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「畳み上げ」を忘れた日本人・・・洪水って昔は日常茶飯事だった

2019-10-29 08:14:00 | 時事/金融危機
 

内閣府の防災のページで面白い記事を見付けました。

<引用開始>

我々は子どものころから、台風がきたら何をしなくちゃいけないかというのは、分かっていたんです。この土地はまわりに比べて低いから、「雨が降ったら大変だな」という思いは、自然と体の中にしみついていました。
昔は、農業をしている家は、だいたいが食料の米や麦などを床下に置いていて、どこの家も台風がくるとなったら、そういうものを家の中に移動して、畳はぬれないように柱に立てかける、いわば「畳上げ」をしたものです。そういう準備に必要な角材や丈夫なヒモなどは、私の家にもありました。
けれども、10年ぐらい前に、ここに雨水ポンプ場という排水施設ができてからは、「もう水は上がらないよ」という雰囲気になっていたんです。ところが今回は、「未曾有 ※ の雨」だから、どうにもならなかったんですね。私も、水が出そうかなんて、いっさい気にしていませんでした。ちょっと油断があったのかなと反省しています。
未曾有(みぞう)とは、昔から今までに、まだ一度もないこと。

<引用終わり>


赤字に大した意味は有りません・・・ただ、内閣府のページなので。。。グフフフって思っただけ。(私自身、誤字王ですから!!)



■ かつて浸水被害は日常的に起きていた ■

今から20年から30年前までは、少しの雨でも中小河川の多くが氾濫していました。東京では神田川や善福寺川は集中豪雨があると、直ぐに氾濫して、床下浸水や床上浸水のニュースが流れた。神田川近くの秋葉原の電気街では台風の前にはシャッターの前に土嚢を積む店舗も有りました(石丸電機とか)。神田川は高田馬場の周辺でも良く溢れていました。

身近な場所でも、大雨になると「水が出る」場所は沢山あった。旧川筋や、かつて沼だった地域は大雨に弱かった。私の通っていた中学も、かつて沼地だった畑の真ん中にあったので、中学1年の時に振った豪雨で冠水して下校出来なくなりました。

この様に、都心部、郊外、田舎に限らず、かつては大雨による浸水被害は日常茶飯事で、台風の時などは1000軒単位で床下、床上浸水などは普通に発生していました。

■ 治水事業で浸水被害は過去のものになった? ■

自治体もこれらの浸水被害に無策だった訳では無く、様々な対策を講じています。

1) 河川改修で川を流れやすくする
2) 護岸工事で護岸を崩れにくくする
3) 貯水池を整備して、短時間に大量の水が川に流れ込まない様にする
4) 排水機場を整備して、低地の排水性を向上させっる

地表をコンクリートで固められた東京では、神田川や善福寺川に多くの雨水が短時間に流れ込んで氾濫を繰り返していました。そこで、東京都は地下に巨大な貯水池を作り、川に流れ込む雨水を調整できるようにしました。

下の写真は善福寺川の地下調整池ですが、公園などの地下に巨大な空間が作られています。この様な地下調整池は宅地化が進んだ地域の学校のグランドの地下などにも有ります。


■ ゼロメートル地帯などでは排水機場が整備された ■

東京では江東区などの下町も洪水被害の多い地域でした。この一帯は地盤沈下によって海面よりも土地が下がっているので、大雨で川に放水出来なくなるのです。排水機場が整備される事によって、ポンプで強制的に低地の雨水を川に放流できる様になり、この地域での浸水被害も過去の話となります。

■ 佐倉一体は洪水地帯だった ■

今回の豪雨で浸水被害のあった千葉県の佐倉市一帯は洪水との戦いの歴史でした。

平安時代までは「内海」だった印旛沼周辺は、渡良瀬川(現利根川)の堆積物で海と隔てられ「印旛沼」となりますが、雨が降ると周辺の雨水は全て沼に流れ込んで来ます。今回氾濫を起こした鹿島川も印旛沼に流入する河川です。

一方、明治時代までは沼から海に流出する河川は有りませんでした。逆に、幕府による利根川東遷によって増水した利根川の水が印旛沼に流入する様になり、印旛沼は調整池になってしまいす。(江戸時代に安食に水門が建設されます)

大雨が降ると印旛沼の周辺の低地の干拓地では農家が水に浸かった。農家も慣れっこだったので、天井裏に小舟を常設していて洪水に備えていまいした。

江戸時代に印旛沼の水を東京湾に流す河川を作る工事が何度か試みられますが、難工事を極め完成には至りませんでした。明治時代になってやっと「花見川(新川)」が東京湾に開通し、大雨の水を印旛沼から排水出来る様になりました。

印旛沼周辺の干拓地には多くの排水機場と、沼をグルリと囲んで排水用の水路が整備され、最近では洪水は過去の話になりました。しかし、私が高校生に成る頃までは、鹿島川は大雨で度々浸水被害を起こす川でした。しかし、それもここ20年程は記憶に有りません。

■ 限界を超える雨が降ると、「水が出る」地域から浸水する ■

過去の話の様になった「浸水被害」ですが、台風19号や、21号の様な記録的な豪雨に見舞われると、貯水池や排水機場の能力が限界に達して浸水被害が発生します。

二子玉川では土手の整備されていない場所(明治時代に川岸に料亭が立ち並び、堤防工事に反対した為、土手が住宅地の背部にあるので、この地域は正確には「河川敷」)で浸水が発生しましたが、地元では水害で有名な地帯だった。

この様に、かつて「水が出る」とされる地域では、治水設備の限界を超える雨が降れば、当然浸水被害が発生します。

実は私の家の前の市道も、以前、台風の大雨で冠水した事が在ります。この様な場所では、マンションの立体駐車場の地下部分は、排水が出来なくなるので、車が水没する恐れが有り、注意が必要です。さらに、マンションの地下に受電設備やポンプ設備が有る場合も、これらが浸水被害を受ける可能性が有ります。

■ 急激な都市化によって新しく起こる災害 ■

タワーマンションが林立する武蔵小杉でも浸水被害が発生していますが、急激な都市化が引き起こした災害と言えます。

武蔵小杉の浸水は多摩川の水が下水を逆流した「逆流氾濫」です。河川の周辺は「後背湿地」で、昔は大雨が降ると川から溢れた水が一体を覆った地域です。ですから増水した川の水位よりも土地が低い。こんな場所は全国の低地の平野部はほとんどです。ですから、河川が増水した時は、河川への下水の流入ゲートを閉じて逆流を防ぎ、ポンプによって排水をします。

ただ、明らかに増水による逆流が懸念される地域以外は、ポンプの排水施設を備えていない場所も多い。川崎市では多摩川河口近くの川崎区や、幸区、そして武蔵小杉の有る中原区の一部もポンプ排水のエリアでしたが、土地が若干高い武蔵小杉には下水道にポンプ排水設備が無かった様です。



一方で急激な都市化で下水道への生活排水や汚水の流入量は増え、雨水も地中にしみ込む事無く排水溝に集まって来ます。武蔵小杉の駅から南側の地域では、古い下水設備を使用していて、下水と雨水を同じ下水管で流す「合流式」。下水道の多摩川へのゲートを安易に閉鎖すると大雨によって下水が溢れる「内水氾濫」が発生する可能性が高い。そこで、ゲートの閉鎖を躊躇った結果、急激な多摩川の増水によって、多摩川の水が下水を伝わって逆流したと見られています。

ただ、ゲートを閉じた所で、大雨による雨水は行き場を無くして、結局は下水は溢れたと思われます。武蔵小杉一体はかつて沼だったと言われ、周囲より低くなっているので、ゲート閉鎖で逃げ場を失った下水は、やはりこの一帯で「内水氾濫」を起こたハズです。

以前は田圃を埋め立てたり、ゆるい丘陵地帯を急激に宅地開発するなど、未計画な都市化によって保水力が失われ、それらの地域の低地で浸水被害が多発しました。現在では調整池が整備され、ポンプ設備なども作られて、これらの地域の浸水被害は随分少なくなりましたが、やはり予想を超える降雨量には注意が必要です。

■ 災害に強くなって、災害を忘れた日本人 ■

台風15号で房総の被災地で高齢者達が口々に語っていたのは「油断していたよ」という言葉です。房総地域は台風の通り道ですが、近年、大きな台風は房総半島を避ける様な進路が多かった。

今回の千葉県の豪雨被害でも、「やっぱ水が出る所に住むべきじゃないね」と、昔なら当たり前だった事が改めて意識されたと人々が言い合っていました。

高校時代の教師の話では、四国では台風を前に、窓に板を打ち付けたり、天戸の裏に竹の棒を通す準備をしたと言います。

冒頭の内閣府の記事ではありませんが、水の出る地域では「畳み上げ」は台風の風物詩さったでしょう。

しかし、現在は二重サッシの実家のマンションでは、台風19号の強い南風の音も、ほとんど気付かなかったと母が語っていました。(1重サッシの我が家では、いつ窓が割れるかと寝る事が出来ませんでしたが・・・)

この様に、治水設備が整い、住宅の性能が上る事で、私達は「災害」を意識しなくなりました。畳上げが出来るのは畳の上に物が無いからで、現在の老人の住宅は家具や物に溢れていますから、いざ畳を上げように上げる事が出来ません。

昔は、座敷には物は置かず、板敷きに納戸(なんど)に功利などの少量の衣類や道具が収納されていました。この様な生活をしていれば「畳み上げ」も「功利の移動」も簡単に行えます。板敷きならば、浸水しても水が引いたら雑巾掛けでキレイになります。


今回の様な記録的な豪雨は、そう何度も起きる事では無いので、それに備える事にどれ程の意味があるのか、経済的には微妙ではありますが、イザという時の心構えは、日頃から怠らない様にしたいものです。少なくとも、避難指示が出た時に、防災グッズと貴重品だけは、直ぐに持ち出せる準備は必要なのかも知れません。

千葉県の豪雨被害・・・MTBで行く

2019-10-28 05:09:00 | 自転車/マラソン
■ 千葉県豪雨の実態調査 ■



2019年10月25日は千葉県に記録的な大雨が降りました。

台風20号から勢力の衰えた熱帯低気圧が日本列島を北上し、さらに東海上を、強い勢力の台風21号が並走した為に、大量の湿った空気が関東地方から東北地方に流れ込みました。

千葉県の多くの場所で、観測史上初となる記録的な大雨となり、場所によっては1時間の雨量が100mmを越え、3時間雨量が300mmを越えた所も有ります。

ちなみに、降水量を言葉で表現すると下記の様になります。

1ミリ    → 小雨。地面がかすかに湿る。傘はいらない。

3ミリまで  → 弱い雨。地面がすっかり湿る。

8ミリまで → 雨。地面に水たまりができる。

15ミリまで → やや強い雨。雨が降る音が聞こえる。

20ミリまで → 強い雨。雨音で話しが聞き取りにくい。
        地面一面に水たまり。
        寝ている人でも目を覚ます場合がある。

30ミリまで → 激しい雨。傘をさしていても濡れるどしゃぶり。
        道端の排水溝があふれはじめる。

50ミリまで → 非常に激しい雨。まさにバケツをひっくり返したような雨。
        下水はあふれ、崖くずれなどが起こりやすい。
        道路交通規制などが行われる。

50ミリ以上 → 非猛烈な雨。滝のように降り、雨しぶきで辺りは白っぽくなる。
        土砂災害や中小河川の氾濫が起こり、水害が急速に広がる。


1時間に100mmの降水量は、1か月分の雨が1時間で降るのに等しく、そんな中に屋外に居れば「滝行」状態間違い無し。

■ 「養老川がマジヤバイ!!」 ■

昨日、普段は穏やかな養老川は2か所で氾濫し、中流にある高滝ダムは、上流域の水位が上昇した為に緊急放流一歩手前まで行きました。





ネットでは「こんな養老川見た事無い」や「高滝ダム、普段でも放流すると水位一気の上昇するのに、今放流したらマジヤバイ」などという書き込みが溢れました。

下の写真はネットから拝借しましたが、下流域でも、あと数十センチで越水という状態。


ネットから

■ 豪雨の翌日、千葉県を横断してみる ■

私は自分の目で見たものしか信用しない性格なので、豪雨の翌日、被害の状況を直接見に行ってみました。もちろん自転車で。いつもの上総牛久から養老渓谷経由で鴨川を目指します。道は相当に荒れているでしょうから、ブロックタイヤのMTBの出番です。

