大きなかぶ農園だより

北海道マオイの丘にある大きなかぶ農園からのお便り・・
※写真はsatosi  

田圃談義

2011-06-29 | 日記
日曜の朝は母屋の二階のガラス戸が白く曇るほど寒かった。
本州のどこどこは真夏日です、なんてラジオが言ってるそばでストーブに薪をくべる。
セーターを着て、ズボン下を履き、防寒作業着上下を着て毛糸の帽子もかぶって
用事で札幌に出かける夫を北広島の駅に送り、帰りがけに田圃の様子を見に行く。
昨日まで倒れていた稲が根付いて立ち上がっていた。「おお!」とおもわず声が出る。
しかし、田圃のあぜの所々からじょろじょろと水が田の外側に漏れ出している。
近づいてよく観るとあぜの壁に穴が開いて水の通路となっていた。
ちょうど山崎さんが、自転車でニコニコしながら近づいてきたので報告する。
「そーなんだよーーー、漏れるんだーー」とニコニコして行ってしまった。
(・・・・そうなんだ・・・もれるんだ・・・)だが、このままでいいはずが無いのだけは分かる。
穴に周りの土を盛って塞いでみたり、踏んで固めてみたり、しばし格闘。
草取りしたばかりなのに、残っていた根が深そうな大きな草が更に大きくなって広がっているのでそれも気になる。
だんだん日が高くなり暑くなる。上着を脱ぎ、セーターを脱ぐ。
田圃に裸足で入るために長靴と靴下を脱ぐ。ズボンの裾が水にぬれない様に、、、迷ったあげくズボンも脱ぐ。
(だれが見ているわけでなし、、、)と肌着のズボン下を膝までまくり上げ、前掛けをぐるりと腰に巻き一応隠す。
さっそうと田に入り腰を45度に曲げて草を取る。長靴なら1歩進むだけで疲れるが裸足なのでスイスイと進む。
田の水は温く、水の中の土はつるつるすべすべと気持ちよく、くすぐったくて、きゃきゃきゃ・・と笑いながら進む。
腰は少しも痛くなく、このままずっとこうしていたい・・・と思うまもなく、「昼だぞーー」と夫の声がする。
大分の百姓塾でいつもお世話になっている後藤さんを連れて、水田さんと一緒に田圃見学に来たらしい。
(ああああああーよかった!ズボン下履いてて。。。。)
しばし4人で田圃談義。。。。。本州の田圃事情等々聞いているうちに思い出してきた。
新潟の山の中で親は米を作って暮していた。毎日毎朝毎晩、大人たちの話題は「田圃の水」のことだった。
一本の川の水を隣の田の持ち主といかに調整し合うかが最大の悩みの種なのだということが子供にも伝わってきた。
毎日毎日田に通って何かしらの作業をしていたが、そういえば田植えの後は「畦塗り」してたっけ。
そうだそうだ!!水漏れには畦塗りだ。 そう気付いた瞬間胸の奥がジーーンときた。目の奥がウルウルっときた。
山崎さん、何にも言わない。だけど、気付くのを待っていてくれる。ただじっと見守られているのを感じる。


田圃に沈む夕陽




お母さん 苗ちょうだい!


初めての田植え


真っ直ぐ 植えられたかなァ?


チョッと一休み


終わって記念写真 パチリ!


楽しい田植えの写真は フォトアルバムをご覧下さい。

稲と息子

2011-06-24 | 日記
田圃の稲がそよそよと風に揺れている。
今年初めてモミを蒔いて苗作りから挑戦したが、植えてみるとなんだかよその田の苗に
比べてヒョロヒョロと頼りなく、見劣りがするような気がして心配だったが、
日に日に根を張り変わる姿を見ていると、ただ共に実って行こう。。という気持ちになる。
田植えが終わってひと段落・・・というわけにはいかない。植えてひと月の間が重要だそうで、
「水稲」と呼ばれるくらい稲にとって大切な「水」がいつも田にどんな状態であるのかを
観て調整するのが朝晩の一仕事なのだ。 草取り作業もこの一ヶ月の間にする。
普段は夫が田に行くが、夫が留守のとき妻は子供の使いのように、ただ「見るだけ」だ。
なにをどう判断したらよいのかが分からないから田圃の周りを歌を歌いながらまわる。
♪げーーんきげんきー♪げーーんきげんきーー♪ などとその時々身体から発生する言葉に節をつけて歌う。
そうしていると、なんとなく自分も稲も元気になるような気がしてきて、心の中でげらげら笑う。

