定期検査などで運転を停止している原子力発電所の再稼働が進まない。再稼働の条件となっているストレステスト(耐性検査)の結果を、関西電力は原子力安全・保安院に対し、10月28日に初めて提出したが、複数機関による内容評価や地元自治体による同意など再稼働までのハードルは高い。この冬の再稼働は事実上難しく、来春にはすべての原発が稼働を停止する可能性が高まっている。
国内の原発は54基。だが福島第1原発事故で、定検やトラブルにより運転を停止した原発の再稼働は難しくなり、稼働原発はわずか11基。その11基も関西電力の大飯原発2号機(福井県おおい町)など5基が年内に定検に入る予定だ。
さらに来年1月3基、2月1基、3月1基とくしの歯が欠けるように運転が止まる。4月下旬ごろとされる北海道電力の泊3号機(北海道泊村)が定検に入れば、国内の稼働原発はゼロになる。
ストレステストの結果を提出しても、再稼働までのハードルは高い。枝野幸男経済産業相は「期限を切ってという話ではない」と明言。地元自治体の同意を得て、首相や経産相らが再稼働の是非を判断するには、数カ月単位の時間がかかるとみられる。耐震安全性評価(バックチェック)の再開も決まり、ストレステストのやり直しを求められる可能性もある。
地元自治体の判断も割れる。関電は、大飯原発3号機のストレステストの結果を提出したが、福井県おおい町の時岡忍町長は「安全対策が条件になる」としたうえで「再稼働はやむを得ない」との認識を示している。一方、福井県の西川一誠知事は「ストレステストだけでは不十分。新たな安全基準の設定が必要だ」との立場だ。
原発の再稼働を認める基準をどこに置けばいいのか。未曽有の原発事故は、改めて関係者に問い直している。