■ 増えすぎた自転車を売る ■
自転車も所有台数が増えると、乗らないフレームが出て来ます。目的別とは言え6台も所有していると、1年以上乗らないものも有ります。
そこで、一番乗る機会の少ないレイノルズ853チューブのレモン2号君をヤフオクで手放す事にしました。このフレーム、一生モノとして手元に置いておいても良いのですが、グレッグ・レモン氏がレイノルズ853の新型車(ワショー)を米国で売り出したので、こちらにも興味が在ります。現代風なクロモリレーサーは戦闘的な雰囲気があって恰好が良い。ワショーは標準でENVEのフォークが装着されています。これだけで国内価格は5万円。
<サイクルスポーツ より写真を拝借しました>
レモン2号君、高速ダウンヒルの際にフロントフォークが共振する事がある(多分、ホイールが軽すぎる)ので、やはり現代パーツで組んだクロモリレーサーが欲しい。
カンパのアテナでコンポを組み直して1000kmも走っていませんが、パワートルクの1段変速もあまり好きになれないので、パーツ込みでヤフーに出品しました。結果は、だいたい予想した価格で落札して頂きました。
■ 自転車が増えちゃったよ・・・ ■
そんなこんなでヤフオクを開てロードバイクのフレームなどを眺めていたのですが、FOCUSのIZALCO DONNAというカーボンフレームの2012年モデルの新品が出品されていました。
FOCUS IZALCO はツールドフランスで総合優勝したバリバリのレーシングバイクですが、どうやらそれのレディースモデルらしい。女性が乗りやすい様にヘッドチューブを長くして、さらにトップチューブのスローピングを強くしています。
一般的なレディースフレームで用いられる手法ですが、さすがにIzalcoの名を冠するだけあって、ダウンチューブは極太、左右異型でボリューム感のあるBB周り。一方、トップチューブは優雅で細く、シートステイは横扁平で良くシナル様に設計されています。
これ、最新のエンデュランスロード(長距離走破用)の設計そのものです。Focusはその後、DONNAの金型をそのまま使って、カーボンのグレードを上げたIZALCO ER を発表しています。その評判はネットで大変良い。(但し限定モデルでした)
DONNAのリアセクションの設計思想はその後CAYOに受け継がれ、一方DONNAも海外では販売が継続されています。
女性用のフレームだから小さいだろうと詳細を見ると、トップチューブはホリゾンタル換算で55cm。私にピッタリのサイズです。
面白半分で3万5千円で入札してホッタラカシにしていたら・・・「おめでとうございます、あなたが落札者です」って通知が来ちゃったよ・・・。
「1台売って、1台増える」・・・プラスマイナスゼロ・・・。
■ 新フレームは「3無い主義」だった ■
3万5千円だから、ダメなら売れば良い・・・そんな気軽さでレモン1号君からコンポを移植しますが、ヘッドパーツやら、ハンドルやらプレスフィット30の変換アダプターやら、シートやらで結構な出費。
さらにはZONDAを付けて走行した所・・・・何これ、全然走らないじゃん・・・・。なんか、ペダリングがスカスカして全然力が入りません。
これはきっちホイールが軽すぎるのだろう・・・ならばアルミのセミディープホイールを投入してみよう。元々、軽いホイールは好きでな無いし、フレームが柔らかならば、重いホイールをブンブンダンシングでぶん回しても膝を痛める事は無いだろう・・・。実は巡行楽々のロングライドスペシャルになったりして・・。
そんな妄想を膨らめながら、又もやヤフオクで3T ACCELRO PRO というアルミのセミディープホイールを買っちゃいました。重さは2Kg弱。所謂、「鉄下駄ホイール」です。40mmハイトのセミディープの空力特性なんてスズメの涙。私としては、重さによるフライホイール効果でペダリングのスカスカ感をどうにか誤魔化したかっただけ。オマケで慣性による楽々平地巡行も期待できます。ただ、登り坂で重さはハンデーになりますが、スポーク本数の多いホイールは意外に登りに強いのはピストで経験済。
はてさて、結果は如何に・・・・。
土曜日に強風の中を150km、日曜日に疲労の残る脚で100Kmを試走して来ました。
1) 走らない
2) 登らない
3) 疲れない
