦は、昭和五十六年九月二日、同団地の別の区画(百八十一平方メートル)を購入し、同年十月二十三日に所有権を移転し、現在は家を建てて生活している。
 登記簿上では、Aさん夫婦は同団地の二区画を同時に購入、まもなく一区画分に家を建て、平成四年に残り一区画を手放したことになる。しかし、Aさんは「二区画も買える余裕はなかったし、買った覚えもない。なぜ、自分たち夫婦の名前が、よその土地の登記簿にあるのか。誰がそんなことをしたのか、わからない」と話す。
 二区画への登記は「単純ミスによる誤登記」とする声もあるが、法務局によると「ミスだとすれば、一般的には『錯誤により抹消』だけで済むはず」としている。しかし、同公社はAさん夫婦に売った土地をいったん買い戻しているため、「錯誤ではない」とみられている。
 平成五年五月の公社理事会でこの事実関係を質した理事の一人は「この不明朗な登記には、元職員がかかわっていた」と指摘。市幹部の一人も「元職員は当時、事実関係を認めていた」と話している。

<上毛新聞1995年(平成7年)6月7日(水曜日)>

★元主査を事情聴取 安中土地公社不正借り入れ★
★詐欺、公文書偽造容疑で県警 問われる公社責任★
 安中市土地開発公社の元主査(四三)が、公社の事業資金を金融機関から借り入れる際、金銭消費貸借契約書を偽造して借り入れ額を水増しし、秘密口座に振り込ませて水増し分を着服していた事件で、県警捜査二課と安中署は六日、詐欺と公文書偽造容疑で同主査に出頭を求め、事情聴取を始めた。同公社理事会では、二年前にも不明朗な土地取引を指摘されており、疑惑を放置してきた同公社の責任が間われるのは必至だ。
 調べによると、元主査は九〇年ごろから、公社の事業資金を金融機関から借り入れる際、金銭消費貸借契約僣の金額欄の先頭に数字を足して借り入れ額を水増しし、巨額の融資金をだまし取っていた疑い。市関係者によると、水増し融資の帳簿上の総額は約三十八億に上るとみられている。元主査は容疑を認めているため、すでに懲戒免職処分となった。
 不明朗な土地取引と指摘されたのは、安中市原市の芝原住宅団地内の一区画。同公社の九一年度決算で土地の売却益として約六百二十万円が計上されていたことから、市議(五八)が同土地の登記をとった。
 登記によると同土地は七一年九月、同公社から同市内の無職男性(六三)に売却され、九二年三月に同公社が買い戻し、翌日碓氷郡内の男性に売却されている。土地取引を不自然に思った同市議が同市内の無職男性に聞いたところ、「その土地を購入したことはない。登記されているとすれば、勝手に名前を使われたのではないか」と説明した。
 このため、同市議は九三年五月の同公社理事会で「不明朗な土地取引があるので究明して欲しい」と要請。公社理事長でもある小川勝寿市長は調査を約束した。都市計画課で調査したが、「特に不正とは言えない」と判断し、小川市長に報告した。
 しかし、当時の同課幹部は「(元主査は同公社に)長く居過ぎた。大変申し訳ない。いずれこの処理をしていきたい」などと同市議に説明したという。しかし、元主査は翌年度も同じポストに居すわったままだった。
 同市議は「元主査の羽振りの良さは有名だった。十年ほど前にも不正がないかを調査するよう当時の建設部長に依頼するなど、何度も真相を明らかにするチャンスはあったはずだ」と厳しく指摘している。
 不明朗な土地取引に閲しての小川市長との一問一答は次の通り。
 --不明朗な土地取引をどう調査したのか
 最初に指摘を受けた時は、チンプンカンプンだった。部下に調査を指示し、調査結果では、特に不正とは言えないとのことだった
 --調査結果をどう受け止めたのか
 とにかくチンブンカンプンだった。特に不正だという風には思わなかった
 --きちんと調査していれば、巨額詐欺も早期に発見出来たのではないか
 当時は、(土地取引は)重要な問題だとは思わなかったので念入りな調査は行わなかった
 --問題が起きた後も元主査を同じポストに置き続けたのはなぜか
 後進が育つまでやってもらいたいという気持ちだった。当時は多胡容疑者の問題は決着したという認識だった
★「返済信じている」群馬銀★
 一方、詐欺の被害を受けた群馬銀行ではこの日、社内で対応協議に追われた。同行広報室では「安中市の保証を得て、公社に融資した。公社を信頼しており、返済してもらえると信じている」と話している。
★派手な生活目立つ 元主査★
 同市によると、元主査は七〇年六月に同市役所に入庁。税務、農政課を経て、七九年十月から今年三月までの約十六年間、都市計画課に勤務。八〇年四月からは同公社を兼務していたが、今年四月に市教委社会教育課係長に昇任している。元主査(四三)は数年前からドイツ製の高級乗用車やスポーツカーを乗り回し、一着数十万円もするスーツを着こなすなど、派手な生活ぶりが目立っていた。
 自宅は市の中心部にあり、妻の親族と同じ敷地の中に別々に二階建ての家を建てており、門は共有になっている。
 職場では主に経理を担当し、用地買収や一般事務などもこなすなど仕事熱心だったという。大規模事業に伴う事業費借り入れの起案も自ら行っていたほか、市長が決裁した金銭消費賃借契約書などの書類を金融機関へ持ち込んだりもしていた。
 職場の同原らによると、元主査は「仕事の処理能力が高く、一生懸命やっていた」「外見は目立っていたが、性格はおとなしい」など評判がよかったが、一方で、海外旅行に何度も出掛け、近くの住民には「どこにそんなお金があるんだろう」と不審がる人もいた。
 ギャンブルや仕手株に手を出していた、と証言する人もおり、着服した金の使途は多岐にわたると見られる。

