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腎がん患者の不利益多い 第三者間での実施は問題 東邦大名誉教授 相川厚 視標「病気腎移植の先進医療化」

2018年07月11日 18時01分23秒 | 行政
腎がん患者の不利益多い 第三者間での実施は問題 東邦大名誉教授 相川厚 視標「病気腎移植の先進医療化」
2018年7月10日 (火)配信共同通信社

 腎臓がんの治療のために摘出した腎臓を第三者に移植する「病気腎移植」を、厚生労働省の会議が「先進医療」として認めた。今後の成績によっては将来、保険診療として行われる可能性が出てきたことになる。
 私は腎臓の治療を専門とする医師として、多くの患者が腎移植で救われることを願っているが、今回の決定は移植医療にかえってマイナスになるのではないかと懸念している。生体腎移植では提供者(ドナー)の安全と保護が最も重要だが、腎がん患者をドナーにすることは、その患者にとって不利益が多いためだ。
 計画によれば、がんの大きさが7センチ以下の患者から腎臓を丸ごと摘出(全摘)し、がんを取り除いてから別の患者に移植するという。
 小さな腎がんの治療は、腎臓の部分切除手術が第一選択だ。7センチ以下のがんには手術支援ロボットによる部分切除が保険適用になったほど普及してきており、腎臓の全摘が必要な患者は少ない。全摘という判断が医学的に妥当なのか、厳正に確認してほしい。
 全摘をできる限り避けることは、高齢者が多い腎がん患者には重要だ。患者は高血圧や糖尿病、脂質異常症など、腎不全になりやすい合併症を抱えていることが多い。腎臓が二つあれば避けられるかもしれない腎不全のリスクが、一つだと非常に高まる恐れがある。
 がんができた場所などによっては、腎臓を全摘せざるを得ない場合もある。それでも、その腎臓を移植用に提供するかしないかによって、手術の方法は変わってくる。そのことも大きな問題だ。
 通常の全摘手術では、がんが広がるリスクを最小限にするため、まず腎臓の血管を縛った後で周囲の組織から腎臓をはがして摘出する。一方、移植を前提とする場合は、取り出す腎臓の細胞が傷むのを防ぐため、血管は最後まで縛らない。
 こうした手術法の違いについて、病気腎移植の実施施設は「どちらの手術法でも成績は同じだと考えられている」と説明するが、腎がん患者は納得できるだろうか。「自分にとって少しでも安全な方法で、がんの治療を最優先してほしい」と考えるのが普通だろう。
 小さいがんは、手術前の検査では良性腫瘍と区別しにくいものがあることも知っておくべきだ。腎臓全摘後に良性だったと判明する場合もある。摘出する必要がない腎臓を摘出したのだから医療過誤とも言える。家族内での移植ならまだしも、第三者への提供は問題が大き過ぎるのではないか。
 こうした数々の難問を理由に、米泌尿器科学会元理事長で移植医のバリー氏、米クリーブランドクリニックの泌尿器科医キャンベル氏といった専門家は、第三者の腎臓がん患者を生体ドナーとすることは倫理的に問題があり実施すべきでないとの見解を表明している。
 移植を受ける腎不全患者(レシピエント)のリスクにも言及すると、腎がんの大きさが4~7センチだと、レシピエントにがんがうつる可能性が最大10%近くあるとされる。
 レシピエントは同意できるかもしれないが、第三者である腎がん患者がこれら全てを理解し納得した上で腎臓を提供できるのだろうか。私は困難と考えている。
   ×   ×
 あいかわ・あつし 1951年東京都生まれ。慶応大医学部卒。慶大助手などを経て2005年東邦大教授。17年4月より現職。専門は腎臓学、泌尿器科学。

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