■ 今シーズン・アニメのダークホース ■
今シーズンのアニメは「偽物語」がブッチギリの人気だと思います。
色々なブログで評論されているでしょうから、
「人力でGO」としては少し毛色の違う作品を紹介します。
「モーレツ宇宙海賊」
このタイトルと冒頭に載せた画像だけで、
本日のブログを読み飛ばした方が8割と予想します。
だって、今時「宇宙海賊」だよ・・・それも、女の子キャラだよ・・。
そりゃ、「良識的な大人」とは縁遠い私でも、遠慮したい・・・。
でも、各アニメ、1話のさわりだけ見る約束なので(誰との約束だよ)
とりあえず見てみたら・・・・面白いじゃないか!!
これは、今シーズンのアニメのダークホース決定です。
■ 宇宙戦艦も巨大ロボットも過去の遺物 ■
宇宙海賊だぁー、ロボットだぁーなんていうのは20世紀で終わっています。
そりゃー、私だって「宇宙戦艦ヤマト」や「キャプテン・ハーロック」に熱中した世代ですが、
「エヴァンゲリオン」を通過した日本アニメが、
正面からSFを描けなくなったのは事実です。
唯一、「ガンダムUC」だけが、SFを正面から扱っていますが、
あれは「ガンダム」だから許されるのであって、
他の作品では、巨大ロボットも宇宙戦艦も、既に過去の遺物です。
■ 意外にオーソドックスなSFアニメ ■
「モーレツ宇宙海賊」は今時に女の子キャラがワンサカ出て来るので、
これはもうそっち系の作品と思って見始めたのですが、
冒頭の小型宇宙艇が軌道上から地上に着陸するシーンで、
近年のSF設定のアニメの水準を十分に上回っています。
風に流されてコースをやや外れた小型艇が
艇の姿勢制御で軌道修正して軽やかに着陸するシーンは
オーと思う程リアルですが、
何と、それが女子高ヨット部のシミュレーターだった。
操縦していたのは、メイド喫茶でウェイトレスのバイトをしている女子高生。
何なんだ、このミスマッチ感は・・・。
そこに訪れるのは、宇宙海賊船のクルー。
なんとこのお嬢様、宇宙海賊船「弁天丸」の船長の娘だと言う。
オイオイ、今時「宇宙海賊」って、そりゃ無いよね・・。
でも一応は今時の視聴者を納得させる?背景設定はされていて、
開発惑星「海の明け星」がかつて属した「植民星連合」が独立戦争を挑んだ際、
不足する戦力を補う為に、宇宙海賊船に「海賊免許(私掠船免状)」を交付したのが始まり。
一応、ルールーもある様です。
最後の海賊行為から50日間有効で、その間に次の海賊行為を行えば有効期限が更新される。
免許を受けた船体に限り有効。
免許を受けた船長が存命の限り有効。ただし、直系の継嗣が継承する事ができる。
まあ、アニメ(ラノベ)らしい荒唐無稽な設定ですが、
意外と複雑な設定よりも、こういう力技一発の設定の方が物語はドライブします。
ところで、くだんの女子高生は父親である海賊船「弁天丸」の船長が急死した為、
世襲制である「海賊船船長」を引き継がなければならないという設定です。
エーーーー。歌舞伎じゃあるまいし、海賊船船長が世襲なのぉーー??
■ 大人達が魅力的 ■
もう冒頭からツッコミどころ満載のアニメですが、
女子高生を取り巻く大人達が魅力的でついつい見てしまいました。
船長候補の加藤茉莉香(まりか)の母親は、サバサバした女性です。
娘には父親が海賊船長である事も、世襲の事も一切伝えていません。
そこに、海賊船のクルーが船長に死を伝に来ます。
「船長は食中毒で死んだ」と・・・。おいおい・・・。
そこから大人達は豪快に酒盛りです。
ここら辺はオールドスタイルの宇宙海賊のイメージです。
ワインをジョッキーに溢れる程注いで、グイーっとやる訳です。
こういう表現は、最近のチンマリしたアニメでは見れなくなったシーンです。
宮崎アニメの見どころの一つが、豪快な飲みっぷり、食べっぷりですが、
まさに、往年のアニメを彷彿とさせませす。
そして、酔いつぶれた頃にホロリと本音が出る。
ベタと言えば、あまりもにベタな表現ですが、
何故だか、それが非常に安定感を物語に与えています。
宇宙船のクルーの二人は、それぞれ担任と保険教師として学校に潜り込みます。
これは最近のアニメのお約束を見事に踏襲していて、
オイ、オイと突っ込みたくなりますが、これは原作の設定だから仕方が無い・・。
ところが、この二人は茉莉香と適当な距離を置いていて、
積極的に彼女が宇宙海賊を世襲する事を強要したりはしません。
ただ、世襲にまつわるゴタゴタから彼女を守る存在の様です。
一方、母親は娘を車で郊外へ連れ出します。
宇宙船の廃棄場に様な場所で母親が取りだしたのは、
大口径のハンディー・ブラスター。
母親が大地に足を踏ん張って打ち放った一発は、宇宙船の装甲を貫きます。
そして、母親は娘に「海賊の心構え」を説きます。
・・・そんな、ムチャクチャな・・・・でも、カッコイイ。
■ 丁寧なSF描写を積み重ねる ■
そんな古臭くも不思議とクセになる「モーレツ宇宙海賊」が面白く成り始めるのは
女子高のヨット部が「外洋宇宙帆船戦オデットⅡ世」で練習航海に出る3話から。
とにかくキャラクターの今時さと反対に、内容はチョー地味です。
まず、ドックに停泊中のオデットⅡ世は、外部からハッキングを受けます。
それに気づくのは茉莉香と、クールな謎の転校生チアキ・クリハラ。
チアキ・クリハラは外部からのハッキングはそれ程脅威では無いと判断しますが、
茉莉香は唐突に、電子戦防御システムを立ち上げて応戦に入ってしまいます。
ところが「オデットⅡ世」の防御システムは超強力です。
敵のハッキングを退け、敵に反撃・・・と思いきや、あまりの消費電力に
ドックの外部電源のブレーカーが落ちてしまいす。
おいおい、何なんだ、この女子高の練習帆船は・・・軍艦並の装備なの?