豪雨の翌日の土曜日は、朝から晴れ間が広がりました。路面も既に乾いていて、所々に水たまりが残る程度。但し、国道の路肩は水で流された枯れ枝が排水溝の周辺の溜まっているなど、非常に走り難い状態。ロードではパンク覚悟ですが、MTBなので枯れ枝を踏み越えても平気です。

八幡宿から大多喜街道に入り、上総牛久を目指します。上総牛久の周辺でも養老川が氾濫した様ですが、今は川の水位は下がっています。路肩に溜まる砂が、道路の冠水の名残。

養老清澄ラインに入ると、読売カントリークラブの手前で「土砂崩れ通行止め」の看板。農道に迂回してCC前の坂道を登って行くと、なんと坂の頂上手前が土砂崩れ現場でした。既に、パワーシャベルが土砂の撤去作業を始めています。

規模は大した事が無かったので、作業員の方に自転車で越えて良いか聞くと「無理だっぺ、ズブズブで潜っちゃうよ」と笑っています。「大丈夫、いつもの事です」と答えて数歩進むも、ズブズブ・・・。これ膝まで潜っちゃうヤツだ・・・。「やっぱ無理っす!!」っと撤退表明。「そうだっぺ、迂回するのが正解だよ」と、皆さんに笑われました。





ドロドロになった靴と、ドロドロになったタイヤで、なかなかMTBらしい感じにった所で、適当に迂回して、養老清澄ラインに復帰。高滝ダム(高滝湖)の到着します。

高滝湖は茶色く濁り、流木が多く浮かんでいますが、水位は普段よりも1m程度高い感じ。湖畔の管理用の通路が一部水に浸かっています。




その先、橋から見下ろす養老川の水位は下がっていました。枝に引っかかっているゴミなどから判断して、今より3m程は増水していたと思われます。千葉県の河川は、長さが短いので、水位いが下がるのが早いのでしょう。



■ 土砂崩れのオンパレード ■

上総大久保まで来ると、大規模な土砂崩れで電柱が倒壊して通行止め。この先に洞門(シェルター)があるので、崩れやすい場所なのでしょう。





適当に川の対岸で迂回路を捜します。対岸から土砂崩れ箇所が見えます。この周辺は砂層と粘土層の互層で形成されているので、砂層部分は崩れやすい。




迂回路はバイク乗りが素掘りトンネル目当てで良く通る林道ですが、追い抜いていった乗用車が何台か戻って来ました。「通行止めですか」と聞くと「トンネルの出口で倒木で通れない。人は歩いて通れそうだから、自転車も行けるかも知れません」との事。

トンネルを抜けると、そこは「倒木だらけ」だった・・・。




枝の下を、自転車を寝かせて、どうにか突破に成功し先に進むと、30m置きに倒木や、小規模な土砂崩れに行き合たります。粘度層も柔らかいので、ゴロゴロと崩れて道に転がっています。





土砂崩れ箇所の泥の上に足跡が無いので、私が最初の通行者の様です。倒木の枝が密集している所では、太い枝をバキバキ追って通れる場所を確保します。そんな場所が何か所かあったので、ちょっとしたボランティアをやった気分になります。




小さな沢を跨ぐ橋の路肩が崩落していました。普段はほとんど水流が無いのですが、昨日は濁流だったのでしょう。しばらくは自動車は通れないでしょう。





山の反対側に出ると道幅が広くなりますが、やはり所々で斜面が崩落しています。途中から車のタイヤの跡があり、その下に「通行止め」の看板が立っていたので、地元の方が様子を見にいらしたのでしょう。




ようやく集落に出ました。養老渓谷駅裏の端から谷を見下ろします。下に見える橋の川岸部分が相当に侵食されています。この辺りも地層が柔らかいので、川のカーブの外側は、簡単に削り取られてしまいます。



■ ラーメン屋さんが情報基地? ■

自転車を担いだので、お腹が空きました。養老渓谷駅裏の以前から気になっていたラーメン屋さんに入ります。地元の方相手のお店なので、色々とお話が伺えそうです。

お店には先客でオバサンが一人。携帯電話で店の外で誰かとお話されていますが、「どこそこが道が川の様だった」とか「どこそこは通れない」などとの情報を交換しています。

私はミネラル補給で味噌ラーメンを注文して、お店のオバサンとひとしきり雑談。

「どこからいらしたの?」
「浦安から」

「自転車ですか?どこ通って来たの?」
「上総大久保から小学校の脇を登って来ました。」

「あら、崩れて通れなかったんじゃない?」
「倒木の枝を折って突破して来ました。」

「どこまでいらっしゃるの?」
「鴨川に抜けようとおもうのですが、通れますかね?」

「筒森を抜けて鴨川有料なら大丈夫だと思うけど、スマホで調べられない?」
「あ、鴨川有料、大丈夫みたいですね。」

「養老渓谷へは、今、大多喜回りじゃないと来れないのよ、後はどこも通行止め」
「山の中は相当に酷いですね」
「今朝、皆で道を全部見て回ったけど、通れる道は大多喜に抜ける道だけだって」
「林道は全滅ですね」

