人力でGO

経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

国民の意思に反する安倍政権の実績・・・アベノミクスの裏側で

2013-10-29 14:39:00 | 時事/金融危機
 

■ QE3は容易に縮小出来ない ■

アメリカで起きている確実な事と言えば、QE3の縮小予測が高まると、米国債金利が上昇する事。アメリカの長期国債の最大の買い手がFRBなので当然と言えば当然です。

アメリカ経済における住宅市場の影響は大きいので、FRBは長期国債とMBSを中心に買い入れて長期金利を抑制してきました。しかし、QE3の縮小予測が出始めると、長期金利がスーっと上昇してしまいます。その影響で、アメリカの住宅市場の減速が顕著になっています。

アメリカの景気の先行きは、金利に大きく影響を受けるので、QE3は容易には縮小出来ない状況になっています。(最初から分かり切った事ですが・・)

■ QE3が長引けば、円高に振れる ■

QE3の縮小が遠のけば、当然ドルが値下がりし、円高に振れます。現在の円相場は97円位ですが、日銀が異次元緩和を実施して辛うじてこの水準で踏みとどまっています。

私は輸入物価を考慮すれば、今の100円を少し切る位の為替水準が妥当だと思いますが、輸出企業が韓国と対等に渡り合うには、円安水準がもう少し足りないのかも知れません。異次元緩和以降、輸出企業は業績を伸ばして来ましたが、輸出が増えたのでは無く、円建ての金額が膨らんで見えただけです。


■ 円安頼みだったアベノミクスの効果が薄れる ■

円安の是正が進めば、円安頼みだったアベノミクスの前提が崩れます。輸入物価の上昇がCPIを押し上げていましたから、円高に振れれば、インフレ目標の達成も危うくなります。

輸出企業の業績も円安でお化粧されていましたから、円高は株価の下落にも繋がります。そもそも日経平均株価は為替相場に密接にリンクしています。これはコンピュータートレーディングのプログラムがその様に組まれている事も影響しています。

■ 賞味期限切れのアベノミクスと、安倍政権の意外な実績 ■

元々安倍政権の経済政策は「期待に働きかける」政策だったので、円高で「期待」が薄れればアベノミクスは賞味期限切れになるでしょう。むしろ、日銀の異次元緩和によって変なバブルが国内に生成される前に縮小に転じるのは、長期的には経済にとってプラスです。

一方で、安倍政権はTPPの参加や、消費税増税、日本版国家安全保障局創設など、将来的に日本を変えるであろう重要政策を成立させようとしています。「官邸主導」の安倍内閣は、自民党執行部とあまり調整をせずにこれらの法案をスムーズに成立させている様に思われます。

第一次安倍内閣の時も、国民投票法など難しい法律を成立させていますので、安倍氏の存在は実は将来的には日本の転換点として重要視されるのかも知れません。

国民はアベノミクスの期待に浮かれて自民党に安定過半数を与えてしまいましたが、アベノミクスが賞味期限切れになる中で、自分達の投票がはたして正しかったのか、そろそろ不安になってきています。

アベノミクスが仮に失敗に終わっても、安倍首相はしっかりと実績を残しています。それが将来日本の為になるのかどうかは、国民次第とも言えますが・・・。

「間」の表現力・・・今期最強 『のんのんびより』

2013-10-29 05:20:00 | アニメ
派遣 
■ 今期最強アニメは『のんのんびより』 ■

アニメネタを連発すると読者が減るこのブログですが、それを承知であえて・・・。

田舎の子供達の日常を描く『のんのんびより』
2話目の蛍ちゃんの「ゆり」ネタで、完全に普通の日常系アニメになったと思いきや、3話目でアニメ史上に残るであろう傑作演出を見せつけ、4話目もその勢いは衰える事無く、完全に「今期アニメ最強」の階段を着実に上りつつあります。

■ 第3話演出にみるミラクル ■

それにしても3話の構成と演出は見事としか言いようがありあません。
オムニバスの短編3話で30分を構成しますが、それぞれの短編が緩やかに連携しながら、最後のワンシーンに収束して行く様は、もう頭がジーンとしてしまう程の素晴しさです。