そう、「オデットⅡ世」は、100年前に建造された第一世代の宇宙海賊船なのです。
もう、とってもラノベ的なご都合主義的ストーリーですが、
画面の方は、緊張感たっぷりです。
次々に立ち上がるウィンドー。
目まぐるしく変わる、表示。
結構、地味な所に、思いっきりコダワッテます。
こういった、SF的作り込みの細かさは、最近の派手なアニメには見られません。
さらには、太陽風を受ける「帆」の展開に失敗し、
先生が一年生部員を引率して船外活動をするシーンなど、
宇宙服の着こみ方から、前髪の処理の仕方まで指導する丁寧さ。
エアロックから船外に出ると、そこは無重力の世界。
通信だけが互いの連絡手段ですが、
その通信の設定まで事細かにブリッジとやり取りがされます。
イヤー、こんな丁寧なアニメは久しぶりです。
26話、2クールが予定されているので、展開はゆっくりですが、
オールドファンの心を捉えて離さないものがあります。
■ 荒唐無稽とリアルのバランス ■
監督の佐藤竜雄は、「宇宙戦艦ナデシコ」の監督の様です。
と言っても、一時、アニメとは縁遠かったので私は未見です。
実は今シーズンはもう一本佐藤竜雄作品が放送されており、
こちらはもう一つの絶滅危惧種である、「巨大ロボットアニメ」です。
自動車メーカーの「日産」がデザインしたロボットが素晴らしくカッコイイのですが、
こちらは、鴨川(千葉県)の女子高生がロボットに乗って街を守るというお話。
「モーレツ」とは正反対に、かなり今風のノリではあるのですが、
スマートなデザインのロボットがいきなり繰り出したのは「バックドロップ」
イヤー、唖然とはこういうシーンを見た時の表現なのでしょう。
さらには、街中の戦闘では、空き地、畑、廃屋を足場に戦い、
避難民の上に落下する自動販売機を、ガードレールのフルスイングで打ち返す!!
もう、日産のデザイナーが見たら涙を流しそうロボットの活躍ですが、
これがなかなか面白い。
だって、「ジャージ部の歌」を歌いながら戦うヒロインって、初めてですよ。
尤も、ジャージ部って何なんだ?
乗りとして「トラドラ」のミノリなんだけど、熱い、熱すぎます、このヒロイン。
さらに4話目では、謎の巨乳宇宙人転校生が登場。
何故か喫茶店でバイトして大人気。
嫉妬したクールキャラのお嬢様宇宙人も喫茶店でバイトして、
意外なドジっ子ぶりに、視聴者は唖然とします。・・・そう又「唖然」です。
今期の佐藤竜雄の2作は、一見、正反対の肌合いをしていますが、
荒唐無稽ぶりと、意外にリアルな演出には共通するものがあります。
この一見すると相反する「荒唐無稽とリアル」というのは、
実は日本アニメの最大の魅力では無いかと思います。
その原点を辿れば、やはり「宇宙戦艦ヤマト」や「ハーロック」辺りい辿り着きますが、
爆発的進化を遂げたのは、やはり「エヴァンゲリオン」だったのではないでしょうか。
■ 高校生は必見の長井龍雪の「あの夏で待ってる」 ■
本日はコテコテのオタクアニメ路線の紹介ですので、調子に乗ってもう一作。
昨年「あの日見た花の名前を・・・」を大ヒットさせた長井龍雪の新作。
今回も田舎の高校生の群像劇ですが、
前作とは一変してSF設定です。
宇宙から地球にやってきた宇宙人が着陸に失敗して男子高校生の生命を危険にさらします。
彼を気遣う宇宙人の「先輩」は、行くあても無く彼の家に居候。
折から、彼の姉は海外出張で、危ない二人暮らしが始まるが、
二人の回りには、彼に思いを寄せる幼馴染と、その幼馴染に思いを寄せる親友と
さらには、親友に思いを寄せる幼馴染の女友達と・・・・。
夏休みに皆で8mm映画を撮る事になったのだが、
軽井沢の近くの田舎町で、高校生の暑く切ない夏が始まりそうです。
これだけ書くと、「あの日みた花の・・・」とまんま同じですが、
内容的にはナンチャッテSF設定を絡めて、かなり軽めの仕上がりです。
しかし、長井龍雪のさりげない日常の演出は、
やはり現在アニメ作家の中で群を抜いています。
高校生をとっくに卒業した大人でも、
当時を思い出してニンマリ出来る良作です。
本日は、月曜日というのに、オタクアニメの特集でした。
本日紹介した作品は、大人にはハードルが高いと思います。