■ 温室効果ガスが無ければ地球の平均気温はマイナス18度 ■
上の図は太陽からのエネルギーや地球自身が発するエネルギーが宇宙空間に放射される過程を示す図です。
1)太陽からのエネルギーは大気や雲や地面で30%が宇宙空間に反射される
2)残りの70%は一旦、地面や水や大気に吸収され、それらを温める
3)吸収された70%のうち64%が大気から宇宙に放射される
4)残りの6%も最終的には大気から宇宙に放射される
この図だけを見ると、地球の温度は宇宙の温度である極低温と等しくなると勘違いしがちですが、地球の平均温度は約15度です。
地球を真空中の浮かぶ黒い鉄球と過程します。これに光を当てると鉄球は光を吸収して温度が上昇しますが、ある一定の温度に達すると、鉄球の温度は一定を保つ様になります。この時、鉄球は温度に応じた赤外線輻射によってエネルギーを放出していますが、光による入射エネルギーと鉄球の赤外放射が同じ値になる温度が、温度均衡点となります。
地面や海水なども太陽光のエネルギーで熱を持ちますが、地球に大気が無ければ地表の気温はマイナス18度で安定します。(地球の反射率を0.3として計算)
地球の気温を生命にとって快適な温度に維持しているのは「温室効果ガス」による「大気の蓋」です。「温室効果ガス」は、地表から宇宙に向けて放射される光を吸収する気体で、二酸化炭素やオゾンやメタンなどが主なものになります。
吸収された光(赤外線を含む)のエネルギーは分子振動に返還され、大気の温度を上昇させます。
■ 実は最大の温室効果ガスは水蒸気 ■
下のグラフは日本において「温暖化問題」の総本山である地球環境センターのホームページに記載されている、大気による地表からの宇宙に向けた光の吸収スペクトルです。
地球から放出される放射エネルギー(紫外線 + 可視光 + 赤外線)の地表近傍と衛星軌道上での比較グラフで、その差が温室効果ガスによる光エネルギーの吸収となります。。
「ここが知りたい温暖化」の「水蒸気の温室効果」 地球環境センターより
説明文にはこうあります。
「現在の大気中の水蒸気やCO2がもつ温室効果の強さを示したのが図1です。水蒸気は広い波長域で赤外線を吸収するため、温室効果としてもっとも大きな寄与(48%)をもちます。しかし水蒸気はすべての波長の赤外線を吸収するわけではなく、15µm付近の赤外線はCO2によってよく吸収されます。このため全温室効果に対するCO2による寄与は21%程度になります。」
地表から放出される光(エネルギー)のうち、48%が水蒸気によって吸収され、21%が二酸化炭素によって吸収されると説明されています。さらに雲による地表への反射が19%あるので、水蒸気による温室効果の影響は67%となります。
確認の為に島津製作所が赤外線分光器の説明で水蒸気と二酸化炭素の吸光スペクトルの比較を掲載しているので、二つのスペクトルをスケールを合わせて合体してみました。
https://www.an.shimadzu.co.jp/ftir/support/faq/faq.htm
二酸化炭素と水蒸気の赤外線吸光スペクトル比較
水蒸気の吸収波長は15μm以上の波長までも伸びているのでこのグラフでは入り切れませんが、いずれにしても、二酸化炭素よりも水蒸気の方が「幅広い波長において光を吸収する=温室効果が高い」事が分かります。
■ 水蒸気の影響は95%あるという説 ■
上の円グラフは温室効果の割合を示すものとして一般的です。
上のグラフは「二酸化炭素による温暖化仮設」の懐疑派が引き合いに出す温室効果の割合を示すグラフです。水蒸気の影響が95%と高く、一方、二酸化炭素の影響は3%に過ぎません。
何故、この様な開きが生じるのでしょうか?
