■ アメリカの真の姿 ■
急激な円高、株安、ドバイショックで、ドルの協調介入の気運が高まっています。
特に株価が輸出企業の収益にリンクする日本では、
「円高・ドル安」は国益に反すると殆どの人が信じています。
しかし、それはアメリカが日本から大量に物を輸入していた時代の話です。
金融バブル崩壊後のアメリカ経済の実態はどうでしょう?
財政規律を度外視意して供給される低金利のドルで、金融機関は復活したように見えます。
しかし、中小の金融機関は今年に入って125行が倒産し、500行が倒産予備軍です。
「大きすぎて潰せない」巨大銀行は、事実上の債務超過を、粉飾決算で誤魔化しています。
失業率は10%を越え、求職を諦めた物も含めれば20%近い失業率です。
クレジットカードのデフォルトが日に増大し、住宅ローンのデフォルトも増え続けています。
商業不動産市場は凍り付き、中小の銀行の経営をさらに圧迫しています。
■ ダウ平均というトリック ■
実体経済が壊滅的な状況ので、アメリカの株価は上昇しています。
これにはトリックがあります。
アメリカの株価は、日経平均と異なり優良30社の株価の平均です。
30社はウォールストリートジャーナルの編集者によって選出され入れ替えられます。
◦Alcoa(アルコア)-アルミニウム
◦American Express(アメリカン・エキスプレス)-金融
◦Boeing(ボーイング)-航空機
◦Bank of America(バンク・オブ・アメリカ)-金融
◦Caterpillar(キャタピラー)-重機
◦Cisco Systems(シスコシステムズ)-情報通信
◦Chevron(シェブロン)-石油
◦EI DuPont de Nemours & Co.(デュポン)-化学
◦The Walt Disney(ウォルト・ディズニー)-娯楽・メディア
◦General Electric(GE)-コングロマリット
◦The Home Depot(ホームデポ)-小売業
◦Hewlett-Packard(ヒューレット・パッカード)-IT
◦International Business Machines(IBM)-IT
◦Intel(インテル)-半導体
◦Johnson & Johnson-ヘルスケア
◦JPMorgan Chase and Co.(JPモルガン・チェース)-金融
◦Kraft Foods(クラフトフーズ)-食品
◦The Coca-Cola Co.(ザ コカ・コーラ カンパニー)-飲料
◦McDonald's Corp.(マクドナルド)-外食
◦3M Company(スリーエム)-化学
◦Merck & Co.(メルク)-医薬品
◦Microsoft Corp.(マイクロソフト)-ソフトウェア
◦Pfizer Inc.(ファイザー)-医薬品
◦Procter & Gamble Co.(P&G)-日用消費財
◦AT&T Inc.(AT&T)-通信
◦The Travelers Companies(トラベラーズ)-保険
◦United Technologies Corp. -航空・宇宙・防衛
◦Verizon Communications Inc. -通信
◦Wal-Mart Stores(ウォルマート・ストアーズ)-小売業
◦Exxon Mobil(エクソンモービル)-石油
世界的な優良企業が並びます。(バンカメなど?もありますが・・・)
アメリカ経済の指標と言われるダウ平均ですが、
GMなどのゾンビ企業の姿は見られません。
それどころか、世界を相手にする企業が多く、
その業績はアメリカの景気に左右されない企業が多く含まれます。
FRBから潤沢に供給されるお金を、これらの銘柄に集中的に投資すれば
アメリカの株価が上がっているように見せかける事は容易です。
■ 増え続ける企業倒産 ■
GMなどの大手企業の破綻ばかりが話題になりますが、
中小個人企業の倒産が増え続けているのは、アメリカも日本も状況は同じです。
年初からの1 - 9月累計の企業破綻件数は申請件数は4万5510件です。
08年通年が4万3546件であり、既に昨年を上回っています。。
連邦破産法第7条の適用申請は全体の約71%、
これは、会社再生では無く、清算型倒産です。
アメリカでは日々、企業が倒産し、日々失業者が増産されてゆきます。
アメリカの潜在成長率は3%程度だと言われています。
これは少子高齢化で低成長が確定した日本の1%を上回る水準です。
しかし、アメリカは借金経済によってこの3%を先食いしています。
今後しばらくは3%成長などという事は起こりません。
尤も、経済が底を打った後は、数字的には高成長を記録するでしょう。
しかし、これは余りにも酷い経済が、正常な状態に戻るだけで、
経済成長とは言いがたいものがあります。
倒産や失業が日々増えていながら、経済が成長しているハズが無いのです。
■ 復活したアメリカは美味しい市場では無くなる ■
経済指標以外のアメリカの実体を鑑みると、
アメリカ経済が近い将来回復し、かつての輸入量が復活する事は考えられません。
むしろ、不況の出口で金利が跳ね上がれば、アメリカ経済の息の根が止まります。
自動車業界や電気業界を始めとした輸出業界は、
アメリカの早期復活に期待を寄せていますが、