稲を見ていたら息子を思い出した。
22歳のときに授かった長男は9カ月に入ったばかりの時期に1998gの未熟児で産まれた。
一週間ほど保育器に入っていたので近くで息子を見ることは無く、その間は絞った母乳を毎日病院に届けた。
退院の日、待合室に同じく我が子を待つお母さんがもうひとりいた。ドアが開いて二つの小さな命が目の前に登場。
ひとりの赤ちゃんは全身が毛むくじゃらで、情けなさそうなくしゃくしゃな顔をしていたので(この子ではない・・)と思う。
(こっちの見るからに愛らしい赤ちゃんが私の子にちがいない・・)とその子ばかり見ていたら、、ちがった。
「え、あ、そうなんだ。。。」と毛むくじゃらで情けなさそうな我が子にあらためて目を向けた瞬間、コロンとひっくり返る。
(かーーーわいいいいいいいいーーーーー!!)  このときどんな化学反応が起こったのだろうか、といつも思う。
初めての子育てで未熟児だから育児書も役に立たず、乳を飲むたびピューーッと噴水のように出したりしても
さほど不安はなく、ただ見守るだけだった。30年の間にはいろいろあったが健康に育った。それだけで充分満足だ。
あの時この時もっとこうして欲しかった、と息子は思っているだろうが、ごめん、あれで精一杯だった。。。。

だからといっちゃなんですが、うちの稲も、必ず美味しい米になる。稲自身の力を信じて、どんな米に育っても
それが精一杯の結果だとしたら、それでいいのだ。この先ずっといっしょに育っていこう。


稲もしっかりと根付いたね


チェーン除草でこんなに草が


かもが田圃で遊ぶ


マオイの山も花盛り


コオロギの子供がいました 大きさ約1cm


小さな蜂も巣作りに


カメムシが交尾しています

自然の中での命のかかわり

2011-06-16 | 日記
夜明けと共に鳥がさえずる。昼間はせみが一斉に鳴きはじめた。夜はカエルが鳴く。
毎年のことだが、こうして生き物の声が一日中耳に聞こえるのが今年は胸に沁みる。
空も、海も、大地も、今どんな状況になっているのか・・・・
しかし、今日もふつうに暮して、鳥や蝉や蛙とともに自分もこうして笑っていることが感謝だ。

かぶに背中の羽根をむしられてから、メンドリかーさんは10日ほど生きた。
妻の留守に夫に看取られ静かに逝った。かぶはずっとかーさんと離されていた。
その後、かーさんを慕っていたかぶの顔は心なしかいつも泣きそうな感じに見えていた。
そして、2週間後の5月半ばの土曜日、お天気の良い昼下がり、かぶも逝った。
私が、車で出かけようとエンジンをかけたとき、犬たち4匹はいつものように車の周りにそれぞれ寝転んでいた。
4-5mバックしてから家の前の坂を上がろうとしたとき、キャンキャンとかぶが泣いた。
(ばかだなあ かぶは、、逃げ損ねてシッポをタイヤに踏まれだんだな。。。)と。。そんな程度の泣き方だった。
用事を済ませて30分後に家に戻ると、かぶは倉庫の床で息を引き取っていた。
(なんで??・・・)悲しみよりも先に驚きがきた。今まで10年間犬たちと暮してきて、こんな事は一度もなかった。
翌日お茶飲みに来たお隣の平山さんに報告する。「あいつ俺の車の下にもいつも入ってて危ないんだ」と言った。
・・・・・・・・・・・かぶったら・・・・・・・・・・・・メンドリかあさんのところに行ったんだな・・・・・・・・・・・・
宅配便の車でも、平山さんの車でもなく、ほかの誰でもなく、私の運転する車にかぶは自分の命を投げ込んだ。
たぶん、きっと、私が他の人を責めたりしないように・・・・・・・・そう思うと急に愛おしさと悲しみが込み上げてきた。



レタスを定植する 




黒豆を蒔く 山崎さん








田植三昧!!