その後、何故か、電話を終えたオバサンも一緒に、「電位治療器具」のセールスの話で盛り上がっちゃいました。「ヘル〇トロ〇」ってヤツだと思うのですが・・・どうやら近くで人を集めているみたいで勧誘が煩いらしい。「・・・・あ、それなら実家にありますよ」と思わず会話に参加すると、「エー、本当。で、どうなの、効くの?」。「僕は全く分からないんですけど、母は夜中に脚が攣った時に座ると治るって言ってますね。」「あら、そう。でも脚が攣るのてそのままにしていても治るわよね」「そうそう、親指立てると治るよね・・・」っとこんな会話。

そうこうしている内に、市役所の職員の方が被害状況の調査にみえました。

「どうです、今回は何か被害ありましたか?」
「ウチは大丈夫ですね。電話も通じるし」
「ちょっと見させてもらいますね」
「お願いします。」

「どこ通って来たの?」
「大多喜」
「それはご苦労様、1時間掛かったでしょう」
「だいたい1時間」
「ここの所、いつもご苦労様」
「いつも土日なんだよね、台風」

9月以降、千葉県の自治体の職員の方は休まる事が無いでしょう。本当にご苦労様です。

ところで、味噌ラーメン。おおきな器で出て来たので、食べきれるか心配でしたが、美味しくて汁まで完食してしまいました。今度から養老渓谷で昼食を食べる時には、こちらのお店に決めました。

■ 水は引いたけれど、遊歩道の被害が・・・ ■

腹も満たしたのでラーメン屋さんを後にして、鴨川を目指します。

養老渓谷温泉郷の赤い太鼓橋ですが、いつもは6mくらい下を流れる川が、岸の上近くまで増水した写真がネットにアップされていました。本日は、水位は下がっていましたが、木の枝に引っ掛かったゴミが、増水の跡。





川岸の遊歩道の手摺が無残にも破壊されています。遊歩道も無事では無いでしょう。これから紅葉シーズンで一年で一番賑わう養老渓谷ですが、観光への影響が心配です。



鴨川へは老川十字路を右折して筒森経由で亀山湖から鴨川有料を目指しますが、筒森の先の土砂崩れが心配です。君津と大多喜の市境付近は、土砂崩れや路肩の崩落が多い場所です。そこで折り返すのもショックが大きいので、老川十字路を直進して粟又の滝から、会所のトンネル経由を選びます。


普段は水量が少なくて、滝というより、巨大なウォータースライダーの様な粟又の滝ですが、今日は「どこの名瀑だよ!!」という程の迫力です。


日光の「湯の滝」の様になった「粟又の滝」

いつもは水量が多い時でも、この程度。夏の渇水時はチョロチョロ・・。


会所トンネルからは下り坂になります。道端の斜面から道路に水が流れ出て、舗装の上を小川の様に流れていますが、わざと自転車を突入させて、タイヤや車体の泥を洗い落とします。(頭から水を被る事にもなりますが・・・)


安房小湊への分岐で、迷いましたが、鴨川へは向かわず、勝浦から輪行する事に決めます。「鳴海」を一本買いたくなったからです。




9月の台風15号以来、千葉県は台風や豪雨被害に度々見舞われています。今回の豪雨の被害も復旧まで時間が掛かりそうですが、地方の人達は「災害慣れ」しているというか、逞しい。コミュニテーがしっかりしているので、自分達で被害地域を特定して、口コミで被害状況が広がて行きます。近所の一人暮らしの老人の安否確認も迅速です。都会では行政任せの防災ですが、地方では地域ぐるみで対応している事を、自分の目と耳で感じ取った一日でした。


ガンバレ、千葉県。
ガンバレ、全国の被災地の皆さん!!



バブルの終焉の足音・・・個人が抱えるリスク

2019-10-25 05:21:00 | 時事/金融危機
 

■ 実はどこもヤバイ日本の金融機関 ■

低金利を背景に経営状況の思わしく無い企業も低金利でジャンク債を発行出来たり、リスクのあるローンを安い金利で組む事が可能になっています。

投資銀行は、これらのリスクの高い債券を、証券化する事で投資信託に組み込んだり、CLO(ローン担保証券)として世界中に売りさばいています。これはリーマンショックの原因になったサブプライム層へのローンをMBL(住宅担保証券)に加工して売りさばいた時と同じ状況ですが、これらの残高はリーマンショック前に迫る規模に拡大しています。

FRBやIMFはCLOの増大に警鐘を鳴らし、金融庁も日本の金融機関のCLOの保有量の実体調査をしています。農林中金やゆうちょ銀行、そして三菱東京UFJを始めとするメガバンクの保有量は相当膨らんでいます。

農林中金はCLO市場でも、ジャンク債市場でもメインプレーヤーです。昨年12月にジャンク債の新規発行が止まりましたが、農林中金が購入を控え為。

ジャンク債もCLOも昨年末頃にはリスクの拡大が意識されましたが、FRBの利下げによって金利水準が下がったので、投資家は金利を求めてジャンク債市場やCLO市場に舞い戻っています。

アメリカの投資銀行など大手金融機関が徐々にリスクを減らす一方で、金利の低い日本やヨーロッパの金融機関がリスクを拡大し続けています。その筆頭が経営が危ぶまれているドイツ銀行。デリバティブ残高は、ドイツ銀行だけで実に7000兆円に近い。

■ リーマンショックよりも平成のバブル崩壊に近い日本の金融機関 ■

「次なる金融危機が訪れてもリーマンショック程度だろう・・・」そう考えている方は多いと思います。正社員の方々は「多少、売り上げが落ちて経費がキビシクなるけど、リストラは無いだろう」と思っている方も多いかと。

リーマンショックの時に日本の金融機関は、日本国債を中心に資金を運用していたので、大した被害が有りませんでした。しかし、日銀の金融緩和以降、海外投資が急拡大しています。安全資産とされる米国債ですら、急激な円高が発生すれば大きな為替差損を被る。さらにはジャンク債やCLOに至っては目も当てられない状況になります。

日本国内でバブルが発生していないからといって安心は出来ません。むしろ、もっと危険な状況なっています。

■ FRBの利下げによってリスクが高まる世界 ■

米経済の減速懸念で利下げに追い込まれたFRBですが、市場はこれを好感してリスクを拡大し続けています。ダウは最高値を更新し、日経平均も一見底堅い。

ところが、これらの高値を支えているのは、リスクを度外視して金利に飢えた緩和マネーですから、WeWorkを例に取るまでも無く、バブルが発生している事は明らかです。いえ、最早破裂寸前でしょう。

