■ 砂上の楼閣 ドバイ ■
上の写真はバブル期の日本の工事現場ではありません。
ドバイの写真です。
そのドバイが事実上デフォルトの危機に瀕し、
「ドバイショック」が世界を駆け巡りました。
しかし、「バブル崩壊とそれに続く失われた10年の続編」を生きる日本人には
ある意味、当たり前過ぎる事が起きているだけに感じます。
リーマンショック後、世界経済は急速に縮小しましたが、
その本質を一番予見出来たのは日本人ではないでしょうか?
金融危機 → 流動性の危機 → 不動産市場の崩壊 ここまでが第一幕
ドバイ政府がいくら「金なら払い続ける」と言った所で、
ドバイへの投資が冷え込んでしまっているのですから、
ドバイワールドとその子会社のナヒールの債務不履行は時間の問題でした。
ドバイは国を挙げた不動産デベロッパーですから、
バブル崩壊後にデベロッパーがバタバタと倒産した日本にとっては、
かつて見た光景が、大規模に繰り返されているだけに感じます。
■ 世界経済は崩壊の第二幕に突入している ■
企業破綻 → 雇用喪失 → デフレスパイラル これが第二幕
ゼロ金利政策 → 量的緩和 → キャリートレード → 通貨下落 が平行して起きます
日本では既に遠い昔に辿ったこの道のりを、
今まさにアメリカやヨーロッパが歩もうとしています。
今回はドルが一時84円台まで下落しました。
ヨーロッパは堅調の様に錯覚されますが、
不動産バブルに沸いたイギリスやスペインは深い痛手を負っています。
さらに、ヨーロッパの銀行は不良債権を大量に隠し持っています。
ドバイのデフォルトで震え上がるのはヨーロッパです。
■ ドルの行方 ■
半年前にはバカにされた1ドル70円説ですが、
今では世界の常識になりつつあります。
「2012年頃には1ドルは70円代に下落する」との予測が
当たり前の様に口にされるようになりました。
今回のドルの下落でアメリカや関係国が協調介入に入らなければ
ドルの70円台突入は、来年にも実現しそうな勢いです。
■ ドルを買い支える世界 ■
アメリカは本気でドルを防衛する気があるのかどうかが今回の見所です。
これませの所、ずるずると下落するドルに対しFRBや財務長官は
「強いドルが望ましい」と言いながら、
強いドルに向けた動きは一切していません。
各国はアメリカの消費が今後2~3年は冷え込む事が予想されながらも、
輸出企業保護の為に、習慣的にドル高を望んでいます。
ドルに事実上ぺックした元は、レートを維持する為に大量のドルを買い続け、
アメリカ国債を積み上げています。
アジアの各国もドル買いを続けていまいした。
日本は政府のドル買い介入こそありませんでしたが、
民間や個人投資家達が、ドルを買い支えています。
■ 弱いドルこそ国益 ■
ほくそえんでいるのはアメリカ政府と金融資本家達です。
ドル買いはアメリカ国債買いに繋がります。
さらに、国債の償還コストを事実上軽減します。
アメリカ政府は「強いドル」と口では言いながら、
ドルを防衛する気がありません。
既に国際通貨としての規律を失い、惰性で飛行を続けるドルに出来る事は、
ドル暴落によって一部の者がボロ儲けし、
アメリカの借金がチャラになる事しか残っていません。
■ 崩壊こそが目的とすれば ■
そんな無責任な事が許されるのかと思うのが普通ですが、
世の中は普通で無い方達も少なからず存在します。
「世界の人口を20億人まで減らしたい」と口にする者達に、
庶民の苦労など分かるはずもありません。
過去、何度にも渡って人類は戦争によって経済危機を乗り越えて来ました。
圧倒的な破壊と再生が、経済を蘇らせ、拡大させてきました。
しかし、核兵器がにらみ合う現在では、大規模な戦争は人類の破滅を意味します。
しかし、戦争が破壊するのは、街や人命だけではありません。
古い習慣、固定化されて階層、専有化された富、国家間の障壁・・・
それらの物を破壊して再生をもたらすのが戦争です。
かつては、先進国の街を破壊する事が戦争でした。
