雪の結晶の 掬いあげ/釣りあげ 操作
六角ナットを雪と見立てての説明図
六角ナットを雪と見立てての説明図
雪の結晶撮影において、暫く前までは極細の絵筆の先端で雪の結晶一片を掬い取り、 試料ステージに載せて撮影していた。 今は大きなガラス板で降雪を受け止めて、 それをそのまま試料ステージとしてカメラの下に置き、 撮影ターゲットを選び、 シャッターを切る方法へと変化している。
しかし、 硝子板上に落ちる雪の状態は一片の美しい雪の結晶としてのことは極く稀で、 多くは他の雪と重なって落ちる場合が多い。
多くの場合: 重なり合い発生
稀な例: 独立した一片の結晶
降雪受け止め時間が適切だった場合
そんな重なり合う雪の状態の中から撮影したい雪の一片だけを何らかの方法で他の雪と切り離した状態にしたいと考えるのだ。 それを実現するために、 一つは従来の様にターゲットの雪を細筆で掬いあげて、 別の場所に移動する事が考えられる。 しかし、 この掬い上げる方法にも難点があるのです。
1. ベースと結晶の間に隙間が無いと持ち上げ困難。
Top写真の模式画像からも推測出来るでしょう
2. 細筆と結晶間の静電気力と想われる反発が生じ、
掬い上げが困難となる場合がある。
3. 持ち上げた途端に風で吹き飛ばされる。
上記の1~2項に対処する方法として、 粘着力のある物を使えば雪の結晶の一片を選択的に釣り上げる事が出来ないか? もちろん釣り上げ可能なだけでなく、 試料ステージ上に切り離して置く事が容易に出来るか? それを確かめる実験を行いました。
準備した釣りあげグッズ
先端にセロテープ、メンディングテープ、ワセリン塗布した爪楊枝を準備しました。
こんな釣り上げグッズで試料ステージ上に置いた雪の結晶の撮影画像を並べて置きます。 粘着=>切り離しの際に結晶にダメージを与える可能性があります。 その影響を調べる必要があったのです。 一番影響を受け易いのは極薄・透明な六花の結晶と予想されますが、 その種類の結晶が落ちて来る事が少なくて、 実験枚数もたったの一枚。 だから確認は不十分です。
六花・極薄透明
六花・雲粒付き
針状
アラレ
ところで釣り上げ用に準備したのは前記した3点で、 それなりに使用できましたが、 欠点もありました。
粘着テープ類 : 何回か使用しているうちに粘着力低下。
ワセリン : 切り離し時に試料ステージ表面に汚染痕付着。
そこで別法として細筆の先を冷水で濡らし、 その湿った筆先の水分と雪片の科学的結合力に期待して釣り上げて見ました。 上手く釣り上げられた場合もありました(4月10日外気温 ー3℃)。 しかし、この方法の欠点は双方が凍りついて、 筆先からの分離が難しくなることでした。
そこで、 翌日の外気温ー1.4℃の条件下で、 宿の主人に塩を分けてもらい、再度実験を行いました。 「塩水なら普通の水よりも凍り始める温度が低いはず」 と考えての事でした。 しかし、 作った塩水の温度の問題と考えられるが、 細筆の先端はまるで外科用のメスの如く、 それが触れた六花の樹枝部分を溶解切断してしまい、 結晶全体を釣り上げることは出来ませんでした。
外気温 ー1.4℃
雪解け水(屋根から垂れた雫)とそれを使った塩水