WeWorkに限らず、アメリカの企業は少なからず「借り換え金利の安さ」や、「社債発行金利の安さ」に支えられています。シェール企業を初め、小売業や不動産業など「ゾンビ企業」が沢山生まれています。

仮にアメリカで景気後退が顕著になって、経営が行き詰まる企業が増えて来ると、ジャンク債金利が急上昇し始め、金融機関もゾンビ企業への融資を渋る様になります。こうなると「The END」です。

ジャンク債やBB格などジャンク債並みの信用力しな無い債券が暴落し始め、CLOの中にも不良債権を含むものが増えて来ます。そして、これらの債券を含んだ金融商品が暴落する。まさにサブプライムショックと同じ状況です。

■ FRBの金利据え置きが引き金? ■

現状FRBは市場の空気を読んで金利を徐々に引き下げています。市場はFRBに相場から金利引き下げの圧力を掛け、そして金利引き下げを織り込んで動いています。

では、市場の予測に反してFRBが金利を据え置く決定をした時はどうなるのか・・・多分、驚いた市場は一気にリスクオフを加速させ、株価が下落し、債券も大きく値を下げます(債権金利は上昇)。

ここまでも市場は織り込んでいますが、下落幅が予想を上回る事になれば、一気にパニックが拡大してバブルが弾けます。

バブル末期は「もうダメかも知れない」という思いと「まだまだ行ける」という思いが交錯しますから、相場はピーキーに乱高下します。これを何度か繰り返した後、バブルは何かを切っ掛けに弾けるのです。

この「切っ掛け」を予測する事は難しいので、相場の動きが激しくなったら、リスク性の資産を手仕舞いする事が肝要です。例えば投資信託であるとか、元本が保証されない個人年金など、一般の方もリスク性資産を保有している事に注意して下さい。

尤も、通貨の信用や、国債の信用にまで疑問を持たれる様な事態になれば、銀行預金だって危ない。取り合えず、ペイオフの範囲外の資金は貸金庫にでも仕舞っておいた方が安心でしょう。特に農林中金とか・・・ゆうちょ銀行とか・・・みずほ銀行とか・・・・弱小地銀とか・・・。

金融緩和最終章・・・ソフトバンクはそろそろヤバイ

2019-10-25 03:44:00 | 時事/金融危機
 

■ ソフトバンクがWeWorkの経営権を取得 ■

先日、日本ではソフトバンクがZoZoを買収して話題になりましたが、アメリカではソフトバンクがシェアオフィスを手掛けるベンチャー企業のWeWorkの経営権を取得して話題になっています。

WeWorkは2010年に創業されたレンタルオフィス企業ですが、次々と不動産を購入してオシャレなシェアオフィスを作って生長して来ました。ナスダックに上場予定で、時価総額は一時は470億ドル(5兆円)にまで達しました。

ところが、WeWorkの経営は赤字経営が続いており、とても時価総額5兆円などという優良企業ではありません。では何故、こんなに株価が上昇してしまったのか・・・。それはソフトバンクのビジョンファンド(SVF)が多くの株を買っていたからです。

WeWorkの株は直近では下落を続け、ナスダックへの公開も延期され、運営資金にも行き詰まり不動産を売却して凌ぐ状態に。そこでソフトバンクが40億から50億ドル(約4300億円〜5400億円)を今後出資する事で経営権の8割をソフトバンクに譲り渡す事になりました。

現在の評価額は75億ドル(約8100億円)の評価額まで下落しています。


■ 典型的な不動産バブルのWeWork ■

WeWorkを創設したアダム・ニューマンはカリスマ的な経営者で、多くの資金を集めてWeWorkを急成長させましが、事業の実体は「レンタルオフィス=不動産業」ですから、それ程革新的なビジネスではありません。

そんなビジネスが急成長した背景は、世界的な金融緩和による「カネ余り」です。世界にジャブジャブ溢れる緩和マネーは金利に飢えています。しかし、金融緩和による金利低下によって、安全な投資ではまともな金利が得られなくなっています。

先日発行されたトヨタ自動車の社債は金利が0%ですが、それでも投資家が買うという異常な状態が日本のみならず世界中で発生しています。

ですから、アダム・ニューマンの様な「詐欺師」が、カッコ良いプレゼンをすると簡単に資金が集まって来る。そしてビジネスが拡大すると、さらに資金が集まる事で単なる不動産ビジネスが、何か凄いビジョンでも持っていると錯覚される様ななります。

1) カッコ良いビルを建てて注目を浴びる
2) 資金が集まって来る
3) 又、カッコ良いビルを建てる
4) さらなる資金が集まる

この循環で急成長したのがWeWorkですが・・・これ、日本の不動産バブルと同じですね。あの頃もデベロッパーが新進の建築家達に奇抜なビルを設計させて事業を急拡大させまました。
バブルが弾けた後は、「バブルの墓標」としてしばらく入居者も無いままに残っていたヘンテコなデザインのビルも、今では取り壊されたものも多く、あまり見かけなくなりました。

ソフトバンクは1兆円の追加出資でWeWorkを手に入れた訳で、一見お買い得に見えますが、WeWorkがかつての日本のバブル期のデベロッパーに等しい事を考えると、単に「ババを引かされた」事になります。WeWorkの借り入れは巨額ですから、いつまで経っても経営が黒字化する事は無いでしょう。そのうち金融緩和バブルが弾けて、オフィス需要も急激に減少するので、その先は・・・・。

■ ソフトバンクの快進撃は終わろうとしている ■

10兆円ファンドを立ち上げるなど、孫社長とソフトバンクは「投資家」として世界の注目を集めていました。

IT系のベンチャー企業を中心に巨額投資を繰り返していましたが、これらの資金が一部企業の株価を吊り上げています。これはソフトバンクのファンドに限らず、世界中の投資家が同じ様な投資行動をしているので、ダウの2万7千ドルなどというのは、まさにバブルの産物なのです。