復活後のアメリカが購入するのは、韓国車であり、中国の家電品です。
既に、日本製と韓国製の違いは、重箱の隅をつつく様な違いです。
アメリカ市場はかつての利鞘の大きな、美味しい市場ではありません。
アメリカ国民は消費が好きですが、今後は身の丈の消費社会に変化します。
■ 弱いドルを目指すアメリカ ■
「ドル買い」の協調介入は、円(あるいは各国通貨)でドルを買う行為です。
ところが、手元に残るドルは減価し続けます。
少しでも金利を稼ごうと、アメリカ国債を購入すれば、
アメリカ国債の金利が低下し、アメリカは国債消化と長期金利の抑制が出来一石二鳥です。
さらにアメリカは「消費大国」から「普通の輸出国」に転換しようとしています。
強いドルは、表面上はアメリカの国益になりません。
尤も、輸出企業が競争力を有するまでには時間を要しますから、
オバマの目指す「普通の輸出国」は、言葉のトリックで、本質はドル安誘導です。
■ 通貨が弱くて繁栄した国は無い ■
しかし、かつて通貨が弱くて繁栄した国はありません。
弱い通貨では、資源争奪戦に負けてしまいます。
弱い通貨は、いつヘッジファンドの餌食になるか分かりません。
弱い通貨は、投資意欲を喚起しません。
日本や中国は実力以上に自国通貨を安く誘導しています。
円も元も弱い通貨なのでは無く、弱く見せている通貨です。
ドルは実力以上に強く見せていた通貨ですが、
日本や中国がどんなにドルを買い支えようと、ドル安の流れは止まりません。
アメリカのドル安を是正する気が無いのですから・・・。
■ 中国を利するドルの買い支え ■
ドル買いの介入で特をするのは中国です。
ドル買いで維持されるアメリカの購買力は、中国製品を買う購買力です。
日本製品の販売量が増えるとは思えません。
結局日本のドル買い介入は、輸出企業の今期決算の見場を整える効果しかありません。
その代償として、国民の負債が増え、
暴落やデフォルトの危険を孕むドル資産が積みあがります。
■ アメリカと中国は既に共謀している ■
中国はいい加減な国です。
ドル買い介入の資金は、債権を発行せず、輪転機を回して元を刷りまくるだけです。
手元に溜まったドルは、資源買収の資金として世界にばら撒かれます。
元は管理通貨なので、こんな無法をしても売り浴びせられる事もありません。
FRBがドルを刷りまくり、中国が元を刷るまくる。
かつて、アメリカは機軸通貨という強みでドルを打ち出の小槌の様に利用してきましたが、
現在は中国と元を利用して、ドルを延命させています。
中国とアメリカは、すでにズブズブの抜き差しならない関係です。
■ 元の切り上げを要求すべき ■
日本の輸出も、対米輸出から対中輸出にシフトしています。
アメリカの輸出額を倍にする事は不可能ですが、
中国向け輸出は将来的に何倍にも膨らみます。
しかし、元が不当に安いので、日本企業は中国市場で薄利しか得られません。
さらに、管理通貨の元を海外に持ち出す事も出来ません。
中国市場で稼いだ元は、工場の建築費用や人件費など、
結局中国国内に還元されまます。
今や世界第2位の経済大国となろうという中国は、
超保護主義によって、ひたすら甘い汁を吸い続けています。
この状態はドルが暴落するまで続けられるでしょう。
■ 株価が安くても気にするな ■
経済評論家は、「日本経済だけが世界から取り残されている」と言います。
しかし、世界経済の現状に目を向けていません。
「世界経済」は粉飾決算と、無責任にばら撒かれる「紙の通貨」に依存した経済です。
こんな物は近い将来崩壊します。
日経株価を買い支えても、個人の大事な資産を外国人投資家に差し出すようなものです。
銀行は自己資本比率が下がるので増資が必要になりますし、
バランスシートも傷みますから、株安を嫌いますが、
崩壊する事が目に見えている市場を、今、あえて支える必要はありません。
リーマンショックで日本の痛手が少なかったのは、
日本の市場がバブル以来、冷え切っていたままだからです。
個人の貯蓄は、安全資産としての日本国債にプールされています。
いつの日か、世界経済が崩壊から脱して成長し始めた時、
日本企業が、アジアや新興国で充分な利益を上げ始める時、
国債として凍結されていた資金が、動き出すときも来るでしょう。
しかし、それは今ではありません。
海外のファンド系が日本国債に空売りを仕掛けて、
日本国債離れを引き起こそうとしていますが、
日本の金融機関は未だに護送船団です。
日本国債を手放す事はありません。
■ 小沢民主党の政策は正しい ■
小沢民主党は、とんでも無い経済音痴の様に言われています。
しかし、崩壊を前提とする経済運営を行うならば、
今は危険な発展よりも、低成長と死んだフリが一番です。
リスク市場で資金を運用すれば、早晩、その資金は泡と消えます。
日本の金融機関が、市場で欧米の金融機関に勝てるはずがありません。
日本の年金資金は殆ど国内債権で運用され、外債、外国株式の運用比率は20%程度です。
郵政民営化もストップを掛け、日本人の富の囲い込みを積極的に推進しています。
普天間基地問題あたりで世間の目を逸らせて、
アメリカとの関係を適度に悪化させておけば、
アメリカと心中する事は無いでしょう。
尤も、その後の新世界から除け者にされる恐れはありますが・・・。