人力でGO

経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

大山登山・・・近場といえども侮るなかれ

2008-10-25 05:10:20 | トレッキング/旅行


秋になって空が高くなると、
ふと、山に登りたくなる時があります。

10月11日の土曜日、海老名での仕事を午前中に終えて、
小田急の東京方面ホームから振り返ると
朝からの雨も上がり、雲の切れ間に「大山」が姿を現しました。
学生時代は近辺に住んでいた為、何十回となく登った山だけに、
こうして久しぶりに見ると、居ても立ってもいられません。
気づくと下りの電車に乗っていました。

丹沢山系の東端にある「大山」は、高さこそ1200mくらいですが、
独立峰で、相模湾からの湿った空気が吹き付ける為、
雨の多い山で、別名「雨降山」(あぶり山)とも言われています。
中腹、山頂には「阿夫利神社」(あぶり神社)があり、
江戸時代には富士山とならぶ山岳信仰の山でした。
現在の国道246号(青山通り)は、「大山街道」の名残で、
溝口などは、大山詣での宿場町でした。

伊勢原駅で下車してバスに乗り換え、
20分程で、終点の大山ケーブル駅に到着します。

ここからは、参道の階段を登っていきます。
両側は土産物屋や、「豆腐料理」や「そば」を出す料理屋が並び、
「大山詣で」をガイドする「先導師」の宿坊が往時をしのばせます。

参道の中頃に「西の茶屋・本店」があります。
ここの主人が話し好きで、大山近隣の楽しい情報が聞けます。
湯葉定食とビールを注文しながら
ついでに、大山からヤビツ峠、蓑毛へ降りる道の状態を聞きましたが、
「時間も遅いし、その格好じゃちょっと無理じゃない。」と言いながら
地図を渡してくれます。
さらに「大山登山マラソン」と「豆腐の早食い大会」の出場を薦められ、
11月のキノコ汁祭り?の準備のサトイモ剥きを
「包丁持参で手伝わないか」と誘われる始末。
サトイモは手が痒くなりそうなので、やんわりとお断りして、
ビールで喉も潤ったので、山頂を目指します。



中腹の阿夫利神社の下社まではケーブルカーが通っていますが、
「人力でGO」のポリシーに則り、当然、全行程は「人力」を貫きます。

下社までの行程は、坂のきつい「男坂」と、
比較的緩やかな「女坂」をチョイスできます。
私は、当然ガツンと「男坂」を上ります。



傾斜のきつい石段は、所々大石がころがる山道に変貌し、
一汗かいた頃に、下社に到着します。
(普通の人の足で、途中休憩を入れて40分くらいでしょうか)



阿夫利神社の下社は立派な神社で、
正月などは初詣客で賑わいます。
私も、正月は大学時代の仲間とお参りに来ています。



下社の本殿の左手に、急な石段があり、ここからが山頂への道となります。
しかし、この石段のなんと急で長い事か・・・。
まさに、信仰の「試練」と呼ぶにふさわしい難関です。
この石段を見上げて、山頂への道をあきらめる人も多いのではないでしょうか?

ところで私の本日の服装は・・・



・・・はっきり言って山をナメテます。
・・・きっと神罰が下ります。
・・・けど、仕方がありません。さっきまで仕事でしたから・・・。



石段を過ぎると、後は急な山道(というか崩れかけた石段)の連続です。
都心から1時間で、こんな山がある事が不思議ですが、
高尾山なんて大山に比べたら「丘」です。
1200mを一気に直登していきますから、
大倉から「塔の岳」へ丹沢表尾根を登るより、大山はキツイです。



海からの湿った風で、大山はていてい雲の中。
この日も雨こそ上がりましたが、湿度は高く、
シャツは汗でビショビショ。
やっぱ普段着で、片手に仕事カバンとジャケットを持って登山はキツイや・・・
などと思う頃に、鳥居が現れ山頂はもう直ぐです。





山頂には阿夫利神社の本社があります。
と言っても、写真のような小さな社があるだけですが・。
天気が良ければ、ここからの眺めは最高で、
東京から相模湾が一望できます。
本日は雲で展望も利かないので、直ぐ下山します。

大山登山で大変なのは下山です。
湿っぽいので、足元が滑ります。
石が大きいので、大きな段差が沢山あります。
そこを慎重に降りないと、転んで怪我をしかねません・・。

私は・・・「人力」のポリシーとして、駆け下りるのみです。
街用の革靴が滑ろうが、カバンが邪魔だろうが、
下りはスピード命なのは、自転車と一緒です。



一気に下社まで降りると、雲が切れて眺望が開けていました。
遠く都心まで一望できます。

下社からの下山は、「大山寺」のある「女坂」を下ります。
「女坂」といっても、結構急な石段が連続しています。
登って来る人が「後、どのくらいですか」と息を切らせて聞いてきます。
「後、ちょっとですよ」と適当に期待を持たせて、何組かとすれ違います。