ソフトバンクは米携帯電話会社のプリンストネクステル社の買収で失敗し、インドなどのベンチャー企業の投資で失敗し、3兆円で買収したARM社の経営も赤字。

ARM社はモバイル機器などの小型省エネCPUの設計会社でシェアも高いのですが、ソフトバンクが買収した2016年から赤字が拡大しています。表向きは「研究開発の投資を拡大しているから」となっていますが、競争の激しいこの分野で優位性を失えば経営は一気に悪化します。だから巨額投資をし続ける必要があるのですが売り上げの伸びがそれに伴っていません。

■ ZoZoなどバブルの墓標のコレクターとなりつつあるソフトバンク ■

ZOZOも典型的なバブル企業です。

ブランド品がお店よりも安く買えるから人気を集めたZOZOですが、客が実店でサイズやデザインを見た後にZOZOで購入したのでは、ブランドの収益が減少します。(ZOZOへの手数料も掛かるので)。

ファッションのネット通販で独り勝ちの状態は、そう長くは続きません。大手ブランドや、百貨店などが独自のネット通販ルートを構築すれば、ZOZOから魅力的なアイテムが減ってゆきます。気づけば安物ファッションしか残らない・・・そんな状態になるかも知れません。

AI関連の投資も非常に危ない。現在は何度目かの「AIバブル」が起きていますが、AIが人の能力を超えるまでには、まだまだ時間が掛かります。最近は色々な商品やサービスに「AI」という文字が入っていますが、「ナンチャッテAI]に過ぎません。AIが大きな利益を生み出すまでには、まだまだ巨額の投資と技術開発が必用ですが、金融バブルが崩壊すると資金調達が難しくなり、倒産するベンチャー企業が続出します。

この様にベンチャー企業への投資で成長して来たソフトバンクですが、緩和バブルが弾けて資金循環が一転すると「バブルの墓標のコレクター」になってしまいます。

いえ、ソフトバンク自体が墓標と化す可能性が高い。

■ ソフトバンクの社債はジャンク債 ■

金利の低い日本ではソフトバンクの個人向け社債が人気です。最近発行された個人向け社債は金利は1.38%で過去4年間で最低です。

ところでソフトバンクの、米格付け機関S&Pの格付けをご存じでしょうか?「BB+」です。これ「投資不適格」とか「投機的」と呼ばれる格付けです。理由は「財務状況に問題が有り、債務不履行の可能性が有る」から。(日本の格付機関はA-で投資適格。お手盛りですね)

要はソフトバンクの社債は「ジャンク債」なので、普通ならば金利は5%以上で無ければ怖くて手が出せない代物です。そんな社債を個人に1.38%の金利で売り出し、それが飛ぶように売れるのですから・・・ゼロ金利の世界って怖いんです。


■ ソフトバンクと心中するみずほ銀行 ■

日本の金融機関はソフトバンクに巨額の融資をしていますが、その筆頭がみずほ銀行です。

「自転車操業」のソフトバンクですが、自転車は走り続けていないと倒れてしまいます。ですから巨額の融資残高を抱える みずほ銀行は、何が何でもソフトバンクに走り続けていてもらわないと困る。だから巨額融資を続けています。

これ、ソフトバンクにもしもの事があれば、みずほ銀行も巨額損失を抱える事になります。ソフトバンクに何かがある時は「金融緩和バブルが弾ける」時ですから、損失はソフトバンクだけに限りません。日本のメガバンクは各社、日本の低金利によってかなり危険な海外投資を拡大して来ましたが、みずほ銀行はちょっとヤバイかも知れません。

仮にみずほ銀行が債務超過に陥らずとも、「ソフトバンクがヤバイ=みずほがヤバイ」という認識が広がると、預金などが引き出され、みずほ銀行の経営が急激に悪化する可能性は低くありません。

まあ妄想ですが。

19夏アニメ・・・私的ベスト

2019-10-24 04:59:00 | アニメ
 

最近、アニメを観る本数がめっきり減ってしまいました。以前は子供達とアニメトークを楽しんでいたのですが、息子は彼女とオタク道を極めつつあり、娘は韓流にハマってしまし、オヤジの出番は無くなりました。

かわいそうに思ったのか、最近が家内がアニメのお相手をしてくれます。以前は私が居間のPCでアニメを観ていると「キモイ、そういうのは自分の部屋で観てよ」と掃除機の騒音で邪魔をしていた家内も、今では「ねえ、あの続きまだ?」と聞いて来る様になりました。

そんなこんなで、アニメライフに少し変化が表れているこの頃、観るアニメも「夫婦で楽しめるアニメ」に変わりつつあります。

今回の19夏アニメベストは、そんな私的な変化を反映したものとなります。


第一位 『女子高生の無駄づかい』


『女子高生の無駄づかい』より

第一位の選出理由は「家内が一番喜んで観ていたから」ですが、私的にも相当に評価の高い作品。とある東京近郊の女子高で再会した小学校の同級生、「バカ」「オタ」「ロボ」を中心とした日常劇ですが、「バカ」の馬鹿さが突き抜けていて、ハラワタが捩れます。

4コマ漫画原作ですが、「バカ」が馬鹿な会話を始めると、「オタ」が利口だけどかなり世間とズレた返しをして、そこに普通の女子高生の「オタ」が普通のツッコミを入れる構造。会話として全くかみ合っていないのだけれど、3人の友情が接着剤となってコミュニケーションが進んでゆきます。

これ、実際の女子高生の会話もこんな感じですよね。話題がコロコロ変わるけれど、とりあえずノリで「マジ、ありえねぇー」とか「うわぁ、それキモ!」とか「パナイわ」なんて相槌を適当に打って何となく会話が進んで行く。

この作品、「会話が成立する場」の作り方が非常に上手いのですが、セリフ先録りの「プレスコ」作品。同様の作品に岸誠二監督の『遊びあそばせ』が先ず思い浮かびますが、日常のほんの少しのズレを笑いに転化するテクニックとしては『女子高生の無駄づかい』の方が断然優れています。

原作は未読ですが、アニメは入学してからの1年間を、時間を追って描く事で、ギャグアニメならが、しっかりと登場人物達が成長してゆく様が描かれます。

私個人としては「バカ」と「ヤマイ」の絡むシーンが好き。「ラスト・クラッパー」なんて捧腹絶倒!!



