■ IMFに支援されるとロクな事が無い途上国 ■
現在、世界の主な国際的な金融機関はIMF(国債通貨基金)と世界銀行です。先進国の戦後復興と発展途上国も開発を目的に各国が出資して設立されました。
IMFは通貨と為替の安定を目的に設立され、経常収支が極めて悪化した国に資金を貸し出す事で為替を安定させるます。実際にアジア通貨危機の際には韓国やタイなどがIMFの支援で経済を立て直しています。
しかし、IMFは「金は出すけど口も出す」やっかいな金融機関です。韓国は先の通貨危機でIMFの支援を受けた際に、財閥解体や保護貿易の廃止、さらには海外からの投資の自由化など国内保護的な規制を取り払われ、結果的に国内の企業にはアメリカなどの資本が入り込む様になりました。
途上国の多くは困った時はIMFに泣きつくしかありませんでしたが、一方でIMFに介入される事を何よりも恐れています。
IMFは日本の財政状態にも警告を発しており、日本が財政破綻した場合の政策提言などをしています。IMFには財務省の官僚も多く出向しており、財務省との連携も当然存在すると思われます。
IMFの総裁は現代はフランス人のクリスティーネ・ラガルド氏ですが、代々総裁はヨーロッパ人が務めています。
一方、世界銀行の総裁は代々アメリカ人です。現在は韓国系アメリカ人のジム・ヨン・キム氏が総裁です。
この他に大蔵・財務官僚が代々総裁のポストを務めるアジア開発銀行が、途上国のインフラ投資を支援する金融機関として知られています。
■ 中国が主導するアジアインフラ投資銀行 ■
中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)ですが、これはIMFやアジア開発銀行の機能と完全に目的がダブル金融機関です。
IMFは「金は出すけど口も出す」のでIMFに支援を受ける事は、その国のシステムが欧米の都合の良い様に作り替えられる事を意味しています。ですから、中国は自らAIIBを主導する事でアジアの通貨体制を欧米の支配から解放しようと試みているのかも知れません。
ただ、今度は逆に中国の意向が強く反映する為、AIIBの支援を受けたる為には中国の顔色を窺う事になります。アジアの国々はAIIBに参加はするものの、アジア開発銀行などとどちらが自分達に有利なのか当分は両天秤に掛ける事になりそうです。
■ ヨーロッパ諸国が参加した意味 ■
当初、欧米諸国からは無視されるかと思われたAIIBですが、イギリスが参加を表明してからヨーロッパ各国が雪崩を打った様に参加を表明しています。
これには二つの見方が有ると思います。一つは「今後発展が予想されるアジア経済の中核に一枚噛ませろ」という目的。
もう一つは「出資するけど口も出す事で、AIIBの中国支配を弱める」という目的。
イギリスのEUへの参加などは、口を出してEUの結束を攪乱したり、或いはEU内の情報を取る目的も見え隠れしているので、歴史的に謀略好きなイギリスの参加表明は中国にとってメリットとなるのか疑問に思える所も有ります。
■ アメリカの次は中国を覇権国家に育てる? ■
かつて「眠れる獅子」と呼ばれた中国ですが、帝国主義時代は中国を巡って列強が凌ぎを削りました。イギリスはインドの植民地経営で手一杯だった為、中国を直接支配する事は出来ませんでしたが、日本を通じて中国に影響力を行使していました。
アメリカも中国の市場を欲していました。その結果が太平洋戦争であり、日本を中国から切り離す事に成功します。しかし、中国は急激に共産主義化が進み、アメリカと敵対する様になります。アメリカは太平洋戦争の結果、太平洋の覇権を獲得し日本やその他の国々の影の支配権を得ますが、中国を手中にする事は叶いませんでした。
ただ、改革開放路線以降の中国の発展にアメリカ資本の果たした役割を大きく、上海閥とアメリカの繋がりは浅からぬものが有りました。
現在、中国の首席は習近平氏ですが、太子党出身で上海閥とは距離を取っています。上海閥の影響が低下する事は、中国におけるアメリカの影響が低下する事を意味します。そこにヨーロッパ諸国が入り込んでいる現状は、なかなか興味深いものが有ります。
イギリスはかつてアメリカを新興国から覇権国家に育てる事で、影から世界経済を支配しました。同様に今度は中国をアジアの覇権国家に育てるのでしょうか?
■ そろそろ元を国際通貨とする頃合いかも知れない ■
アジア圏やロシア、ブラジルなどとの間で元の決済が出来る様になるなど、BRICs諸国やアジアにおける元の国際化は着実に進んでいます。
一方で、元の信用はドルに柔らかにペックする事で確保されているとも言えます。所詮は紙切れに過ぎない通貨の信用は元と言えども容易くは得られません。
現在の通貨の価値は、ある部分において「物が買える」という実利的な効果が支えています。元がアジア系やBRICsの決済通貨となれば元の信用を大きく高まります。
アメリカのドルも、中国の元も所詮は紙切れですが、現状はドルの方が信用が有ります。AIIBはドルを基軸通貨として設立されていますが、元の信用が高まるにつれて、元を支援通貨に使う様になったらどうなるか・・・。中国は輪転機をグルグル回して強い影響力をアジア圏に持つ事になります。
■ 基軸通貨が巨大な市場を生み出す ■
現在世界に不足しているのは需要です。リーマンショック後、世界は中国の内需に期待して来ましたが、思った程は拡大していません。
戦後、アメリカはドルを基軸通貨とする事で、輪転機をグルグル回して巨大な国内消費を作り出し、世界経済を支えていました。同様に元の基軸通貨化は、中国の内需を大きく拡大する結果を生み出します。
資本家達が必要としているのはいつの時代も「消費」です。そして中国の内需は爆発劇に拡大する可能性が有ります。
これは日本にとっても悪い事では無く、先の「中国人の爆買い」では有りませんが、日本経済も確実に恩恵に浴する事でしょう。
・・・・ただ、輪転機グルグルで中国人が買い物三昧というのに、ちょっと嫉妬します。
まあ、今だって輪転機グルグルで元は湧いて出ているので、大差無いと言えばそれまでですが・・・。