Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

神聖な炎に焦がされる

2022-06-20 | 
「神聖な炎」と題された映画がネット公開された。独公共放送局などが制作としていてまたもNHKが入っている。予告編などは観て三人のスター歌手を扱っているとは知っていたが、全編を観て驚いた。先ず1時間30分を超える本格的な尺である。最後に明かされるのはアルバニア出身のエルモネーラ・ヤホを軸に、2017年から2019年頃にカメラを回している。2021年制作になっているのはコロナ期間で公開が遅れたのではなかろうか。そしてなによりもヤホの大きなプロジェクトを軸にしようと思っていたようだが病気で取り止めになったとあった。

二人目で登場するのがバーバラ・ハニンガンで作曲家のアブラハムセンの「スノークイーン」初演の稽古風景が素晴らしい。「アイス」のイントネーションをアメリカ人の彼女が直して、作曲家が膝を打つ。そこ迄は楽譜化出来ない。そしてそこ迄やるから、ラトル指揮でルツェルンの音楽祭であんちょこに合わされると作曲家も怒り、歌手もついて行けなかったと思う。ラトルの堕落でしかなかった。

よって取材の多くはミュンヘンの歌劇場で行われているが、三人目のアスミク・グリゴーリアンは来年デビューするので映像は大成功のザルツブルクの「サロメ」とフランクフルトの「イオランタ」が軸になっていた。

つまり映像では制作の切っ掛けはCD録音を聴いてとなっているが、最終的にはキリル・ペトレンコ指揮「三部作」から「修道女アンジェリカ」にフォーカスが当たっている。そこで三場面程はペトレンコ指揮のピアノ舞台練習風景が映されている。これだけ長尺でペトレンコがヤホと英語で話し合っている内容まで紹介されていて貴重であり、とても興味深い。

その公演は、オペラ上演として初めて二回観たものだったのだ。それ程気になっていたからである。なんと言っても初日のラディオ放送でもヤホの歌が伝える感情的な訴えかけがただものではなくて、そのような体験は初めてのものだったからである。

だから彼女の歌から映画が出来たことは、それを知っている者は誰も驚かないだろう。制作者はいいセンスをしている。そして初日シリーズ二日目に出かけた時は、弱って声が出ていなかった。その時はペトレンコが管弦楽指揮でカラオケぐらいに歌っていた。だから翌年の再演でも出かけたのであった。

練習風景では、「ピアニッシモが舞台でも聴こえる」と大劇場のミュンヘンでの不安を語る歌手。それに、「勿論だよ、僕は引き下がるから」と答える指揮者。「アイラブユー、ファンタスティック」と喜ぶ歌手に相好を崩す指揮者。「私達理解し得ているわね」と歌手。ここだけでもあの公演の成功を知っていれば、納得させられるものである。勿論当時はそんな舞台裏の事などは一切出ていなかったのである。(続く
Ermonela Jaho interpreton “Sour Angelica” në Mynih - Top Channel Albania - News - Lajme



参照:
ミュンヘンに通った甲斐 2022-01-26 | 文化一般
不覚にも嗚咽が漏れる 2017-12-19 | ワイン
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