Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

多様性の音楽芸術環境

2022-06-05 | 
ウクライナ出身の指揮者オクサーナ・リニヴの新制作の仕事を確認した。今迄は2020年秋にフランクフルトで再演の「清教徒」コロナ規制基準室内楽版指揮を観ただけであった。それゆえに大編成での本格的な二年間に亘る準備での仕事ぶりを吟味したかった。現在は腰掛にボローニャの劇場でイタリア最初の女性音楽監督として活躍している。大枠では、グラ―ツで一緒に仕事をしていた女性支配人が就任するドレスデンのゼムパーオパーの音楽監督になるとされている。発表が遅れているが時間の問題だろう。

個人的には、ベルリンの歌劇場の高齢の権力者の健康状態が悪くサドンデス状態になっていることから ― 既に支配人の交代が決定して、その行政的移行準備が整っている ー、後任選定にも関心を持っている。その筆頭は現在シュトッツガルトの音楽監督のコルネリウス・マイスターと考えるが、対抗馬としてこの女流指揮者に可能性有るかどうかを見極めたかった。それが今回の目的の一つでもあった。

結論からすると、前任者バレンボイムを継ぐのは無理と確信した。ドレスデンのティーレマンの後継に相応しい。二人とも音楽的な傾向としてはネオロマンティズムなのだが、リニヴ本人も発言している様にティーレマンのファンであり、音楽的に最も近い。なるほど世代も異なり出身文化も異なるので差異はあるのだが、もう一つ指揮で描き切れないものもよく似ている。そこが、指揮技術などを越えてやはり一流のバレンボイムとは異なるところである。

今回の「ルサルカ」においてもインタヴューで話していたような音楽的に和声の変わり目とその向かう方向そして新たな色合いへの変遷は出ていたのだが、純粋な形で音化出来ていなかった。二年間の準備期間に継ぎ、先ずはピアノでの練習、そして最後の管弦楽への移行で、十分に付けられなかったのは本人の管弦楽練習時間が限られていることへの言及に裏打されている。

それは既にピアノ練習時において十二分に明確化されていないことでもあり、また管弦楽指揮で追いついていないことを示している。そもそもティーレマン自体が初期のベルリン時代には管弦楽団の前に出てきて何も出来ていなかったとされていて、その点では経験を積めば良くなるのかもしれない。要するに職人的な修行なのだが、この女流もグラーツで経験を積んでいるのだが、なぜか3シーズンと中途半端に終わっていて、それを補う形でボローニャで2シーズンほど振ることになっている。更に女性の機会ということでもキャリア的にはとても年増となっているのである。

各紙の批評なども出てくるだろうが、先ずはなによりも音楽的にどれ程価値があったのかなかったのか、またはどこが欠けていたのかどうかを更に具体的に挙げていく。しかし先ずはその聴衆層の影響もあって、また本人の知名度露出度や人気もあってビックリするほどのスタンディングオヴェーションの大喝采で、それはそれで結構なことだと思った。(続く)



参照:
多様性の音楽芸術環境 2022-03-06 | 文化一般
露文化排除のウクライナ 2022-05-06 | マスメディア批評
コメント
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