
古船場町にある 「 無法松之碑 」

八幡東区 「 高炉台公園 」 にある文学碑
岩下俊作の小説 「 富島松五郎伝 」 を原作とする映画 『 無法松の一生 』 は、
稲垣 浩監督によって二度制作されている。
一作目は、昭和18年 ( 1943年 ) の大映作品である。
物語は明治から大正にかけての小倉の古船場を舞台に展開する。
車夫の松五郎は喧嘩っぱやく無鉄砲なので無法松というあだ名がつく。
だが義侠心が強く、気性のさっぱりした心の優しい男である。
ある日、怪我をした敏雄少年を助けたことで、その父の陸軍大尉吉岡と夫人を知る。
吉岡が突然他界して、松五郎は未亡人と敏雄に心から尽くすようになる。
かなわぬ恋心、そして孤独に悩みながら寂しく死ぬ姿が描かれている。
稲垣監督は人力車の大きな車輪が回るシーンを折々挿入し、
時の流れを表現して幻想的なムードとリズム感を演出している。
しかしこの映画は、 「 軍人の未亡人に思慕を抱くとは何事だ! 」 と、
検閲で11分ほどカットされたため稲垣監督は、
昭和33年 ( 1958年 ) にカラー版で再映画化、
これがベネチア国際映画祭でグランプリを受賞した。
当時の古船場は全国からさまざまな職人や物売りなどが集まり、
活気にあふれ、下町風情のある町であった。
今では狭い通りに飲食店、マンション、事務所などがひしめきあい、
その中に古い家並みがわずかに残っている。
ここの安全寺跡地に 「 無法松之碑 」 があり、毎年3月4日に碑前で供養が行われ、
祇園太鼓をたたき、酒を注いで無法松を偲ぶ。
稲垣 浩は、明治38年(1905年)東京に生まれた。
昭和3年 ( 1928年 ) に監督となり、 「 天下太平記 」 を同年に制作する。
主な作品に、 「 瞼の母 」 「 弥太郎笠 」 「 海を渡る祭礼 」
「 無法松の一生 」 「 手をつなぐ子等 」 「 佐々木小次郎 」
「 宮本武蔵 」 「 嵐 」 「 忠臣蔵 」 「 風林火山 」 などがある。
昭和55年 ( 1980年 ) に没した。