<読売新聞1995年(平成7年)6月7日(水曜日)>

★甘かったチェック体制 安中市開発公社の不正★
★「上司の信頼」突く 元主査取り調べに衝撃★
 安中市土地開発公社(理事長示川勝寿市長)を舞台に、同公社元主査(四三)が事業費借入金を水増しし、上乗せ分を使い込んでいた事件は、元主査が公社側の「チェック体制の甘さ」や「上司の信頼」を巧みに突いたものだった。その総額は三十奴原円に上るものとみられる。信頼しきっていた職員の裏切り行為に幹部らは大きなショックを受けているが、今後公社の管理体制が厳しく問われそうだ。
 市の調べによると、元主査は公社が事業資金を銀行から借り入れる際、金銭借り入れ申込書の金額欄の数字を改ざんして水増し、上乗せ分を勝手に「安中土地開発公社」として開設した別口座に振り込ませていた。
 金銭借り入れ申込書は元主査が作成、公社側の借り入れ金額を「金OOO円」と記入する際、「金」と「OOO円」の間に二ケタの余白を残して実際の金額を記入、決済を受けて銀行に届ける間にこのスペースに数字を書き加えて水増しをしていた。
 元主査は、これを数回繰り返し、特別会計口座に振り込まれた金銭は、公社の理事長印を盗用して預金払戻し請求書を偽造し金銭を引き出していた。
 公社側では、監査の際、金融機関からの借り入れ残高証明書を取らず、口座の通帳だけでチェック、借り入れ金額が通帳と合っているかどうかの確認だけで済ませていた。
 元主査は職場で、「仕事ができる」との評価を受けており、上司の「信頼」が裏目に出た形となった。
★評判だった派手な生活★
 元主査は地元の高校を卒業後、一九七〇年六月に市職員となり、税務課、農政課を経て七八年十月から市建設部都市計画課に移り、土地開発公社職員も併任していた。
 元主査は、夫婦で外国製の高級乗用車を乗り回したり、妻が喫茶店を径営するなど、市職員としては考えられない生活ぶりで、近所の人たちは「なんて金回りのいい人なんだろうと思っていた」と話している。