遠足編



中3中2中1と三人年子の越谷兄弟姉妹。
長女の中2の小鞠は背が小さく性格も大人しい。一方次女の中1の夏海は姉より大柄で活発でちょっと頭が悪い。そんな次女ですが、小さくて大人しい姉に対して「姉ちゃんはうちが守らなきゃ」なんて思っています。

田植えで「ぬかるみ」に嵌った姉を、腕まくりで助けに行ったあげく(半分はカラカイに行ってます)に、自分もぬかるみにはまり、結局二人でドロだらけ。

レンタルビデオ編



家に帰って風呂でドロを落とした後、レンタルビデオを見始める小鞠。レンタルビデオ店は電車で10駅向こうという・・。

恐怖映像ビデオを「もう14歳だから大丈夫」と一人で見ていた小鞠は、案の定、恐くなって一人では寝れなくなります。妹の部屋で妹の布団に足元からもぐり込んで、「虫の声がうるさくて・・」と言い訳します。ピンと来た妹が、姉を色々と恐がらせるのはお約束。



姉は妹に「夕方にして」と頼みます。夕方って・・・そう、電灯に付いている豆電球(常夜灯)です。「私、暗くないと寝れないんだよね」と言いつつも、姉の為に電球を付ける妹。(夕方という表現がもう秀逸で鶏肌が立っちゃいました)

夏海は、ひとしきり姉を脅かした後、ふと、「死んだ後は人間ってどうなっちゃうのかな?」などと幽霊繫がりで連想して不安を覚えます。姉は寝息を立てています。一人、天井の木目をジーと見ながら「死後」について考えだしたら眠れなくなります・・・。

家出編



庭の盆栽を割ったと母から怒られる夏海。自分じゃない、ネコだと主張するも母は日頃の行いを挙げ連ねて聞く耳を持たず。「家出だぁー」と姉の小鞠の手を引いて駆け出す夏海。

とぼとぼと田んぼの中を歩き、おもむろに用水路に下りる二人。(ここの引きのシーンも素晴しい・・・上の画像)
土管を潜り抜けて付いた先は、農業用ダムの監視塔。二人の秘密基地は昔のまま。落書きを見ているうちに、かつての家出を思い出す二人。



ここからシーンは回想に。とぼとぼと夕暮れの田んぼの中を歩く二人。ロングショットで二人に駆け寄る母と兄を写します。ここはBGMのみ。

そんな事を思い出して家に帰る二人。





再びロングショットですが、今度は兄が一人で自転車で迎えに来ます。回想シーンとの対比が際立ちます。そして、何年かの時間の経過と、兄弟の成長、さらには変らぬ家族の絆を見事に描きだします。

家に帰ると母が仁王立ち。怒られるかと思いきや・・・二人の安全を喜ぶ母。
それでも夕飯では、行儀が悪いと小言を言う母・・・。



次のシーンはその夜。
今度は姉の布団にもぐり込んでくる妹。
「巻き込んだ事を悪いと思ってるの?」と聞きながら、「自分が妹を守らなきゃ」と再認識する姉。


ウーン。ここで冒頭の妹が「ねえちゃんを守らなきゃ」っていう所に円環して来る構成。
見事です。あまりにも見事です。

ここまでを、ロング、アップ、モンタージュといった引きの違う映像を、見事なテンポで繋いできます。特にロングが効果的です。

■ 充実した「間」■

脚本の構成も見事ですが、この演出の呼吸は、新人監督の川面真也を褒めるべきなのでしょう。とにかく、「間」の使い方が上手いか下手かは、映像作家のセンスが問われるところですが、川面真也氏は、本当に「間」の使い方が上手い。

日常系の作品は、比較的「間」が多い事が特徴としていますが、その多くは「ボケ」に対して「視聴者が突っ込む時間」を確保しているに過ぎません。「・・・オイオイ」という感じ。

『のんのんびより』の「間」はこれとは別の、登場人物達が「考えをめぐらせる時間」と思えます。Aという感情からBという感情に移行する時間を、登場人物の主観時間として確保しています。シーンの繋ぎも若干長めのカットが挿入され、それはしっかりと時間の経過を意識させます。

この様に意図的に「間」を演出に取り入れいるのですが、その「間」が、風の音や鳥のさえずり、虫の音で埋められているので、非常に「充実した空気感」を作り出す事に成功しています。

