「初心に帰る」繰り返す首相…低姿勢を徹底、政権へのダメージ最小限にとどめる思惑
岸田首相は31日の記者会見で、安倍晋三・元首相の国葬(国葬儀)や「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)などを巡る野党や世論の批判を意識し、「初心に帰る」と繰り返した。低姿勢に徹することで政権へのダメージを最小限にとどめたい考えだ。
政権ダメージ 低減意識
「政治に対する国民の信頼が揺らいでいる。私が先頭に立ち、信頼回復に取り組まなければならない」
首相は記者会見の冒頭、こう述べ、強い危機感を示した。記者会見に先立つ自民党役員会では、国民に丁寧な説明を尽くすよう茂木幹事長らに指示した。
首相が強調した「初心」とは、昨年9月の党総裁選で自身が当時の菅首相を批判し、「政治の説明が国民に響いていない」「日本の民主主義を守る」と主張したことだ。菅氏は当時、新型コロナウイルス対応などで説明不足だと非難され、支持率が低下していた。
現在、岸田内閣の支持率も下落し、政府・自民党の信頼性が問われる状態にあることに首相は危機感を強めている。総裁選当時に多用した「信なくば立たず」という言葉をこの日の記者会見で、自戒を込めるように使った。
最大の懸念材料が、旧統一教会や関連団体と自民党議員とのつながりが次々に明るみに出ている問題だ。首相は31日の記者会見で問題発覚後初めて陳謝し、党として今後は一切の関係を断つ方針を強調した。
党内では、来春の統一地方選への影響を危惧する声も上がっている。茂木氏は同日の記者会見で「(方針を)守ることができない議員は同じ党では活動できない」と述べ、除名処分も辞さない考えを示唆した。
安倍氏の国葬を巡る批判も悩みの種だ。首相が早々に実施を決断したものの、報道各社の世論調査では賛否が二分されている。首相は記者会見で「説明が不十分との批判をいただいている。 真摯 に受け止め、正面から答える責任がある」と語り、衆参両院の議院運営委員会の閉会中審査に出席する考えを表明した。野党議員の厳しい追及にも向き合い、理解を広げる狙いがある。
新型コロナ対策についても、感染対策と社会・経済活動の両立という難しいかじ取りが必要になる。首相は感染の「第7波」の収束を見据え、社会を平時に近づけるウィズコロナを目指すが、政府内では「感染状況が深刻になれば国民の不満は政権に向く。今が正念場だ」(首相周辺)との声が出ている。
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