世界の温暖化問題の総本山「気候変動に関する政府間パネル(ICPP)」など「二酸化炭素による温暖化仮設」の支持者は、「地表と大気上空での光放射の差」だけを比較して温暖化を論じています。
しかし、実際には水や水蒸気が地球の熱循環に与える影響は、光の吸収のみで無い事は簡単に分かります。地表か海面から水が蒸発する時に大量の気化熱を奪い、これらは大気の循環によって上空に上昇し、断熱膨張によって水に戻る時に液化熱を放出します。
同様の事が海水でも起こります。太陽の熱に温められた海水は、海流となって世界を巡ると共に、極地方では冷却され深海に潜り込みます。深層海流は長い年月を掛けて上昇へと再び浮上します。
この様に水や水蒸気は地球の熱循環において支配的な役割を担っており、これらの複雑なプロセスの効果を見込めば、地球を暖める温室効果の90~97%を占めるというのが「二酸化炭素による温暖化」懐疑論者の主張です。
■ 水蒸気の影響は無視できる、或いは副次的だとする温暖化支持者 ■
「二酸化炭素による地球温暖化仮設」の支持者はICPPは、「二酸化炭素は大気に人為的に強制的に注入されて上昇いているが、水蒸気量は気温によって定量的に決まるので、水蒸気の温暖化の影響は無視できる。或いは、二酸化炭素による気温上昇で水蒸気量が増えるので、二酸化炭素による温暖化は水蒸気による温暖化を二次的に引き起こす」などと説明しています。
バカです。
二酸化炭素が水に溶ける事は良く知られています。二酸化炭素の水に溶ける量は温度によって決まります。人類は産業革命以来、大量の二酸化炭素を放出し、森林を伐採して二酸化炭素の吸収を阻害して来たから、大気中の二酸化炭素が増え続けていると温暖化論者は主張しています。
しかし、大気中の二酸化炭素量も、水蒸気量と同様に海水温によって定量的に決まります。海水温が高くなれば、大量の二酸化炭素が海水から放出され、大気中の二酸化炭素濃度は上昇します。一方、海水温が低くなれば大気から二酸化炭素が海水に取り込まれ、大気の二酸化炭素濃度は減少します。
上のグラフは海水温度と二酸化炭素濃度の変化を表すグラフです。海水温度は様々な地点を平均化したものです。二酸化炭素濃度はハワイと南極で観測されたものの平均値かと思われます。(詳細不明)。このグラフを見ると、海水温度が上昇した後に二酸化炭素の濃度も上昇し、海水温度が低下した後に二酸化炭素濃度も低下している事が分かります。
これは海面において大量の二酸化炭素が吸収、或いは放出を繰り返している事を示します。そしてそれは海水温に依存する。
ここで注目されるのは、人類の放出する二酸化炭素は年々増え続けているのに、二酸化炭素は海水温が低下した時には低下する点です。これは二酸化炭素濃度が地球上で平衡状態にある事を示します。「二酸化炭素濃度は海水温度によって定量的に決まる」と考えて事が自然です。
「近年の大気中の二酸化炭素の増加は、地球の気温(海水温)が何等かの影響で上昇している為に、海水中から大気に放出される二酸化炭素が増加する事で起きている」と考えるのが科学的思考です。
「水蒸気は気温によって定量的に決まるから温室効果ガスとしての効果は無視できる」のであれば「二酸化炭素の濃度は海水温によって定量的に決まるので温室効果の影響は無視できる」と言う事も出来ます。
様は、人為的に放出される二酸化炭素の量を多少減らした所で、人類が海水温をコントロール出来ないのであれば何ら意味を持たないのです。
■ そもそも過去の気温上層を説明出来ない「温暖化仮設」 ■
「人為的二酸化炭素による地球温暖化仮設」、これは「産業革命以来人類が排出してきた二酸化炭素の大気中での増加によって、地球が温暖化している」という仮説です。
現在分かっている事実だけを書き出します。
1) 産業革命以降、地球の気温は上昇を続けている
2) 気温上昇のペースは近年になる程拡大している
この原因として着目されたのが「人為的二酸化炭素の排出量の増大」です。二酸化炭素には「温室効果」が有る事は昔から知られています。(詳しくは後述します)そこで、一部の研究者が次の様に考えたのです。
1) 気温上昇が顕著になった近年で大気中で増えた温室効果ガスは二酸化炭素だ
2) 産業革命以降、人為的に排出される二酸化炭素は加速度的に増えている
3) 気温上昇と人為的二酸化炭素の増加は相関が有るハズだ
この発想から、二酸化炭素の温室効果に着目して、かなり強引に作り出した仮説が「人為的二酸化炭素による地球温暖化仮設」です。
しかし、地球の気温は太古より周期的に変化しており、人為的な二酸化炭素の排出が無い時代にも、気温が上昇する時代は何度も有りました。日本の平安時代から鎌倉時代初期は温暖で、海水温も高く、現在より海水面も高かった。海岸線は現在の内陸に入り込んでいました。霞ヶ浦や印旛沼周辺は入江でした。
「中世の温暖期」と呼ばれる時代ですが、10世紀から14世紀はヨーロッパも温暖で、グリーンランドは草原に覆われていた。
ところが国際温暖化パネル(IPCC)は第4次評価報告書で「中世に比較的温暖だった時期があり、地域によっては現在以上に温暖だったことも示唆されるもののその証拠は一様ではなく、地球全体が現在よりも温暖であったとは言えない」と、不都合な事実を科学的根拠も「局所的現象」として片付けています。
中世の温暖期に世界的に気温が現在より高い事を認めてしまうと、「人為的二酸化炭素による温暖化」という詐欺が簡単に覆ってしまうからです。何故なら、人為的な二酸化炭素の排出が少なかった時代に地球が温暖化する原因を、「人為的二酸化炭素による温暖化仮設」は説明できないからです。
この様に「温暖化仮設」は二酸化炭素の温室効果だけに注目し、その他の要因を全て無視する事で成り立つ「トンデモ仮説」である事は、物理に詳しい方ならば直ぐに気付きます。