■ 意外に小さいロシア経済 ■
777さんもコメントにお書きの様に、大国と思われているロシアのGDPは1兆7千万ドルで、韓国に次ぎ世界で11位、アメリカと比較すると1/22しか有りません。ロシアが大きいのは領土であって、経済力では無い。旧西側諸国のメディアはロシアを脅威の対象とする為にロシアを過大評価する傾向が強い。
ロシアの主要産業は石油や天然ガスや石炭と言ったエネルギー産業で、穀物も輸出しています。ソ連崩壊後は資本主義の経済体制に移行しますが、その結果、国内の貧富の差は広がっています。私達がイメージする「大国ロシア」とは異なり、経済的には「新興国」といのがロシアの実態です。
■ 軍事大国としてのロシア ■
一方で、ロシアは依然としてアメリカと並ぶ世界最大の核兵器保有国です。ロシアの保有する6000個以上の核兵器のどの程度が実際に使用出来る状態かは定かでは有りませんが、冷戦以降、アメリカとロシアの核兵器は、不安定な安定の上に世界の平和に貢献して来たとも言えます。
核兵器のみならず、ロシアの通常兵器は優秀で、サウジアラビアやトルコなど親米と思われている国もロシア製のミサイルを購入しています。電子戦能力にも長けており、その軍事力は侮れません。
軍人の数が多いのも特徴で、現役軍人が90万人、予備役が200万人居ます。尤も、ロシアは軍事的には臆病な国家で、数で圧倒していない戦争を好みません。3倍以上の戦力差が無ければ戦争を始めないとも言われています。
■ NATOはロシアと戦争をする気は初めから無い ■
今回のウクライナへのロシアの侵攻(侵略)の目的はウクライナのNATO加盟を防ぐ事です。ウクライナがNATOに加盟すれば、ロシアの隣国のウクライナに米国の核兵器が持ち込まれます。NATO加盟国とアメリカは核兵器をシェアリングという形で共同運用しています。これをロシアが看過する事は出来ません。
ロシア国民が経済制裁などのリスクを冒してもウクライナ侵攻を支持した理由は、「ウクライナで迫害を受ける同胞のロシア系住民を助ける」事ですが、プーチンはこれを利用してNATOの進出を阻止すべくウクライナに侵攻しました。
陰謀論的には、ここが引っかかる所で、ウクライナのゼレンスキー政権がロシア系住民やロシア系のゲリラ組織と対話をしていれば、ロシアに侵攻の口実を与える事は無かった。言い換えれば、彼らは2014年からロシアを挑発し続けていたとも言えます。ロシアの隣国で軍事力ではロシアの1/10のウクライナの取る行動としては「迂闊」に過ぎる。
今回の侵攻の原因を作ったのはアメリカです。アメリカはロシアの反対に耳を貸さず、ウクライナをNATOに加盟させると言ってロシアをさんざん挑発しています。これはロシアをウクライナ侵攻に追い込んでいる様にしか見えません。
そしてアメリカもNATOもロシアがウクライナに侵攻すると同時に、ウクライナからさっさと手を引いてしまった。アメリカ軍もNATO軍も、はなからロシア軍と戦闘する気など無かったのです。
■ そもそも戦争の準備など出来ていないウクライナ ■
ウクライナの戦力はロシアの1/10とされています。ウクライナはロシアのミサイル攻撃の初撃で重要軍事拠点を破壊されたので、防空網は機能していません。最初に制空権を確保するのは現代の戦争の基本ですので、ここに違和感は覚えません。
ただ、群れを成して低空を飛び回り掃討作戦を展開するロシア軍のヘリコプターの映像には違和感を覚えます。「地獄の黙示録」の映画を彷彿とさせる映像ですが、低空を飛ぶヘリコプターは人が持ち運びする地対空ミサイル(スティンガー)の恰好の餌食です。アフガニスタンでソ連軍はゲリラに相当苦しめられた。戦争の危機が迫る中で、ウクライナ軍がスティンガーすら装備していな事が気になります。
■ 早期終結を模索するロシアと、長期化を望むアメリカ ■
アメリカとドイツが開戦後に軍事援助を発表していますが、アメリカは小火器が中心、ドイツは携行型の地対空ミサイルなども提供する。(ドイツが武器を他国に供与するのは第二次大戦後初めて)。これらの装備はゲリラ戦の装備に見ます。
アメリカもNATOも、さんざロシアを挑発しておきながら、ミサイル迎撃システムなどはウクライナに持ち込んでおらず、最初からゲリラ戦を想定している。それも戦争が始まてからスティンガーを供与するなど、ロシア軍を呼び込んでから戦闘を長引かせる作戦の様に思えてなりません。
