「視線入力」ソフトで訓練 島根大、重度障害者ら支援
2023年3月16日 (木)配信共同通信社
パソコンの「視線入力」の訓練ができる無償のソフト「EyeMoT(アイモット)」の活用が、全国の特別支援学校や医療機関に広がっている。音声入力やマウス操作ができない重度障害者や難病患者を支援しようと、島根大の伊藤史人(いとう・ふみひと)助教(47)の研究室が開発した。伊藤助教は「テクノロジーを使えば楽しむことやできることに気付ける。その手助けになりたい」と話す。
視線入力は専用の装置で目の動きを検知し、文字入力などの操作を可能にする仕組み。筋萎縮性側索硬化症(ALS)や脊髄性筋萎縮症など声を発したり体を動かしたりするのが難しい患者らのコミュニケーションの幅を広げている。
2015年に開発されたアイモットは一般的な家庭用のパソコンで使うことができ、風船を割ったり絵を描いたりするなど簡単なゲームを通じて視線入力のこつをつかめる。挫折せずに成功体験を得ることができると利用者に好評だ。
既に、全国に約千校ある特別支援学校のほとんどに普及した。福祉情報工学が専門の伊藤助教はソフトの改善点を探るため利用者の自宅に行くことも多い。利用者の意見を反映したソフトの修正を担当する大学院修士2年の奥井大貴(おくい・だいき)さん(25)は「自分のプログラミングや問題解決のスキルを上げる機会にもなっている」と語る。
伊藤助教らはクラウドファンディングを活用してアイモットのさらなる普及を支援。7月には9道府県の団体と合同でソフトを使ったオンラインゲーム大会も計画している。