Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

安全保障に反する支援

2008-02-10 | マスメディア批評
ISAF(国際治安支援部隊)のアフガニスタン派兵の問題に関して興味深い記事を読んだ。ライス女史などがNATOの会議の席上、ドイツなどに向けて一層の軍事的国際協力求めたようが、ドイツ連邦国防軍としてのあり方を改めて討議しないといけないとするNATOブリュッセルの政治局責任者ミヒャエル・リューレの紙面一面に及ぶ投稿記事である。

「ドイツがアフガニスタンに派兵するということは、脅迫や危機や国の安全保障の問題ではないのだ」と断定して、「武装した開発援助というのは、もはや虚像でしかない」、それにも拘らず「クラウゼヴィッツの国には、時機を得た議論は見られない」と訴える。

氏の立場からの主張と訴えは全文を翻訳しなければ正確に伝えることは難しいが、それを読んでそこから考えさせられた点を要約する。アナーキストに近い平和主義者から国連信仰に近いタカ派を通じて、またスーパーナショナルな自由主義者から平和信仰の社会民主主義者までに問いかけられている現在の世界が直面している安全保障への視座の一端をここに示せることが出来るだろうか。

ドイツ連邦共和国が1994年に憲法判断を仰いで、コソヴォ紛争に派兵したことは、現在もネット上でも、特に平和主義者やその信仰者からの批判が多い。当然ながら、軍事的な行動には犠牲を伴うが、その例外的な派兵は欧州の安全保障上必要であったと今考えても間違いないだろう。そして、この論文においてもドイツ連邦共和国防軍がボスニアとコソヴォで好意的に受け入れられ、事故による犠牲者しか出していないことが証明として示される。何よりも人道的な派兵の意味は、あの激しい国会での議論やリベラルな緑の党の党大会での騒ぎを経て、国民の自覚の中に刻まれている。

そして、その後短期間のコンゴ駐留や、レバノンでの安全な任務を果たし、今やEUの、NATOの中でドイツ国防軍は最も重要な派遣軍事力となって、バルカン半島からアフガニスタン、ホーン岬からレバノン沿岸まで、その部隊は展開している。

バルカン半島への派兵にてルビコン河を渡った。そして、アフガニスタン派兵は新たなルビコンを渡ることになるのだと言う。しかし、国民も国会も政府もそれどころか国防の責任者ですらそれだけの意識が無いことを警告している。

それはなぜか?そこには、所謂ピースキーピングとしての軍事介入の意味と安全保障の国防の意味の混同があるらしい。つまり、従来の武装した開発援助なり平和維持においては、元来派兵される国際軍は紛争当事者で無く、あくまでも第三者であったが、米国の主張するイスラムテロリストとの戦いは紛争当事者でしかないと言うのである。

開発援助のためにダムを作り学校を作ることこそが、タリバンやイスラム原理主義者と戦うことになるとする、西欧社会民主主義者の信念と信仰こそがテロリストの攻撃対象となるとして、そこで開発援助も平和維持もお互いに矛盾すると言う考え方である。

つまり、「世界への貢献」こそがイスラム原理主義者との戦いの当事者となることであり、それは「世界への貢献」に軍事介入する当事国の安全保障政策と相反することとなる。更に、ドイツ連邦共和国国防軍のハード面の老朽化は激しく、今後こうした「世界の警官」としての軍事的貢献は不可能とするのが専門家の意見だと言う。

そして、ここには安全保障を軍事・外交・内政などのあらゆる政治活動を組み合わせた考え方が一般化していて、社会工学として軍事介入が予算化されている事態は、軍事介入に批判的な従来の国防や安全保障の専門家にとっても根拠となっていることが指摘される。当然のことながらそうした軍事介入は、直接の軍事的な反撃ではなく核武装による攻撃どころか近代社会のネットやエレクトロニクスの社会基盤への攻撃が予想されるために、国防軍が国内で活動する事態が構想されていることをも指している。そこでは、平和的な紛争解決と総合的な安全保障とが背中合わせとなっているのである。

テロ被害にあった合衆国への義理でアフガニスタンに派兵している国防軍の意味と今後の不可能な軍事的国際貢献の現状をもって、本格的に議論される必要性を主張している。それが、本当の安全保障政策であることは間違いない。

国際会議において、判らない英語の同時通訳のヘッドフォーンを外し、ニタ笑いして七千人の派兵を決める国防担当者の無責任さを問うている。



参照:
Am Rubikon der Kampfeinsätze, Michael Rühle, FAZ vom 4.2.08
Kurzmeldungen zur Friedens- und Sicherheitspolitik,
Winfried Nachtwei (Bündnis 90/Die Grünen)
グローバリズムの領域侵犯の危険 [ 歴史・時事 ] / 2004-12-10
保守的な社会民主主義 [ 歴史・時事 ] / 2007-11-13
脱資本主義へのモラール [ マスメディア批評 ] / 2006-05-16
人のためになる経済 [ 文学・思想 ] / 2005-04-11
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする