中ノ浦の 「 ルルド 」
小さな入り江に中ノ浦教会は静かに溶け込む対岸からの風景が絵画的で美しい。
中ノ浦地区の信徒の祖先は、寛政年間に外海の黒崎村から移住して来たキリシタンだが、
現在主任教会のある桐古里が、伝道師ガスパル下村与作の出身地であったことから、
明治の始めに五島崩れで迫害が厳しかったところのひとつでもある。
中ノ浦教会は、 ( 大正14 ) 1925年に建立され、
後から増築された鐘塔を持つが、特別な装飾がなく、
シンプルな重層屋根の木造の教会である。
内部はシンプルながらも、主廊は折り上げ天井になっており、
祭壇部が漆喰仕上げのリブヴォールト天井で、
主廊と側廊の間の壁面に、五島のシンボルである椿のような赤い十字架植物と、
緑の葉のデザインがダイナミックに配置されて、
一度見たら忘れられない印象的な教会である。
この教会は、下五島の久賀島の今は廃堂となった
細石流 ( さざれ ) 教会堂 ( 鉄川与助設計施工 ) とよく似ている。
細石流は久賀島の信仰の拠点だったところで、
激しい弾圧を経験した信徒たちの「五島で一番美しい聖堂を造りたい」という願いを
形にしたもので、頭ヶ島教会に次いで、
鉄川与助が取り組んだ折り上げ天井の木造の教会だった。
この中ノ浦教会の設計施工は不詳だが、
水辺に教会堂が写る一帯の風景は、誰もが心なごむ美しい光景である。
所在地 / 長崎県新上五島町宿ノ浦郷中ノ浦
教会の保護者 / おとめ聖マリア