Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

北の聖歌隊長と南の楽長

2014-06-14 | 文化一般
水曜日の文化欄にオルガニストのゲルト・ツァッハーの死が報じられている。月曜日エッセンで亡くなったとある。二十世紀後半のコンテムプラリー音楽に興味にある向きには良く知られていた音楽家である。シュナーベルやリゲティーやカーゲルの初演は、ジョン・ケージ作品の演奏などと並んで多くの献呈された作品とともに歴史に残るだろう。ヴェルゴレーベルの録音で馴染みがあるだけで、北ドイツの音楽家であり生に接する機会はなかった。ふいごモーターへの電源を切ったり入れたりしてのテクニックでのオーヴァートーン演奏など見事である。チェリストの故パルムなどケルン地方のあの当時の芸術を体現したような音楽家だったろう。手元のLPは、1967年のハムブルクの本拠地での録音で、そこのルター教会オルガニストの月一回演奏には世界中から多くの愛好家を集めたと言われる。そこからバッハの逸話を思い出すまでもなく、現代のブクステーデと記される。

指揮者デブルゴスの逝去はYAHOO日本ニュースで知った。晩年は日本で活躍していたようで、こちらでは殆ど名前を聞かなかったのは当然かもしれない。木曜日になって初めてツァッハー死去よりも小さく報じられていた。その内容を読んでなるほどと感じた。基本的には、マドリットでの出世とレコーディングの成果に比較して、90年代のベルリンでの活動も十分な成果はなかったとあり、管弦楽団とはヴィーンの交響楽団とのそれが頂点で、その後はキャリアとして下降線を辿ったことが書かれている。なるほど最後は極東だったのだ。

レコーディングキャリアとしては、探してみるとその頂点であるファリャ全集からの補作完成オラトリオのLPが手元にある。流石に生まれ故郷に因んでスペイン風の芸名を語っていただけに十八番のスペインものである。その音響は、小澤やラトルのそれとは異なって、如何にもドイツ人フリューベック氏らしい低音の分厚く構築感のあるものとなっている。しかし感覚的には、超一流の彼らとは異なり、またスペイン風の芸名から予想されるような華々しい感覚も無く、寧ろ鈍い。1970年代のEMI録音としてもスペインでの手間と費用をかけた制作となっている。新聞の訃報見出しのスペインのカペルマイスターと言うのが、含みのある表現となっていて、言い得て妙である。



参照:
近代終焉交響楽 2005-06-17 | 文化一般
多声音楽の金子織り 2005-10-20 | 音
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