第4話では、「間」の限界に挑戦しています。





都会から帰省してきた小1の女の子と知り合いになった「れんげ」ちゃん。写真を撮るために、村のベストスポットを連日案内して周ります。

村には同年代の子が一人も居ないので、れんげちゃんは毎日が楽しくて仕方ありません。ところが、その子は予定を繰り上げて都会に帰ってしまいます。「また明日!」の明日が突然途絶えた事にショックを受けるれんげちゃん。

お婆ちゃんに彼女が帰った事を告げられた玄関先での、れんげちゃんのアップでカメラは止まります。始めは事態を理解するまでの時間、呆然と立ち尽くします。その後、どっと悲しさがこみ上げてきて、涙が溢れます。ここまでの時間、多分15秒程でしょうか、画面はれんげちゃんの顔のアップを写し続けます。最初はBGMが流れていますが、涙が溢れる所からセミの鳴き声がわき上がります。呆然とした状態から、現状を認識する「間」を、映像と音を使って表現しています。

実はこのシーン、アザトい感じがして、私としてはやり過ぎかなとも思うおですが、川面真也監督が意図的に「間」の限界にチャレンジしているものと好意的に受け取っています。

その後、玄関先をトボトボと去るシーンを上方向からの引きで写したて諦めみたいな感情をい上手く掬い上げています。

■ ミニシアター系の映画の表現方法を萌アニメで再現する上手さ ■

構図や、間の取り方は、完全にミニシアター系の実写映画を意識しています。多分、映画版の『天然コケッコー』もしっかり研究しています。

ただ、アニメでこれを表現すると、30分では足りない。というか、物足りないイメージビデオになってしまいます。そこで、アニメのキャラクターの性格付けや、多少過剰なセリフ回しなどが適度なスパイスとなっています。

ある意味、テンプレ設定ですが、これがあるから、説明的ば描写を「お約束」としてすっ飛ばして「間」を確保できているとも言えます。

このバランスがテンプレ側に偏ると、2話目の「ユリ」ネタの様な普通の日常系になってしまいます。ここら辺の匙加減が実に微妙な事が良く分かります。

■ 高畑勲を思い出させる演出 ■

アニメでリアルな空気感を出せる作家として、高畑勲の右に出る人は居ないのでは無いかと私は思っていますが、『のんのんびより』を見ていると、高畑勲と共通するものを多く感じます。

基本的には、ミニシアター系の作風とも言えるのですが・・・

1) 固定カメラ
2) 長回し
3) 少ないセリフ
4) 緻密な演出

これらが、最良のバランスになった時、名作が生まれます。

■ 日本人の原風景 ■

『のんのんびより』は深夜アニメですが、本当は日曜日の朝に放送すべき内容です。子供は優れた作品には本能的に飛びつきますし、大人はこの作品の中に、日本の原風景を見つけるはじです。

ロケは岡山県や埼玉県で行なわれているみたいですが、監督は特定の場所では無く、「どこにでもある田舎」を意識したと語っている様です。

ありがたい事にネットには早くも聖地巡礼動画がアップされていますが、多分、日本全国の普通の田舎に行けば、そこには『のんのんびより』の子供達の息遣いが感じられるはずです。

分校のモデルは埼玉県比企郡小川町立小川小学校下里分校だそうです。



http://yaplog.jp/tyu-kyu-2/archive/40


いずれにしても、今期最強アニメは『キルラキル』では無く、『のんのんびより』だと断言したい!!

現実ヒーロー物に見る日米の違い・・・『サムライフラメンコ』VS『キックアス』

2013-10-27 06:22:00 | アニメ
 







■ アニメ嫌いの家内でも観ている『サムライフラメンコ』 ■

我が家の家内はアニメが嫌いである。
アニメが嫌いと言うよりは、いい年こいて子供とアニメに夢中になっている私の姿が情けないと言う・・・返す言葉も無い。

そんな家内もアニメを全く観ない訳では無い。
『宇宙兄弟』は大好きで、チャッカリ自分だけワンセグで見て大笑いしている。
ちなみに私のiPhoneではワンセグは見れない。