しかし、振興国に目を転ずると、未だにスラムや貧困が広がっています。
まさに、戦後の状況が、既にあるのです。
経済成長の余力も充分です。
ですから、現代の戦争は、大規模な戦闘を行う必要はありません。
経済だけを破壊して、古い国から新しい国に資本移転を促せば、
新興国の経済は、爆発的に発展する可能性を秘めています。
■ 急進派と穏健派の戦い ■
経済破壊をきっかけとして、世界経済を新しいフェースに進めたい人々がいる一方、
緩やかな変換で、旧世界と新世界が協調的に発展するビジョンを持った人たちも居ます。
地球温暖化を掲げる人たちは、多分、温暖化の枠組みを利用して、
世界の理性的な変換を目指す人達です。
既に、先進国は資金を出し合って新興国の環境技術発展に投資する枠組みが出来上がっています。
今まで、新興国の発展を阻害するかに見えた温暖化問題が、
新興国の経済発展に寄与する枠組みに変わっています。
新興国のエネルギー設備は古く、新しい設備に入れ替えるだけで大幅なCO2削減が可能です。
ちょうど、統合後の東ヨーロッパ諸国と同じ状況です。
CO2削減が軌道に乗れば、中国もインドも排出権を売る事も出来ます。
新興国が温暖化問題に積極的に成った背景には、
新興国のCO2排出量が充分に拡大し、
現在を基準年にすれば大幅な排出削減が可能になったからです。
ICPPは始めからこの事態を予測していたように思われます。
京都議定書では中国やインドに削減義務を課していません。
しかし、排出量が十分増大した現在、
新興国は売る程の排出権を手にしています。
これは、先進国から新興国への富と技術の委譲に他なりません。
■ 目的は同じなれど、手段が異なる ■
急進派も穏健派も目的は同じです。
世界のさらなる発展。
急進派が目指すのは、市場原理主義に支配された爆発的な発展。
穏健派が目指すのは、統制された社会による持続的な発展。
急進派は、経済崩壊後の覇権を中国とアメリカが握る事を夢想しています。
尤も、経済発展後に勃興するアメリカの姿は現在とは異なった姿をしていそうですが。
穏健派は、G20や温暖化の枠組みを世界政府の様に機能させたいと思っています。
■ 信用通貨の危機 ■
中国は急進派に付くか、穏健派に付くか態度を決めかねている様です。
急進派に付いたら、一時的な混乱は避けられませんが、
混乱に乗じて、勢力を拡大する機会が生まれます。
尤も、共産党政権が自壊する危険性も大きいので、
多分、事態が決定的に制御不能となるまでは、
ドルやアメリカ国債の叩き売りはしないでしょう。
急進派が最後に仕掛けて来るのは、ドルの暴落です。
それには、ドルが未だ世界通貨としての価値を持っている必要があります。
世界経済に本当に危機が訪れるとすれば、今後2年以内でしょう。
その時は、全ての信用通貨が一時的に信用を失います。
若者にとっては、リスクもチャンスも等しくあるので喜ばしい事かもしれません。
老人にとっては、貯蓄が水泡と帰すので地獄かもしれません・・・。
40代の我々は、住宅ローンが減価するのは嬉しいのですが、
その前に大失業の恒常化がやってきそうで恐ろしいです・・・。
これまでさんざん温暖化問題を否定してきましたが、
こして考えると、温暖化勢力を応援したくなってきました・・。
■ ポンドに注目 ■
急進派の本拠地がアメリカであるならば、
穏健派の本拠地はイギリスです。
ドルは儲けを引きいれながら、自壊の道を歩みますが、
ポンドは攻撃的に叩き売られるかもしれません。
ジョージ・ソロスがポンドの危機を口にしていますが、
ヨーロッパの体力がドバイショックで削がれれば、
ポンドが攻撃目標になります。
表面上は通貨を巡るヘッジファンドと政府の攻防に写りますが、
真相では、世界の未来を決める戦いとなるのかもしれません。
尤も、穏健派が不安定なポンドに依存しているはずはありませんので、
単なる見せしめの為にイギリスを攻撃するといった所でしょう。
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