Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

またもや因果な商売

2018-05-23 | 雑感
車中でのニュースはベルリン在住のディーター・シュネーベルの訃報だった。個人的に直接では無いが間接的な關係はあった。新聞にどのように記事が出るだろうか。ベルリン在住の最重要な作曲家だったと思う。

祝日二日目の遅い昼食にリースリングを開けた。先日購入したレープホルツ醸造所の2017年「オェコノミーラート」である。2016年とは大きく異なり飲み口が良く、殆ど糖が残っていないのにも拘らず甘みさえ感じるが、涼しく若いクールさもある。二種類の成長過程の葡萄が混じっているからだ。決して悪いことは無い。ミニザウマーゲンと食前のサラダを食して腹一杯になり、久しぶりの昼寝である。最近は昼過ぎに机でうとうとすることが多くなっていて、夕方ながらこうやって寝ると気持ちいい。

何とか起きて、ミュンヘンからの放送を聞くとヤナーチェックのオペラの殆ど最後だった。最初の二三小節で真面に聞くような代物ではないことが分かった。要するに指揮者がしっかりと拍を打てていない。ヤナーチェックのあの細やかな音型を綺麗に出そうとすれば、あんな低音を響かしているような鈍い鳴らし方では話しにならない。シモーネ・ヤングと言う女流の指揮者はハムブルクで十年ほど音楽監督をしていたので、つまりケント・ナガノの前任者だったので有名だ。そしてペトレンコが振らない「ヴァルキューレ」なども振っているので、またこうやって新制作を任されているので、てっきり真面な指揮者だと思っていた。しかし同じ管弦楽団とは思えない鳴り方をしていて、ベルリンのフィルハーモニカーでも下手にしか聞こえないメスト指揮クリーヴランドのそれと比べる訳にはいかないが、こんなオペラ上演に付き合っている時間は無い。だからオペラなんか嫌なのだ。週末のカストルフ演出のヴィデオ中継を楽しみにしていたが、こんな管弦楽を聞かされるなら御免だ。

その女流指揮者の写真を見るとまるでヴァークナー歌手かのような体つきになっていて、その指揮する音楽に干渉して、反吐が出そうになる。あれじゃ、虚弱風のケント・ナガノと正反対で、一体ハムブルクの音楽生活の水準なんてどうしたものかと思う。それでもヤングが契約延長を辞退して、後任のナガノも今辞めさせられそうな批判も受けているのだ。なにか両者とも、ミュンヘンのスプリングボードとは正反対に、ハムブルクで指揮者としてのキャリアからドロップアウトするような塩梅である。

そこで気を取り直して、食事前にシューマンの他の楽譜で勉強したら読め方が容易になり大分違ったので ― 写譜屋の腕だ ―、再びブラームスに戻る。折角であるから、メータ指揮は分かったので他の音源をネットで探した。最初に出てきたのがなんと金曜日に聞くエレーヌ・グリモーのピアノ演奏だ。それに付けているのはミヒャエル・ギーレンでSWF放送管である。2005年のバーデンバーデンで全く見落としていた演奏会だが、先ずグリモーの居立ちが写真と異なり黒髪系で華奢乍らバネがありそうなのだ。

先ず最初の問題の六の和音のそれからして引き締まっていて、なによりものハイティンク指揮で問題になった弱起のアーティクレーションが美しく正しい。SWFがこれだけ正しく演奏出来るのに、コンセルヘボーで横着で野蛮なハイティンク指揮こそがヘボなのだろうか。その傾向はブレンデルのピアノに合わせた録音でも同じだったので、よほどこの指揮者はそこまで楽譜を無視してまでやらなければいけないイデオロギーに凝り固まっているのだろうと感じた。ヴェテラン重鎮指揮者には申し訳ないがその音楽性は理解し難い。
Hélène Grimaud Brahms, Piano Concerto 1 Sinfonieorchester, Michael Gielen, 17 04 2005


さてそのギーレンの指揮などにそれほど感心したことは無いのだが、ここでは素晴らしい演奏をしていて度肝を抜かれた。その音響の厳しさとレガートの掛かっている音型の細やかな扱いとも、如何にも作曲している人らしい読みが光っていて、自ずからピアノの登場を期待させる。そして神経症とかの売り文句のグレモーのピアノは、想像とは全く異なり、スポーティーさと細やかさの双方が拮抗していて、なによりも細かな譜読みとフレージングの美しさ、テムポの扱いそして打楽器的な適格さは、想定以上のピアニズムだった。なるほど私の公認会計士が自身もピアノを再開してからこの女流にご熱心になっていた筈だ ― 因みに彼のおじさんはヴィーナーフィルハーモニカーとしてヒンデミット指揮で初訪日を果たしたブラッチストであった。(続く)



参照:
独精神についての疑問視 2007-10-13 | 音
オペラの小恥ずかしさ 2005-12-09 | 音
コメント
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