どうにか家内をアニメ仲間に引き込もうとする私であるが、最近になって家内の好きそうなアニメの傾向が分かって来た。それは「現実的」な内容である事が不可欠な様だ。

ロボットやSFは即攻で却下。「こんなのあり得ない!」でオシマイ。
萌系は論外。「変態じゃない・・・」で即殺。

では「現実」の限界はどこら辺にあるのかと言えば、
『君に届け』は全然OK。『謎の彼女X』は「こんなのあり得ない~」と叫びつつ大喜び。
『私がモテないのはどう考えてもお前ららが悪い』は無視。

すなわち家内におけるアニメの「現実」の限界は、「主人公がオタクで無いこと」にある様だ。

そこで、娘と私が興味を持ったのは今期アニメの『サムライフラメンコ』である。主人公が「重度のヒーローオタク」のこの作品、はたして家内は受け入れるのでしょうか?

「アニメなんて見たく無い」と言う家内を、アイスなどで釣って見せてみました。
「何、コレ・・・」と興味の無い振りをしますが・・・チラ見しながら、しっかり笑ってます。
半分はアホな夫と娘への憐憫もあるのでしょうが、どうやら『サムライフラメンコ』は、一般の人が見ても面白作品だと、今回の実験結果は示しています。

■ アニメ的リアリティーに優れた倉田英之の脚本 ■

『サムライフラメンコ』のシリーズ構成と脚本は倉田英之が担当しています。「倉田脚本」で反応してしまうのは重度のアニメ依存患者ですが、彼の脚本は多くの作品が氾濫する中で目を引きます。

『かみちゅ!』(2005)が最良の作品だと思いますが、『俺の妹がこんなに可愛いわけが無い』や『神のみぞ知る世界』も秀逸です。

倉田脚本の特徴は、派手なアクションなどでは無く、「日常の生ぬるい心地よさ」にあると思われます。これだけならいわゆる「日常系」と呼ばれる作品と同じでは無いかと思われるでしょうが、「日常系」作品が「アニメの中の日常」を描いているのに対して、倉田脚本は「現実的な日常」をしっかりと描いていながら、「生ぬるさ」を上手く生み出している事が特徴です。

『かみちゅ!』の「こたつ回」は驚愕に値する内容です。



ひたすら30分間、コタツでごろごろしている主人公を描写するだけ。
ただ、それだけなのに、「あるある、そうだよねぇー」と妙に「まったり」した気分になるのと同時に、こたつでゴロゴロする主人公がとてつも無く可愛く見えてしまたりもします。

この時主人公を見る視聴者の視点は、完全に第三者のものです。主人公の行動を仔細に観察する事で、ネコの可愛さを認識する様に、主人公の可愛さを確認していくのです。様は、「まったりと、生ぬるく見守っている」のです。これが何とも心地よいのです。ほんの仔細は仕草に胸がキューっとしたりします。アニメオタクは・・・。

仕草のディテールのちょっとした拘や、些細なセリフの一言が、キャラクターへの共感や愛情を高めて行きます。これが、テンプレキャラが約束されたセリフを吐きまくる一般的な「萌アニメ」と倉田アニメを差別化する重要な要素となっています。

そして倉田脚本のもう一つの特徴が、「あり得ない現実」を自然に納得させてしまう力。
『神のみぞ知る世界』などは、設定的には相当無理があるのですが、その不自然な世界の中で、不自然な行動を余儀なくされる登場人物達の、ほんんお些細な心の動が妙に「なまめかしい」瞬間があります。主人公が押し黙って俯いた瞬間とか、無表情の後ろに複雑な気持を押し込める瞬間にハっとさせられます。

いわゆる「リアルな感情」とも別物の、言うなれば「アニメ的リアリティー」みたいなものがフワッと立ち上る一瞬があるのです。

倉田脚本はそんな「アニメ的リアリティー」に依存しているので、これを実写で表現すること困難です。そもそも、倉田脚本から視聴者が「アニメ的リアリティー」を抽出する時、彼らは過去の膨大な作品のアーカイブの中から最適なシーンを連想しており、共通のアーカイブを持たない一般人は、同じ感動を共有する事が不可能なのかも知れません。これは、多くのアニメが利用する手法ですが、普通は明確なシーンの連想を強要するのに対して、倉田脚本はシーンが持っていた空気感の様な曖昧な効果を引き寄せてきます。