第1位 『コップクラフト』・・・・これも第一位ですよ!!


『コップクラフト』より

ハリウッドが映画化権を取得した事で一時話題になったラノベ『フルメタルパニック』の著者、賀東招二のラノベ作品のアニメ化。ベテラン作家の賀東招二は、大変器用な方で京アニ作品を中心に脚本を書いたり、『氷菓』や『天城ブリリアントパーク』のシリーズ構成を担当されたりしています。

地球と異世界の間にゲートが開き、セマーニ(異世界)の土地の一部が地球に突然「飛ばされ」てしまった後の世界を描いています。異世界の土地は「サンテレサ市」として開発され、セマーニ人と地球人が一緒に生活しています。

セマーニは科学技術は後進国ですが、魔法や妖精が存在するファンタジー世界で中世の様な封建国家。セマーニ人にとっては地球は科学によって豊な生活を実現した理想世界です。ですから、セマーニ人は地球に住み続けています。

セマーニ人は私達の世界では「移民」だと思え違和感は薄らぎます。「サンテレサ」はアメリカのカリフォルニア州の大都市だと思うと分かり易い。雑多な民族が混在して、快楽と犯罪が蔓延る街。

その街の刑事「ケイ・マトバ」とセマーニ人の騎士の少女「ティラナ・エクセディリカ」がある事件を切っ掛けにバディーを組んでセマーニ人絡みの事件の捜査に当たる。アメリカ刑事もののドラマを、そのままラノベにした様な作品ですが、原作は推理小説としても、刑事小説としても「大人向が楽しめる小説」として評価が高い。

アニメは「アメリカの刑事映画」を忠実に再現した様な作風ですが、低予算作品なので、動画がヌルヌル動く事はありません。いえ、むしろ全然動かない。

一般的には「口パク」で誤魔化す事の多い低予算アニメですが、この作品は「モンタージュ」や「引きの絵」を上手に挿入して単調になる事を防いでいます。

例えば、ハンドルを操作する手元を写しながら会話が進行したり、部屋の片隅にカメラを固定した状態で、登場人物がフレームに入ったり出たりしながら会話するシーンがあったり。これ、70年代のアメリカの映画を彷彿とさせます。

この作品を観ると、アニメにおける「絵コンテ」の重要性を思い知らされます。アニメにおける「絵作り」は、どうしても「キャラクターを動かす」事に注意が集中します。しかし、アニメは「映像作品」として捉えるならば、背景や近景ふ含めた「フレーム」の作り方は、重要な要素の一つです。

そして、低予算映画が「固定カメラ」を多用する様に、低予算アニメも同じ手法を用いれば、動画を無駄に使わずとも「映像として成り立つ」事を、この作品は見事に証明しています。

内容は、異世界から来た少女が地球との文化のギャップに戸惑いながらも、移民差別や、民主主義を理解して行くというものです。最初は反目しあっていた「ケイ」との信頼の醸成や、ほのかな恋心の芽生えが、甘酸っぱいスパイスとして効いています。

実は、ラノベの古典的名作の『フルメタルパニック』を未読だったのですが、ネットでアニメを観だしたら面白くて、アニメ全話と、さらにラノベの続き(本編)を完読してしまいました。

同一作者のデビュー作、『フルメタルパニック』は戦場しか知らない少年の相良宗介が、ある少女を護衛する為に高校生活を送り、戦場的判断で日常生活で色々トラブルを生むという内容ですが、『コップクラフト』でもエクセデリカが文化ギャップ故のトラブルを巻き起こします。実はよく似た構造です。

『フルメタルパニック』はラノベの皮を被った「戦記SF小説」として秀逸ですが、『コップクラフト』はラノベの皮を被った「本格刑事小説」です。ラノベの皮を被るだけで一般小説よりも100倍以上は売り上げるのですから、「一皮剥ける」事が良いとは限らないのが現在の日本の小説とラノベの関係。

興味を持たれた方は、6話までは我慢して観て下さい。7話目から大人の鑑賞に堪える作品というか、近年のドラマや映画のどの作品よりも素晴らしい内容になります。「30分」って、こんなにも濃密な時間なのかと感心する事しきり。


第3位 『Dr.STORN』




『Dr.STORN』より

少年ジャンプ連載作品のアニメ化。

ある日、世界中の人々が突然石化して、3700年が経った後の物語。文明は滅び去り、科学も失われ、世界は森林に覆われます。

最初に石化が解けたのは、科学知識の豊富な少年「石神 千空」。洞窟のコウモリの糞が作り出した硝酸が体表の石を溶かしたのっです。

千空は友人の石化を解く事を皮切りに、科学の失われた世界に、再び科学の大国を築く事を目指します。しかし、それを望まない男に阻まれます。彼は「汚い大人」の居ない世界を作ろうと行動を始め、千空と敵対します。

千空は命を狙われ逃亡し、人間の村にたどり着き、そこで「科学王国」を作る事を決意します。彼に興味を持った一部の村人の手を借りて天然素材から実験道具を一から作り、化学薬品や電気を作り出してゆきます。

「少年漫画」には昔は「サバイバル物」と呼ばれるジャンルが有りました。核戦争で自分だけが生き残るとか、島に流れ付くなど様々なバリエーションが有ります。大元を辿れば元祖ラノベの『十五少年漂流記』や『ロビンソ・ンクルーソー』に行き着く、歴史あるジャンルです。

ただ、それらの作品の多くは、何も無い場所で「原始生活」を始める事をテーマとしていました。科学の発達した近代以降、人々は心の底で違和感を感じており「原始生活」にある種のロマンを見出していたのでしょう。(今でもアメリカのTVプログラムでは「原始人もの」が放映されるなど、ジャンルとして確立しています)

しかし『Dr.STORN』は、「原始の世界に科学を再興する」という新しいジャンルの「ジュブナイルSF」作品です。これは、斬新です。「科学の夢」が失われつつある現代だからこそ生まれた作品とも言えます。

内容的にも科学的で、原作を読んだり、アニメを観る事で、科学に興味を持つ子供が増えるとするならば・・・文科省が推薦すべき作品です!!