<毎日新聞1995年(平成7年)6月7日(水曜日)>

★安中市元主査不正借り入れ 横領総額約40億円に★
★骨董品や外車に使う 5年間なぜ気付かぬ 関係者も疑問★
★「返済は市民負担・・・」批判の声も★
 安中市土地開発公社の元主査(四三)が、公文書を偽造して金融機関から事業費を不正に借り入れていた問題で、県警捜査二部と安中署は六日夜、詐欺と公文書偽造の疑いで逮捕状を用意し、元主査の本格追及を始めたが、不正に引き出して着服した総額は同市の今年度当初予算の四分の一にあたる四十億円近くにも上ることがわかった。金融機関では債務保証先の市に対して返済を求める意向を表明しており、市民の間からは「五年間もなぜ不正を見抜けなかったのか」「市が返済するとなると市民にその負担がくる・・・」と市の「管理責任」に対して批判の声があがっている。
★別口座と公印盗用★
 五日夜に聞かれた安中市議会の緊急全員協議会の席上で、小川勝寿市長は、約四十億円といわれる不正引き出し額について、「そのぐらいの額になるのでは」とおおむね認めた。
 安中署の調べでは、元主査は平成二年四月十六日に、実際には存在しない「安中市土地開発公社特別会計」の名義で市内の金融機関に口座を開設。
 銀行から融資を受ける際、貸借契約証書の金額欄に決済後に数字を書き足す方法で融資額を水増し、水増し分を「特別会計」口座に振り込ませていた。元主査は、同様の手口を数回繰り返し、預金の引き出し時には公社の理事長印を盗用して払戻謂求書を偽造していた。
 五月十八日、公社の職員が、金融機関が発行した借入残高証明に、実際の残高をはるかに超える借入金の存在を見つけ、元主査の不正が発覚した。
 同公社に融資していた金融機関では、「顧客の希望があれば、一枚の契約鉦書から二つの口座に融資することはよくあるため、不自然には感じなかった。書類に不備はなく、完全に信用していた」と話す。
 しかし、予算規模約十七億円(平成七年度)の公社に対する融資で約四十億円もの水増しはあまりにも不自然で「どうしてだれも気付かなかったのか」と市関係者も首をかしげている。
★目に余る浪費★
 元主査は、市役所内では「まじめで仕事ができる人」と評判はよかったものの、その生活は近所の人の間でも「市役所の職員の給料であれだけの生活ができるのだろうか」と目に余るほどの″浪費家″ぶりが目立っていた。
 元主査は「自分の金銭消費のために勝手にやった」と認めていることから、着服した四十億近い金を妻の経営する喫茶店の運転資金や店内や自宅に数十点の絵画、骨とう品の収集にも使っていたものとみられている。
 元主査は義父の土地だった約三百坪の敷地内に、元からある平屋建てに加え住宅二棟を新築。平屋建てには義母が、最も新しい二階建ての棟には独身の義姉が住み、本宅には元主査家族四人が住んでいた。昨年暮れには「敷地内に犬を放し飼いにしている」との理由でフェンスをアルミ製で高さ二メートルに作り直している。犬は体長一・五-一・七メートルの「ゴールデンレトリバー」で、一年前から飼っていたという。
 ベンツなどの外車二台を乗り回し、妻も「ブランドしか着ない」と近所で評判になっていた。
 また元主査の妻は自宅から三、四百メートル離れた国道18号沿いに喫茶店を経営しているが、コーヒー一杯千円で、客はあまり入っていなかったという。店内には浮世絵などの日本画数点が飾られており、絵画や骨とう品の収集にもかなりの金額をつぎ込んでいたものとみられる。
 近所の主婦は「元主査宅には地下室があり、絵画や骨とう品がかなりあったと聞いている。最近、喫茶店の隣に建てた二階建ての建物も同じように絵画や骨とう品の倉庫らしい」と話していた。
★チェック★
 市側の説明によると、不正借り入れが発覚したのは、元主査が今年四月の人事異動で市教育委員会に移った後の五月十八日。
 「(公社職員が)たまたま借入残高証明を取ったところ、正規の口座の帳簿にない借入金が見つかった」(小川理事長)。
 元主査は昭和五十五年四月に安中土地開発公社が設立されて以来、十五年間にわたり同じ業務に携わっていた。市役所内では、通常二、三年サイクルで職員異動が行われており、「元主査の十五年間は極めて異例」(職員)。職員の一部からは、「同じ職場に長くいすぎる」との声も出ていたが、市幹部の「有能で唱務にたけている。後任が育つまで」との判断から、留任し続けたという。
 また、市によると、公社の事業費の借り入れは、借入申込書に金額を記入した後、関係各課長の決済を経てから、金融機関に提出していたが、元主査はこうした決済の後に偽造を行っていたためチェックができかった、という。
 市役所内の監査は、毎月月末に行われているが、公社では毎年一回、三月の年度末決算にあわせて行われているだけ。年一度の監査でも「別口座は公の帳簿に一切出てこない、公の帳簿の金額は帳じりがあっていた」(市)ため、不正借入は発覚しなかった。
 また、元主査が厳重に管理すべき公印を使って金を引き出していたことや「預金残高証明しか取らず、貸出残高証明書とつきあわせなかった」(小川理事長)ことなど、公社のずさんな金銭管理に対して、市民からは市側の管理責任を問う声が上がっている。

<産経新聞1995年(平成7年)6月7日(水曜日)>
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■タゴの逮捕前夜とあって、各紙とも警察から取材でかなり情報を仕入れていることがわかります。犯行総額はこの時点でついに37~40億円までに膨れ上がりました。

 タゴの不正借入については、表面的な借入手続き上の手口は、ここに紹介されたとおりですが、なぜこのような巨額な不正が発覚しなかったのかについて、市民の疑問に答えている記事はありません。

 平成2年4月に、経理に詳しいという触れ込みで高橋弘安次長がタゴの上司として異動してきたことから、タゴは、通帳を調べられてもバレないように、かつて板鼻の古城団地の造成で群馬県企業局の指導で特別会計口座というのを作った経験をヒントに、裏金専用の特別会計口座を群銀安中支店に開設したことになっています。