■ 作品の中の「観察者」に視聴者をシンクロさせる『サムライフラメンコ』 ■

『サムライフラメンコ』は重度のヒーローオタクの主人公が、ヒーロースーツを着て、世の小さな悪に立ち向かう作品です。小さな悪とは、路上喫煙であったり、信号無視であったり、夜中にゴミを出すおばさんであったり、他人の傘を持ち去る人だたりします。

主人公の正義(まさよし)は、TVのヒーロ物に憧れ、巨悪と戦いたいと熱望しています。さすがに20歳に誓い年齢なので、悪の秘密結社などが実在しない事は分かっていますが、彼がヒーロである為には、悪の存在は欠かせません。結果的にあ、彼は社会の小さな悪と戦う事で、自分をヒーローたらしめています。

しかし実際に彼は、かなり弱い。中学生と戦ってもフルボッコにされる弱さです。そんな自分の弱ささえ、彼の脳は「修行」や「特訓」に都合良く変換し、ヒーローとしての自分を鼓舞します。

ふとしたキッカケで知り合った警察官の後藤は、彼の行為を、「カレーライスを食べたくて、カレー風味のふりかけで我慢している様なもんじゃないか」と揶揄しますが、正義は信念を持ってヒーロー行為を続けています。

するとその姿がネットで話題になり、「ニセ・サムライフラメンコ」まで出現する事態に。

まあ、3話までのストーリーはこんな感じで、。「在るよなー、実施にこういうの・・」と思わせる小さなエピソードを丁寧に積み上げています。この「在るよなー」という共感は、実は主人公にでは無く、主人公の行動に困惑する周囲の一般人の言動に向けられています。

「ヒーローごっこ」に興じる主人公は「ナイ、ナイ、そんなの」って突っ込みを入れるのに、主人公の行動に対する周囲の反応には妙に共感してしまうのです。この共感が、普通は「あり得ない」純粋なヒーロー志願の青年を、視聴者がついつい応援したくなってしまう状況を見事に作り上げています。

そんなこんなで、我が家の家内もいつのまにか正義君の行動が気に掛かるようになるのです。そう、視聴者は常識人の後藤視点で、「こまった青年」の「こまった趣味」を、心配しながら見守ることになるのです。

視聴者の視点は、あくまでも「こまった青年」を観察する視点です。ところが、正義の思わぬ「熱さ」と「曇りの無い正論」がアニメの中の大人の心に響く様に、私達の心にも響いている事にふと気付きます。私は達は、主人公にシンクロしているのでは無く、アニメの中の後藤を始めとする「観察者」にシンクロしする事で、倉田英之の罠にまんまと嵌っているのです。

いずれにしても、クセの強い作品の多い今期アニメにあって、一般の人にもお薦めできる良策です。是非、ご家族でお楽しみ下さい。

主人公が実はイケメンのモデルで、芸能界の売れっ子達が意表を付いた形で、彼のヒーローオタクに絡んで来る展開は、エンタテーメントとしても楽しめます。


■ アメリカ版現実ヒーロ物の『キックアス』 ■



『サムライフラメンコ』放送当初から、ヒーロー物に詳しいファンはアメリカの現実ヒーロー物の『キックアス』との類似性を指摘しています。

娘に話したらTSUTAYAで映画版のDVDを借りてきてくれました。

やはりヒーローオタクのアメリカの高校生が、趣味が高じてネットで購入したダイバースーツを着込んで街の悪と戦うお話。

彼がやっぱり弱くて、ダメダメな事。そして、それがネットで話題になる事など、『サムライフラメンコ』が『キックアス』を元ネタにしている事が良く分かります。

■ アメリカではシャレにならない「ヒーローごっご」 ■

『サムライフラメンコ』は「ヒーローごっこ」のほのぼの感を上手く利用したストーリー展開を見せますが、暴力の国アメリカの『キックアス』では、主人公の正義は、チンピラのナイフの前に一瞬で砕け散ります。彼はボコボコにされた挙句、ナイフで刺されます。これはアメリカでは当たり前の事です。

ところが、この怪我が元で主人公は痛覚を失い、結構「打たれ強いキャラ」に変身します。弱いけど、結構粘るので厄介です。そして、そんな彼がネットで注目を浴び、ニセモノが街に溢れます。

