■ 世界はモリカケ問題なんて興味は無い ■
私も含め、国内ではモリカケ問題に注目が集まっていますが、世界にとってはモリカケなんてどうでも良い話。
仮に安倍政権が倒れたとしても、自民党の誰かが首相になる訳で、日本がアメリカの言いなりの国家であるという「国是」は変わらない。
しかし金融市場は安倍首相の退陣によって、日銀の異次元緩和が終了するかもしれない事には注意を払っているはずです。現在、FRBが利上げを進める中にあって、日銀とECBが超緩和的金融政策を継続して、市場に資金を潤沢に供給し続ける事で、世界はバブル崩壊を先延ばししているからです。
■ イタリアの混乱 ■
日本の政治は確かに酷い状況ですが、それは民主主義の「建前」の話に過ぎません。「政府が国民から税金を徴収するならば、政府は公平であるべきだ」という、ある意味で「行儀の良い議論」で日本の政界は混乱しています。
しかし、イタリアの混乱はもう少しお行儀の悪い話。連立政権入りを目指す「五つ星運動」は「ポピュリズム」の政党。「俺たちだけ良ければ他のヤツや国がどうなろうと知った事っちゃない」というのを地で行く政党。トランプ支持者やネオナチにも通じる、現在の先進国の「負け組庶民」の気持を代弁する様な集団。
彼らはEUやユーロからの離脱を目標に掲げていますが、その理由は公的債務の上限をEUが定めているから。「五つ星運動」は「ジャンジャン国債を発行して、さらに政府通貨も発行して国債を買い取っちゃえ」と主張しています。まさに、お前、どこの三橋貴明だよ!!とツッコみたくなる政党。
そんな「五つ星運動」と、もっと過激なポピュリズム政党の「同盟」が連立入りを目指して再び選挙になるかも知れないので、仮に選挙が実行されれば、イタリア国民はEU残留の是非を選挙で選択する事になります。
一見、イギリスのブレイクジット(EU離脱)に似た構図ですが、ブレイクジットの目的が移民受け入れの拒否であったのに比べ、イタリアの場合はギリシャ危機に近い。要は、財政が厳しいからEUを離脱して、ついでにイタリア国債もデフォルトしちゃえって事。
■ 過剰リスクでズタボロのイタリアの金融機関 ■
イタリアの経済が混乱しているのは、金融機関の経営危機の問題が大きい。イタリアの銀行はリーマンショックの前から住宅バブルで過剰なリスクを抱えていましたが、リーマンショック後の超緩和的金融政策によって生きながらえてきました。それでもイタリアの銀行のいくつかは破綻し、政府が資本注入に乗り出しています。
金融が不安定なので、当然経済も低調で、イタリアの政府債務はGDPの130%に達しています。「五つ星運動」は、この債務をさらに拡大する、あるいは政府通貨を発行して国債を買い取ってしまおう(借金帳消しなどと言い出しのだから、イタリア国債は売り浴びせられるし、イタリアの金融株も売り浴びせられるし、さらにはユーロも売られるという大混乱。
■ アルゼンチンも大混乱 ■
アルゼンチンも通貨のペソが売られて、毎度の事ながら混乱が広がっています。米国の金利上昇よる投資資金の逃避が起きていると解説されますが、実は南米諸国にイタリアを始めとする南欧諸国の投資が多く集まっています。歴史的にも金融的にも南米と南欧の繋がりは深い。
憶測にはなりますが、アルゼンチンの資金流出に、イタリアの金融機関の影響も在るのでは無いか妄想しています。
■ 弱い所から崩れ出す世界 ■
超緩和的金融政策は金利上昇によって弱い所から影響が広がり始めます。潤沢に供給される低金利の資金が減れば、過剰リスクを抱え込んだ金融機関の経営が怪しくなり、過剰流動性の受け皿となっていた新興国から資金が流出します。
リーマンショック後も2013年のバーナンキショックの頃までは、この様な中規模の危機が繰り返されていましたが、市場が危機に鈍感になる事で、最近は人々の目から隠されていました。しかし、リスクは静かに溜め込まれ、むしろ規模を拡大していました。
イタリア国民もバカでは有りませんから、国家の信用を損なう様な選択はしないでしょう。今回の危機もブレイクジットやトランプショックの時の様に、騒ぎはスゥーっと沈静化すると思いますが、それは市場が混乱を無視したくて仕方が無いからだと私は妄想しています。
「見たくないモノを見なければ大丈夫」という空気が市場を支配している・・・。
■ ところで日本はイタリアい以上に酷いんですけど・・・ ■
ところで、異次元緩和で既に財政ファイナンスに突入している日本は、実はイタリア以上にクレージーな状況とも言えます。
高齢化によって成長率が抑制されているので金利も抑制され、国債は日銀の管理下にあるので、こちらも金利はゼロに張り付いている。
このモラトリアムの状況がどの程度継続可能かは神のみぞ知るですが、既に日銀はインフレターゲットの旗を降ろしています。黒田総裁は実質金利と自然利子率が反転するまで緩和を続けると発言している様ですが・・・自然利子率の定義は複雑で、適正な利子率を正確に出す事は困難なはずです。
結局、日銀は財政ファイナンスを止める事が出来ないので、これを永続的に継続できる目標に架け替えたのです。今後、円安や原油価格の上昇によってインフレ率が2%を超えても、「実質金利が自然利子率を越えていない」として異次元緩和を継続するのでしょう。
これを為替市場が許している間は、日本の財政は延命出来ますが、どこかで円が売り込まれる様な事になれば、輸入コストの上昇により高いインフレが発生します。これがどの程度で収束するかにもよりますが、日銀によって金利は抑制されたままですから、預金は目減りします。
ここで国民が預金を引き出すと、金融機関の多くが破綻する事になり、イタリア以上の混乱が発生します。
一見、平穏に見える日本ですが、実は結構ヤバイ橋を渡ています。
国会がモリカケで紛糾している方が、こういうヤバイ問題が見えなくて良いのかも知れません。もっとも、現在のモラトリアムが10年後にも続いているとはとても想像出来ません。少子高齢化によって成長力は下がり続け、社会福祉は年間1兆円ずつ拡大する・・・日本にも「五つ星運動」が起こって、借金チャラダァーって言い出す政党が生まれるかも知れません。党首は三橋貴明氏にやってもらおう。きっと、私は一票を投じてしまう・・。