第4位 『彼方のアストラ』


『彼方のアストラ』より

人類が宇宙に進出した後の時代のお話。高校の夏休みの研修旅行で、とある惑星に行くことになった男女9人。ところが、ワームホールに飲み込まれ、宇宙の彼方へ飛ばされてしまいます。そこで、偶然にも見つけた宇宙線に乗り込み、数々の惑星に立ち寄って水と食料を補給しながら地球を目指すという「SFサバイバル」作品。少年ジャンプ連作マンガのアニメ化です。

「SF=電脳」の様になってしまった現代において、『Dr.STORN』も『彼方のアストラ』も古典的なSF作品です。しかし、SF本来の魅力に溢れる骨太の作品として、私はこの2作品を大きく評価します。

『Dr.STORN』が科学自体をテーマにしている一方で、『彼方のアストラ』の科学は「舞台装置」の役目を果たしているだけで、その本質は「本格ミステリー」です。

緻密に練り上げられた謎が、地球が近づくにつれて一つ一つ明らかになり、何故彼らが彼方の宇宙に捨てられたのか原因が明らかになってゆきます。そして、さらには地球に隠された秘密の核心に到達する・・・。回を追う毎に興奮で胸が高鳴る見事な構成に感服。

マニュアル化された脚本の、つまらないハリウッド映画を観るならば、この作品を観た方が余程面白い。


第5位 『荒ぶる季節の乙女たちよ』


『荒ぶる季節の乙女たちよ』より

岡田麻里が原作を担当したマンガのアニメ化。

文芸部に集う年頃の少女達の群像劇。『女子高生の無駄づかい』が今風の作品なのに対して、こちらは「演劇的」な作風。

今時の女子高生に反感を覚えながらも、性に憧れる、ちょっと時代遅れの文芸部員の女子達が真剣に性に悩む姿が、カワイイ絵柄で展開します。岡田麻里作品としてドロドロ感が少ないので万人向け。

1話の後半があまりにもインパクトが大きいので、その後の失速が心配でしたが、なかなかキャラ立ちも良く、楽しめる作品でした。(作画はもう少し頑張って欲しい回も有りましたが)


敢闘賞 『通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃にお母さんは好きですか』


『通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃にお母さんは好きですか』

ラノベの異世界物には飽きたのですが、「母親同伴」の異世界物にはビックリ。ヒロイン・・・お母さんだよ・・・・。

まあ、色々アレな作品ではありますが・・・・「真々子さんは俺の嫁」って事でOK?・・・あ、別に私がマザコンって訳じゃ無いですからね。真々子さんが隣に住んでたらヤバイって方向で宜しく。


残念賞 『炎々の消防隊』


『炎々の消防隊』より

人体が自然発火する現象が多発した世界、特殊消防隊は「焔人(ほむらびと)」と化した人の魂を鎮め、街を火災から守る正義のヒーロー・・・・のハズですが、何か裏に陰謀が渦巻く。

今風の作品で面白いのですが・・・あの事件の後でこの作品はちょっと・・・。作画なんて今期最高なんですけどね。特に炎のエフェクトの手描き作画のが凄い。こういう職人芸は、だんだんと観れなくなるかも知れません。



とまあ、アニメを観る本数も、熱量も失われ気味の54歳親父ですが、今期イチオシも紹介します・・・



『俺を好きなのはお前だけかよ』

ラノベの「お約束」を逆手に取った作品でキワモノ扱いされるかも知れませんが・・・面白い!!原作4巻まで買っちゃいました。(3巻まで読みました)

実に原作、推理小説として良く出来ています。小説は文章で書かれていますから、文字で書かれた内容と現実にズレがあっても読者には分かりません。その「不可視性」を巧みに利用して読者騙すのが推理小説の常套手段です。

さらに、この小説、ほとんどが主人公のモノローグで構成されますが、モノローグが事実を語るとも限りません。

そういった、小説ならではの「面白さ」に溢れた作品です。アニメは原作者のシリーズ構成と脚本でうまく纏まっていますが、原作も合わせてお読みになる事をお勧めします。(但し、ラノベを読みつけている方限定)


『無限の住人』・・・・3話で何故、あそこまで原作を飛ばしちゃうかね・・・。話数の問題だとは理解していますが、残念です。しかし4話は悪く無かった。そもそも3話の蒔絵の回は、原作でも戦闘シーンは素晴らしいのですが、ストーリーとしては分かり難く、蒔絵と影久の幼少時を描いたアニメ4話を先にもって来る方が話としては理解し易い。


ちょっと余談。作画ってヌルヌル動く事が良いと言われる昨今ですが、カクカク動いても演出によっては魅力ある事がこの二つのOPを比較すると良く分かります。


『炎々の消防隊』OP


『コップクラフト』OP

図らずもカーアクションや落下系の演出が共通する両作品のOP。『炎々の消防隊』は予算も充分なのか、ヌルヌルと良く動き、アングル変化やエフェクト作画も素晴らしい出来栄え。もうOPだけでおなかイッパイって感じで本篇見なくても良い。でも、EDはしっかり見る!!(こちらも凄い)

対する『コップクラフト』は予算を節約する為に、止め絵と動画をバランス良く使い、背景も単純化。動画部分ではコマを飛ばしているので動きはカクカクしますが、デフォルメされ、タメの利いた動きはダイナミックで小気味良く、キャラクターが音楽とシンクロしています。

両OPとも、まさに職人芸。