■ 暴力を暴力で粛清するダークヒーローの系譜 ■

一方、街を牛耳るマフィアの下っ端が殺される事件が多発します。マフィアのボスはキックアスの仕業と勘違いして執拗にキックアスを追いますが、彼が犯人では無い事にすぐに気付きます。

実はマフィア達を殺しているのは、昔、マフィアに妻を殺された元警官とその娘・・・。
暴力を暴力で粛清すべく、彼はバットマンのいでたちで、娘はロビンの姿で、残忍にマフィア達を殺して行きます。

映画版の少女は凄く可愛いのですが、原作版は残忍です。







■ アメコミヒーローの暴力をパロディー化した傑作 ■

バットマンシリーズ以降、アメコミヒーロの正義が暴力に支えられている事に脚光が当てられてきました。アメリカの正義が暴力である事を告発しているとも言えます。

それを、コミカルに、そしてグロテスクにデフォルメしたのが『キックアス』です。中年のお腹の出たバットマンと少女の振るう暴力は、その見かけのダサさとは対照的に凶悪です。

『サムライフラメンコ』同様に『キックアス』の読者や視聴者は、「そんなの在りえねー!!」と突っ込みを入れつつも、意外にも現実的な恐怖と対峙する事になります。これは、「アメリカ社会では、どんな人でも銃やナイフを持てば、暴力という正義を行使できる」というアメリカの深い闇をアメリカ人が肌身で感じているからです。



日常ヒーロー物というジャンルを扱いながらも、「生ぬるい日常」になる日本と、「歪んだ暴力」になる日米の社会の違いが興味深い2作品。ぜひ、ご一緒にご覧下さい。






映画でヒットガール(ミンディ)を演じるクロエ・グレース・モレッツが実に可愛らしく(子供らしい動きをするんですよね)、日本語吹き替えは沢城みゆきが担当。(これ全然気付きませんでした)

父親の元警察官は、ニコラス・ケイジがいい感じに狂った役を演じています。

アメリカの住宅市場が失速し始めた・・・長期金利上昇を抑え込めていないFRB

2013-10-26 05:51:00 | 時事/金融危機
 

■ アメリカの長期金利上昇の影響 ■





長期金利が上がっているアメリカ。

FRBがQE3で長期国債とMBSを中心に買入れをして金利上昇を抑える政策を継続しています。しかし、債務上限問題などもあって、米国債の長期金利がジリジリと上昇し、一次は10年債で3%、30年債で4%に迫る勢いでした。債務上限問題がひとまず休戦になった頃で、金利は少し下がりましたが、それでも昨年末などに比べると高い水準です。

長期金利上昇は、せっかく回復し始めたかに見えた住宅市場に悪影響を与えている様です。

■ 住宅ローン部門を中心に人員削減が始まった米銀 ■

WSJによると、米銀格行は住宅ローンの借り換え部門を中心に大幅な人員削減を始めている様です。

「米銀の住宅ローン部門の人員整理広がる」(The Wall Street Journal 2013.10.25)
http://jp.wsj.com/article/SB10001424052702304523904579156471429871390.html

<全文引用>

米銀行大手バンク・オブ・アメリカは24日、減収が続く住宅ローン部門の人員整理を発表した。住宅ローン部門の人員整理は米銀各行で相次いでいる。

 ノースカロライナ州シャーロットに本社を置くバンク・オブ・アメリカの住宅ローン部門は、伝統ある事業分野だが、今回は同部門の1200人の従業員に解雇を通知した。また、住宅ローンのポートフォリオを管理するサービサー部門で2800人の人員削減も計画している。

 今回の大手各行で相次ぐ人員削減は2008年の金融危機時ほどではないが、金融の中心地であるニューヨーク・ウォール街から遠く離れた地方各地にその影響が及んでいる。

 住宅ローンの融資額が全米で最も多いウェルズ・ファーゴは7月以来、同部門の6225人の人員削減を実施したが、その対象となった従業員はアイオワ州デモインやシャーロットで勤務していた。

 バンク・オブ・アメリカは8月にも同部門で1700人の人員を削減したが、その際の対象者はフロリダ、ジョージア、バージニア、ユタ、マサチューセッツの各州にまたがっていた。今回の削減ではテキサス、カリフォルニア、フロリダ州の従業員が対象となった。