「大山寺」は密教的雰囲気に包まれた寺です。
石段の両側には、「十二神将」や「二十八部衆」でしょうか、
眷属の像が並んでいます。
本道からは太鼓と読経の音がしています。



大山寺からは、石段もなだらかになり、
道端には、素朴な地蔵がいくつか点在したいます。
そんな石仏たちを眺めているうちに、ケーブル駅に到着です。

「西の茶屋」でビールを飲んで、本日の登山は終了。
3時間半程度の小登山でした。

帰りは「びしょ濡れ」のシャツのまま・・・。
本日の教訓は・・・
「突然山に行く時は、荷物はコインロッカーに、
 シャツの換えも必ず用意しよう!!」

「深海のYrr(イール)」・・・・現代SFの醍醐味

2008-10-01 09:01:25 | 


「深海のYrr(イール)」というタイトルの本が
本屋でひっそりと平積になっているのをご存知でしょうか。
帯には・・・・、

「ドイツで、『ダ・ビンチ・コード』からベストセラー
第1位の座を奪った脅威の小説、ついに日本上陸」
福井晴敏 氏・・感嘆
瀬名秀明 氏・・驚愕
大型映画化決定

・・・・などの文字が躍っています。

でも、何よりも”驚愕”するのはそのボリューム。
500ページからの文庫版で3分冊。
出版社はハヤカワ。

ノルウェーの石油公社が深海油田探索中に、新種のゴカイを発見します。
ゴカイはメタンハイドレートに巣食い、微生物と共生して、
瞬く間に、メタンハイドレートを穴だらけにし、
大量の氷状メタンが一斉に気化して、大陸棚斜面の大崩落を引き起こします。
それに伴い発生した大津波は、ヨーロッパの沿岸部を壊滅させます。

同じ頃、カナダやアメリカの沿岸では、鯨やシャチが船舶を襲い始めます。
フランスではロブスターから毒性の強い藻類が蔓延して人々の命を奪います。
さらに、主要航路の船舶事故が多発し、海底ケーブルは寸断され
アメリカの沿岸部は、殺人藻類を運搬する無数のカニの襲撃で、陥落します。
世界は混乱の渦に巻き込まれます。

この、異変に早期から気づいていた、
海洋生物学者、微生物学者、海洋地質学者、鯨の行動研究者が
米軍の要請で一同に会し、調査に乗り出します。

「海は何故、突然、人々に敵対し出したのか?
 これは、テロなのか?」

ここまでが序章です。
しかし、どうやら、この攻撃は人為的なものでは無く、
深海の知性体によるものらしい・・・・。
そこから、人類の存亡を掛け、深海知性体とのコンタクトが始まります。

・・・・と、あらすじだけ書けば、
「アビス」であったり「コンタクト」であったりしますが、
この本の凄い所は、その圧倒的な科学的情報量と
徹底した人物描写の細やかさ、
そして構成の確かさ。

底流に流れるのは、安易なSF小説やSF映画への批判であり、
表面的には、映画化も視野に入れた、壮大なスペクタクル。
最新の遺伝子工学から、ニューロサイエンス、深海技術までてんこ盛り。
科学に興味さえあれば、現代最高のエンタテーメント小説に仕上がっています。

文庫本1500ページを一気に読めてしまいます。

SF小説が売れなくなってから久しくなります。
かつてワクワクしながら読んだSFの世界は
ハリウッド映画にも、日本のアニメにも氾濫していて、
苦労して文字で読むジャンルでは無くなってしまったのでしょう。

しかし、SF小説だって捨てたものではありません。
映画ではむしろチャチに見えてしまう、壮大な自然の光景を
確かな筆致で、視覚的に描くこの小説には脱帽です。

「安っぽいハリウッド映画にだけはならないで欲しい」と願うばかりです。

PS

読後感は・・・環境ホルモンの元祖である「沈黙の春」を書いたレイチェル・カーソンの
「沈黙の春」よりも数段名著の「われらをめぐる海」の読後感に近いものがあります。
人類は宇宙空間よりも深海に対して無知であるという事への衝撃。

エコロジー・エンタテーメントSFという新ジャンルの登場です。
この本がベストセラーになる、ドイツという国の知性にも驚きです。

PS

映像作品も頑張っています。
多元宇宙論を扱った、新海誠の「雲のむこう、約束の場所」などは
映像作品ならではの驚きと美しさに溢れています。
小津安二郎とアンドレイ・タルコフスキーを彷彿とさせ、ワクワクします。