何と、「3無い主義」みたいなフレームでした。
■ 貴婦人の扱いは難しい ■
とにかくスピードの乗りが悪い。鉄下駄ホイールのデメリットも有りますが、ZONDAでも掛かりが悪かったので、このフレームの特性でしょう。
フレームの後ろセクションが積極的に上下に動くので、パワーを突っ込んだペダリングの力を全てフレームが吸収してしまいます。「エナジードレーン効果」と命名したい。速く走ろうとしてモガけばモガく程、体力だけが吸い取られてゆきます。
そして、同様に全然登りません。登り始めはホイールの重さで進むのですが、失速してからは速度がガクンと落ちます。もう、道端に捨ててしまいたくなるフレームです。
ところが、しばらく乗っているうちに、だんだんとコツが掴めて来ました。
どうやら、柔らかいフレームは力押しではダメみたいなんです。DONNAとはイタリア語で貴婦人の事。どうやら、このご婦人、優しく扱って欲しいらしい。
とにかくペダリングのムラを無くして、丁寧にペダルを回す。ペダルと足の間に生卵を挟むようなイメージで優しくペダリングすると、スルスルと加速し始めます。リアセクションのウィップ(しなり)とペダリングのピッチが合うと意外にスピードに乗ります。それでも35kmの巡行は難しい。多分、女性用フレームなので、パワーの設定が低いのでしょう。
これ、ペダリングのダメ出しされながら走っている様なもので、硬いフレームのペダリングのダメ出しは距離を走った後に「足が売り切れ」て初めて分かりますが、柔らかいフレームのダメ出しはリアルタイムです。これは意外に良い練習になるかも知れません。
■ 足が無くなってから不思議に走るフレーム ■
驚いたのは、足が売り切れてから意外に良く走るし、良く登る。
土曜日に10m近い強風の中を慣れないフレームで150km「エナジードレイン走行」そた翌日に普段ならば絶対に自転車には乗りたくありません。ところが、翌日は再び貴婦人に跨っていました。
ペダリングのコツが掴めて来たら、27km/h程度の巡行はラクチン。もう魔法の絨毯の様に足を軽く回しているだけで勝手に自転車が前に進みます。
さらには、70Km走った後にヒルクライムしたら・・・インナー・ローに入れれば、全く力を入れる事無く、クルクルとペダルを回すだけで8%の坂も登ってゆきます。時速10km/hで登るので、決して遅くはありません・・・。
■ 脚力の無い人には最高のフレーム ■
100km走って鴨川に到着しましたが、そのまま山を登って浦安に帰れる感じがしました。しかし、その後、娘のアパートでダホンのボードウォークを借りて買い物に行ったら、足が完全に終わっていました。ところがIZALCO DONNA はこの足でも進む・・・。
そう、エントリーカーボンとか、エンデュランス・ロードって、設定パワーがムチャクチャ低いんですね。貧脚用の自転車だったんです。
ただ、柔らかいフレームがダメかと言えば、それは「走らせる技術」が有るか無いかの問題だと気付きました。
硬いフレームはパワーがある内はペダリングが雑でも進みます。ただ、パワーが無くなるとフレームに足が弾かれててペダルを踏み抜けない。所謂、「足が売り切れ」た状態になります。
一方、柔らかいフレームはペダリングスキルが高ければ「そこそこのスピード」は維持できます。ただ、鋭い加速や、35km/h以上の高速巡行や、高速のヒルクライムには向いていない。力が無駄に浪費だれるだけ。
ただ、弱い力でペダリングすると、フレームが適度にしなって、その反力がペダルを回すのを助けてくれます。だから自然に足が周り、前にスーーと進みますし、坂もスルスルと力を入れずとも登って行く。
■ レーシングバイクとエンデュランス系(コンフォート系)バイクは別の乗り物だった ■
結局、エンデュランス系のバイクって、「速く走ったら負け」の乗り物だったんですね。
ただ、ウサギとカメではありませんが、150km、200kmを超える様な距離になると、足が売り切れたレース系の乗り手よりも早くゴール出来る。
ちなみに、早く走ろうという意識を捨てると・・・寄り道し放題になります。
桜と菜の花が咲き乱れる房総の春を満喫してしまいました。
ちなみに、レモン1号君も手放してしまいました。柔らかいフレームと鉄下駄ホイールで早く走れる様になる為に・・・。貴婦人は浮気を嫌いますから・・・。