 シティグループも住宅ローン部門の人員削減を実施している。同行はイリノイ州ダンビルに2012年1月に住宅ローン審査部門を開設したが、今年7月に閉鎖した。シティの広報担当者によると、ダンビルの審査部門は、住宅ローンの借り換え需要の急増に対応して開設されたが、最近、その需要が落ち続けているため不要となったと説明した。

<引用終わり>


■ 株価が上がる一方で、実体経済が減速している ■

株価が上がる一方で、アメリカの実体経済の減速が顕著になってきそうです。



日本経済にも影響が大きいアメリカの新車販売台数の推移ですが、9月に入ってからの落ち込みが激しいようです。実質的な0%金利ローンなどで売り上げを増やしていたのですが、こちらも金利上昇の影響を受けます。

尤も、現在の市場にとっては、米実体経済の好ましからざる数字は、金融緩和縮小時期が遠のく事を意味するので、好材料となります。

・・・・こんな事は長くは続かない・・・。

コアコアCPIが0.0%に・・・景気は回復するのか?

2013-10-25 11:05:00 | 時事/金融危機
 

■ コアコアCPIがマイナスを脱却 ■

とうとうコアコアCPIがマイナスを脱して0.0%となりました。
これでデフレ脱却に拍車が掛かると甘利大臣もご満悦の様子。

ところで、小麦粉や食料油が値上がりしたり、スナック菓子の中身が少なくなったりしていますが、景気回復実感はあるでしょうか?

多分、一般の方達には皆無では無いでしょうか?

■ 消費は低迷している ■



ゴールデンウィーク前の、日本株のボーナスステージでは、塩漬け株が値上がりして儲けた個人が、高額商品の消費を活性化させましたが、6月以降は百貨店の売上が顕著に低迷しています。

前年同月比は、民主党政権末期のどーしようも無い時期なので、比較すると改善して見えてしまう所に注意が必要でしょう。

気になるのがスーパーの9月の売上が低調な事。天候など様々な要因はあるかも知れませんが・・・。

■ 所得上昇無き物価上昇 ■

現在の物価上昇の主要因は円安による輸入価格の上昇です。
今まで、原油価格の上昇と輸入量が原因の様に言われてきましたが、最近の輸入の傾向は原油の輸入量が減少して、製品輸入、特に電気製品や工作機械などが増えています。

日本は国内の製造業が海外に移転した結果、円安による物価上昇圧力が強くなっています。

一方で、政府がどんなに賃金上昇の圧力を企業に掛けても、企業は人件費を容易には増やせません。円安も、今後どう変異するか分からないので、業績の改善を賃金に反映させる事を躊躇するのは当然です。

さらに、世界経済の減速が顕著になってきたので、円安で円建ての売り上げは増えてはいますが、輸出は減少傾向にあります。

結局、アベノミクスの結果、景気回復実感が乏しい中で、物価の上昇が始まっています。

これを経済用語では「スタグフレーション」と呼びます。不景気とインフレが同時進行する事です。リーマンショック後、アメリカの経済も明らかにスタグフレーションです。物価は上昇を続けていますが、平均所得は下がり続けています。

■ 金融緩和の弊害にそろそろ庶民が気づく頃 ■

日本のサラリーマンに金融緩和の是非を聞いても、「お金が増えるならば良いことに違いない」程度の認識しか持たない人も多く居ます。

ところが、家庭の主婦も、「何だかオカシイ?」とそろそろ気づく頃かと思います。

「株が上がったなんて報道しているけど、給料は上がらないのに電気量金も、ガス代も根上がったし、最近、スーパーの特売の値段も上がっているわ・・・」

意外と主婦は肌身として景気の実感に鋭いものです。

■ コアコアCPIは為替連動で、0.0の周辺をウロウロするだけ? ■

消費税増税もあるので、駆け込み需要で消費の一時的改善はありますが、増税後は消費は低迷するはずです。

このまま日本の物価が上昇し続けるとも考え難い。結局物価は為替に連動した状態になるので、円が100円の付近をウロツク限り、物価上昇率も限定的だと思われます。

どうやら、リフレ論は敗北したのではないでしょうか?

極端な通貨政策以外、人為的に物価を上昇させられないのは、経済の常識ですが、「異次元緩和」という極端な通貨政策でも物価上昇は限定的な様です。