 しかし、経理に詳しいはずの高橋弘安次長は、なぜか一度も自分が安中市土地開発公社に異動した平成2年4月以前の表口座の通帳を見なかったのです。表口座の通帳を見れば、タゴがそれまでに水増し借入をしていた様子が一目瞭然だったはずです。警察もこの点に着目して、少なくとも8月ごろまでは高橋次長を厳しく追及したようです。ところが、ある時点から、突然、高橋次長は余裕ある対応をするようになったのです。

■タゴは公社の設立準備のため、昭和54年10月に都市計画課に異動し、翌年の昭和55年4月に安中市土地開発公社が設立されました。タゴは市内の蚕糸高校を卒業後、昭和45年6月に安中市役所に入ったあと、税務課と農政課を経てから都市計画課に移りましたが、税務課と農政課で、土地の課税台帳や農地転用などの手続のやりかたを習得し、嘱託登記を悪用した土地ころがしのテクニックも会得したものと考えられます。

 こうしたテクニックは、タゴが自分で会得したというより、20年間続いた湯浅市長体制で緊張感の無くなった市役所の環境の中で、歴代の市の幹部や政治家、それに開発業者などから伝えられ、醸成されたもので、行政の二重基準(ダブルスタンダード)というべきものです。つまり、一般市民には法令に定めた行政ルールを適用し、一部の関係者だけには特別ルールを適用して便宜を図ることです。タゴ事件では、この手口が最大限活用されたのでした。

■タゴが安中市土地開発公社に在籍した15年間に安中市が行った全ての公共事業の用地取得にタゴは関与していました。その過程で、前記のテクニックが駆使されたのでした。

 6月7日の新聞各紙の記事で取り上げている「宅地売買で架空登記」もそのひとつです。これは原市の芝原団地の分譲地一区画を昭和56年9月2日に購入したAさんの名義で、なんとタゴが隣接の分譲地一区画を横領金で購入したのでした。登記簿上はAさんが二区画同時に購入したのですから、土地課税台帳上、Aさんには二区画分の固定資産税と土地計画税の課税通知が来るはずで、すぐにAさんが気付いてバレるはずです。ところが、タゴは土地課税台帳を税務課の職員に改ざんさせて、公社所有にしていたため、ずっとバレませんでした。

 しかし、隣接地が空き地になったままなのを不思議におもったAさんが、公社の理事でもある市議に相談したことから、この異常登記が発覚したのです。公社理事会でこの問題を提起した市議から追及されたタゴが、苦し紛れに「すぐに是正する」としながら、実際には、今度は松井田の住民の名義を勝手に使って再度架空売買による架空登記を行っていたのでした。

 こうしたデタラメな架空登記にもかかわらず、タゴはそのまま公社に配置され続けたのでした。それを口利きしたのが、小川市長であり、当時市議で公社理事でもあった岡田義弘現市長兼公社理事長だったのです。

 当会は、この芝原団地の架空登記問題について、課税台帳の信ぴょう性を問うために裁判を起こしましたが、結局、裁判所は、当初から土地は公社のもので、課税台帳の記載は錯誤だったとして、当会を敗訴にしました。これで、安中市の税務行政の信頼性がゼロであることを痛感させられたのです。また、安中市では、嘱託登記を悪用した土地登記が日常茶飯事で行われてきたる実態が判明したのでした。

■6月7日の報道では、タゴの羽振りの良い生活について、各紙が報じました。それらを列挙すると、①数年前からドイツ製の高級乗用車やスポーツカーを乗り回し、②1着数十万円もするスーツを着こし、③妻も「ブランドしか着ない」と近所で評判になり、④海外旅行に何度も出かけ、⑤ギャンブルや仕手株に手を出していた、ことがわかります。

 タゴが、ベンツなどの外車二台を乗り回し、ブランドしか着ない妻のことも、家族ぐるみの付き合いをしていた高橋次長は、よく知っていたはずです。

 またタゴの妻が、国道18号沿いに喫茶店「珈琲ぶれいく」を経営していること、タゴの自宅には地下室があり絵画や骨とう品が置いてあったこと、喫茶店の裏に建てた二階建ての建物も骨董品があったということも、当然高橋次長は知っているはずです。また、ベンツでゴルフ場に送り迎えしてもらっていた小川市長も、タゴの羽振りのよさは知っていたはずです。

■にもかかわらず、こうした疑問はなぜかその後もずっと放置され続けたのでした。当時は疑問だったこうした不透明な出来事も、その後の経緯を経たうえで、今事件を振り返ってみると、数多の異常事態の理由(わけ)が、よくわかります。

【ひらく会情報部】

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