■ 「はーやく来い来い、子供手当て」 ■
民主党政権の一番の目玉政策は「子供手当」でしょう。日頃、子供達に毟られるばかりのお父さん、お母さんは首を長くして子供手当てを待っている事でしょう。
しかし、「子供手当」の見返りとして配偶者特別控除と、子供の扶養控除が段階的に廃止されていくようです。これらの控除は所得控除ですから、税額がいきなりドンっと上がってしまう訳ではありませんが、それでは一体どのくらいの増税になるのか計算してみたのが上の表です。
計算を簡単にする為に、所得はボーナス無しで12ヶ月を平均化した標準月額を算定しています。又、健康保険の負担額は適当に検索して引っかかったNECさんを参考に算出しています。
■ 年収600万円は注意!! ■
大和総研が試算した例が23日の読売新聞の2面で紹介されていますが、年収500万円で専業主婦、小学生2人の世帯は9万円の所得UPとなっています。
ちなみに我が家の家族構成(中学生1人、高校生1人)だとどうなるでしょう。家内が専業主婦だとすると、年収500万円で8万円の所得UPとなっています。
先ごろ発表された中小企業の平均年収が370万円でしたので、計算し易い360万円で計算してみました。こちらは22万円の所得UPとなりました。
一方、年収600万円の方はどうかと言うと、19万円の所得DOWNとなります。生命保険や火災保険の控除、医療費控除を考慮していませんので正確ではありませんが、所得税の税率の影響を受けたと思われます。所得税率は下記の通りです。
195万円以下 ・・・ 5%
195万円~330万円以下・・・・10%
330万円~695万円以下・・・・20%
年収600万円前後の方は、控除後の課税所得が330万円を越えてしまうと、税率が10%から20%にいきなり増えてしまいます。これは結構効いてきます。年収600万円くらいの方は、医療費のレシートを10万円以上集めて確定申告するなど、自衛手段が必要でしょう。
年収700万円以上の方は、一律増税という事になるでしょう。
■ 子供が居ない家庭の年収600万円は危険 ■
子供が居ない家庭は、扶養控除が無いので大して影響を受けないように思われますが、配偶者特別控除38万円が廃止されると、これも税率のステップの影響が出てきます。
500万円程度の所得ですと、多少の増税ですが、600万円の所得ですと、いきなり41万円の増税になります。
配偶者特別控除の廃止なので、子供手当てとは直接は関係ありませんが、ご主人の年収600万円程度ですと、専業主婦の家庭も多いのではないでしょうか?尤も配偶者特別控除は以前より廃止案が何回と無く出ています、税収が激減している現状にあっては遅かれ早かれ廃止されていたと思われます。
■ 子供手当の意味 ■
子供手当の最大のメリットは、政府が家計にお金を配る理由が立ち易いという事です。
補正予算で地方に公共事業費をばら撒いても、投資効率が悪く、なかなか景気は浮揚しません。政府通貨や地域振興券は一過性の効果しか得られませんので、永続的に個人の家計を刺激する政策が子供手当てと、農家の所得保障制度です。
今年度予算が過去最高と叩かれていますが、予算の配分は「コンクリートから人」に確実に移行しています。地方の公共事業は社会保障と同義になってしまいましたが、作られる橋や道路の維持費は今後財政負担を生み出し、業者の永続的な利権を生み出します。そういったアンバランスの社会保障では無く、国民全体が広く浅く恩恵にあずかれる子供手当は、一部に言われる程酷い政策では無いでしょう。
「子供の為」と言わなければ、増税世帯の反発も激しいものとなるでしょう。
現状の累進傾斜を激しくして、高額所得者から低所得者に所得配分をする方法が税制では一般的ですが、これは高額所得者の理解が得難い政策です。それよりも、子供手当てと所得控除の廃止を一律に平等に行う事で、低所得者層が実際は恩恵を受ける子供手当は案外良く出来たシステムかもしれません。
■ 「子供手当」は有効需要を作り出せるか? ■
問題は子供手当が有効需要を作り出せるかどうかです。
子育て世帯は、いろいろ入用な事は事実です。子供手当あ3ヶ月分をまとめて支払われる予定ですが、中学生以下が2人居れば、15万6千円が振り込まれます。このまとまった現金は、結構需要を作り出すのでは無いでしょうか。特に、低所家庭においては貯蓄率は低く、これらのお金は消費に繋がりそうな気がします。
最近日本で有効需要が不足するのは、「中流」が満足してしまっているからです。車のグレードアップにもそれ程興味が無く、むしろプリウスへグレードダウンする傾向があったり、現在の「ほどほどの豊かさを永続させる」為に、貯蓄に熱心だったり、住宅ローンを抱えて、消費にお金が回せなかったりします。要は、消費の熱意よりは、「失う事を恐れる」人々です。これは良く言えば「成熟した消費者」、悪く言えば「老人化」です。高齢者の過剰貯蓄が問題視されますが、「中流」は既に高齢者予備軍です。
一方、低所得家庭は、お金があれば車だって買い換えたいし、小金が入れば家族で外食だってしたい。ある意味、ちょっと刹那的な指向が強いだけに、老人や中流以上よりも経済効果が期待できるかもしれません。
お金は溜め込むものでは無く、使って初めて意味が生じます。
子供手当で、子供達に素敵な思い出が出来る事を期待します。