ロシアは圧倒的な戦力で一気のウクライナ全土を掌握して、ウクライナを中立地帯にする計画ですが、ゼレンスキー大統領は今の所、国民に徹底抗戦を呼びかけています。
開戦後すぐにロシアが停戦会議の場を設けましたが、ゼレンスキーはなかなかこの提案に乗らなかった。ようやく交渉のテーブルに着く様ですが、ロシアの提案を受け入れると政権維持が難しくなるので、同意に至るまでには未だ時間が掛かるでしょう。
その間、ウクライナ軍と親衛隊は都市部でゲリラ戦を展開すると予想されます。戦力差が大きいので、正面戦闘でウクライナ軍はロシア軍の相手ではありません。一方、障害物や遮蔽物の多い都市部でのゲリラ戦は、イヤガラセとしては効果が有ります。
ゲリラを焙り出す為にロシア軍は都市部への砲撃を避け得ませんせんから、ウクライナの街が、シリア同様に瓦礫の山と化す可能性も高い。そして、その映像は世界に「ロシア軍の残虐性のシンボル」として拡散します。
■ 通貨のデカップリングを後押しするロシアへの経済制裁 ■
ロシアへの追加経済制裁として、国際決済システムからロシアを締め出す事が発表されています。ロシア中央銀行の外貨も凍結されているので、ロシアは国際決済が出来なくなります。石油や天然ガスを売った代金を受け取れなくなる。
しかし、ロシアと中国は通貨スワップ協定を結んでいるので、ロシアは中国に原油やガスを輸出する事は可能です。ウクライナに侵攻する事で、ロシアのエネルギーはヨーロッパへは輸出出来なくなりましたが、中国がほぼそれを吸収するでしょう。
中国は元々、元を決済通貨にしようとしていますから、ロシアと中国との間の取引は、ルーブルと元で行われるでしょう。こうして、通貨のデカップリングが徐々に進んで行きます。
■ ロシアの経済封鎖の影響は世界経済にとっては小さい ■
銀行決済システムからロシアを切り離す事で、ロシアの海外投資も事実上無くなりますが、金融システムに与える影響は限定的です。
ロシアの海外投資は不動産投資が多いのですが、富裕層が南欧やブルガリアなどに海と太陽を満喫できる別荘を購入するケースが多い。これらの国は多少困るかも知れませんが、これで世界経済が影響を受けるとは思えません。
■ 第二の石油ショックを演出するには、中東有事が必要 ■
ロシアの原油や天然ガスの供給が絶たれた事で、天然ガス市場は短期的には2倍の価格となっています。しかし、これはスポット価格なので、実際に各国が調達する価格が2倍になった訳ではありません。ウクライナ問題が、第二の石油ショックになる可能性は低いと私は考えます。
ただ、ウクライナにロシアが釘付けになった事で、アメリカやNATOはシリアや中東での軍事的な自由度が高まります。シリアでアメリカの息の掛かったゲリラやトルコ軍を抑えていたのはロシア軍ですが、ウクライナ侵攻が、どう影響するか今後の展開に注意が必要です。
シリア問題では後押しという形でしか関係していない中国ですが、シリアの戦闘が拡大して、イランが巻き込まれる事になると、中国も何等かの直接的な関与が必要になるでしょう。中東の戦争とは距離を置きたい中国ですが、エネルギー確保の問題からイランに肩入れせざるを得ない。
今回のウクライナ侵攻から中東有事(妄想)までは時間が掛かりそうですから、「第二の石油ショック」が、現在のコロナバブル崩壊の引き金になる可能性は低い。
むしろ、1970年代のドルがそうであった様に、原油価格の高騰が通貨の価値の存続に一役買うのでは無いかと私は妄想しています。ドルが生き残るにせよ、新しい決済通貨が生まれるにせよ「石油が買える」という事が通貨の価値の裏付けになります。
■ トリガーはFRBが握ったまま ■
「ウクライナ・ショック」がコロナバブルの崩壊のトリガーになる事は無いと私は予想していますが、一方で、ジリジリと上昇する原油価格につられて世界のインフレ率もジリジリと上昇します。
マネタリーベースがパンパンに膨らんだ状況で、FRBも各国中央銀行も緩和縮小、金利引き上げを余儀なくされます。そして、そのペースはウクライナ危機で市場の予測を上回るでしょう。
結局、バブル崩壊のトリガーはFRBが握ったまま、FRBが市場の予想を上回る利上げをしたり、水面下で緩和資金を縮小すると、今のバブルは崩壊します。
それまでは、ジェットコースターの様な市場展開が続きますが、素人がどうこう出来る様な相場では無いでしょう。間違って乗ると酷い目に合う。