2011-06-05 | 日記
水曜日、田植え。
朝8時、80才の山崎さんが田植え機に乗り、夫と私が育苗ハウスから苗を運ぶ。
田圃の一辺は100M以上あるかと思うが、まず田植え機に15枚の苗箱をセットして
こちらから向こうへ、そしてターンしてこちらへ戻って苗箱を補充する。その繰り返し。
山崎さんはほとんど無言で淡々と進む。山崎さんの動きを全身で聴いて、自分が
次にどう動くかを読んでいく。補充する苗の枚数。置き場所。置き方。空箱の始末。。。。
山崎さんは中休みをしない。午前中は昼までずっと動き通す。淡々と動く。
そのリズムを乱さないように、流れるように、気持ちをピンと張って、三人の気持ちと
田植え機と、苗と、田と、ひとつになってグングン進む。 あっという間に一枚終了。
夫は自分も田植え機を操縦したくてしたくて、いつ山崎さんが途中で「代わってくれ」と言ってくるかと待っていたが
山崎さんは最後までその一言を発しなかった。少年のように目をキラキラさせて田植え機を慎重に操縦し通した。
その夜、自然農法の勉強会に参加した。
世話人の中野さんが最初に突然、「みなさんひとりひとりを30秒ずつ観察してもらいます」ということで
15人ほどの参加者と中野さんを含めて順番に、その人はどんな人なのか、今何を考えているのか、
と、じっと観察する。観察する側もされる側もそれぞれ照れたり直視できなかったり、(なんのために?)と戸惑ったり・・・
物言わぬ植物の声を聴き取るには、観察することからはじまります。自然農法はそれに尽きるのです。と中野さん。
午前中、物言わぬ山崎さんを一心に観察しながら動いてみて味わった充実感。爽快感。満足感がそこに重なる。
ニンゲンは言葉を使うばかりにワケがわからなくなるな。
昔、私がパートタイマーに行く初出勤の朝、静さんが「あんたほんとのこと絶対言うんじゃないよ」と警告してくれた。
いつも腹にあることしか言えない嫁の一言に姑がどれだけ傷ついてきたか、と初めて知って反省したが、
やっぱり、いまだに、思ったことしか言えず、、、どうしてひとはほんとのこといわれるのが苦手なんだろう・・・・・・


田植え機の準備(里の田んぼ) 


田植え開始


苗運びが忙しいよ




わたしも田植え!(山の田んぼ)


みんなで田植え


僕も初めてさァ


お母さん 苗ちょうだい


今日の夕陽は 素晴らしい!!

人生楽しまなくちゃ!

2011-06-01 | 日記
山桜があっという間に散ると、山が一斉に若草色になる。
蕗やイタドリが雨が降るたびにぐんぐん伸びる。今年はその姿が何よりも美しく感じる。
おおきな蕗の葉の下の草の中にそっと赤い花の苗を植えてみた。お似合いだ。。。
昼間はへとへとになるまで動いて、夕方には”ガシッ。ガシッ・・・”とロボット状態。
息も絶え絶えに温泉に行く。湯船の淵に頭をのせて長々と足を伸ばして恍惚となる。
     あ~~~~~~~快感~~~~~~~~~~
これで翌朝には疲れは残らずパッチリ目が覚め、夫が起きて来るまでせっせと編む。

はかどらなかった田圃作業も、水が入り代かきを終えた。田植えは6月1日。
土曜日の夜、これからの前途を祝し山崎さんを囲んで我家で小さな宴を催す。
夫がこの日の為に封を切らずにとって置いた、どぶろくと焼酎を山崎さん水田さんと酌み交わす。
飲むほどに酔うほどに山崎さんはピキピキと快活になり、これまでの苦労話もにこにこと爽やかに語ってくれる。
今でこそ、「無農薬野菜」や「自然農法」等が、流行り言葉としては市民権を得たかと思える時世とはなったが、
50年前、真反対の情勢の中で自分の信念を貫くことは並大抵のことではなかったはず。                  想像しただけで胸が熱くなる。
「自然農でやらなければ人類は滅びるって思ったときから夢中でやってきたね。楽しかったな・・」少しも気負いがない。
「歌が大好き。カラオケ大好き」と山崎さんが告白。えーーー!!と一同歓喜し、さっそくお家カラオケ大会に突入。
山崎さん歌う曲目リストを書いた紙を胸のポッケから出す。20曲くらいも書いてある。(いつも持っているんだ!)
浮き草情話、すきま風、裕次郎、千昌夫、北島さぶちゃん・・・・淡々と、自分のペースで歌い続ける山崎さん。
夫が歌う歌、ほとんど山崎さんも一緒に口ずさんでいる。「自分は口が下手だから、歌を歌うんだよ」
なんだか伝わってきます。山崎さんが歌う一節一節から80年の人生のいろいろが、胸の奥に響いてきます。
たった50そこそこで「もうゆっくりしたい」と利いた風なことを思った自分が恥ずかしい。死ぬまで全力疾走だ。


山崎畑の間引き作業


”腰が痛いよ”山の田圃 代掻き


かぶハウスに定植されたレタス


暖かくなったから 顔を出したよ。


北見から来た 日本薄荷の苗たち


山の田圃